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第六章
244:地球生まれ、「ルナ・ヘヴンス」生まれ、エクザローム生まれ
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「凄まじい話だな……」
スクリーンに映し出された映像を見終えてロビーがポツリとつぶやいた。
他に言葉が出なかったのだろう、圧倒された様子でスクリーンに目をやっている。
セスとモリタも似たような様子だ。二人ははあ、とため息をついただけで言葉すら口にしていない。
惑星エクザロームにおける人類の起源が宇宙ステーション「ルナ・ヘヴンス」の不時着にあることは、この星に住む大抵の者が知っている。
だが、「ルナ・ヘヴンス」がどのような経緯でこの地にたどり着いたかを知る者はさほど多くない。
「ルナ・ヘヴンス」に居住していた者は宇宙空間を漂流している時代を知っているが、彼らのほとんどは五〇代より上だ。
エクザロームにたどり着いてからは生き残るための知識が重視されたので、歴史教育には力が入れられていなかった。
その結果、エクザロームで生まれた世代は「ルナ・ヘヴンス」がこの地にたどり着いた経緯を知らない者が多い。セスたちもこの世代なのだ。
「……僕の兄さんには直接繋がらないけど、これはこれで勉強になるね」
セスがぽつりとつぶやいた。
「そうだっ! あれはどこだっけ?」
その直後、モリタは何かを思い出したかのようにユニヴァースのファイルを開き始めた。
「……どうしたの? モリタ」
セスが不思議そうに尋ねると、モリタはちょっと待っていてくれとファイルに目を落としたまま答えた。
しばらくして、モリタがファイルのあるページを指差した。
そこにはユニヴァースの身分証明書と思われるカードをコピーした紙がとじられていた。
「ポータル・シティ海岸エリア自治組織」のロゴが入っているところを見ると、このエリアの自治組織で通用するものと思われる。
「……何で今まで言わなかったんだよ?!」
ロビーがモリタに詰め寄った。
モリタは、
「セスがそれどころの状態じゃなかったからだよ。そんな時に言ったって誰も覚えていないだろう?」
とぶつぶつ文句を言いながら答えた。
ロビーはそういうことはすぐに伝えろよ、と反論してからコピーに目をやった。
コピーに記載されている内容によれば、ユニヴァースの生年月日はLH二年一二月八日である。
「……ということは、五〇前かよ! 意外と若いな。地球生まれかと思っていたのに」
ロビーが素っ頓狂な声をあげた。
「確かに、もう少し上だと思っていたけど……」
セスがロビーの脇からコピーの方に目を向けた。
「あのねぇ……」
モリタは不満顔だ。
ロビーの言う「地球生まれ」とは、一般的に年配者のことを指す。
地球生まれであれば少なくとも現在、五〇歳に達しているからだ。
ただ、エクザロームには「地球生まれ」の五〇代は非常に少ない。
乳幼児を持つ親が子供を連れて「ルナ・ヘヴンス」に乗り込んだ例が非常に少ないためだ。
これは宇宙船での移動が乳幼児に与える影響についての安全性が十分に確認されていなかったことが影響している。
乳幼児についても宇宙ステーションでの生活については安全性がほぼ確認されていたが、宇宙船で移動することに関する安全性の研究はまだ途上にあったのだ。
ちなみに医療施設メディットの副院長ヴィリー・アイネスは地球生まれであり、数少ない宇宙船で移動した乳幼児でもあった。
「僕の兄につながるかはわからないけど、ECN社の端末は確かに重要な情報を持っている。『ルナ・ヘヴンス』の詳細な情報があったことがその証拠だ」
セスはそう確信していた。
あとはユニヴァースによる解析作業が進むのを待つばかりである。
残りの二台の端末と、セスが持っていた記録ディスクの解析が済めば、全ては明らかになるかも知れなかった。
「ところでモリタよぉ。これが一体どうしたというんだよ?」
ロビーがユニヴァースの身分証明書のコピーをひらひらさせながら尋ねた。
「あのねぇ……『ルナ・ヘヴンス』がどうやってここへ来たかも大事だけどさ、セスのお兄さんのことを調べるが目的だよね? セスのご両親は海洋調査隊の関係者らしいし、ユニヴァースさんはそれと関係のある自治組織の人ってことがわかったんだよ?! 重要な情報じゃないか!」
モリタが呆れたと言わんばかりの顔をしながら早口でまくし立てた。
「そうだね。さっきの映像が衝撃的すぎて僕も目的を見失っていたよ。でも、どうしてモリタはユニヴァースさんの身分証明書に気付いたのさ?」
セスが不思議そうな顔をしている。「ルナ・ヘヴンス」の歴史とユニヴァースの身分との間にどのような関係があるのか、皆目見当もつかない。
「セスが回復したら教えようと思っていたんだ。さっきの映像の最後に出ていたロゴを見てそれを思い出したってワケ」
モリタがどうだ、と言わんばかりに胸を張った。
「ロゴ……?」「そんなの表示されていたか?」
モリタの答えにセスとロビーが顔を見合わせた。
「あのね、どこ見ていたんだよ?! 映像の最後にでかでかと表示されていたじゃないか……」
モリタが盛大にずっこけた。
「ま、まあ、モリタは重要なことを発見してくれたよ。ありがとう。ユニヴァースさんが落ち着いたら海洋調査隊や僕の両親のことを聞いてもいいかもしれないね」
セスが慌てた様子でその場を取り繕った。
スクリーンに映し出された映像を見終えてロビーがポツリとつぶやいた。
他に言葉が出なかったのだろう、圧倒された様子でスクリーンに目をやっている。
セスとモリタも似たような様子だ。二人ははあ、とため息をついただけで言葉すら口にしていない。
惑星エクザロームにおける人類の起源が宇宙ステーション「ルナ・ヘヴンス」の不時着にあることは、この星に住む大抵の者が知っている。
だが、「ルナ・ヘヴンス」がどのような経緯でこの地にたどり着いたかを知る者はさほど多くない。
「ルナ・ヘヴンス」に居住していた者は宇宙空間を漂流している時代を知っているが、彼らのほとんどは五〇代より上だ。
エクザロームにたどり着いてからは生き残るための知識が重視されたので、歴史教育には力が入れられていなかった。
その結果、エクザロームで生まれた世代は「ルナ・ヘヴンス」がこの地にたどり着いた経緯を知らない者が多い。セスたちもこの世代なのだ。
「……僕の兄さんには直接繋がらないけど、これはこれで勉強になるね」
セスがぽつりとつぶやいた。
「そうだっ! あれはどこだっけ?」
その直後、モリタは何かを思い出したかのようにユニヴァースのファイルを開き始めた。
「……どうしたの? モリタ」
セスが不思議そうに尋ねると、モリタはちょっと待っていてくれとファイルに目を落としたまま答えた。
しばらくして、モリタがファイルのあるページを指差した。
そこにはユニヴァースの身分証明書と思われるカードをコピーした紙がとじられていた。
「ポータル・シティ海岸エリア自治組織」のロゴが入っているところを見ると、このエリアの自治組織で通用するものと思われる。
「……何で今まで言わなかったんだよ?!」
ロビーがモリタに詰め寄った。
モリタは、
「セスがそれどころの状態じゃなかったからだよ。そんな時に言ったって誰も覚えていないだろう?」
とぶつぶつ文句を言いながら答えた。
ロビーはそういうことはすぐに伝えろよ、と反論してからコピーに目をやった。
コピーに記載されている内容によれば、ユニヴァースの生年月日はLH二年一二月八日である。
「……ということは、五〇前かよ! 意外と若いな。地球生まれかと思っていたのに」
ロビーが素っ頓狂な声をあげた。
「確かに、もう少し上だと思っていたけど……」
セスがロビーの脇からコピーの方に目を向けた。
「あのねぇ……」
モリタは不満顔だ。
ロビーの言う「地球生まれ」とは、一般的に年配者のことを指す。
地球生まれであれば少なくとも現在、五〇歳に達しているからだ。
ただ、エクザロームには「地球生まれ」の五〇代は非常に少ない。
乳幼児を持つ親が子供を連れて「ルナ・ヘヴンス」に乗り込んだ例が非常に少ないためだ。
これは宇宙船での移動が乳幼児に与える影響についての安全性が十分に確認されていなかったことが影響している。
乳幼児についても宇宙ステーションでの生活については安全性がほぼ確認されていたが、宇宙船で移動することに関する安全性の研究はまだ途上にあったのだ。
ちなみに医療施設メディットの副院長ヴィリー・アイネスは地球生まれであり、数少ない宇宙船で移動した乳幼児でもあった。
「僕の兄につながるかはわからないけど、ECN社の端末は確かに重要な情報を持っている。『ルナ・ヘヴンス』の詳細な情報があったことがその証拠だ」
セスはそう確信していた。
あとはユニヴァースによる解析作業が進むのを待つばかりである。
残りの二台の端末と、セスが持っていた記録ディスクの解析が済めば、全ては明らかになるかも知れなかった。
「ところでモリタよぉ。これが一体どうしたというんだよ?」
ロビーがユニヴァースの身分証明書のコピーをひらひらさせながら尋ねた。
「あのねぇ……『ルナ・ヘヴンス』がどうやってここへ来たかも大事だけどさ、セスのお兄さんのことを調べるが目的だよね? セスのご両親は海洋調査隊の関係者らしいし、ユニヴァースさんはそれと関係のある自治組織の人ってことがわかったんだよ?! 重要な情報じゃないか!」
モリタが呆れたと言わんばかりの顔をしながら早口でまくし立てた。
「そうだね。さっきの映像が衝撃的すぎて僕も目的を見失っていたよ。でも、どうしてモリタはユニヴァースさんの身分証明書に気付いたのさ?」
セスが不思議そうな顔をしている。「ルナ・ヘヴンス」の歴史とユニヴァースの身分との間にどのような関係があるのか、皆目見当もつかない。
「セスが回復したら教えようと思っていたんだ。さっきの映像の最後に出ていたロゴを見てそれを思い出したってワケ」
モリタがどうだ、と言わんばかりに胸を張った。
「ロゴ……?」「そんなの表示されていたか?」
モリタの答えにセスとロビーが顔を見合わせた。
「あのね、どこ見ていたんだよ?! 映像の最後にでかでかと表示されていたじゃないか……」
モリタが盛大にずっこけた。
「ま、まあ、モリタは重要なことを発見してくれたよ。ありがとう。ユニヴァースさんが落ち着いたら海洋調査隊や僕の両親のことを聞いてもいいかもしれないね」
セスが慌てた様子でその場を取り繕った。
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