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第五章
197:ウォーリー、オイゲンのやり方を真似る
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LH五〇年一一月のある日、セスたちがフェイ・イヴ・ユニヴァースを訪ねて「はじまりの丘」へ出発する数日前のことである。
「タブーなきエンジニア集団」のリーダー、ウォーリー・トワの姿は医療都市ジンの某所にあった。
潜伏先のフルヤを出て半年、彼は精力的にポータル・シティ、ハモネス、チクハ・タウンなどを回った。
ウォーリーは活動に賛同する人々のもとを回って、OP社の治安改革活動の問題点を直接訴え続けたのだ。
フルヤを出てジンに潜伏するまでは一苦労であったが、住民の協力を得て養殖魚を運び込むリヤカーに紛れ込み、検問を切り抜けた。
それ以降はメンバーや協力者の家を転々としながら、OP社の取り締りの目をすり抜けてきた。
OP社側の網の目も徐々に粗くなってきていた。
ウォーリーは断片的にしか事情を把握していなかったが、ハドリがフジミ・タウンへの侵攻を優先したのが主な要因だった。
その分「タブーなきエンジニア集団」へのウエイトを軽くしたという事情がウォーリーに味方していた。
ウォーリーは自らの活動への賛同者を増やすだけではだめだ、と考えていた。
あくまでもOP社の活動に「ノ-」を突きつけ、その活動を止めさせる必要がある。
そのための最初の活動は街の至る所に設置されたOP社治安改革センターへ赴き、勤務している職員を追い出すといったものだった。
OP社の活動を拒否し、そのコントロールから脱するという事実を作る必要がある、とウォーリーは考えたのだ。
その第一歩を踏み出す地としてジンが選ばれた。
ジンはミヤハラの義父がそうであるように、OP社の治安改革活動に反対する者が多い。
以前、ウォーリーが倒れた際に対応したメディットの医師、ヴィリー・アイネスもウォーリーの活動に賛同の意を示し、協力を約束してくれた。
一方、ウォーリーはジンにはとどまらず、他の都市で「タブーなきエンジニア集団」の活動を行うことを決めた。活動がポータル・シティとその近隣だけでとどまってはサブマリン島全体を動かすのは難しいと判断したからだ。ジンでの活動ならミヤハラとサクライがいればうまくやってくれるだろう。
他の都市での活動を決意して一週間もしないうちに、ウォーリーはエリックを伴ってジンを発つことを決めた。
「じゃあ、ミヤハラ、サクライ、こっちは任せたぞ。俺とエリックはインデストへ行ってくる」
「まあ、適当にやっておきますよ」
ウォーリーの呼びかけにミヤハラがやる気をあまり感じさせない様子で答えた。
彼の場合実際にやる気がないのではなく、表にあまり感情が出ないためだ。
ウォーリーの思いつきに近い行動にも慣れ切っているので、驚いた様子もない。
「それはいいですが、活動資金はどう割り振るんですか?」
サクライの問いにウォーリーがあきれた顔を見せる。
「まだ割り振ってなかったのかよ! 人数で均等に分けておいてくれ!」
ウォーリーの答えにサクライがはいはいと答えた。
サクライの返事を待たずにウォーリーとエリックが部屋を出て行った。
部屋に残されたミヤハラとサクライが顔を見合わせた。
「……それにしてもTM、うちのマネージャーもだいぶ変わりましたね」
「そうだな、ECN社にいたころは、従業員への利益還元でイナとよく揉めていたからな」
「そういうこともありましたね」
ウォーリーやミヤハラ、サクライがまだECN社の社員だったころ、利益分配でウォーリーとオイゲンが揉めているのを二人は何度も目撃している。
ミヤハラの脳裏にそのときの光景が浮かんでくる。
「社長、何考えているんですか?! 利益を均等分配するなんて気が狂ったんですか?」
ウォーリーがオイゲンに詰め寄った。
「そんなに変かな?」
「変に決まっているじゃないですか! 利益への貢献度は、全従業員一緒だと言うのですか!」
「そんなに差はないと思うけど」
「冗談じゃないっ! 社長はわれわれの仕事振りを見ていないんですか! 社長がわれわれの仕事の何を見たというんですか! 俺の貢献度はこんなものじゃないです!」
ウォーリーの抗議がヒートアップしてきた。
一言発するたびに机を拳で叩き、全身を震わせて怒りをあらわにしている。
「……えーと、もちろん、マネージャーの貢献度は評価しています。ECN社のスターだと私は思っています」
オイゲンの答えにウォーリーは不満顔だ。ウォーリーには誠意が全く感じられなかったからだ。
だったら、この利益分配額は何だ、というのである。
オイゲンの言い分はこうだった。
一人のスターのために他のメンバーは我欲を捨てて、献身的にスターをサポートする。
だからスターはスターたり得るのだと考える。
このときスターとそれをサポートするメンバーの貢献度に差などあるのだろうか?
仕事内容による差は仕事給でつける。
その代わり仕事で得られた利益を分配するときは山分けでいいじゃないか、ということだった。
ウォーリーは釈然としない様子だったが、オイゲンが後で話を聞くと言ったのと、ウォーリー自身に予定があったので一旦引き下がった。
その夜オイゲンはウォーリー以外にミヤハラ、サクライも誘って飲みに行き、ウォーリーの愚痴を一晩中聞いていたのである。
オイゲンはこのときなぜか家から高いワインを持ち出して、「一〇年経ったら、ここのメンバーで飲もう!」と宣言したのだ。その理由はミヤハラにもよくわからなかった。
「タブーなきエンジニア集団」のリーダー、ウォーリー・トワの姿は医療都市ジンの某所にあった。
潜伏先のフルヤを出て半年、彼は精力的にポータル・シティ、ハモネス、チクハ・タウンなどを回った。
ウォーリーは活動に賛同する人々のもとを回って、OP社の治安改革活動の問題点を直接訴え続けたのだ。
フルヤを出てジンに潜伏するまでは一苦労であったが、住民の協力を得て養殖魚を運び込むリヤカーに紛れ込み、検問を切り抜けた。
それ以降はメンバーや協力者の家を転々としながら、OP社の取り締りの目をすり抜けてきた。
OP社側の網の目も徐々に粗くなってきていた。
ウォーリーは断片的にしか事情を把握していなかったが、ハドリがフジミ・タウンへの侵攻を優先したのが主な要因だった。
その分「タブーなきエンジニア集団」へのウエイトを軽くしたという事情がウォーリーに味方していた。
ウォーリーは自らの活動への賛同者を増やすだけではだめだ、と考えていた。
あくまでもOP社の活動に「ノ-」を突きつけ、その活動を止めさせる必要がある。
そのための最初の活動は街の至る所に設置されたOP社治安改革センターへ赴き、勤務している職員を追い出すといったものだった。
OP社の活動を拒否し、そのコントロールから脱するという事実を作る必要がある、とウォーリーは考えたのだ。
その第一歩を踏み出す地としてジンが選ばれた。
ジンはミヤハラの義父がそうであるように、OP社の治安改革活動に反対する者が多い。
以前、ウォーリーが倒れた際に対応したメディットの医師、ヴィリー・アイネスもウォーリーの活動に賛同の意を示し、協力を約束してくれた。
一方、ウォーリーはジンにはとどまらず、他の都市で「タブーなきエンジニア集団」の活動を行うことを決めた。活動がポータル・シティとその近隣だけでとどまってはサブマリン島全体を動かすのは難しいと判断したからだ。ジンでの活動ならミヤハラとサクライがいればうまくやってくれるだろう。
他の都市での活動を決意して一週間もしないうちに、ウォーリーはエリックを伴ってジンを発つことを決めた。
「じゃあ、ミヤハラ、サクライ、こっちは任せたぞ。俺とエリックはインデストへ行ってくる」
「まあ、適当にやっておきますよ」
ウォーリーの呼びかけにミヤハラがやる気をあまり感じさせない様子で答えた。
彼の場合実際にやる気がないのではなく、表にあまり感情が出ないためだ。
ウォーリーの思いつきに近い行動にも慣れ切っているので、驚いた様子もない。
「それはいいですが、活動資金はどう割り振るんですか?」
サクライの問いにウォーリーがあきれた顔を見せる。
「まだ割り振ってなかったのかよ! 人数で均等に分けておいてくれ!」
ウォーリーの答えにサクライがはいはいと答えた。
サクライの返事を待たずにウォーリーとエリックが部屋を出て行った。
部屋に残されたミヤハラとサクライが顔を見合わせた。
「……それにしてもTM、うちのマネージャーもだいぶ変わりましたね」
「そうだな、ECN社にいたころは、従業員への利益還元でイナとよく揉めていたからな」
「そういうこともありましたね」
ウォーリーやミヤハラ、サクライがまだECN社の社員だったころ、利益分配でウォーリーとオイゲンが揉めているのを二人は何度も目撃している。
ミヤハラの脳裏にそのときの光景が浮かんでくる。
「社長、何考えているんですか?! 利益を均等分配するなんて気が狂ったんですか?」
ウォーリーがオイゲンに詰め寄った。
「そんなに変かな?」
「変に決まっているじゃないですか! 利益への貢献度は、全従業員一緒だと言うのですか!」
「そんなに差はないと思うけど」
「冗談じゃないっ! 社長はわれわれの仕事振りを見ていないんですか! 社長がわれわれの仕事の何を見たというんですか! 俺の貢献度はこんなものじゃないです!」
ウォーリーの抗議がヒートアップしてきた。
一言発するたびに机を拳で叩き、全身を震わせて怒りをあらわにしている。
「……えーと、もちろん、マネージャーの貢献度は評価しています。ECN社のスターだと私は思っています」
オイゲンの答えにウォーリーは不満顔だ。ウォーリーには誠意が全く感じられなかったからだ。
だったら、この利益分配額は何だ、というのである。
オイゲンの言い分はこうだった。
一人のスターのために他のメンバーは我欲を捨てて、献身的にスターをサポートする。
だからスターはスターたり得るのだと考える。
このときスターとそれをサポートするメンバーの貢献度に差などあるのだろうか?
仕事内容による差は仕事給でつける。
その代わり仕事で得られた利益を分配するときは山分けでいいじゃないか、ということだった。
ウォーリーは釈然としない様子だったが、オイゲンが後で話を聞くと言ったのと、ウォーリー自身に予定があったので一旦引き下がった。
その夜オイゲンはウォーリー以外にミヤハラ、サクライも誘って飲みに行き、ウォーリーの愚痴を一晩中聞いていたのである。
オイゲンはこのときなぜか家から高いワインを持ち出して、「一〇年経ったら、ここのメンバーで飲もう!」と宣言したのだ。その理由はミヤハラにもよくわからなかった。
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