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第六章
251:セス、ハドリ家の闇を知る
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「はじまりの丘」の麓にあるフェイ・イヴ・ユニヴァースの館では、セス、ロビー、モリタの三人が二台目の情報端末を覗いていた。
セスたちが眠ってしまった間にユニヴァースが二台目の端末を置いていったのである。
ユニヴァースは無骨ながらも誠実で優しい性質のようであった。
モリタより先に目を覚ましたセスとロビーが新たな端末の存在に気付いた。
朝早い時間であったから、モリタを無理矢理起こす気はない。
「新しい端末だね……モリタは寝ているけど、中を見てみようか?」
「セスが最初に見るのならそれでいいんじゃないか? 必要なら後でモリタに内容を教えればいいからな」
ロビーの同意が得られたので、セスが端末を操作して中の情報を確認し始めた。
二台目の端末に登録されている情報は、「フジミの大虐殺」に関するものだった。
主だった死者のリストとプロフィールを読み終えたところで、セスが操作の手を止めた。無言でいることに耐え切れなくなったのだ。
「……ふぅ」
「そうか……あのハドリ社長も『フジミの大虐殺』で両親を殺されたのか……」
ロビーがスクリーンを見ながらつぶやいた。
「僕はフジミ・タウンに住んでいた時代にハドリ社長に会ったことはないけど、出身地は同じだからね……」
「セスの親父さんもそうだったな」
「僕の場合は、血のつながっている人じゃないのだけどね……」
「フジミの大虐殺」に関する情報は、読めば読むほど気が重くなる代物だった。
次の情報は罪なき人々が一方的に殺害される様が事細かに記録されたものであった。
読み進めている途中にモリタが目を覚まし、無言でスクリーンに目をやった。
とても言葉を発することができない状況だったからだ。
モリタが目を覚ましてから十分ほど後に、セスの育ての父である市長のユキナリ・クルスが殺害される場面の記録がスクリーンに映し出された。
凄惨な映像にモリタが耐えきれずに部屋を出て行った。
セスは呆然とした様子でスクリーンを見入っている。
「でも、僕はここから目を逸らしてはいけない……」とつぶやきながら。
自らが被害者であるセスはともかく、ロビーやモリタには「フジミの大虐殺」に関する知識がほとんど無い。
大勢の犠牲者があったことくらいは知っているが、ここまで凄惨なものだとは予想していなかったらしい。
ロビーはスクリーンから目をそらすことはなかったものの「こんなものだとは思っていなかったぞ。ひでぇ……」とつぶやいたきり、言葉を失っていた。
ロビーのような感想を持つのは、決して不思議なことではない。
わずか一三年前の出来事であるが、情報が少なく大抵の市民はこの事件についてほとんど知識を持っていなかったのだから。
「フジミ・タウンに攻め込んだことだけは、ハドリ社長を支持したい気分だな……
親父さん、お袋さんの敵みたいなものだものな」
ロビーもOP社によるフジミ・タウンの侵攻についてはハドリに多少の共感を覚えているようだ。
「僕だって同じだよ。ハドリ社長のようにその能力があれば、僕だって同じ事をしたと思う。ただ、今回のハドリ社長の侵攻で新しいハドリ社長が生まれないかは心配だけどね。それとモリタは大丈夫かなぁ?」
セスが心配そうに辺りを見回した。モリタの姿はない。
「モリタが戻ってくるまで待とうか?」
「いや、進めちゃえよ」
「大丈夫かなぁ……」
セスは、恐る恐る次の情報を確認する。
今度は「フジミの大虐殺」の背景に関する部分の情報だった。
ポータル・シティ海岸エリアの有力者、マサヨシ・ハドリがキョウジ・トイに脅迫されて、海洋調査隊のメンバーを釈放するところから始まった。
マサヨシ・ハドリが隠し子を暗殺したという情報が脅迫材料らしい。
「えげつない話だ……陰謀だらけじゃないか」
ロビーがつぶやいた。
セスはそうだね、と言いながら情報を読み進めていく。その表情は硬い。
少ししてモリタが戻ってきた。飲み物と菓子を抱えて、後ろからセスとロビーの様子を観戦している。
積極的に関わるつもりはないようだが、無視を決め込みたくもないらしい。
「ちょっと待って!」
ある情報が表示されたところでセスがロビーを制した。途中で端末の操作をロビーに代わってもらったため、彼に頼んで映像を止めてもらう必要があったからだ。
「この海洋調査隊で殺されちゃった女の人、『タブーなきエンジニア集団』の代表と同じ苗字だよ?!」
「確かに珍しい苗字だな。モリタは心当たりあるか?」
「いや、聞いたことないけど……」
更に記録を読み進めていき、彼らは重大な箇所に到達した。
OP社社長のエイチ・ハドリとポータル・シティ海岸エリアの有力者、マサヨシ・ハドリの関係についてである。
「ちょっと待て、複雑で訳がわからないぜ? OP社の社長のお袋さんとマサヨシ・ハドリが親子……?」
ロビーが頭を抱えながら唸っていると、モリタが紙に系図を書き込んで説明する。
「違う違う! マサヨシ・ハドリ氏がハドリ社長の母親の叔父になるの! この二人、カワチ家からハドリ家に移ったのか……面倒なことするな。
それで、娘さんがフローレンスで、これはモトム・トワと結婚しているのか……」
「モトム・トワという人と奥さんのフローレンスさんは海洋調査隊の関係者だね。今まで名前も聞いたことがないけど……ロビーやモリタは記憶にある?」
セスがモリタの描いた系図を覗き込みながら尋ねたが、二人とも首を横に振った。
「……ユニヴァースさんにこの二人を知っているか確認してみる!」
セスは立ち上がってユニヴァースの部屋のドアをノックした。
すると中から、後にするように、とユニヴァースの答えが返ってきた。
「社長さんなら……」
セスは携帯端末を取り出してECN社社長室へ通信をつなごうと試みた。
セスたちが眠ってしまった間にユニヴァースが二台目の端末を置いていったのである。
ユニヴァースは無骨ながらも誠実で優しい性質のようであった。
モリタより先に目を覚ましたセスとロビーが新たな端末の存在に気付いた。
朝早い時間であったから、モリタを無理矢理起こす気はない。
「新しい端末だね……モリタは寝ているけど、中を見てみようか?」
「セスが最初に見るのならそれでいいんじゃないか? 必要なら後でモリタに内容を教えればいいからな」
ロビーの同意が得られたので、セスが端末を操作して中の情報を確認し始めた。
二台目の端末に登録されている情報は、「フジミの大虐殺」に関するものだった。
主だった死者のリストとプロフィールを読み終えたところで、セスが操作の手を止めた。無言でいることに耐え切れなくなったのだ。
「……ふぅ」
「そうか……あのハドリ社長も『フジミの大虐殺』で両親を殺されたのか……」
ロビーがスクリーンを見ながらつぶやいた。
「僕はフジミ・タウンに住んでいた時代にハドリ社長に会ったことはないけど、出身地は同じだからね……」
「セスの親父さんもそうだったな」
「僕の場合は、血のつながっている人じゃないのだけどね……」
「フジミの大虐殺」に関する情報は、読めば読むほど気が重くなる代物だった。
次の情報は罪なき人々が一方的に殺害される様が事細かに記録されたものであった。
読み進めている途中にモリタが目を覚まし、無言でスクリーンに目をやった。
とても言葉を発することができない状況だったからだ。
モリタが目を覚ましてから十分ほど後に、セスの育ての父である市長のユキナリ・クルスが殺害される場面の記録がスクリーンに映し出された。
凄惨な映像にモリタが耐えきれずに部屋を出て行った。
セスは呆然とした様子でスクリーンを見入っている。
「でも、僕はここから目を逸らしてはいけない……」とつぶやきながら。
自らが被害者であるセスはともかく、ロビーやモリタには「フジミの大虐殺」に関する知識がほとんど無い。
大勢の犠牲者があったことくらいは知っているが、ここまで凄惨なものだとは予想していなかったらしい。
ロビーはスクリーンから目をそらすことはなかったものの「こんなものだとは思っていなかったぞ。ひでぇ……」とつぶやいたきり、言葉を失っていた。
ロビーのような感想を持つのは、決して不思議なことではない。
わずか一三年前の出来事であるが、情報が少なく大抵の市民はこの事件についてほとんど知識を持っていなかったのだから。
「フジミ・タウンに攻め込んだことだけは、ハドリ社長を支持したい気分だな……
親父さん、お袋さんの敵みたいなものだものな」
ロビーもOP社によるフジミ・タウンの侵攻についてはハドリに多少の共感を覚えているようだ。
「僕だって同じだよ。ハドリ社長のようにその能力があれば、僕だって同じ事をしたと思う。ただ、今回のハドリ社長の侵攻で新しいハドリ社長が生まれないかは心配だけどね。それとモリタは大丈夫かなぁ?」
セスが心配そうに辺りを見回した。モリタの姿はない。
「モリタが戻ってくるまで待とうか?」
「いや、進めちゃえよ」
「大丈夫かなぁ……」
セスは、恐る恐る次の情報を確認する。
今度は「フジミの大虐殺」の背景に関する部分の情報だった。
ポータル・シティ海岸エリアの有力者、マサヨシ・ハドリがキョウジ・トイに脅迫されて、海洋調査隊のメンバーを釈放するところから始まった。
マサヨシ・ハドリが隠し子を暗殺したという情報が脅迫材料らしい。
「えげつない話だ……陰謀だらけじゃないか」
ロビーがつぶやいた。
セスはそうだね、と言いながら情報を読み進めていく。その表情は硬い。
少ししてモリタが戻ってきた。飲み物と菓子を抱えて、後ろからセスとロビーの様子を観戦している。
積極的に関わるつもりはないようだが、無視を決め込みたくもないらしい。
「ちょっと待って!」
ある情報が表示されたところでセスがロビーを制した。途中で端末の操作をロビーに代わってもらったため、彼に頼んで映像を止めてもらう必要があったからだ。
「この海洋調査隊で殺されちゃった女の人、『タブーなきエンジニア集団』の代表と同じ苗字だよ?!」
「確かに珍しい苗字だな。モリタは心当たりあるか?」
「いや、聞いたことないけど……」
更に記録を読み進めていき、彼らは重大な箇所に到達した。
OP社社長のエイチ・ハドリとポータル・シティ海岸エリアの有力者、マサヨシ・ハドリの関係についてである。
「ちょっと待て、複雑で訳がわからないぜ? OP社の社長のお袋さんとマサヨシ・ハドリが親子……?」
ロビーが頭を抱えながら唸っていると、モリタが紙に系図を書き込んで説明する。
「違う違う! マサヨシ・ハドリ氏がハドリ社長の母親の叔父になるの! この二人、カワチ家からハドリ家に移ったのか……面倒なことするな。
それで、娘さんがフローレンスで、これはモトム・トワと結婚しているのか……」
「モトム・トワという人と奥さんのフローレンスさんは海洋調査隊の関係者だね。今まで名前も聞いたことがないけど……ロビーやモリタは記憶にある?」
セスがモリタの描いた系図を覗き込みながら尋ねたが、二人とも首を横に振った。
「……ユニヴァースさんにこの二人を知っているか確認してみる!」
セスは立ち上がってユニヴァースの部屋のドアをノックした。
すると中から、後にするように、とユニヴァースの答えが返ってきた。
「社長さんなら……」
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