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第六章
249:ヌマタが思うハドリの価値
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ヌマタは目の前の木箱に大量に残る爆発物を前に腕組みをしながら考えている。
(待てよ……
OP社が、ハドリがインデストを侵攻するとしたら、この宿に泊まる可能性があるな……)
ヌマタがそう考えるのも不思議ではない。
インデスト周辺部で大人数が留まることができる場所が他にないからだ。
この宿泊施設自体の収容人数はおそらく一千人弱であろうが、それでもインデストへ侵攻する者の一部をとどめることは可能だ。
通信設備も整っていることから、司令部のような使い方もできる。
ヌマタはハドリがこの施設に宿泊する可能性も考慮して、建物に細工をしようと考えた。
ハドリを暗殺するのであれば、「タブーなきエンジニア集団」と衝突した後よりも、衝突前の方が犠牲が少ない。
ひとたびOP社と「タブーなきエンジニア集団」が衝突すれば、双方に犠牲が出るのは間違いないからだ。
また、ハドリは式典好きである。それも派手で大規模なものを好んだ。
基本的に吝嗇な男だとヌマタは思っているが、式典の類だけは金に糸目をつけないという点は認めざるを得ない。むしろ今となってはその性質は好都合であるかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」との衝突に先立って、何らかの式典を行う可能性は十分考えられるからだ。
インデストで大人数を収容して式典を行う会場となると、この「オーシャンリゾート」こそが最有力候補になる。
インデスト市街にも会場の候補はあるが、規模の面では「オーシャンリゾート」に遠く及ばない。
ハドリは負けず嫌いでもあるから、会場を選ぶならインデストで一番大きなものを選ぶはずだ。それならば「オーシャンリゾート」以外に式典の会場はあり得ない。
しかし、この方法には問題があることもヌマタは理解している。
ハドリ以外のOP社の関係者や、無関係の他の利用者などを巻き込む可能性があるからだ。
テロリストを始末するために、自社の社員ごとビルを吹き飛ばしたハドリと同じことをすることになる。
(……いや、それでいい。奴を始末するのはより矮小で卑劣な者の方が望ましい。取るに足らない存在に足元を掬われてこそ、奴が始末されたことの価値がある。奴の価値はそんなものだ)
ヌマタは何度となくうなずいてから決意した。
他人を巻き込むのは気が進まないが、式典に乗じてハドリを爆殺するという手は有効だとヌマタは考えたのだった。
彼は倉庫の中を更に調べることにした。
学生時代に出入りしていたときから、不思議に思うことがあるからだ。
爆発物を保管している場所にもかかわらず、炎を燃やすバーナーがいくつも置かれている。
そして、バーナーからは電気のコードのようなものが延びていた。
「どういう管理なんだか……
バーナーの火は木箱には届かないだろうが……
まあ、こっちにとって好都合だから構わないか」
ヌマタは一人で愚痴を言いながら、バーナーのコードを調べていく。
確かに杜撰すぎる管理である。
一般人が多く滞在する宿泊施設の地下に、施錠管理しているとはいえ大量の爆発物を保管するなど通常はあり得ない。
しかも、その鍵ですらヌマタ程度の素人が簡単に開錠できてしまう代物であった。
更に近くに火を発する道具まである。
どうぞ爆発させてくださいと言わんばかりだった。
爆破直前のビルならともかく、「オーシャンリゾート」は現在進行形で営業している宿泊施設なのだ。
一体何を考えているだろうかとヌマタでなくても疑いを持つであろう。
「オーシャンリゾート」側にも爆発物を撤去できない事情があるのだが、ヌマタがそれを知るはずもなかった。
バーナーのコードは部屋の外に延びているようだ。
入ってきたのと反対側の廊下側にコードが延びていたので、コードの行方を探ってみる。
すると、階段の手前にスイッチボックスが見つかった。
倉庫に戻ってバーナーを安全な方向に向けてから、試しにスイッチを入れてみる。
スイッチもバーナーも生きているようで、バーナーからは炎が吹き出された。
予想よりも炎が大きかったため、慌ててスイッチを切る。
(生きているのか……不用心だが……これは使える!)
ヌマタは急いで宿泊している客室に戻って必要な部品の検討を始めた。
彼は倉庫の爆発物とバーナーを用いて、イベントホール棟をそのまま爆破装置にしようと考えたのだ。
ハドリがイベントホールに滞在しているときに、遠隔操作で爆発を起こすことができれば、確実に彼を葬り去ることもできる。
(明日は市街地へ行って遠隔操作用の部品を購入しよう)
ヌマタは鞄の中に入った爆発物に目をやりながらそう考えた。
OP社、いやハドリのインデスト侵攻時期はいつごろになるだろうか?
フジミ・タウンの後処理に時間がかかっているため、すぐに侵攻とはならないだろうが、遠からぬ未来にそれはやってくるはずである。
ハドリは一度宣言したことは必ずやり遂げる男だ、というのは彼に殺意を持つヌマタでもそう思う。
(ハドリよ……貴様の天下もあとわずかだ。せいぜい覚悟しておくのだな……)
ヌマタが一人、客室でほくそ笑んだ。
(待てよ……
OP社が、ハドリがインデストを侵攻するとしたら、この宿に泊まる可能性があるな……)
ヌマタがそう考えるのも不思議ではない。
インデスト周辺部で大人数が留まることができる場所が他にないからだ。
この宿泊施設自体の収容人数はおそらく一千人弱であろうが、それでもインデストへ侵攻する者の一部をとどめることは可能だ。
通信設備も整っていることから、司令部のような使い方もできる。
ヌマタはハドリがこの施設に宿泊する可能性も考慮して、建物に細工をしようと考えた。
ハドリを暗殺するのであれば、「タブーなきエンジニア集団」と衝突した後よりも、衝突前の方が犠牲が少ない。
ひとたびOP社と「タブーなきエンジニア集団」が衝突すれば、双方に犠牲が出るのは間違いないからだ。
また、ハドリは式典好きである。それも派手で大規模なものを好んだ。
基本的に吝嗇な男だとヌマタは思っているが、式典の類だけは金に糸目をつけないという点は認めざるを得ない。むしろ今となってはその性質は好都合であるかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」との衝突に先立って、何らかの式典を行う可能性は十分考えられるからだ。
インデストで大人数を収容して式典を行う会場となると、この「オーシャンリゾート」こそが最有力候補になる。
インデスト市街にも会場の候補はあるが、規模の面では「オーシャンリゾート」に遠く及ばない。
ハドリは負けず嫌いでもあるから、会場を選ぶならインデストで一番大きなものを選ぶはずだ。それならば「オーシャンリゾート」以外に式典の会場はあり得ない。
しかし、この方法には問題があることもヌマタは理解している。
ハドリ以外のOP社の関係者や、無関係の他の利用者などを巻き込む可能性があるからだ。
テロリストを始末するために、自社の社員ごとビルを吹き飛ばしたハドリと同じことをすることになる。
(……いや、それでいい。奴を始末するのはより矮小で卑劣な者の方が望ましい。取るに足らない存在に足元を掬われてこそ、奴が始末されたことの価値がある。奴の価値はそんなものだ)
ヌマタは何度となくうなずいてから決意した。
他人を巻き込むのは気が進まないが、式典に乗じてハドリを爆殺するという手は有効だとヌマタは考えたのだった。
彼は倉庫の中を更に調べることにした。
学生時代に出入りしていたときから、不思議に思うことがあるからだ。
爆発物を保管している場所にもかかわらず、炎を燃やすバーナーがいくつも置かれている。
そして、バーナーからは電気のコードのようなものが延びていた。
「どういう管理なんだか……
バーナーの火は木箱には届かないだろうが……
まあ、こっちにとって好都合だから構わないか」
ヌマタは一人で愚痴を言いながら、バーナーのコードを調べていく。
確かに杜撰すぎる管理である。
一般人が多く滞在する宿泊施設の地下に、施錠管理しているとはいえ大量の爆発物を保管するなど通常はあり得ない。
しかも、その鍵ですらヌマタ程度の素人が簡単に開錠できてしまう代物であった。
更に近くに火を発する道具まである。
どうぞ爆発させてくださいと言わんばかりだった。
爆破直前のビルならともかく、「オーシャンリゾート」は現在進行形で営業している宿泊施設なのだ。
一体何を考えているだろうかとヌマタでなくても疑いを持つであろう。
「オーシャンリゾート」側にも爆発物を撤去できない事情があるのだが、ヌマタがそれを知るはずもなかった。
バーナーのコードは部屋の外に延びているようだ。
入ってきたのと反対側の廊下側にコードが延びていたので、コードの行方を探ってみる。
すると、階段の手前にスイッチボックスが見つかった。
倉庫に戻ってバーナーを安全な方向に向けてから、試しにスイッチを入れてみる。
スイッチもバーナーも生きているようで、バーナーからは炎が吹き出された。
予想よりも炎が大きかったため、慌ててスイッチを切る。
(生きているのか……不用心だが……これは使える!)
ヌマタは急いで宿泊している客室に戻って必要な部品の検討を始めた。
彼は倉庫の爆発物とバーナーを用いて、イベントホール棟をそのまま爆破装置にしようと考えたのだ。
ハドリがイベントホールに滞在しているときに、遠隔操作で爆発を起こすことができれば、確実に彼を葬り去ることもできる。
(明日は市街地へ行って遠隔操作用の部品を購入しよう)
ヌマタは鞄の中に入った爆発物に目をやりながらそう考えた。
OP社、いやハドリのインデスト侵攻時期はいつごろになるだろうか?
フジミ・タウンの後処理に時間がかかっているため、すぐに侵攻とはならないだろうが、遠からぬ未来にそれはやってくるはずである。
ハドリは一度宣言したことは必ずやり遂げる男だ、というのは彼に殺意を持つヌマタでもそう思う。
(ハドリよ……貴様の天下もあとわずかだ。せいぜい覚悟しておくのだな……)
ヌマタが一人、客室でほくそ笑んだ。
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