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第四章
161:取り調べ
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ECN社本社裏側にある搬入用の受付に百名近い大集団が到着した。
よく見ると、そのうちの何十名かが担架で運ばれている。呼吸はしているようだが、意識はない。
運ばれているのはOP社治安改革センターの職員たちが拘束した者たちだ。現在は麻酔弾の薬で眠らされている。
集団の後方には社長のハドリの姿もある。
「OP社治安改革センターの者だ」
集団から一人が前に進み出て、IDカードのようなものを掲げた。
「……OP社の方ですね? 用意はできております。ご案内いたします」
受付担当がIDカードを確認した後、奥から一人の社員が出てきた。
社員の案内で、OP社一行は二階にある大きな会議室へと案内された。
百名近い大集団が入っても、多少余裕がある。
会議室に入ると、ハドリは最初に注意深くその中を観察しだした。
万が一ということもある、ハドリを害するような仕掛けが無いか、取り調べに不都合な問題はないか、などを調べているのだ。ハドリは威圧的な人物であるが、用心深くもあるのだ。
「……うむ」
数分かけて観察を終えると、まあいい、とうなずいたのだった。
「広さは十分か……余計なものを置いてないのもいいだろう。おい、連中についての情報を集めろ。可能な限り多く、だ」
ハドリは部下に命じて拘束した者たちに関する情報を集めさせた。
情報を集め出すとすぐに彼らがOP社の元従業員であることが判明する。
「タブーなきエンジニア集団」との関係も調べたが、通信履歴などを見る限り接触は無いようだ。
これらの内容は直ちにハドリに報告された。
「連中との関係がないのは間違いないのか?」
「はい。『タブーなきエンジニア集団』との通信は確認されませんでした」
「偽装や記録が削除された可能性は?」
「そちらも確認しましたが、仲間内と治安改革センター以外との通信は確認されておりません」
「通信を通さずに連中と接触した可能性は?」
「それはゼロとは言い切れませんが……」
「愚か者! それが重要なのだろうが! 各地の治安改革センターを使って調べさせろ!」
「は、はっ!」
ハドリが矢継ぎ早に質問を浴びせていく。
情報収集の抜け漏れの確認の意味もあるが、相手の抜けを指摘することで自身と相手の関係性を理解させる、という意味合いが強い。
OP社に必要なトップはただ一人であり、そのほかはトップの言葉通り動く手足なのだから。
「……わかった」
一通り質問を終えたハドリは平身低頭する部下に質問が終わったことを告げた。
そして、拘束されている者達を一瞥する。
「……寝ている連中を起こせ」
ハドリが静かに命じた。その表情や声音は普段と変わりないはずだが、周囲の部下たちをひれ伏させるような何かがあった。
部下たちは薬の影響で眠っている相手に注射を打ち、覚醒させる。
目を覚ました者はハドリの姿に驚いたが、声をあげることすらできない。
「……さて、お前ら、俺が誰だかわかるか?」
ハドリが先ほどよりは低い声で尋ねた。
拘束された一人が答える。
「……ああ、実態は自分のところの社員を殺戮した殺人犯だということは知っている!」
糾弾の声にもハドリは動じた様子も見せない。
「だとしたら、俺はお前達の同類だな」
「お前のような悪人と一緒にするな!」
「わが社の社員を殺戮した、という点では貴様も同じじゃないか?」
ハドリの問いに相手が言葉に詰まる。
「……」
「まあいい、お前らの仲間はどこだ?」
相手はハドリを無言で睨みつけている。
ハドリは部下の一人に小声で何かを命じた。
命を受けた部下は急いで会議室から出て行った。
部下が部屋を出ていったのを確かめてから、ハドリは部屋に残っている別の部下に命じる。
「俺に代わって尋問しておけ。方法も裏切り者の生死も問わん。それから尋問は外に聞こえるように大きな声でやれ」
「はっ!」
相手の返事を聞くと、ハドリは悠然と部屋を出た。
その直後から、拘束された者たちのものと思われる悲鳴が聞こえてきた。
会議室近くにいたECN社の従業員は恐れをなした様子でその場に立ちすくんでいた。
一方、ハドリは会議室から出た足でECN社の建物から外に出て、近くの治安改革センターへと向かう。
治安改革センターの職員はハドリの姿を見て、慌てて姿勢を正した。
「おい、お前、もう少し胸を張れ!」
職員の一人がハドリに注意を受けた。
四人の職員の中でもっとも背の低い職員である。
背格好はハドリと大差ない。注意を受けた職員は慌てて胸を張る。
「こ、こうでありますか?」
「違う、こうだ」
ハドリは職員の胸と腰を押して姿勢を正させた。
「……よし、お前だ。俺について来い。とある場所で今と同じ姿勢を俺がいいと言うまで続けていればいい。何か聞かれたら相手を無言で睨み返せ」
職員はハドリの命令を理解できていない様子だったが、ハドリは「俺の言うとおりにしろ」と強引に押し通した。
そして通信機で二言三言話すと、職員を引き連れてどこかへと出発してしまった。
治安改革センターに残された職員たちは極度の緊張が解けたためか、次々にその場にへたり込んだ。
よく見ると、そのうちの何十名かが担架で運ばれている。呼吸はしているようだが、意識はない。
運ばれているのはOP社治安改革センターの職員たちが拘束した者たちだ。現在は麻酔弾の薬で眠らされている。
集団の後方には社長のハドリの姿もある。
「OP社治安改革センターの者だ」
集団から一人が前に進み出て、IDカードのようなものを掲げた。
「……OP社の方ですね? 用意はできております。ご案内いたします」
受付担当がIDカードを確認した後、奥から一人の社員が出てきた。
社員の案内で、OP社一行は二階にある大きな会議室へと案内された。
百名近い大集団が入っても、多少余裕がある。
会議室に入ると、ハドリは最初に注意深くその中を観察しだした。
万が一ということもある、ハドリを害するような仕掛けが無いか、取り調べに不都合な問題はないか、などを調べているのだ。ハドリは威圧的な人物であるが、用心深くもあるのだ。
「……うむ」
数分かけて観察を終えると、まあいい、とうなずいたのだった。
「広さは十分か……余計なものを置いてないのもいいだろう。おい、連中についての情報を集めろ。可能な限り多く、だ」
ハドリは部下に命じて拘束した者たちに関する情報を集めさせた。
情報を集め出すとすぐに彼らがOP社の元従業員であることが判明する。
「タブーなきエンジニア集団」との関係も調べたが、通信履歴などを見る限り接触は無いようだ。
これらの内容は直ちにハドリに報告された。
「連中との関係がないのは間違いないのか?」
「はい。『タブーなきエンジニア集団』との通信は確認されませんでした」
「偽装や記録が削除された可能性は?」
「そちらも確認しましたが、仲間内と治安改革センター以外との通信は確認されておりません」
「通信を通さずに連中と接触した可能性は?」
「それはゼロとは言い切れませんが……」
「愚か者! それが重要なのだろうが! 各地の治安改革センターを使って調べさせろ!」
「は、はっ!」
ハドリが矢継ぎ早に質問を浴びせていく。
情報収集の抜け漏れの確認の意味もあるが、相手の抜けを指摘することで自身と相手の関係性を理解させる、という意味合いが強い。
OP社に必要なトップはただ一人であり、そのほかはトップの言葉通り動く手足なのだから。
「……わかった」
一通り質問を終えたハドリは平身低頭する部下に質問が終わったことを告げた。
そして、拘束されている者達を一瞥する。
「……寝ている連中を起こせ」
ハドリが静かに命じた。その表情や声音は普段と変わりないはずだが、周囲の部下たちをひれ伏させるような何かがあった。
部下たちは薬の影響で眠っている相手に注射を打ち、覚醒させる。
目を覚ました者はハドリの姿に驚いたが、声をあげることすらできない。
「……さて、お前ら、俺が誰だかわかるか?」
ハドリが先ほどよりは低い声で尋ねた。
拘束された一人が答える。
「……ああ、実態は自分のところの社員を殺戮した殺人犯だということは知っている!」
糾弾の声にもハドリは動じた様子も見せない。
「だとしたら、俺はお前達の同類だな」
「お前のような悪人と一緒にするな!」
「わが社の社員を殺戮した、という点では貴様も同じじゃないか?」
ハドリの問いに相手が言葉に詰まる。
「……」
「まあいい、お前らの仲間はどこだ?」
相手はハドリを無言で睨みつけている。
ハドリは部下の一人に小声で何かを命じた。
命を受けた部下は急いで会議室から出て行った。
部下が部屋を出ていったのを確かめてから、ハドリは部屋に残っている別の部下に命じる。
「俺に代わって尋問しておけ。方法も裏切り者の生死も問わん。それから尋問は外に聞こえるように大きな声でやれ」
「はっ!」
相手の返事を聞くと、ハドリは悠然と部屋を出た。
その直後から、拘束された者たちのものと思われる悲鳴が聞こえてきた。
会議室近くにいたECN社の従業員は恐れをなした様子でその場に立ちすくんでいた。
一方、ハドリは会議室から出た足でECN社の建物から外に出て、近くの治安改革センターへと向かう。
治安改革センターの職員はハドリの姿を見て、慌てて姿勢を正した。
「おい、お前、もう少し胸を張れ!」
職員の一人がハドリに注意を受けた。
四人の職員の中でもっとも背の低い職員である。
背格好はハドリと大差ない。注意を受けた職員は慌てて胸を張る。
「こ、こうでありますか?」
「違う、こうだ」
ハドリは職員の胸と腰を押して姿勢を正させた。
「……よし、お前だ。俺について来い。とある場所で今と同じ姿勢を俺がいいと言うまで続けていればいい。何か聞かれたら相手を無言で睨み返せ」
職員はハドリの命令を理解できていない様子だったが、ハドリは「俺の言うとおりにしろ」と強引に押し通した。
そして通信機で二言三言話すと、職員を引き連れてどこかへと出発してしまった。
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