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第五章
196:首謀者たちの最期と復讐者の誕生
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一方、フジミ・タウンを占拠したキョウジ・トイは町の復旧を急いでいた。
効率的に町を奪うためこのような方法をとったものの、町が復旧しないことにはこの土地が資金を生み、人を養うものにはなり得ないのだ。
襲撃により家屋や農地には少なくない被害が出ていた。
水源となる川も土砂で堰き止めてしまったため、これらの除去も急務であった。
この川の下流には魚介類の養殖施設があるのだが、この施設にも少なくない被害が発生していた。養殖されていた魚介の七割近くが死滅したのだ。
今のままでは長いこと彼の部下たちを維持していくことが難しいことをトイは痛いほど理解していた。
部下だけではない、三千を超す捕虜も存在する。捕虜も食わせなければ生命を維持できないし、彼らは貴重な労働力だ。それもフジミ・タウンの農業や漁業に通じた者ばかりであるから、彼らを切り捨てるという選択肢はあり得ない。
そのような事情から、トイは部下と捕虜のほぼすべてを町の復旧に従事させざるを得なくなった。
町の復旧と並行してトイは部下にマサヨシ・ハドリの殺害を命じた。
サトミ・ハドリが暴走した兵士に殺害されてしまったことで、マサヨシが暴走する可能性があった。マサヨシに騒がれては面倒と先手を打ったのである。
マサヨシ・ハドリはその数日後、ポータル・シティ海岸エリアの自治組織内にある執務室で亡くなっているのを職員に発見された。検死の結果持病の薬の飲用を誤ったのが原因だとされた。
当時、自治組織の職員にフェイ・イヴ・ユニヴァースという者がいた。
彼はマサヨシ・ハドリ死亡の第一発見者だった。
しかし、彼は特にマサヨシと親しいという訳ではなかった。
たまたまマサヨシの決裁を必要とする案件が山積みになっているのに気付いたため、状況を確認しに行ったところ、絶命している彼を発見したに過ぎなかった。
マサヨシ・ハドリの死亡原因が報告されたとき、ユニヴァースはその内容に違和感を覚えた。
第一発見者であるユニヴァースは最有力の容疑者として取り調べを受ける羽目になったが、強力なアリバイが存在したことからすぐにその疑いは晴れた。
逆にユニヴァースは事件の調査チームに入れられた。毒物の知見があったためだ。
報告書を見たユニヴァースは報告が真の死因を伝えていない可能性に気付いた。
ユニヴァースが知る限りではマサヨシの飲んだ薬の組み合わせでは検出されるはずのない成分が微量だが検出されていたからだ。
彼はすぐにその内容を上司に報告し、調査をやり直させるよう求めた。
しかし、上司からの回答は解雇通告だった。
これ以上首を突っ込むな、ということである。
ユニヴァースは、「真実を知ろうとしないとは、愚かな」と上司の無知を軽蔑しながら、自治組織を去ったのだった。
一方、フジミ・タウンを占拠し、活動拠点を得たはずのキョウジ・トイも程なくして世を去った。
この地域独自の風土病に感染したのである。
高熱と吐き気が彼を襲い、わずか二日後に彼は世を去ったのだ。
このことが、「フジミの大虐殺」に関する情報が極端に少ないという結果を生むことになった。
トップを失ったフジミ・タウンは他の都市との交流を全て停止した。
その結果、モノも人もフジミ・タウンから流出することがなくなった。その逆もない。
このためサブマリン島に住む多くの市民は「フジミの大虐殺」の首謀者の名前すら知らない。知られているのは、大量殺人があった、という事実だけである。
強大なトップを失ったフジミ・タウンはコントロールを失い、野盗の集団へと成り下がった。食料には恵まれていたため、あくまでも非常時の手段として、近くを通る旅行者や交易関係者などを襲ったのだった。
こうして、「フジミの大虐殺」といわれた一連の事件は、その幕を閉じた、訳ではなかった。
ポータル・シティに一人の復讐者を産み落としたのである。
復讐者は職業学校で経営学を学んでいた。
職業学校経営学科五年制特別コースの四年生、エイチ・ハドリである。
「フジミの大虐殺」に関する情報が少ないながらも、彼は両親をこの事件で失ったことを知った。
その直後、彼から発せられた気の力は、地獄の業火が燃えさかる様子を思わせるほどの怨念に満ちていたという。
「俺の……俺の母を殺した、だと?!
おのれ、見ているがいい! 今度八つ裂きにされるのは貴様等の方だ!
楽には殺さぬ! 俺の母を貴様等が殺ったように……
いや、それが楽に思えるほどの苦しみを味わうがいい!
この恨み、貴様等を討つまで絶対に忘れぬ!」
父親の死について、ハドリは大した感情を抱くことはなかった。弱かったから死んだ、という程度であった。しかし母親の死については全く別であった。
ハドリが「開校以来もっとも迫力のある学生」とされたのは、このとき彼から発された怨念が原因だったかもしれない。
ハドリはニ年後に職業学校を卒業すると復讐を遂げるための第一歩として、オーシャン・パワース (OP)社を立ち上げたのだった。
効率的に町を奪うためこのような方法をとったものの、町が復旧しないことにはこの土地が資金を生み、人を養うものにはなり得ないのだ。
襲撃により家屋や農地には少なくない被害が出ていた。
水源となる川も土砂で堰き止めてしまったため、これらの除去も急務であった。
この川の下流には魚介類の養殖施設があるのだが、この施設にも少なくない被害が発生していた。養殖されていた魚介の七割近くが死滅したのだ。
今のままでは長いこと彼の部下たちを維持していくことが難しいことをトイは痛いほど理解していた。
部下だけではない、三千を超す捕虜も存在する。捕虜も食わせなければ生命を維持できないし、彼らは貴重な労働力だ。それもフジミ・タウンの農業や漁業に通じた者ばかりであるから、彼らを切り捨てるという選択肢はあり得ない。
そのような事情から、トイは部下と捕虜のほぼすべてを町の復旧に従事させざるを得なくなった。
町の復旧と並行してトイは部下にマサヨシ・ハドリの殺害を命じた。
サトミ・ハドリが暴走した兵士に殺害されてしまったことで、マサヨシが暴走する可能性があった。マサヨシに騒がれては面倒と先手を打ったのである。
マサヨシ・ハドリはその数日後、ポータル・シティ海岸エリアの自治組織内にある執務室で亡くなっているのを職員に発見された。検死の結果持病の薬の飲用を誤ったのが原因だとされた。
当時、自治組織の職員にフェイ・イヴ・ユニヴァースという者がいた。
彼はマサヨシ・ハドリ死亡の第一発見者だった。
しかし、彼は特にマサヨシと親しいという訳ではなかった。
たまたまマサヨシの決裁を必要とする案件が山積みになっているのに気付いたため、状況を確認しに行ったところ、絶命している彼を発見したに過ぎなかった。
マサヨシ・ハドリの死亡原因が報告されたとき、ユニヴァースはその内容に違和感を覚えた。
第一発見者であるユニヴァースは最有力の容疑者として取り調べを受ける羽目になったが、強力なアリバイが存在したことからすぐにその疑いは晴れた。
逆にユニヴァースは事件の調査チームに入れられた。毒物の知見があったためだ。
報告書を見たユニヴァースは報告が真の死因を伝えていない可能性に気付いた。
ユニヴァースが知る限りではマサヨシの飲んだ薬の組み合わせでは検出されるはずのない成分が微量だが検出されていたからだ。
彼はすぐにその内容を上司に報告し、調査をやり直させるよう求めた。
しかし、上司からの回答は解雇通告だった。
これ以上首を突っ込むな、ということである。
ユニヴァースは、「真実を知ろうとしないとは、愚かな」と上司の無知を軽蔑しながら、自治組織を去ったのだった。
一方、フジミ・タウンを占拠し、活動拠点を得たはずのキョウジ・トイも程なくして世を去った。
この地域独自の風土病に感染したのである。
高熱と吐き気が彼を襲い、わずか二日後に彼は世を去ったのだ。
このことが、「フジミの大虐殺」に関する情報が極端に少ないという結果を生むことになった。
トップを失ったフジミ・タウンは他の都市との交流を全て停止した。
その結果、モノも人もフジミ・タウンから流出することがなくなった。その逆もない。
このためサブマリン島に住む多くの市民は「フジミの大虐殺」の首謀者の名前すら知らない。知られているのは、大量殺人があった、という事実だけである。
強大なトップを失ったフジミ・タウンはコントロールを失い、野盗の集団へと成り下がった。食料には恵まれていたため、あくまでも非常時の手段として、近くを通る旅行者や交易関係者などを襲ったのだった。
こうして、「フジミの大虐殺」といわれた一連の事件は、その幕を閉じた、訳ではなかった。
ポータル・シティに一人の復讐者を産み落としたのである。
復讐者は職業学校で経営学を学んでいた。
職業学校経営学科五年制特別コースの四年生、エイチ・ハドリである。
「フジミの大虐殺」に関する情報が少ないながらも、彼は両親をこの事件で失ったことを知った。
その直後、彼から発せられた気の力は、地獄の業火が燃えさかる様子を思わせるほどの怨念に満ちていたという。
「俺の……俺の母を殺した、だと?!
おのれ、見ているがいい! 今度八つ裂きにされるのは貴様等の方だ!
楽には殺さぬ! 俺の母を貴様等が殺ったように……
いや、それが楽に思えるほどの苦しみを味わうがいい!
この恨み、貴様等を討つまで絶対に忘れぬ!」
父親の死について、ハドリは大した感情を抱くことはなかった。弱かったから死んだ、という程度であった。しかし母親の死については全く別であった。
ハドリが「開校以来もっとも迫力のある学生」とされたのは、このとき彼から発された怨念が原因だったかもしれない。
ハドリはニ年後に職業学校を卒業すると復讐を遂げるための第一歩として、オーシャン・パワース (OP)社を立ち上げたのだった。
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