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第四章
165:「タブーなきエンジニア集団」、方針転換す
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フルヤという小集落に引きこもっているウォーリーは医師の勧めもあり無聊を託つていた。
やることが無いというより、身体の状態がそれを許さないのでニュースなどを見るか、今後のことを考えるくらいしかできることがない。
「結局奴らをぶっ潰す、それも力づくでやるしかなさそうだな……」
ウォーリーは「タブーなきエンジニア集団」として活動していく上で、次第にハドリとの対決が避けられないと考えるようになっていた。
不可避、というよりハドリを打倒しない限り、活動の目的を達成できないと考えている。
既に相手が治安改革と称して武断的な方法でこちらに攻撃を加えていた。
また、過去の例から一度敵とみなした相手に対して殲滅か屈服以外の選択肢を絶対に許さない性質だとウォーリーは判断している。どちらも受け入れがたい選択肢だ。
当初ウォーリーはビジネスで戦うことを考えていたが、理想にこだわることが今回は害になると理解した。
彼は血気盛んな性格ではあるが、若くしてECN社の幹部まで到達した逸材である。単なる理想主義者ではなく、現実的な対応ができる知恵を有していた。
しかし、正面きって武力でハドリと戦うのは無謀すぎる。
「タブーなきエンジニア集団」のメンバーは女性比率が高いこともあり、正攻法の戦闘には不向きであるとウォーリーは考えている。そもそも戦闘のための集団ではないのだ。そのための訓練を受けた者もいない。
それにメンバーの三分の二が女性、という組織で戦闘をする気はない。
ウォーリー自身は血の気の多いタイプだが、それは彼が率いる「タブーなきエンジニア集団」が好戦的であることを意味しない。むしろ、彼は「タブーなきエンジニア集団」で戦闘をさせたくなかったのである。
かといってハドリの暗殺はウォーリーの性に合わない。暗殺ではなく正当に戦ってハドリを打倒してこそ活動の意味があるからだ。
「となるとゲリラ戦か……」
ウォーリーはそうつぶやいた。
「……小数が多数と戦うときは、それが定石でしょうな。OP社もやりにくい」
ウォーリーの脇からぼそりとつぶやくような声が聞こえた。
今まで黙っていたミヤハラが口を開いたのだ。
ウォーリーはそれを聞いて手を打って立ち上がった。アイデアが浮かんだのである。
「こうしよう! メンバーの役割を分けるんだ!」
ウォーリーのアイデアは次のようなものである。
今後、「タブーなきエンジニア集団」の活動をする者は、ウォーリーと一緒にエクザロームを放浪しながらエンジニア活動をする。こちらのメンバーを活動メンバーと仮に命名しておく。
一方、ウォーリーとの同行を希望しない者は、その場に留まり情報伝達や物資の提供などの支援活動をする。こちらを支援メンバーとする。というものである。
支援メンバーにエンジニア活動をさせたいという気持ちもあるが、「タブーなきエンジニア集団」の看板を掲げればOP社に目をつけられる可能性が高い。
現時点でもOP社に身柄を拘束されているメンバーがいる以上、看板を掲げれば実力行使で排除されるか、身柄を拘束される可能性も考えられる。
ウォーリーは不本意ながら、OP社による妨害を懸念してその場に留まる支援メンバーに対しては、「タブーなきエンジニア集団」の看板を掲げることを認めない方針としたのだった。
「ま、流浪のエンジニアの集団というのも悪くないだろう」
アイデアを話し終えたウォーリーは座ったまま鼻歌を歌い出した。
不本意な部分も多々あるが、ウォーリーは「流浪のエンジニア」という言葉がいたく気に入ったようだった。
そのウォーリーの言葉に呆れたような視線を返したのはいつの間にか籠っていた部屋から出てきたサクライだった。
「……マネージャー、どうやってそれでお客を探すのですか? それと、お金はどうするのですか?」
サクライからの疑わし気な言葉に、ウォーリーは心配要らないという。
少し危険を伴うかもしれないが、支援メンバーにその点は頑張ってもらおう、というのである。
「そういうことをしたいって申し出は結構ありますよ」
エリックがウォーリーの意見を後押しした。
ほら見ろ、という表情をウォーリーは見せた。
「……あと、戦闘訓練も必要になる。ハドリの仲間と衝突した場合、戦うしかないからな。奴らは武装しているから、こちらも対抗する必要がある。無抵抗でやられるのはたまったものじゃないからな。戦闘チームの志願者は俺が募るとして、サクライ、俺が復帰するまでの間、訓練の指揮を執ってくれ」
ウォーリーの依頼にサクライはわかりましたと答えた。少し億劫そうに見えるが、これはいつものことだ。この瞬間、彼が「タブーなきエンジニア集団」のナンバースリーとなることが確定した。
早速ウォーリーの名前で戦闘チームのメンバーの募集が開始された。
ウォーリーは自分で募集文を書くと主張したが、医師に止められているのでエリックがウォーリーの言葉をキーボードで入力した。
「いよいよ始まるな……後は俺が回復しなければならん」
ウォーリーはそうつぶやいて身体を横にした。早く回復するよう医師の指示を守ろうというのだ。
やることが無いというより、身体の状態がそれを許さないのでニュースなどを見るか、今後のことを考えるくらいしかできることがない。
「結局奴らをぶっ潰す、それも力づくでやるしかなさそうだな……」
ウォーリーは「タブーなきエンジニア集団」として活動していく上で、次第にハドリとの対決が避けられないと考えるようになっていた。
不可避、というよりハドリを打倒しない限り、活動の目的を達成できないと考えている。
既に相手が治安改革と称して武断的な方法でこちらに攻撃を加えていた。
また、過去の例から一度敵とみなした相手に対して殲滅か屈服以外の選択肢を絶対に許さない性質だとウォーリーは判断している。どちらも受け入れがたい選択肢だ。
当初ウォーリーはビジネスで戦うことを考えていたが、理想にこだわることが今回は害になると理解した。
彼は血気盛んな性格ではあるが、若くしてECN社の幹部まで到達した逸材である。単なる理想主義者ではなく、現実的な対応ができる知恵を有していた。
しかし、正面きって武力でハドリと戦うのは無謀すぎる。
「タブーなきエンジニア集団」のメンバーは女性比率が高いこともあり、正攻法の戦闘には不向きであるとウォーリーは考えている。そもそも戦闘のための集団ではないのだ。そのための訓練を受けた者もいない。
それにメンバーの三分の二が女性、という組織で戦闘をする気はない。
ウォーリー自身は血の気の多いタイプだが、それは彼が率いる「タブーなきエンジニア集団」が好戦的であることを意味しない。むしろ、彼は「タブーなきエンジニア集団」で戦闘をさせたくなかったのである。
かといってハドリの暗殺はウォーリーの性に合わない。暗殺ではなく正当に戦ってハドリを打倒してこそ活動の意味があるからだ。
「となるとゲリラ戦か……」
ウォーリーはそうつぶやいた。
「……小数が多数と戦うときは、それが定石でしょうな。OP社もやりにくい」
ウォーリーの脇からぼそりとつぶやくような声が聞こえた。
今まで黙っていたミヤハラが口を開いたのだ。
ウォーリーはそれを聞いて手を打って立ち上がった。アイデアが浮かんだのである。
「こうしよう! メンバーの役割を分けるんだ!」
ウォーリーのアイデアは次のようなものである。
今後、「タブーなきエンジニア集団」の活動をする者は、ウォーリーと一緒にエクザロームを放浪しながらエンジニア活動をする。こちらのメンバーを活動メンバーと仮に命名しておく。
一方、ウォーリーとの同行を希望しない者は、その場に留まり情報伝達や物資の提供などの支援活動をする。こちらを支援メンバーとする。というものである。
支援メンバーにエンジニア活動をさせたいという気持ちもあるが、「タブーなきエンジニア集団」の看板を掲げればOP社に目をつけられる可能性が高い。
現時点でもOP社に身柄を拘束されているメンバーがいる以上、看板を掲げれば実力行使で排除されるか、身柄を拘束される可能性も考えられる。
ウォーリーは不本意ながら、OP社による妨害を懸念してその場に留まる支援メンバーに対しては、「タブーなきエンジニア集団」の看板を掲げることを認めない方針としたのだった。
「ま、流浪のエンジニアの集団というのも悪くないだろう」
アイデアを話し終えたウォーリーは座ったまま鼻歌を歌い出した。
不本意な部分も多々あるが、ウォーリーは「流浪のエンジニア」という言葉がいたく気に入ったようだった。
そのウォーリーの言葉に呆れたような視線を返したのはいつの間にか籠っていた部屋から出てきたサクライだった。
「……マネージャー、どうやってそれでお客を探すのですか? それと、お金はどうするのですか?」
サクライからの疑わし気な言葉に、ウォーリーは心配要らないという。
少し危険を伴うかもしれないが、支援メンバーにその点は頑張ってもらおう、というのである。
「そういうことをしたいって申し出は結構ありますよ」
エリックがウォーリーの意見を後押しした。
ほら見ろ、という表情をウォーリーは見せた。
「……あと、戦闘訓練も必要になる。ハドリの仲間と衝突した場合、戦うしかないからな。奴らは武装しているから、こちらも対抗する必要がある。無抵抗でやられるのはたまったものじゃないからな。戦闘チームの志願者は俺が募るとして、サクライ、俺が復帰するまでの間、訓練の指揮を執ってくれ」
ウォーリーの依頼にサクライはわかりましたと答えた。少し億劫そうに見えるが、これはいつものことだ。この瞬間、彼が「タブーなきエンジニア集団」のナンバースリーとなることが確定した。
早速ウォーリーの名前で戦闘チームのメンバーの募集が開始された。
ウォーリーは自分で募集文を書くと主張したが、医師に止められているのでエリックがウォーリーの言葉をキーボードで入力した。
「いよいよ始まるな……後は俺が回復しなければならん」
ウォーリーはそうつぶやいて身体を横にした。早く回復するよう医師の指示を守ろうというのだ。
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