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第六章
238:OP社、動く
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「タブーなきエンジニア集団」と「リスク管理研究所」との対立が表面化してから少し後のことである。
OP社によるフジミ・タウンでの事後処理の目処が立ったとして、いよいよハドリが「タブーなきエンジニア集団」の討伐へ本腰を入れ始めた。
事後処理の完了は三月の上旬になる模様だが、概ね順調である。
この間、ジンとハモネスの一部で「タブーなきエンジニア集団」の蜂起を許し、自社の治安改革センターから全職員を追放された。
また、インデストでは関連会社の従業員が労働者組合を結成し、この組合が「タブーなきエンジニア集団」と結ぶという屈辱に曝された。
ハドリは密かにインデストに部下を送り込み、労働者組合と「タブーなきエンジニア集団」の状況を調査させている。
彼らの行動に怒りを覚えてはいるが、あくまでハドリの対処は冷静そのものであった。
ハドリに入ってくる報告では、OP社の関連会社に日和見のグループが多く、予断を許さない状況のようだ。
インデストではOP社の従業員よりも関連会社の従業員の方が多い。
関連会社の従業員全員が労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」に味方するとは考えにくいが、関連会社の従業員の多さは脅威である。
関連会社の全従業員をかき集めれば、その数は二万五千近くとなり、これはOP社の稼動可能な治安改革関連業務従事者数とほぼ同数である。
そこでハドリは冷静に関連会社内部の切り崩しを図った。
このままの状態で正面からぶつかり合うという愚を犯すことはあり得なかった。
十数社ある関連会社のうち、二社を狙い撃ちして「OP社の業績に大いに貢献した」として代表者を表彰した。その上で、この二社をOP社に吸収した。
これらの二社は労働者組合を支持する者の数が比較的多い。ハドリはこうした敵になりそうな者の数が多い関連会社の中から、OP社への利益貢献度が大きい会社を探し出し、狙い撃ちしたのだ。
組合の内情を密告させている、と労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」に疑念を抱かせるためだった。
ハドリの打った手はそれだけではなかった。
更にインデストに送り込んだ社員から関連会社に向け特定の個人名を出して、労働者組合の関係者だ、本社からのスパイだという情報を流布させた。
これで内部の連携を乱し、関連会社の社員同士を疑心暗鬼に陥れるのがハドリの狙いだ。
インデストは他の主要都市と比較してかなり離れた位置にある。
大部隊を移動させるとなると片道で数週間以上を要するだろう。行って帰ってくるだけでも、かなり長いこと本社を空けることになる。
本社に治安改革部隊の一部を残すことは考えているが、十分な戦力を残すことは難しい。
労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」の勢力を弱めておけば、それだけハドリの対応は楽になる。
敵の戦力が弱ければ、インデストでの遠征を短期間にできるか、送り込む戦力が少なくて済むからだ。
ハドリとしては、「タブーなきエンジニア集団」の代表、ウォーリー・トワの身柄を確実に拘束したいので、今回は大戦力を送り込みたいところだ。
他のことについては冷静さを保っているハドリであったが、ウォーリーの件に限っては異常ともいえるこだわりを見せている。
ハドリはウォーリーを捕らえて自身の手で処断することに固執しているのだ。
母の面影を持ちながら、忌まわしい男の血を引いた存在を許容することはできない。
この世界から、その血を根絶やしにしてこそハドリの気も晴れるのだ。
だが、この男にはそれでも不十分かもしれない。
ウォーリーに関する件に対しては冷静さを欠くハドリであったが、労働者組合と「タブーなきエンジニア集団」の討伐を計画している間も、他の業務を疎かにすることはなかった。
本業である発電事業では将来的な発電能力に問題があるという報告を受けるや否や、三基の発電装置の建設を決定し、直ちに作業に取り掛からせた。
また、ECN社との間で従業員の相互派遣を実施し、ECN社の持つ技術を取り込むことも怠っていない。
更に通貨管理システムの改造も検討した。
電子マネーのチップの保有者と、どこでいくら使われたかの情報が記録できる仕様を追加し、金銭の流れを監視しようとした。
だが、これについてはECN社とOP社とで算定した費用と期間を見て、既存のシステムを改造することを断念せざるを得なかった。
その代わり一年後を目処に新しい通貨管理システムを導入することで、これらの必要な情報を管理できる体制を作り上げるように決めた。
改造ができないならゼロから作ってしまえ、と考えたのだ。
ハドリの動きは以前と比較して更に精力的になっていた。
しかし、楽しむ方も怠っていた訳ではない。
部下を引き連れ、クラブなどで酒を楽しむことを忘れた事はなかった。
また、地下にある秘密の射撃場で、毎日のように射撃を楽しんでいた。
もっとも、これは彼自身の戦闘訓練と言うべきものであるとも考えられる。
このような状況の中、二月一八日になって、ハドリはついに一般向けに声明を出した。
それは「タブーなきエンジニア集団」の幹部を拘束するため、居場所を知る者はそれをOP社に伝えよ、という内容であった。
OP社によるフジミ・タウンでの事後処理の目処が立ったとして、いよいよハドリが「タブーなきエンジニア集団」の討伐へ本腰を入れ始めた。
事後処理の完了は三月の上旬になる模様だが、概ね順調である。
この間、ジンとハモネスの一部で「タブーなきエンジニア集団」の蜂起を許し、自社の治安改革センターから全職員を追放された。
また、インデストでは関連会社の従業員が労働者組合を結成し、この組合が「タブーなきエンジニア集団」と結ぶという屈辱に曝された。
ハドリは密かにインデストに部下を送り込み、労働者組合と「タブーなきエンジニア集団」の状況を調査させている。
彼らの行動に怒りを覚えてはいるが、あくまでハドリの対処は冷静そのものであった。
ハドリに入ってくる報告では、OP社の関連会社に日和見のグループが多く、予断を許さない状況のようだ。
インデストではOP社の従業員よりも関連会社の従業員の方が多い。
関連会社の従業員全員が労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」に味方するとは考えにくいが、関連会社の従業員の多さは脅威である。
関連会社の全従業員をかき集めれば、その数は二万五千近くとなり、これはOP社の稼動可能な治安改革関連業務従事者数とほぼ同数である。
そこでハドリは冷静に関連会社内部の切り崩しを図った。
このままの状態で正面からぶつかり合うという愚を犯すことはあり得なかった。
十数社ある関連会社のうち、二社を狙い撃ちして「OP社の業績に大いに貢献した」として代表者を表彰した。その上で、この二社をOP社に吸収した。
これらの二社は労働者組合を支持する者の数が比較的多い。ハドリはこうした敵になりそうな者の数が多い関連会社の中から、OP社への利益貢献度が大きい会社を探し出し、狙い撃ちしたのだ。
組合の内情を密告させている、と労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」に疑念を抱かせるためだった。
ハドリの打った手はそれだけではなかった。
更にインデストに送り込んだ社員から関連会社に向け特定の個人名を出して、労働者組合の関係者だ、本社からのスパイだという情報を流布させた。
これで内部の連携を乱し、関連会社の社員同士を疑心暗鬼に陥れるのがハドリの狙いだ。
インデストは他の主要都市と比較してかなり離れた位置にある。
大部隊を移動させるとなると片道で数週間以上を要するだろう。行って帰ってくるだけでも、かなり長いこと本社を空けることになる。
本社に治安改革部隊の一部を残すことは考えているが、十分な戦力を残すことは難しい。
労働者組合や「タブーなきエンジニア集団」の勢力を弱めておけば、それだけハドリの対応は楽になる。
敵の戦力が弱ければ、インデストでの遠征を短期間にできるか、送り込む戦力が少なくて済むからだ。
ハドリとしては、「タブーなきエンジニア集団」の代表、ウォーリー・トワの身柄を確実に拘束したいので、今回は大戦力を送り込みたいところだ。
他のことについては冷静さを保っているハドリであったが、ウォーリーの件に限っては異常ともいえるこだわりを見せている。
ハドリはウォーリーを捕らえて自身の手で処断することに固執しているのだ。
母の面影を持ちながら、忌まわしい男の血を引いた存在を許容することはできない。
この世界から、その血を根絶やしにしてこそハドリの気も晴れるのだ。
だが、この男にはそれでも不十分かもしれない。
ウォーリーに関する件に対しては冷静さを欠くハドリであったが、労働者組合と「タブーなきエンジニア集団」の討伐を計画している間も、他の業務を疎かにすることはなかった。
本業である発電事業では将来的な発電能力に問題があるという報告を受けるや否や、三基の発電装置の建設を決定し、直ちに作業に取り掛からせた。
また、ECN社との間で従業員の相互派遣を実施し、ECN社の持つ技術を取り込むことも怠っていない。
更に通貨管理システムの改造も検討した。
電子マネーのチップの保有者と、どこでいくら使われたかの情報が記録できる仕様を追加し、金銭の流れを監視しようとした。
だが、これについてはECN社とOP社とで算定した費用と期間を見て、既存のシステムを改造することを断念せざるを得なかった。
その代わり一年後を目処に新しい通貨管理システムを導入することで、これらの必要な情報を管理できる体制を作り上げるように決めた。
改造ができないならゼロから作ってしまえ、と考えたのだ。
ハドリの動きは以前と比較して更に精力的になっていた。
しかし、楽しむ方も怠っていた訳ではない。
部下を引き連れ、クラブなどで酒を楽しむことを忘れた事はなかった。
また、地下にある秘密の射撃場で、毎日のように射撃を楽しんでいた。
もっとも、これは彼自身の戦闘訓練と言うべきものであるとも考えられる。
このような状況の中、二月一八日になって、ハドリはついに一般向けに声明を出した。
それは「タブーなきエンジニア集団」の幹部を拘束するため、居場所を知る者はそれをOP社に伝えよ、という内容であった。
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