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第四章
145:たどり着いた先は……
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翌朝、エリックが目覚めて周囲を見回すと、ユニヴァースが一人で朝食をとっていた。
慌てて時計を見ると、午前六時を少し回ったところだ。
「み、みなさんっ! 起きてくださいっ!」
エリックは慌てて周りで寝ていた仲間を起こす。
「あぁ? 何事だ?」
たたき起こされたミヤハラが眠い目をこすりながら起き上がった。ウォーリーとサクライは目を覚まさない。
ただ、その様子を見てもユニヴァースは意に介さず、一人で食事を続けている。
そして、食事を終えるとミヤハラとエリックに向かって、食べるものは台所からとってきて食べなさい、と言う。
また、外は風が強くて危険なので部屋を出ないように、と注意を与えると自室へ戻ってしまった。
ミヤハラとエリックはユニヴァースのペースの前になす術も無かった。
ただ、呆然とユニヴァースの姿を見送っただけだ。
「……何だ? あれは?」
「さぁ、何なのでしょうか……」
ミヤハラはともかく、エリックはやや焦っていた。
フルヤへの予定到着日はとうの昔に過ぎ去ってしまっている。
この時点でエリックとしては責任を果たせなかったも同然であった。
ウォーリーの信頼に応えられなかったことだけでも十分すぎるのに、ミヤハラ、サクライにまで迷惑をかけているとなると気が気ではない。
慌てて携帯端末を広げて情報を求めようとしたが、ミヤハラに止められた。
「焦ったところでマネージャーとサクライが寝ているんだから仕方ない。それに天気が悪いから出るなと言われていただろう。ここは落ち着いて大人しくしていろ。でなければ飯を探してくれ」
エリックが振り返るとミヤハラは平然とその場で横になっていた。
上職者であるミヤハラの指示では仕方がない。エリックは台所を漁って、ミヤハラと自分の分の食料を探し出すのだった。
それから二時間ばかりして、ウォーリーとサクライが起きだした。
ミヤハラとエリックは先に朝食を済ませていたので、彼らに食料のありかを案内する。
ウォーリーとサクライが朝食を終えた頃、ユニヴァースが部屋から出てきた。
四人に声をかけることもなく、部屋の隅にあるコンピュータに向かい、画面とにらめっこしながらなにやらメモを取っている。
「ユニヴァースさん、ちょっとこっちの質問にも答えてもらえないかな?」
ウォーリーがしびれを切らして声をかけた。
エリックも声をかけようとしたのだが、どうも声をかけにくい雰囲気なので躊躇してしまった。
自分の使命感と遠慮とが天秤にかけられた結果、後者が勝ってしまったのである。
ユニヴァースは一〇分ほど待つようにウォーリーに命じた。
それに対してウォーリーは何かを言いかけたのだが、エリックとミヤハラに止められた。
一〇分後、ユニヴァースがこちらを向いた。
「何ですか?」
「ああ、ユニヴァースさん。ここがどこだか教えて欲しいのだが……」
ウォーリーの質問に、ユニヴァースは「そんなことも知らないのか」という表情を見せた後、こう答えた。
「目の前にあるのが『はじまりの丘』と呼ばれている場所です」
その言葉にエリックが「やっぱり!」と声をあげた。
ウォーリーは驚いた表情を見せている。
「はじまりの丘」とは、ここエクザロームに初めて人が足を踏み入れた場所である。
今から約三〇年前、漂流していた宇宙ステーションが不時着した結果、エクザロームには人が居住するようになった。
この宇宙ステーションが不時着した場所こそ、「はじまりの丘」の北側に位置する場所だった。
エクザロームで一般的に使われている暦「ルナ・ヘヴンス暦」は、この宇宙ステーションの名前から取られたものである。
鉱物資源や化石燃料に事欠くこの惑星では、脱出用の宇宙船を造ることもままならず、人々はこの惑星で生き抜くことを余儀なくされた。そして、現在に至っている。
エクザロームに人が居住するようになってから生まれた世代━━ウォーリーたちもこの世代なのだが━━にとって、「はじまりの丘」はエクザロームの数少ない史跡の一つであって、あまり身近な場所ではない。
このため、四人にとっては「これが例の場所か」という程度の感慨しかない。
エクザローム居住前に生まれた世代の中にはこの場所を頻繁に訪れる者もあるが、現在ではそれも少数派だ。該当する世代に高齢者が増えたのが主な理由だ。
エリックが携帯端末を操作して、地図を表示する。
彼の予想通り西に進むはずが北東に進んでしまったことになる。
ウォーリーとサクライが端末を覗き込んだ。目的地のフルヤまではかなり距離がある。ざっと見積もって一五〇キロメートルくらいか。
「遠いな……街道を使って歩くことができるだろうから、四日もあれば着けるだろうが」
ミヤハラが端末を覗き込んだ。幸いなことに街道はすぐ近くまで来ているようで、ここから先、道に迷う心配はなさそうだ。
「天候が回復次第、すぐに動くぞ。状況がわかれば話は早い!」
ウォーリーが立ち上がった。するとユニヴァースから静かにしなさいと注意された。
ウォーリーは思い切り調子を狂わされて、その場でずっこけた。どうも、ユニヴァースとは波長が合わないようだ。
「……ところで、ウォーリー君とやら、姓はトワでしたね?」
ユニヴァースがウォーリーに唐突に尋ねてきた。
「ああ、そうだが」
「ならば、モトム・トワという人を知っていますか?」
ウォーリーの表情が一瞬にして強張った。彼の良く知る名だったからだ。
慌てて時計を見ると、午前六時を少し回ったところだ。
「み、みなさんっ! 起きてくださいっ!」
エリックは慌てて周りで寝ていた仲間を起こす。
「あぁ? 何事だ?」
たたき起こされたミヤハラが眠い目をこすりながら起き上がった。ウォーリーとサクライは目を覚まさない。
ただ、その様子を見てもユニヴァースは意に介さず、一人で食事を続けている。
そして、食事を終えるとミヤハラとエリックに向かって、食べるものは台所からとってきて食べなさい、と言う。
また、外は風が強くて危険なので部屋を出ないように、と注意を与えると自室へ戻ってしまった。
ミヤハラとエリックはユニヴァースのペースの前になす術も無かった。
ただ、呆然とユニヴァースの姿を見送っただけだ。
「……何だ? あれは?」
「さぁ、何なのでしょうか……」
ミヤハラはともかく、エリックはやや焦っていた。
フルヤへの予定到着日はとうの昔に過ぎ去ってしまっている。
この時点でエリックとしては責任を果たせなかったも同然であった。
ウォーリーの信頼に応えられなかったことだけでも十分すぎるのに、ミヤハラ、サクライにまで迷惑をかけているとなると気が気ではない。
慌てて携帯端末を広げて情報を求めようとしたが、ミヤハラに止められた。
「焦ったところでマネージャーとサクライが寝ているんだから仕方ない。それに天気が悪いから出るなと言われていただろう。ここは落ち着いて大人しくしていろ。でなければ飯を探してくれ」
エリックが振り返るとミヤハラは平然とその場で横になっていた。
上職者であるミヤハラの指示では仕方がない。エリックは台所を漁って、ミヤハラと自分の分の食料を探し出すのだった。
それから二時間ばかりして、ウォーリーとサクライが起きだした。
ミヤハラとエリックは先に朝食を済ませていたので、彼らに食料のありかを案内する。
ウォーリーとサクライが朝食を終えた頃、ユニヴァースが部屋から出てきた。
四人に声をかけることもなく、部屋の隅にあるコンピュータに向かい、画面とにらめっこしながらなにやらメモを取っている。
「ユニヴァースさん、ちょっとこっちの質問にも答えてもらえないかな?」
ウォーリーがしびれを切らして声をかけた。
エリックも声をかけようとしたのだが、どうも声をかけにくい雰囲気なので躊躇してしまった。
自分の使命感と遠慮とが天秤にかけられた結果、後者が勝ってしまったのである。
ユニヴァースは一〇分ほど待つようにウォーリーに命じた。
それに対してウォーリーは何かを言いかけたのだが、エリックとミヤハラに止められた。
一〇分後、ユニヴァースがこちらを向いた。
「何ですか?」
「ああ、ユニヴァースさん。ここがどこだか教えて欲しいのだが……」
ウォーリーの質問に、ユニヴァースは「そんなことも知らないのか」という表情を見せた後、こう答えた。
「目の前にあるのが『はじまりの丘』と呼ばれている場所です」
その言葉にエリックが「やっぱり!」と声をあげた。
ウォーリーは驚いた表情を見せている。
「はじまりの丘」とは、ここエクザロームに初めて人が足を踏み入れた場所である。
今から約三〇年前、漂流していた宇宙ステーションが不時着した結果、エクザロームには人が居住するようになった。
この宇宙ステーションが不時着した場所こそ、「はじまりの丘」の北側に位置する場所だった。
エクザロームで一般的に使われている暦「ルナ・ヘヴンス暦」は、この宇宙ステーションの名前から取られたものである。
鉱物資源や化石燃料に事欠くこの惑星では、脱出用の宇宙船を造ることもままならず、人々はこの惑星で生き抜くことを余儀なくされた。そして、現在に至っている。
エクザロームに人が居住するようになってから生まれた世代━━ウォーリーたちもこの世代なのだが━━にとって、「はじまりの丘」はエクザロームの数少ない史跡の一つであって、あまり身近な場所ではない。
このため、四人にとっては「これが例の場所か」という程度の感慨しかない。
エクザローム居住前に生まれた世代の中にはこの場所を頻繁に訪れる者もあるが、現在ではそれも少数派だ。該当する世代に高齢者が増えたのが主な理由だ。
エリックが携帯端末を操作して、地図を表示する。
彼の予想通り西に進むはずが北東に進んでしまったことになる。
ウォーリーとサクライが端末を覗き込んだ。目的地のフルヤまではかなり距離がある。ざっと見積もって一五〇キロメートルくらいか。
「遠いな……街道を使って歩くことができるだろうから、四日もあれば着けるだろうが」
ミヤハラが端末を覗き込んだ。幸いなことに街道はすぐ近くまで来ているようで、ここから先、道に迷う心配はなさそうだ。
「天候が回復次第、すぐに動くぞ。状況がわかれば話は早い!」
ウォーリーが立ち上がった。するとユニヴァースから静かにしなさいと注意された。
ウォーリーは思い切り調子を狂わされて、その場でずっこけた。どうも、ユニヴァースとは波長が合わないようだ。
「……ところで、ウォーリー君とやら、姓はトワでしたね?」
ユニヴァースがウォーリーに唐突に尋ねてきた。
「ああ、そうだが」
「ならば、モトム・トワという人を知っていますか?」
ウォーリーの表情が一瞬にして強張った。彼の良く知る名だったからだ。
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