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第五章
223:「タブーなきエンジニア集団」、新たな協力者を得る
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ミヤハラ率いるチームがジンで六箇所の治安改革センターを占拠するのに成功したという報はウォーリーにもすぐに伝えられた。
連絡を受けたウォーリーは、
「おっ、ミヤハラがやってくれたか。まあ、当然だな」
と結果に満足している様子だった。
ウォーリーは五〇人ほどの仲間を引き連れ既にジンから遠く離れたインデストに潜入していた。
インデストでの彼の活動は既に一月になろうとしている。
現在、ウォーリーは鉄鉱石の採掘場で働く労働者を対象に「タブーなきエンジニア集団」への支持を呼びかけていた。
ウォーリーとエリックはインデストに潜入してからすぐに居酒屋へ通いOP社に関する情報を集めた。
エリックはともかくウォーリーは面が割れているはずなのだが、周囲の反対をよそに「正々堂々としていればかえって気づかれないものさ」と言って変装もせずに足しげく居酒屋へと通ったものだ。
もっとも、サクライあたりがいれば「マネージャーは単に酒好きなだけだ」と一蹴しただろうが。
採掘場はOP社が運営しているものであり、ウォーリーたちの活動がハドリに筒抜けになる可能性が高い。
敢えて採掘場の労働者を対象に選択したのは、彼らの多くがOP社の正規従業員ではなく、関連会社の者であったからだった。
彼らの待遇はOP社本体の従業員と比較してかなり悪い。
居酒屋でもそういった不満は数多く聞かれた。
その中でウォーリーが目をつけたのは、労働者を結束させて団体を作ろうとしていたグループだった。
ウォーリーは無謀にも身分を明かして彼らと接触したのだ。今から一〇日ほど前のことである。
同席していたエリックからすれば、肝が冷えるような行為だったが、ウォーリーは気にしない。
相手方はウォーリーのことを知っていた。下手をすれば治安改革センターなどに密告されて拘束される可能性もあったが、ウォーリーは心配要らないとエリックをたしなめたくらいだ。
(OP社に不満を持っている者同士、話せば理解してもらえる)
と気楽に考えていたからだ。
また、相手方にもウォーリーを治安改革センターに突き出そういう考えはなかった。
居酒屋での会話を知られれば、彼らにも累が及ぶからだった。
OP社は関連会社を含めて、従業員が徒党を組むことを認めていない。
これに反すれば海洋調査隊送りになる可能性があるくらい、ハドリが忌み嫌っている行為である。
ウォーリーはとエリックは、「リスク管理研究所」が作成した資料などを提示し、今の治安改革活動によるOP社の企業活動への影響などを説明した。
「俺たち『タブーなきエンジニア集団』は、あんたらのところの社長が司法警察権を手放して正々堂々事業で競うことができれば言うことは無いのだが」
ウォーリーの思いは相手方にもある程度理解されたようだ。
元来がオープンマインドな人間である。
それは相手方にも容易に理解できるようで、ウォーリーの言葉に疑念を持つ者はいなかった。
ウォーリーが「人たらし」といわれる所以かも知れない。
予想はしていたことであったが、相手方もOP社の治安改革活動には大いに不満を持っていた。
関連会社の従業員の動向も治安改革センターに監視されているそうなのだ。
「……正気か? そこまで従業員を信頼できない奴なのかね、ハドリ氏は?
人は信頼されてはじめて動くものじゃないか。そんな奴は信じられんね、俺は」
ウォーリーには、ハドリのやり方がまったく理解できない。
何て度し難い奴だ、と怒りすら覚える。
また、彼に従う従業員も従業員だ。そんな会社なら辞めて別の職を探すなり、ハドリに反発すべきだろう、と考えてしまう。
目の前にいる関連会社の従業員は違う、とウォーリーは思う。
彼らはハドリに反発するために社の規程を犯してまで徒党を組み、行動を起こそうとしている。
ウォーリーはこうした彼らの行動を好ましく思う。
「タブーなきエンジニア集団」の代表という立場に関係なく、純粋に彼らを応援しようという気になった。
「ハドリの治安改革活動を粉砕する、という願いは同じだ。所属は違うが、まあ、仲間みたいなものだろうな。仲良くやろうや」
ウォーリーは相手方一人一人に握手を求めた。彼らと接触を始めてからわずか三時間後の出来事である。
「マネージャー、まだ相手方の名前も聞いていませんよ」
エリックがウォーリーにそっと耳打ちした。
エリックから見ればウォーリーの行動は危なっかしくて見ていられない。
「おう、そうだったな。で、あんた、名前何ていうんだ?」
エリックの指摘を受けて、ウォーリーはリーダー格の男に声をかけた。
リーダー格の男はウォーリーより少し年下に見えた。よく見ると相手方のメンバーは全員若い。ニ〇代半ばの者が多いように思える。
リーダー格の男はサン・アカシと名乗った。
年はニ六歳とのことであるから、三〇歳のウォーリーより四つ年下ということになる。
若いな、とウォーリーは思った。
ウォーリーがECN社で上級チームマネージャーに昇進したとき、彼は現在のアカシと同じニ六歳であった。
それからわずか一年でECN社を退職し、長期入院を経て現在の「タブーなきエンジニア集団」の代表の地位に就いた。
得られた成果はウォーリーにとって十分なものではなかったが、これからOP社という最大の敵と戦うことになる。これを成功させれば、ウォーリーにとって十分な成果が得られたことになるであろう。
連絡を受けたウォーリーは、
「おっ、ミヤハラがやってくれたか。まあ、当然だな」
と結果に満足している様子だった。
ウォーリーは五〇人ほどの仲間を引き連れ既にジンから遠く離れたインデストに潜入していた。
インデストでの彼の活動は既に一月になろうとしている。
現在、ウォーリーは鉄鉱石の採掘場で働く労働者を対象に「タブーなきエンジニア集団」への支持を呼びかけていた。
ウォーリーとエリックはインデストに潜入してからすぐに居酒屋へ通いOP社に関する情報を集めた。
エリックはともかくウォーリーは面が割れているはずなのだが、周囲の反対をよそに「正々堂々としていればかえって気づかれないものさ」と言って変装もせずに足しげく居酒屋へと通ったものだ。
もっとも、サクライあたりがいれば「マネージャーは単に酒好きなだけだ」と一蹴しただろうが。
採掘場はOP社が運営しているものであり、ウォーリーたちの活動がハドリに筒抜けになる可能性が高い。
敢えて採掘場の労働者を対象に選択したのは、彼らの多くがOP社の正規従業員ではなく、関連会社の者であったからだった。
彼らの待遇はOP社本体の従業員と比較してかなり悪い。
居酒屋でもそういった不満は数多く聞かれた。
その中でウォーリーが目をつけたのは、労働者を結束させて団体を作ろうとしていたグループだった。
ウォーリーは無謀にも身分を明かして彼らと接触したのだ。今から一〇日ほど前のことである。
同席していたエリックからすれば、肝が冷えるような行為だったが、ウォーリーは気にしない。
相手方はウォーリーのことを知っていた。下手をすれば治安改革センターなどに密告されて拘束される可能性もあったが、ウォーリーは心配要らないとエリックをたしなめたくらいだ。
(OP社に不満を持っている者同士、話せば理解してもらえる)
と気楽に考えていたからだ。
また、相手方にもウォーリーを治安改革センターに突き出そういう考えはなかった。
居酒屋での会話を知られれば、彼らにも累が及ぶからだった。
OP社は関連会社を含めて、従業員が徒党を組むことを認めていない。
これに反すれば海洋調査隊送りになる可能性があるくらい、ハドリが忌み嫌っている行為である。
ウォーリーはとエリックは、「リスク管理研究所」が作成した資料などを提示し、今の治安改革活動によるOP社の企業活動への影響などを説明した。
「俺たち『タブーなきエンジニア集団』は、あんたらのところの社長が司法警察権を手放して正々堂々事業で競うことができれば言うことは無いのだが」
ウォーリーの思いは相手方にもある程度理解されたようだ。
元来がオープンマインドな人間である。
それは相手方にも容易に理解できるようで、ウォーリーの言葉に疑念を持つ者はいなかった。
ウォーリーが「人たらし」といわれる所以かも知れない。
予想はしていたことであったが、相手方もOP社の治安改革活動には大いに不満を持っていた。
関連会社の従業員の動向も治安改革センターに監視されているそうなのだ。
「……正気か? そこまで従業員を信頼できない奴なのかね、ハドリ氏は?
人は信頼されてはじめて動くものじゃないか。そんな奴は信じられんね、俺は」
ウォーリーには、ハドリのやり方がまったく理解できない。
何て度し難い奴だ、と怒りすら覚える。
また、彼に従う従業員も従業員だ。そんな会社なら辞めて別の職を探すなり、ハドリに反発すべきだろう、と考えてしまう。
目の前にいる関連会社の従業員は違う、とウォーリーは思う。
彼らはハドリに反発するために社の規程を犯してまで徒党を組み、行動を起こそうとしている。
ウォーリーはこうした彼らの行動を好ましく思う。
「タブーなきエンジニア集団」の代表という立場に関係なく、純粋に彼らを応援しようという気になった。
「ハドリの治安改革活動を粉砕する、という願いは同じだ。所属は違うが、まあ、仲間みたいなものだろうな。仲良くやろうや」
ウォーリーは相手方一人一人に握手を求めた。彼らと接触を始めてからわずか三時間後の出来事である。
「マネージャー、まだ相手方の名前も聞いていませんよ」
エリックがウォーリーにそっと耳打ちした。
エリックから見ればウォーリーの行動は危なっかしくて見ていられない。
「おう、そうだったな。で、あんた、名前何ていうんだ?」
エリックの指摘を受けて、ウォーリーはリーダー格の男に声をかけた。
リーダー格の男はウォーリーより少し年下に見えた。よく見ると相手方のメンバーは全員若い。ニ〇代半ばの者が多いように思える。
リーダー格の男はサン・アカシと名乗った。
年はニ六歳とのことであるから、三〇歳のウォーリーより四つ年下ということになる。
若いな、とウォーリーは思った。
ウォーリーがECN社で上級チームマネージャーに昇進したとき、彼は現在のアカシと同じニ六歳であった。
それからわずか一年でECN社を退職し、長期入院を経て現在の「タブーなきエンジニア集団」の代表の地位に就いた。
得られた成果はウォーリーにとって十分なものではなかったが、これからOP社という最大の敵と戦うことになる。これを成功させれば、ウォーリーにとって十分な成果が得られたことになるであろう。
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