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第五章
222:あっけない終幕
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「……TM、あれはいったいどういうことですか?」
最後に占拠に成功したセンターの前で、いつの間にか姿を現したサクライが背後からミヤハラに声をかけた。
「……いつの間にここへ来た? お前、確かしばらく動かないと言っていたじゃないか?」
ミヤハラが面倒くさそうに振り返って訝し気な顔を見せた。何故、サクライがこの場にいるのか?
「いつまで経っても終了報告が来なかったので、こっちに来た、というわけですよ」
サクライの答えにミヤハラは驚いた様子も見せずにそうか、とうなずいた。
次にサクライはレイカとコナカの方に向かって声をかけた。
「あんたら、ここで何をしているんだ?」
「私でしょうか? 私は……」
レイカは知っているECN社の社員が争っているのを見て止めに入ったと事情を説明したが、サクライは大して驚いた様子を見せなかった。
更にレイカに続いてコナカがECN社の社員でこの場に派遣されたと説明した。
「……何だ。ECN社の関係者か」
「そうです。この治安改革センターにいた三人ともがECN社から派遣された臨時の職員です」
サクライの言葉にコナカが答えた。
「……ECN社の社員がこんな仕事をしているのか? 一体幹部は何を考えているのだ? あんたらには悪いが何かあっても対処できるように思えないのだが……」
サクライが呆れた様子でコナカに尋ねた。
「そうですね……武器なども持っていませんので、何かあったとしても私たちは役に立たないと思います……」
そう答えてコナカが口ごもった。
「ああ、別にあんたらの責任じゃない。OP社の連中が何を考えているのかわからん、というだけの話だ」
コナカの様子を見たサクライがその場を取り繕った。コナカが責任を感じることでないと考えたのだ。
「そうだな。そちらがどうするつもりだったのか、支障がなければ聞かせて欲しい」
ミヤハラがコナカに尋ねた。今後の作戦の参考にするためだ。
コナカの話によれば、この治安改革センターでは交戦の意思は無く、「タブーなきエンジニア集団」が来襲した時点で撤収することを決めていたらしい。
ところが、近くに住むOP社を支持する住民が大挙して押し寄せてきて、逃げるに逃げられなくなったというのが実態だそうだ。
一方で、「タブーなきエンジニア集団」も交戦の意思の無い相手を攻撃するつもりはなかった。
しかし、途中で集まってきた彼らを支持する市民たちのボルテージが上がってしまい、一触即発の状態となった。
その結果、OP社治安改革センターの職員と「タブーなきエンジニア集団」のメンバーが暴発を止めるべくこれらの群集の間に割って入る形になってしまったという。ミヤハラへの救援依頼もこれが原因で発されたものだったようだ。
「……まったく、面倒な話だったのですね」
サクライがミヤハラに向けて大げさに手を広げてみせた。その表情はどこかミヤハラが困るであろうことを楽しんでいるように見える。
ミヤハラはそれには答えずに、コナカにこれからどうするのかを尋ねた。
「……上司が判断しますが、社に戻ることになると思います」
コナカが言葉を選ぶかのように考えながら答えた。
「だったら、社長のイナに言っておけ。いい加減、目を覚ませってな」
ミヤハラがコナカに伝言を命じたところにレイカが割り込んでくる。
「ECN社のイナ社長なら私も知り合いです。コナカさんに連れて行ってもらって、私も社長に一言文句を言ってきますね」
レイカの言葉にミヤハラとサクライは、是非そうしてくれと頼んだ。
その直後、ミヤハラの義父がやってきた。彼はレイカが持っているバッグの中に薬の袋を見つけた。
「レイカ・メルツさんでしたか。ご協力ありがとうございました。ところで、あなた。病院へ行っていらしたのですか?」
レイカはそうです、と答えた。事実、メディットで左腕の検査を受けた帰りだったのである。
「それは大変なところをありがとうございました」
義父が頭を下げると、レイカはどういたしまして、と答えてその場を去った。OP社の治安改革センターの職員三人もそれに同行している。
「ノリオ君、今日のところはすべてうまく行った。さすが私の見込んだ男だよ。マスコミへの報告は私のほうでしておくから、君たちは休んでいなさい」
義父はそう言うと通信を入れに走り去っていった。
ミヤハラはサクライにウォーリーへの伝言を頼むと、近くの椅子に腰をかけた。
「タブーなきエンジニア集団」の初陣は、こうして完勝に近い形で飾ることができた。ミヤハラとしてもまずまず満足できる結果である。
ただし、この状況にハドリが黙っているとは考えられない。必ず何らかの形で反撃があるだろう。
「……まあ、何とかするしかないな」
ミヤハラはそうつぶやいて目を閉じた。これから祝宴があるだろうが、それまでには少し時間がある。その間休んでおこうとしたのだ。
「タブーなきエンジニア集団」としての戦いはこれからだ。
たった一回の勝利で浮かれるわけにはいかないし、これからの戦いに備えて力を蓄えておく必要もある。
最後に占拠に成功したセンターの前で、いつの間にか姿を現したサクライが背後からミヤハラに声をかけた。
「……いつの間にここへ来た? お前、確かしばらく動かないと言っていたじゃないか?」
ミヤハラが面倒くさそうに振り返って訝し気な顔を見せた。何故、サクライがこの場にいるのか?
「いつまで経っても終了報告が来なかったので、こっちに来た、というわけですよ」
サクライの答えにミヤハラは驚いた様子も見せずにそうか、とうなずいた。
次にサクライはレイカとコナカの方に向かって声をかけた。
「あんたら、ここで何をしているんだ?」
「私でしょうか? 私は……」
レイカは知っているECN社の社員が争っているのを見て止めに入ったと事情を説明したが、サクライは大して驚いた様子を見せなかった。
更にレイカに続いてコナカがECN社の社員でこの場に派遣されたと説明した。
「……何だ。ECN社の関係者か」
「そうです。この治安改革センターにいた三人ともがECN社から派遣された臨時の職員です」
サクライの言葉にコナカが答えた。
「……ECN社の社員がこんな仕事をしているのか? 一体幹部は何を考えているのだ? あんたらには悪いが何かあっても対処できるように思えないのだが……」
サクライが呆れた様子でコナカに尋ねた。
「そうですね……武器なども持っていませんので、何かあったとしても私たちは役に立たないと思います……」
そう答えてコナカが口ごもった。
「ああ、別にあんたらの責任じゃない。OP社の連中が何を考えているのかわからん、というだけの話だ」
コナカの様子を見たサクライがその場を取り繕った。コナカが責任を感じることでないと考えたのだ。
「そうだな。そちらがどうするつもりだったのか、支障がなければ聞かせて欲しい」
ミヤハラがコナカに尋ねた。今後の作戦の参考にするためだ。
コナカの話によれば、この治安改革センターでは交戦の意思は無く、「タブーなきエンジニア集団」が来襲した時点で撤収することを決めていたらしい。
ところが、近くに住むOP社を支持する住民が大挙して押し寄せてきて、逃げるに逃げられなくなったというのが実態だそうだ。
一方で、「タブーなきエンジニア集団」も交戦の意思の無い相手を攻撃するつもりはなかった。
しかし、途中で集まってきた彼らを支持する市民たちのボルテージが上がってしまい、一触即発の状態となった。
その結果、OP社治安改革センターの職員と「タブーなきエンジニア集団」のメンバーが暴発を止めるべくこれらの群集の間に割って入る形になってしまったという。ミヤハラへの救援依頼もこれが原因で発されたものだったようだ。
「……まったく、面倒な話だったのですね」
サクライがミヤハラに向けて大げさに手を広げてみせた。その表情はどこかミヤハラが困るであろうことを楽しんでいるように見える。
ミヤハラはそれには答えずに、コナカにこれからどうするのかを尋ねた。
「……上司が判断しますが、社に戻ることになると思います」
コナカが言葉を選ぶかのように考えながら答えた。
「だったら、社長のイナに言っておけ。いい加減、目を覚ませってな」
ミヤハラがコナカに伝言を命じたところにレイカが割り込んでくる。
「ECN社のイナ社長なら私も知り合いです。コナカさんに連れて行ってもらって、私も社長に一言文句を言ってきますね」
レイカの言葉にミヤハラとサクライは、是非そうしてくれと頼んだ。
その直後、ミヤハラの義父がやってきた。彼はレイカが持っているバッグの中に薬の袋を見つけた。
「レイカ・メルツさんでしたか。ご協力ありがとうございました。ところで、あなた。病院へ行っていらしたのですか?」
レイカはそうです、と答えた。事実、メディットで左腕の検査を受けた帰りだったのである。
「それは大変なところをありがとうございました」
義父が頭を下げると、レイカはどういたしまして、と答えてその場を去った。OP社の治安改革センターの職員三人もそれに同行している。
「ノリオ君、今日のところはすべてうまく行った。さすが私の見込んだ男だよ。マスコミへの報告は私のほうでしておくから、君たちは休んでいなさい」
義父はそう言うと通信を入れに走り去っていった。
ミヤハラはサクライにウォーリーへの伝言を頼むと、近くの椅子に腰をかけた。
「タブーなきエンジニア集団」の初陣は、こうして完勝に近い形で飾ることができた。ミヤハラとしてもまずまず満足できる結果である。
ただし、この状況にハドリが黙っているとは考えられない。必ず何らかの形で反撃があるだろう。
「……まあ、何とかするしかないな」
ミヤハラはそうつぶやいて目を閉じた。これから祝宴があるだろうが、それまでには少し時間がある。その間休んでおこうとしたのだ。
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