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第四章
146:意外な人物の名
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「モトム・トワか……うちの親父と同姓同名だな」
ウォーリーが少し考えてから答えた。
敢えて父だと断定しなかったのは、ユニヴァースの真意を測りかねていたからだ
「……生きていれば今年、七〇歳になります」
「うちの親父もそれくらいだ! ユニヴァースのおやっさん、親父について何を知っているのか?!」
ウォーリーがつかみかからんばかりにユニヴァースに迫った。
実はウォーリーも父親のことについてはあまり情報を持っていないのだ。
ユニヴァースは落ち着いてウォーリーの腕を払う。意外と力強い。
「落ち着きなさい。聞きたいのは私のほうです」
ウォーリーは頭を掻いて答える。
「……参ったな。俺はガキの時分に父方の爺さん婆さんの家に預けられたんで、親父もお袋も顔をよく覚えていないんだ。名前と生年月日くらいしかわからないのだが」
「……そうでしたか。それは残念です」
ユニヴァースは抑揚を感じさせない口調で答えた。
「ところでよ、ユニヴァースのおやっさん、何で俺の親父のことなんて知りたいんだ?」
「私の知りたいモトム・トワ氏があなたの父親と確定したわけではありませんが、いいでしょう。私はここ、サブマリン島の歴史を知りたいのです。どのような出来事が経て今のサブマリン島があるのか、人の営みの歴史からそれを知りたいということです」
ユニヴァースの言葉は他の四人にはわかったようなわからないような内容だった。
「しかし、ユニヴァースのおやっさんよ、何で俺の親父と歴史が関係あるんだ?」
「まだ、あなたの父親と決まったわけではないのですが。実はLH二〇年代後半から三〇年代に関する記録が極端に不足しているのです。この時期はサブマリン島各地の都市が大きく発展した時期ですが、それがゆえに記録が散逸してしまっており、情報がほとんど集められないのです。
集まった数少ない資料の中にモトム・トワ夫妻についての記述があったので、何か知っているのではないかと思ったのですが……」
ユニヴァースの言葉にウォーリーは自分の携帯端末を操作し始めた。
しばらくして、ユニヴァースに向けて話を始める。
「……役に立つ情報かわからんが、一応知っているだけの情報を伝えておくわ。
親父はモトム……西暦二〇三六年って、ルナ・ヘヴンス暦じゃないよな……今から何年前だ?」
「ルナ・ヘヴンス暦一年の二一年前です。西暦二〇五七年四月一日がルナ・ヘヴンス暦一年の四月一日です」
ウォーリーの疑問にはユニヴァースが即答した。ウォーリーが話を続ける。
「ああ、その二〇三六年の一月二八日生まれだ。お袋はフローレンス、こっちはLH二年二月四日生まれだな。
亡くなった父方の爺さんからは、親父もお袋も有力者のところで仕事をしていたとは聞いている。
俺は三歳のときに父方の爺さん婆さんに引き取られて以来、親父もお袋も顔すら見ていないからな。おまけに、爺さん婆さんが親父やお袋を嫌っていたのか写真の一枚すら残ってねえんだ。
端末に入っているのは俺が生まれたときの医学用のデータだけで、それ以上のことは正直何もわからないんだな」
ウォーリーの話を聞き終えると、ユニヴァースはコンピュータの前にのっそりと移動した。
ウォーリーは興味深そうにその様子を見ている。
他の三人は呆れて言葉も発せないようだ。
「うむ、おそらく君の父親と、私の言うモトム・トワ氏は同一人物の可能性が高いと思われます。年齢と奥さんの名前が一致しています」
ユニヴァースは大きくうなずいてコンピュータと格闘し始めた。
ウォーリーは声をかけようとしたが、何故かためらわれた。
「マネージャー、いくら何でも話しすぎじゃないですかね? 相手が何者だか未だはっきりしていないのですよ」
サクライが少し抑制した声でたしなめたのだが、締め切った部屋の中では声が大きすぎる。
エリックは「おいおい」という表情をしてサクライの口を塞ごうとしたが、既に遅かった。
ユニヴァースはお構いなしで、コンピュータと格闘を続けている。
「まあ、このおやっさんなら心配ないだろう。俺の勘が間違いないと言っているさ」
ウォーリーのお気楽な言葉に、サクライとエリックは身体中の力が抜ける思いだった。
「ところで、ユニヴァースのおやっさん、あんたはどこまでうちの両親のことを知っているんだ?」
ウォーリーがユニヴァースに問うた。
ユニヴァースは調べものが終わるまで待っていなさい、と答えた。マイペースの度合いではユニヴァースの方がウォーリーより上手らしい。
短気なウォーリーのことである。ぞんざいに扱われれば、怒りに任せて怒鳴るくらいのことはするはずなのだが、ユニヴァースに対しては毒気を抜かれたかのように寛容である。
度を越して図々しい相手には怒りの感情が湧きにくいのかもしれない。
四人が大人しく待っていると、しばらくしてユニヴァースが立ち上がった。
「何かわかったのか?」
「……」
ウォーリーが話しかけたが、ユニヴァースは無視して台所へと向かった。
ウォーリーが少し考えてから答えた。
敢えて父だと断定しなかったのは、ユニヴァースの真意を測りかねていたからだ
「……生きていれば今年、七〇歳になります」
「うちの親父もそれくらいだ! ユニヴァースのおやっさん、親父について何を知っているのか?!」
ウォーリーがつかみかからんばかりにユニヴァースに迫った。
実はウォーリーも父親のことについてはあまり情報を持っていないのだ。
ユニヴァースは落ち着いてウォーリーの腕を払う。意外と力強い。
「落ち着きなさい。聞きたいのは私のほうです」
ウォーリーは頭を掻いて答える。
「……参ったな。俺はガキの時分に父方の爺さん婆さんの家に預けられたんで、親父もお袋も顔をよく覚えていないんだ。名前と生年月日くらいしかわからないのだが」
「……そうでしたか。それは残念です」
ユニヴァースは抑揚を感じさせない口調で答えた。
「ところでよ、ユニヴァースのおやっさん、何で俺の親父のことなんて知りたいんだ?」
「私の知りたいモトム・トワ氏があなたの父親と確定したわけではありませんが、いいでしょう。私はここ、サブマリン島の歴史を知りたいのです。どのような出来事が経て今のサブマリン島があるのか、人の営みの歴史からそれを知りたいということです」
ユニヴァースの言葉は他の四人にはわかったようなわからないような内容だった。
「しかし、ユニヴァースのおやっさんよ、何で俺の親父と歴史が関係あるんだ?」
「まだ、あなたの父親と決まったわけではないのですが。実はLH二〇年代後半から三〇年代に関する記録が極端に不足しているのです。この時期はサブマリン島各地の都市が大きく発展した時期ですが、それがゆえに記録が散逸してしまっており、情報がほとんど集められないのです。
集まった数少ない資料の中にモトム・トワ夫妻についての記述があったので、何か知っているのではないかと思ったのですが……」
ユニヴァースの言葉にウォーリーは自分の携帯端末を操作し始めた。
しばらくして、ユニヴァースに向けて話を始める。
「……役に立つ情報かわからんが、一応知っているだけの情報を伝えておくわ。
親父はモトム……西暦二〇三六年って、ルナ・ヘヴンス暦じゃないよな……今から何年前だ?」
「ルナ・ヘヴンス暦一年の二一年前です。西暦二〇五七年四月一日がルナ・ヘヴンス暦一年の四月一日です」
ウォーリーの疑問にはユニヴァースが即答した。ウォーリーが話を続ける。
「ああ、その二〇三六年の一月二八日生まれだ。お袋はフローレンス、こっちはLH二年二月四日生まれだな。
亡くなった父方の爺さんからは、親父もお袋も有力者のところで仕事をしていたとは聞いている。
俺は三歳のときに父方の爺さん婆さんに引き取られて以来、親父もお袋も顔すら見ていないからな。おまけに、爺さん婆さんが親父やお袋を嫌っていたのか写真の一枚すら残ってねえんだ。
端末に入っているのは俺が生まれたときの医学用のデータだけで、それ以上のことは正直何もわからないんだな」
ウォーリーの話を聞き終えると、ユニヴァースはコンピュータの前にのっそりと移動した。
ウォーリーは興味深そうにその様子を見ている。
他の三人は呆れて言葉も発せないようだ。
「うむ、おそらく君の父親と、私の言うモトム・トワ氏は同一人物の可能性が高いと思われます。年齢と奥さんの名前が一致しています」
ユニヴァースは大きくうなずいてコンピュータと格闘し始めた。
ウォーリーは声をかけようとしたが、何故かためらわれた。
「マネージャー、いくら何でも話しすぎじゃないですかね? 相手が何者だか未だはっきりしていないのですよ」
サクライが少し抑制した声でたしなめたのだが、締め切った部屋の中では声が大きすぎる。
エリックは「おいおい」という表情をしてサクライの口を塞ごうとしたが、既に遅かった。
ユニヴァースはお構いなしで、コンピュータと格闘を続けている。
「まあ、このおやっさんなら心配ないだろう。俺の勘が間違いないと言っているさ」
ウォーリーのお気楽な言葉に、サクライとエリックは身体中の力が抜ける思いだった。
「ところで、ユニヴァースのおやっさん、あんたはどこまでうちの両親のことを知っているんだ?」
ウォーリーがユニヴァースに問うた。
ユニヴァースは調べものが終わるまで待っていなさい、と答えた。マイペースの度合いではユニヴァースの方がウォーリーより上手らしい。
短気なウォーリーのことである。ぞんざいに扱われれば、怒りに任せて怒鳴るくらいのことはするはずなのだが、ユニヴァースに対しては毒気を抜かれたかのように寛容である。
度を越して図々しい相手には怒りの感情が湧きにくいのかもしれない。
四人が大人しく待っていると、しばらくしてユニヴァースが立ち上がった。
「何かわかったのか?」
「……」
ウォーリーが話しかけたが、ユニヴァースは無視して台所へと向かった。
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