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第五章
215:ミヤハラの野心
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「では、行くとするか」
「タブーなきエンジニア集団」の副代表ノリオ・ミヤハラがのっそりと腰を上げた。彼の姿は医療都市ジンの住宅地内のとある民家にあった。
「行きますか」
ミヤハラの近くに座っていたアツシ・サクライがそれに続いて重い腰を上げた。
LH五一年一月一五日、「タブーなきエンジニア集団」は最初の実力行使に出ることとなった。事業活動以外では初めてOP社に敵対する活動である。
過去にもOP社の活動に反対するビラを配布することはあったが、あくまでも「タブーなきエンジニア集団」の営業活動の一環であった。
そのため、事業に直接関係ないOP社への敵対活動は今回が初めてになる。
実力行使、すなわち戦いは「タブーなきエンジニア集団」の専門ではないし、事実上過去にそのような経験はない。
その割にこの二人から緊張を見てとることはできなかった。
既に当初の出発予定時刻から一〇分ほど遅れているのだが、二人ともそれすら気にしていない様子である。
二人はいつも通りのペースでゆっくりと廊下を歩いていく。
あくまでもマイペースなのだ。
二人は予定より一五分遅れて、集合場所となるメンバー宅へと向かうために民家を出た。
今回の作戦に参加するのは戦闘メンバーが一八〇、それ以外の支持者が四〇〇ほどである。
これらのメンバーがジン市内に六箇所あるOP社の治安改革センターを襲撃するというのが今回の作戦である。
襲撃するとはいえ可能な限り武力の使用は避けるように、というウォーリーの指示があった。
彼らの目的はOP社の治安改革活動に「ノー」を突きつけ、その監視下から脱することである。
それにはOP社治安改革センターを追放すれば十分であって、中の職員を傷つける必要はない。
二人が訪れたメンバー宅には三〇人ばかりが集まっている。
このようにジン市内の「タブーなきエンジニア集団」のメンバーや支持者宅に今回の作戦の参加者が三〇チームに分散して集合している。
ちなみに二人が訪れたメンバー宅には二チーム分の参加者が集まっている。
五チームがひとつのユニットとなって、それぞれのユニットが治安改革センターへと向かう。
治安改革センターの職員がおとなしく出て行けばそれでよし。出て行かないのなら実力行使、というのが基本方針である。
治安改革センターの職員には銃で武装している者もいるから、下手をすれば銃で攻撃される可能性はある。この場合、犠牲者が出ることは十分に考えられる。
「タブーなきエンジニア集団」の戦闘メンバーも一応武装はしている。
しかし、武装レベルはOP社治安改革センターに比べれば貧弱である。少なくとも銃火器類は持っていない。
また、「タブーなきエンジニア集団」側はあくまでも「相手が攻撃してきたとき」または「攻撃してくることが確実なとき」でなければ攻撃をしないというルールになっていたから、先に手を出すことはできない。
相手の攻撃を受ければ、犠牲が出る可能性が十分に考えられるのである。
できるだけ犠牲は出したくないが、それにこだわっては目的を達成できない。
ミヤハラはそう考え、敢えて力で押すことにした。
彼は聖人君子の類ではなかったから、OP社の関係者が銃を使う兆候を見せたらルールに反してでも攻撃を命じるつもりであった。
あくまで彼の優先順位は第一位が「仲間に死者を出さないこと」、第二位が「治安改革センターから職員を追い出してこれを占拠すること」、そして第三位が「仲間の犠牲を最小限にすること」であったからだ。銃を使われれば仲間に死者が出かねない。
ミヤハラは過去の経験からこのように対応してもウォーリーの怒りを買うことはない、と考えている。
また、OP社置換改革センターの体勢からも、この優先順位で良いだろうと思われた。
OP社治安改革センターの職員は、通常三人一組でセンターに詰めている。
三対一〇〇であるならば、犠牲さえ厭わなければ簡単に勝利することができるのだ。
銃を保持しているとはいえ、一〇〇人を攻撃できるだけの弾丸を有しているわけではない。数に推されて無力化されるのがおちだろうとミヤハラは見ている。
今回は「タブーなきエンジニア集団」にとっては、事実上の初戦となる。
そのため確実に勝つことが求められる。「タブーなきエンジニア集団」が今後、支持者を増やしていけるかが懸かっているのだ。
ミヤハラもそのことは重々承知している。
そして、彼には今回の作戦について、心中ひそかに期するところがあった。
普段、何事にも動じないように見える彼にも競争心はあるのだ。
彼がその実力を知らしめたい相手は二人だ。
一人は彼の現在の上司であり、「タブーなきエンジニア集団」の代表を務めるウォーリー・トワである。
そしてもう一人は彼のかつての上司であり、親友に近い友人であるECN社社長のオイゲン・イナである。
その風貌からは想像しにくいが、彼にも野心というものはある。
その野心がゆえに彼はECN社においてウォーリーが登場するまでは創業家のイナ一族を除いて、史上最速に近いスピードで出世していたのだ。
「タブーなきエンジニア集団」の副代表ノリオ・ミヤハラがのっそりと腰を上げた。彼の姿は医療都市ジンの住宅地内のとある民家にあった。
「行きますか」
ミヤハラの近くに座っていたアツシ・サクライがそれに続いて重い腰を上げた。
LH五一年一月一五日、「タブーなきエンジニア集団」は最初の実力行使に出ることとなった。事業活動以外では初めてOP社に敵対する活動である。
過去にもOP社の活動に反対するビラを配布することはあったが、あくまでも「タブーなきエンジニア集団」の営業活動の一環であった。
そのため、事業に直接関係ないOP社への敵対活動は今回が初めてになる。
実力行使、すなわち戦いは「タブーなきエンジニア集団」の専門ではないし、事実上過去にそのような経験はない。
その割にこの二人から緊張を見てとることはできなかった。
既に当初の出発予定時刻から一〇分ほど遅れているのだが、二人ともそれすら気にしていない様子である。
二人はいつも通りのペースでゆっくりと廊下を歩いていく。
あくまでもマイペースなのだ。
二人は予定より一五分遅れて、集合場所となるメンバー宅へと向かうために民家を出た。
今回の作戦に参加するのは戦闘メンバーが一八〇、それ以外の支持者が四〇〇ほどである。
これらのメンバーがジン市内に六箇所あるOP社の治安改革センターを襲撃するというのが今回の作戦である。
襲撃するとはいえ可能な限り武力の使用は避けるように、というウォーリーの指示があった。
彼らの目的はOP社の治安改革活動に「ノー」を突きつけ、その監視下から脱することである。
それにはOP社治安改革センターを追放すれば十分であって、中の職員を傷つける必要はない。
二人が訪れたメンバー宅には三〇人ばかりが集まっている。
このようにジン市内の「タブーなきエンジニア集団」のメンバーや支持者宅に今回の作戦の参加者が三〇チームに分散して集合している。
ちなみに二人が訪れたメンバー宅には二チーム分の参加者が集まっている。
五チームがひとつのユニットとなって、それぞれのユニットが治安改革センターへと向かう。
治安改革センターの職員がおとなしく出て行けばそれでよし。出て行かないのなら実力行使、というのが基本方針である。
治安改革センターの職員には銃で武装している者もいるから、下手をすれば銃で攻撃される可能性はある。この場合、犠牲者が出ることは十分に考えられる。
「タブーなきエンジニア集団」の戦闘メンバーも一応武装はしている。
しかし、武装レベルはOP社治安改革センターに比べれば貧弱である。少なくとも銃火器類は持っていない。
また、「タブーなきエンジニア集団」側はあくまでも「相手が攻撃してきたとき」または「攻撃してくることが確実なとき」でなければ攻撃をしないというルールになっていたから、先に手を出すことはできない。
相手の攻撃を受ければ、犠牲が出る可能性が十分に考えられるのである。
できるだけ犠牲は出したくないが、それにこだわっては目的を達成できない。
ミヤハラはそう考え、敢えて力で押すことにした。
彼は聖人君子の類ではなかったから、OP社の関係者が銃を使う兆候を見せたらルールに反してでも攻撃を命じるつもりであった。
あくまで彼の優先順位は第一位が「仲間に死者を出さないこと」、第二位が「治安改革センターから職員を追い出してこれを占拠すること」、そして第三位が「仲間の犠牲を最小限にすること」であったからだ。銃を使われれば仲間に死者が出かねない。
ミヤハラは過去の経験からこのように対応してもウォーリーの怒りを買うことはない、と考えている。
また、OP社置換改革センターの体勢からも、この優先順位で良いだろうと思われた。
OP社治安改革センターの職員は、通常三人一組でセンターに詰めている。
三対一〇〇であるならば、犠牲さえ厭わなければ簡単に勝利することができるのだ。
銃を保持しているとはいえ、一〇〇人を攻撃できるだけの弾丸を有しているわけではない。数に推されて無力化されるのがおちだろうとミヤハラは見ている。
今回は「タブーなきエンジニア集団」にとっては、事実上の初戦となる。
そのため確実に勝つことが求められる。「タブーなきエンジニア集団」が今後、支持者を増やしていけるかが懸かっているのだ。
ミヤハラもそのことは重々承知している。
そして、彼には今回の作戦について、心中ひそかに期するところがあった。
普段、何事にも動じないように見える彼にも競争心はあるのだ。
彼がその実力を知らしめたい相手は二人だ。
一人は彼の現在の上司であり、「タブーなきエンジニア集団」の代表を務めるウォーリー・トワである。
そしてもう一人は彼のかつての上司であり、親友に近い友人であるECN社社長のオイゲン・イナである。
その風貌からは想像しにくいが、彼にも野心というものはある。
その野心がゆえに彼はECN社においてウォーリーが登場するまでは創業家のイナ一族を除いて、史上最速に近いスピードで出世していたのだ。
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