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第五章
226:次なるターゲット
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ハドリがウォーリー・トワの出生の秘密を知ったのと同じ頃、ハドリの腹心であるノブヤ・ヤマガタのもとにある情報がもたらされた。
五日前、ジンで起きた「タブーなきエンジニア集団」による反乱を未だハドリに報告できていない、という。ハドリの命令ですべての連絡を遮断していた、というのがその理由だった。
「何ですと? この話は他に誰が知っているのですか?」
ヤマガタが情報をもたらした従業員に尋ねた。
このような情報をハドリに伝えるのは本来、ヤマガタの役割ではない。
だが、「タブーなきエンジニア集団」の反乱の情報の取り扱いに困った従業員たちはハドリの側近中の側近であるヤマガタにハドリへの連絡を懇願したのだ。
「ジンで事態に対応していた者ならば皆知っていると思いますが……」
知ってはいるが、ハドリの指示もあったのでハドリの怒りを買ってまで報告に行こうとはする者はいなかったのだ。
結局、ハドリの怒りを買いたくない従業員たちは、責任をヤマガタに押し付けた。
「……という状況です。ミヤハラという者が首謀者とのことです。ウォーリー・トワの姿は見えない、とのことでした。社長への報告をお願いします……」
報告を聞いたヤマガタは無言で立ち上がり、緊張した面持ちで社長室へと向かった。
連絡の遮断が解除されているとしたら一大事だからだ。
ヤマガタはいらぬ責任を押し付けられたと思ったが、放置はできないことも理解している。
最初にヤマガタは総務部に行き、連絡の遮断が解除されていることを確認した。
(これは……大至急社長に報告せねばなりません!)
ヤマガタはOP社の従業員の中で社長室に出入りできる数少ない存在だ。
規則正しい足取りでヤマガタが社長室へと進んでいく。
数分後、社長室の前に到着したヤマガタは、ドアの前で軽く深呼吸した。
落ち着くことで社長のハドリに失礼のないようにするためだ。腹心中の腹心である彼はハドリの性質を知り尽くしている。
社長室のドアをノックし中に入るとや否や、ハドリが鋭い口調で言い放った。
「ヤマガタ、『タブーなきエンジニア集団』なる反逆者を討つ! 準備を進めろ!」
ヤマガタは深々と礼をして命令を受諾してから、かしこまった様子でハドリに話しかける。
「……報告が遅れ大変申し訳ございません。今日から五日前の一五日に『タブーなきエンジニア集団』がジン市内にあるわが社の治安改革センター全てを占拠し、職員を追放したとのことです……」
ヤマガタは報告が遅れたことでハドリが激怒することを覚悟していた。
ヤマガタの予想通り落雷を思わせる激しい口調でハドリの叱責が飛んだ。
「あの卑怯者どもが反逆した、だと! 何故すぐに報告しない!
首謀者のトワとかいう奴はジンにいるのか? 答えろ!」
「も、申し訳ございません。社長に情報が伝達されていないことを先程知ったのですが……」
これが事実であるので、ヤマガタにも他に答えようがない。ハドリへの報告を急ぐため、調査を後回しにしたのだ。ハドリへの報告が遅れるよりはよい、とヤマガタは判断した。
もちろん、情報収集を怠っていたと言われればそれまでなので、反論する気もない。
「言い訳は無用だ! 俺の質問に答えろ!」
再びハドリの叱責が飛んだ。
しかし、ヤマガタは自身の判断が正しいことを確信していた。
ハドリは「質問に答えろ」とだけ言った。
今回は「何故すぐに報告しない」とは言っていないから、報告が遅れたことはもう責めていないのだ。
ハドリは短気であるが、何を優先すべきか冷静に判断する。
今は姿を見せないウォーリー・トワの居場所を突き止めることが最優先であると考えており、ヤマガタにもそう伝えているのだった。
「……首謀者はトワではなくミヤハラという者だとのことです。副代表だということですが」
「ミヤハラ、だと……? 代表のトワはどこへ行った?」
首謀者の名前がミヤハラ、と聞いてハドリの声が少し落ち着いたものになった。
ウォーリーと異なり、ミヤハラに対してハドリは特に興味を持っていない。
その気になればいつでも叩き潰せる相手、くらいにしか考えていないのだ。
コースは異なるがミヤハラはハドリと職業学校の同期であった。
そこそこ優秀だという評価はあったようだが、ハドリの相手ではないはずだ。
「それは……調査します……」
ヤマガタが口ごもった。
「大至急トワという奴の居場所を突き止めろ! 奴を討つ!」
ハドリの命令にヤマガタは礼儀正しく礼をした後、その場を去った。
あの卑劣漢の血はあくまで俺の邪魔をするのか!
ならば俺はあの血を根絶やしにするまで!
ハドリがウォーリーを気に入らない理由は他にもある。
ウォーリーは輪郭と目元が母親似であり、祖母にも似ている。
忌まわしい叔父の血が入った男が、よりによってハドリの母親を髣髴させる外見なのである。これは断じて許すことはできない。
このような存在は永遠に地上から消し去らねばならない。
LH五一年一月二〇日、エイチ・ハドリは忌まわしき叔父の血を地上から根絶やしにするため、再び復讐の鬼となった。
フジミ・タウンの賊は討ったが、ハドリの戦いは当分終わることはないようであった。
五日前、ジンで起きた「タブーなきエンジニア集団」による反乱を未だハドリに報告できていない、という。ハドリの命令ですべての連絡を遮断していた、というのがその理由だった。
「何ですと? この話は他に誰が知っているのですか?」
ヤマガタが情報をもたらした従業員に尋ねた。
このような情報をハドリに伝えるのは本来、ヤマガタの役割ではない。
だが、「タブーなきエンジニア集団」の反乱の情報の取り扱いに困った従業員たちはハドリの側近中の側近であるヤマガタにハドリへの連絡を懇願したのだ。
「ジンで事態に対応していた者ならば皆知っていると思いますが……」
知ってはいるが、ハドリの指示もあったのでハドリの怒りを買ってまで報告に行こうとはする者はいなかったのだ。
結局、ハドリの怒りを買いたくない従業員たちは、責任をヤマガタに押し付けた。
「……という状況です。ミヤハラという者が首謀者とのことです。ウォーリー・トワの姿は見えない、とのことでした。社長への報告をお願いします……」
報告を聞いたヤマガタは無言で立ち上がり、緊張した面持ちで社長室へと向かった。
連絡の遮断が解除されているとしたら一大事だからだ。
ヤマガタはいらぬ責任を押し付けられたと思ったが、放置はできないことも理解している。
最初にヤマガタは総務部に行き、連絡の遮断が解除されていることを確認した。
(これは……大至急社長に報告せねばなりません!)
ヤマガタはOP社の従業員の中で社長室に出入りできる数少ない存在だ。
規則正しい足取りでヤマガタが社長室へと進んでいく。
数分後、社長室の前に到着したヤマガタは、ドアの前で軽く深呼吸した。
落ち着くことで社長のハドリに失礼のないようにするためだ。腹心中の腹心である彼はハドリの性質を知り尽くしている。
社長室のドアをノックし中に入るとや否や、ハドリが鋭い口調で言い放った。
「ヤマガタ、『タブーなきエンジニア集団』なる反逆者を討つ! 準備を進めろ!」
ヤマガタは深々と礼をして命令を受諾してから、かしこまった様子でハドリに話しかける。
「……報告が遅れ大変申し訳ございません。今日から五日前の一五日に『タブーなきエンジニア集団』がジン市内にあるわが社の治安改革センター全てを占拠し、職員を追放したとのことです……」
ヤマガタは報告が遅れたことでハドリが激怒することを覚悟していた。
ヤマガタの予想通り落雷を思わせる激しい口調でハドリの叱責が飛んだ。
「あの卑怯者どもが反逆した、だと! 何故すぐに報告しない!
首謀者のトワとかいう奴はジンにいるのか? 答えろ!」
「も、申し訳ございません。社長に情報が伝達されていないことを先程知ったのですが……」
これが事実であるので、ヤマガタにも他に答えようがない。ハドリへの報告を急ぐため、調査を後回しにしたのだ。ハドリへの報告が遅れるよりはよい、とヤマガタは判断した。
もちろん、情報収集を怠っていたと言われればそれまでなので、反論する気もない。
「言い訳は無用だ! 俺の質問に答えろ!」
再びハドリの叱責が飛んだ。
しかし、ヤマガタは自身の判断が正しいことを確信していた。
ハドリは「質問に答えろ」とだけ言った。
今回は「何故すぐに報告しない」とは言っていないから、報告が遅れたことはもう責めていないのだ。
ハドリは短気であるが、何を優先すべきか冷静に判断する。
今は姿を見せないウォーリー・トワの居場所を突き止めることが最優先であると考えており、ヤマガタにもそう伝えているのだった。
「……首謀者はトワではなくミヤハラという者だとのことです。副代表だということですが」
「ミヤハラ、だと……? 代表のトワはどこへ行った?」
首謀者の名前がミヤハラ、と聞いてハドリの声が少し落ち着いたものになった。
ウォーリーと異なり、ミヤハラに対してハドリは特に興味を持っていない。
その気になればいつでも叩き潰せる相手、くらいにしか考えていないのだ。
コースは異なるがミヤハラはハドリと職業学校の同期であった。
そこそこ優秀だという評価はあったようだが、ハドリの相手ではないはずだ。
「それは……調査します……」
ヤマガタが口ごもった。
「大至急トワという奴の居場所を突き止めろ! 奴を討つ!」
ハドリの命令にヤマガタは礼儀正しく礼をした後、その場を去った。
あの卑劣漢の血はあくまで俺の邪魔をするのか!
ならば俺はあの血を根絶やしにするまで!
ハドリがウォーリーを気に入らない理由は他にもある。
ウォーリーは輪郭と目元が母親似であり、祖母にも似ている。
忌まわしい叔父の血が入った男が、よりによってハドリの母親を髣髴させる外見なのである。これは断じて許すことはできない。
このような存在は永遠に地上から消し去らねばならない。
LH五一年一月二〇日、エイチ・ハドリは忌まわしき叔父の血を地上から根絶やしにするため、再び復讐の鬼となった。
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