ストランディング・ワールド(Stranding World) ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて兄を探す~

空乃参三

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第六章

253:インデストへ行こう!

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 セスは自身と血縁上のつながりがあると思われる二人の人物との接点について考えだした。
 すなわち、ウォーリー・トワとエイチ・ハドリの二名との接点だ。

 血のつながりを除けば、セスはウォーリーよりもハドリの方に接点が多いかもしれない。
 同じフジミ・タウンの出身であり、育ての父と両親という違いがあるが「フジミの大虐殺」で親を失っている。そして、ハドリは虐殺の現場に居合わせなかったものの、数少ないフジミ・タウン出身者の生き残りだ。
 更に市長と役場の職員だから当然なのだが、セスの育ての父とハドリの母は同じ職場に勤務していた。
 セスは直接顔を合わせたことはなかったが、ハドリの幼少時代のエピソードをいくつも知っていた。勿論ハドリもセスが当時の市長の養子であることくらいは知っているだろう。

 一方、ウォーリーとセスの接点は案外少ない。
 職業学校とECN社のふたつがその数少ない接点である。
 だが、職業学校にはハドリも通っていた。
 また、セスが入学した時点でウォーリーは既に卒業していたから、学校でセスとウォーリーとが顔を合わせる機会はなかった。更に二人の専攻も異なる。
 ウォーリーはECN社時代にリクルーターとして職業学校に出入りしていたことはあるが、これもセスの入学前までの話である。
 ECN社に関しては同時期に勤務したことはない。正社員とアルバイトの違いはあるにしても、二人とも勤務経験があるという程度の共通点だ。また、二人ともECN社の奨学金をもらって職業学校に通っていたという事実もあるが、これは該当者が多すぎる。

「ハドリ社長に親近感は湧かないけど、ウォーリー・トワさんと僕に共通点ってあるかな?」
 セスが首を傾げながらつぶやいた。
 ハドリに親近感が湧かないというのはセスの本音だ。
 その一方で、ウォーリーについても親近感はともかく自分との関係性をイメージできない。
 ウォーリーは「タブーなきエンジニア集団」のトップという有名人であるが、ある日突然その有名人と兄弟、と言われてもピンとこない。
 それも無理はないはずで、セスは生まれて一度たりともウォーリーと顔を合わせることなく二一年近く生きてきたのだ。
 それだけの期間、関係どころか存在そのものを意識したこともない相手と血縁関係があると指摘されてもイメージが湧かないというのが普通だろう。

 セスのつぶやきにモリタが反応する。
「目のあたりと顔の輪郭が似ていると思う。二人ともどちらかというと女性顔だし」
 それを聞いたセスは、
「女性顔、っていわれるのはあまり好きじゃないんだけどね。僕自身はもう少しタフな人間だと思いたいから」
 と答えたが、内心ではモリタの指摘も認めざるを得ないと思っていた。
 職業学校時代も男子学生だけではなく女子学生からも可愛いと言われることが多かったからだ。
 これにはセスが比較的小柄であることと、車椅子を日常的に利用していることにも原因があったのだが。

「……確かECNの社長さんが俺とそのトワさんが似たようなことを言うな、と指摘していたな」
 ロビーが思い出したようにつぶやいた。
 確かにジンの喫茶店の中でオイゲンがセスとロビーに心中を吐露したときに、そのようなことを話したはずだ、とセスも記憶している。

「兄を捜し求める気持ちが、無意識のうちに兄と似たキャラクターの人間へ近づくきっかけになった」
 セスはそう考えてもみた。
 会ったこともない者の個性など知る由もない。
 だが、意識の奥底に埋もれた何かが知らないうちに覚醒して、そのような行動を起こさせた可能性もある、とセスは思っている。モリタあたりにこのような話をしたら、身もふたもない話だと鼻で笑われるかもしれないが。

 セスは改めて思考を兄とされたウォーリー・トワに戻した。
「『タブーなきエンジニア集団』のウォーリー・トワさんが僕の兄……」
 セスがつぶやくとほぼ同時に彼の携帯端末から音がした。メッセージを受信したらしい。
 メッセージの主はオイゲンであった。OP社の監視があるため、通信では話しにくいことを秘密の通信経路を用いて送信したとのことであった。

 オイゲンからのメールでは、ウォーリーの両親に関する情報は無いということになっている。保証人は職業学校の指導教官名であり、父方の祖父母の家で育てられたようだ、という情報もある。
 「ウォーリーがどうかしたのでしょうか?」ともメッセージには書かれている。OP社に見られるのが憚られる内容なので、専用回線から返信して欲しい、と追記されていた。

「やっぱり僕の予想通りだよ。セスもロビーも警戒心なさすぎ」
 オイゲンからのメールを見てモリタが得意げに胸をそらした。
「うるせえ。重要なのは専用回線を使って連絡しろ、ということだ」
 ロビーが反論した。図星であったのだが、ロビーからすればモリタの自慢などどうでもいいことだ。

 一方でセスはユニヴァースから知らされた情報の重大さに落ち着きを欠いているようだ。
 その証拠に突拍子もないことを口走ったのだ。
「ロビー、モリタ! インデストへ行こう! 今すぐに!」
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