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第五章
198:ウォーリー、インデストへ向けて旅立つ
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「……まさか、マネージャーがあのときのイナと同じことをするとは思わなかったな」
昔のウォーリーとオイゲンのやり取りを思い出してミヤハラが苦笑した。
「TM、それは単に忘れているだけ、って可能性もあると思います。普段なら貢献度や重要度に応じて予算に差をつけるのがマネージャーのやり方ですからね」
サクライはウォーリーの先ほどの発言を単なる思いつきか気まぐれの類と考えていた。そうでなければ過去の言動と一致しないからだ。
「……確かに。ありえる話だ」
ミヤハラとサクライの二人は顔を見合わせた後、のっそりと立ち上がり決起の準備を始めた。
予定では既に準備作業が終盤に入っていなければならない時間だ。それでもあわてず騒がずなのがこの二人らしい。
ジンにおける今回の活動は「タブーなきエンジニア集団」としてのOP社と最初の衝突になるはずだった。
過去に風力エネルギー研究所でサクライはOP社とやり合っている。
しかし、あれは一方的に罪をでっち上げられたのであって、サクライにとって衝突といえるようなものではなかった。同じ場所にいたウォーリーも恐らく同じ意見だろう。
サクライはあの時の意趣返しと言わんばかりに徹底的にやり返してやろうと考えている。
今回の活動の場所はOP社の本拠地に近い。そのため相当の危険を伴うはずだが、少なくともこの二人から緊張の色を感じ取ることは困難であった。
周りのメンバーから見ればこうした二人の様子は、緊張感の欠如よりもむしろ頼もしさを強く感じさせるものであった。
二人ともあまり感情が表に出るタイプではないのだが、実際今回の活動については二人ともそれほど難易度の高いものとは考えていない。
今の状況ではハドリ自身がすぐに出てくる可能性は低そうであるし、OP社が全力でこちらの邪魔をしてくることはないと確信していたからだ。
もちろん、たかをくくっていた面があることは否めない。
一方、ウォーリーはエリックを引き連れてインデストへと向かう。インデストは「他の都市」の最有力の候補であるのだ。
インデストはOP社の勢力が強い都市ではあるが、人口ではサブマリン島第二である。人口規模でいえばECN社の本拠地、ハモネスよりも大きい都市なのである。
多くの人々に活動を知ってもらうために、インデストでの活動は外せない。
ウォーリーはそう考えた。
インデストはOP社の影響力が強いが、本社のあるポータル・シティからは遠く離れている。また、鉄鉱石の採掘に関係する事業者にはOP社の子会社や関連会社が多く、これらの企業とOP社との関係は必ずしも良くないという情報もある。
こうした事情からOP社本社からのコントロールが及びにくいと考えられる。
OP社の影響力の強いところでOP社の問題が発覚すれば、動揺する者が多く出るだろう。特に子会社や関連会社とOP社との関係が良くないのであれば、これらの従業員の中からOP社の治安改革活動に対して反対する者も出てくると思われる。
これらを勘案すればリスクを冒してでも、トップであるウォーリー自身がインデストに飛び込んで活動する価値は十分にあるだろう。少なくともウォーリー自身はそう確信していた。
「ハドリの会社の影響が強いところだが、まあ、腹を割って話せば、話は通じるだろう」
こう言ってジンをミヤハラとサクライに任せたのである。
当初、サクライは反対した。
「冗談じゃないですよ! わざわざ捕まりに行くようなものじゃないですか! 今のところインデストには支持者などいないのですよ!」
しかしウォーリーは支持者がいないのだから行く、と強硬に反論した。
ウォーリーの態度があまりにかたくなだったため、サクライは意見を引っ込めた。
サクライの仕事はあくまでも財務戦略である。それ以外は彼の業務範囲外なのだ。
現在の状況では範囲外の仕事にも手を出さざるを得ないが、それならばやりやすいものの方が良い。
ジンは「タブーなきエンジニア集団」の支持者が多く、OP社治安改革センターの職員を追い出すのも、それほど困難はないだろう。
そう考えて、サクライはジンへの残留を決めた。ウォーリーのインデスト行きへの反対意見を引っ込めたのはこうした理由による。
こうしてウォーリーとエリックがインデストに向かうことになった。
エリックが同行したのはさすがに幹部クラスがウォーリー一人では都合が悪いだろうとされたからだ。活動を行うジンにも幹部が必要であったから、こちらにはミヤハラとサクライが残ることになった。
また、インデストに向かうのが二人だけではOP社と衝突した際に危険がある。
そこで戦闘チームの一部も二人に同行させることになった。
三〇〇名近くになっていた戦闘チームについては、八割をジンに残すことにした。
残りの二割ついてはウォーリーに同行することになるが、まとまって移動したのではOP社に怪しまれる。
そのため彼らをバラバラにジンから出発させ、ウォーリーとはニジョウで合流することにした。
彼らより一足先に、ウォーリーはエリックを伴ってインデストへ向けて旅立っていた。
昔のウォーリーとオイゲンのやり取りを思い出してミヤハラが苦笑した。
「TM、それは単に忘れているだけ、って可能性もあると思います。普段なら貢献度や重要度に応じて予算に差をつけるのがマネージャーのやり方ですからね」
サクライはウォーリーの先ほどの発言を単なる思いつきか気まぐれの類と考えていた。そうでなければ過去の言動と一致しないからだ。
「……確かに。ありえる話だ」
ミヤハラとサクライの二人は顔を見合わせた後、のっそりと立ち上がり決起の準備を始めた。
予定では既に準備作業が終盤に入っていなければならない時間だ。それでもあわてず騒がずなのがこの二人らしい。
ジンにおける今回の活動は「タブーなきエンジニア集団」としてのOP社と最初の衝突になるはずだった。
過去に風力エネルギー研究所でサクライはOP社とやり合っている。
しかし、あれは一方的に罪をでっち上げられたのであって、サクライにとって衝突といえるようなものではなかった。同じ場所にいたウォーリーも恐らく同じ意見だろう。
サクライはあの時の意趣返しと言わんばかりに徹底的にやり返してやろうと考えている。
今回の活動の場所はOP社の本拠地に近い。そのため相当の危険を伴うはずだが、少なくともこの二人から緊張の色を感じ取ることは困難であった。
周りのメンバーから見ればこうした二人の様子は、緊張感の欠如よりもむしろ頼もしさを強く感じさせるものであった。
二人ともあまり感情が表に出るタイプではないのだが、実際今回の活動については二人ともそれほど難易度の高いものとは考えていない。
今の状況ではハドリ自身がすぐに出てくる可能性は低そうであるし、OP社が全力でこちらの邪魔をしてくることはないと確信していたからだ。
もちろん、たかをくくっていた面があることは否めない。
一方、ウォーリーはエリックを引き連れてインデストへと向かう。インデストは「他の都市」の最有力の候補であるのだ。
インデストはOP社の勢力が強い都市ではあるが、人口ではサブマリン島第二である。人口規模でいえばECN社の本拠地、ハモネスよりも大きい都市なのである。
多くの人々に活動を知ってもらうために、インデストでの活動は外せない。
ウォーリーはそう考えた。
インデストはOP社の影響力が強いが、本社のあるポータル・シティからは遠く離れている。また、鉄鉱石の採掘に関係する事業者にはOP社の子会社や関連会社が多く、これらの企業とOP社との関係は必ずしも良くないという情報もある。
こうした事情からOP社本社からのコントロールが及びにくいと考えられる。
OP社の影響力の強いところでOP社の問題が発覚すれば、動揺する者が多く出るだろう。特に子会社や関連会社とOP社との関係が良くないのであれば、これらの従業員の中からOP社の治安改革活動に対して反対する者も出てくると思われる。
これらを勘案すればリスクを冒してでも、トップであるウォーリー自身がインデストに飛び込んで活動する価値は十分にあるだろう。少なくともウォーリー自身はそう確信していた。
「ハドリの会社の影響が強いところだが、まあ、腹を割って話せば、話は通じるだろう」
こう言ってジンをミヤハラとサクライに任せたのである。
当初、サクライは反対した。
「冗談じゃないですよ! わざわざ捕まりに行くようなものじゃないですか! 今のところインデストには支持者などいないのですよ!」
しかしウォーリーは支持者がいないのだから行く、と強硬に反論した。
ウォーリーの態度があまりにかたくなだったため、サクライは意見を引っ込めた。
サクライの仕事はあくまでも財務戦略である。それ以外は彼の業務範囲外なのだ。
現在の状況では範囲外の仕事にも手を出さざるを得ないが、それならばやりやすいものの方が良い。
ジンは「タブーなきエンジニア集団」の支持者が多く、OP社治安改革センターの職員を追い出すのも、それほど困難はないだろう。
そう考えて、サクライはジンへの残留を決めた。ウォーリーのインデスト行きへの反対意見を引っ込めたのはこうした理由による。
こうしてウォーリーとエリックがインデストに向かうことになった。
エリックが同行したのはさすがに幹部クラスがウォーリー一人では都合が悪いだろうとされたからだ。活動を行うジンにも幹部が必要であったから、こちらにはミヤハラとサクライが残ることになった。
また、インデストに向かうのが二人だけではOP社と衝突した際に危険がある。
そこで戦闘チームの一部も二人に同行させることになった。
三〇〇名近くになっていた戦闘チームについては、八割をジンに残すことにした。
残りの二割ついてはウォーリーに同行することになるが、まとまって移動したのではOP社に怪しまれる。
そのため彼らをバラバラにジンから出発させ、ウォーリーとはニジョウで合流することにした。
彼らより一足先に、ウォーリーはエリックを伴ってインデストへ向けて旅立っていた。
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