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第四章
142:判明しない現在地
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サクライが掘っ立て小屋を発見し、四人はその方向に向けて進んでいった。
二時間後、丘のふもとの掘っ立て小屋が手を伸ばせば届きそうな位置まで達した。
あと十数分も歩けば小屋に到着するだろう。人がいれば、現在地が判明するに違いない。
ウォーリーは走ることを主張したのだが、他の三人がついていけそうな様子になかったので、仕方なく一緒に歩くことを選択した。
「……あれ、何でしょうね?」
エリックが後ろを振り返って首を傾げた。
エリックの指差す方向には、白い雪を被った高い山々が見える。
四人が住むサブマリン島西端部からはこのような高い山が見えることはないし、四人とも過去にこのような景色を見たことがなかった。
「こんなところに山なんてあったか? まあいいだろう。全ては小屋に行けば解決するさ」
ウォーリーは気楽なもので、一度振り返った後は後ろの山々に目もくれずに進んでいく。
ミヤハラとサクライも似たようなもので、ゆっくりと小屋に向かって歩を進めている。
エリックは首を傾げながら、彼らの後をついて行く。
LH五〇年三月二八日の一七時少し前に、四人は小屋に到着した。彼らが職業学校を発って五日以上が経過している。
到着した小屋の屋根には太陽電池が敷き詰められ、その脇には風車が三基並んでいる。
「失礼するぞ! 誰か中にいないか?」
ウォーリーが小屋の戸を開けて怒鳴ったが、反応が無い。どうも無人のようだ。
とはいえ、発電設備が稼動しているようで、中にあるコンピュータと思われる機械のランプが点灯していた。
また、入口付近にはイモや大根が入れられた袋がある。
どうやら小屋には住人がいるらしいが出かけているようだった。
「しゃーない。ここで待つか」
ウォーリーは小屋の玄関にどっかと腰を下ろした。この五日間歩き詰めだったことと、人がいそうな場所に到着したことで疲れがどっと押し寄せてきたためだった。
他の三人もそれに続いた。
「それにしても……ここはどこなんでしょうね?」
「……すみません、ちょっとわかりませんが、嫌な予感がします」
サクライの疑問にエリックがすまなそうに答えた。
エリックは現在の状況に強く責任を感じていた。
ウォーリーの信頼に応えようと必死で計画を立てたのに、目的地に到着するどころか現在地もわからない状況である。
西へ進めば必然的に街道にぶつかると思っていたが、いまだ街道は見えないのだ。
当初、エリックは小型レーダーを持っていくことを主張していた。
しかし、電波を発することから、わざわざ現在地を知らせるようなものだという意見を受け入れたのだ。
「……無理にでもレーダーを持っていくんだったな……」
エリックがそうつぶやくと、ウォーリーが彼の肩を叩いた。
「エリック、気にするな。計画を承認したのは俺だ。こうなったのも俺の責任だからな。エリックは俺の指示通りに動いた。それだけのことじゃないか。それでエリックに責任を感じさせたというのであれば、俺の罪だ、すまん」
ウォーリーがエリックに両手を合わせて頭を下げた。
ECN社の幹部などからは「頭が高い」と言われるウォーリーではあるが、実は自分の身内に対しては素直だ。
自分に非があれば、素直に頭を下げることもできる。こうしたところが仲間から慕われている要因にもなっているのだ。
エリックはウォーリーの気遣いに申し訳ない思いでいっぱいになった。
計画を承認したのはウォーリーであったとしても、計画を立てたのは自分なのだ。
「そうだ、エリック。さっきから何か嫌な予感がするとか言っているが、何を気にしているんだ?」
サクライがエリックの様子を見かねたのか声をかけた。
エリックは少し考えてから、「自分の思い過ごしかもしれませんが」と前置きして、思うところを話した。
現在地がポータルやジンと比較して気温が低そうなこと、後ろに雪を被った山々が見えることが気になっている。
携帯端末以外の電子機器を持ち歩いていないので、正確なところはよくわからないのだが、フルヤまでの距離の倍以上を歩いているという気がしないでもない。
また、サブマリン島でこの時期に雪を被っている山々として考えられるのは二箇所しかない。
すなわち、島の南北を分断する山脈のどちらかである。
進んだ方向からして、見えているのはサファイア・シー北側の山脈であろう。
南側の山脈は活火山で、今でも噴煙をあげている山がいくつもあるという。
少なくとも、先ほど見えた山々に噴煙をあげているものはなかった。
これらの状況を勘案すると西を目指して進んでいたはずが、何時の間にか北東に向かって進んでいたことになる。フルヤとは正反対の方向に近い。
「北部か……可能性は無いとは言えないが、人なんて住んでいたか?」
ミヤハラがエリックの見解に疑問を呈した。
サブマリン島の北部に人が住んでいるなどという情報を彼らは持っていなかった。
すると突然、背後の戸が開き、声がした。
「そこの四人、何をしているのだ?」
「ミヤハラ、サクライ、構えろ!」
ウォーリーの声が飛び、ミヤハラとサクライがのっそりと立ち上がった。
二時間後、丘のふもとの掘っ立て小屋が手を伸ばせば届きそうな位置まで達した。
あと十数分も歩けば小屋に到着するだろう。人がいれば、現在地が判明するに違いない。
ウォーリーは走ることを主張したのだが、他の三人がついていけそうな様子になかったので、仕方なく一緒に歩くことを選択した。
「……あれ、何でしょうね?」
エリックが後ろを振り返って首を傾げた。
エリックの指差す方向には、白い雪を被った高い山々が見える。
四人が住むサブマリン島西端部からはこのような高い山が見えることはないし、四人とも過去にこのような景色を見たことがなかった。
「こんなところに山なんてあったか? まあいいだろう。全ては小屋に行けば解決するさ」
ウォーリーは気楽なもので、一度振り返った後は後ろの山々に目もくれずに進んでいく。
ミヤハラとサクライも似たようなもので、ゆっくりと小屋に向かって歩を進めている。
エリックは首を傾げながら、彼らの後をついて行く。
LH五〇年三月二八日の一七時少し前に、四人は小屋に到着した。彼らが職業学校を発って五日以上が経過している。
到着した小屋の屋根には太陽電池が敷き詰められ、その脇には風車が三基並んでいる。
「失礼するぞ! 誰か中にいないか?」
ウォーリーが小屋の戸を開けて怒鳴ったが、反応が無い。どうも無人のようだ。
とはいえ、発電設備が稼動しているようで、中にあるコンピュータと思われる機械のランプが点灯していた。
また、入口付近にはイモや大根が入れられた袋がある。
どうやら小屋には住人がいるらしいが出かけているようだった。
「しゃーない。ここで待つか」
ウォーリーは小屋の玄関にどっかと腰を下ろした。この五日間歩き詰めだったことと、人がいそうな場所に到着したことで疲れがどっと押し寄せてきたためだった。
他の三人もそれに続いた。
「それにしても……ここはどこなんでしょうね?」
「……すみません、ちょっとわかりませんが、嫌な予感がします」
サクライの疑問にエリックがすまなそうに答えた。
エリックは現在の状況に強く責任を感じていた。
ウォーリーの信頼に応えようと必死で計画を立てたのに、目的地に到着するどころか現在地もわからない状況である。
西へ進めば必然的に街道にぶつかると思っていたが、いまだ街道は見えないのだ。
当初、エリックは小型レーダーを持っていくことを主張していた。
しかし、電波を発することから、わざわざ現在地を知らせるようなものだという意見を受け入れたのだ。
「……無理にでもレーダーを持っていくんだったな……」
エリックがそうつぶやくと、ウォーリーが彼の肩を叩いた。
「エリック、気にするな。計画を承認したのは俺だ。こうなったのも俺の責任だからな。エリックは俺の指示通りに動いた。それだけのことじゃないか。それでエリックに責任を感じさせたというのであれば、俺の罪だ、すまん」
ウォーリーがエリックに両手を合わせて頭を下げた。
ECN社の幹部などからは「頭が高い」と言われるウォーリーではあるが、実は自分の身内に対しては素直だ。
自分に非があれば、素直に頭を下げることもできる。こうしたところが仲間から慕われている要因にもなっているのだ。
エリックはウォーリーの気遣いに申し訳ない思いでいっぱいになった。
計画を承認したのはウォーリーであったとしても、計画を立てたのは自分なのだ。
「そうだ、エリック。さっきから何か嫌な予感がするとか言っているが、何を気にしているんだ?」
サクライがエリックの様子を見かねたのか声をかけた。
エリックは少し考えてから、「自分の思い過ごしかもしれませんが」と前置きして、思うところを話した。
現在地がポータルやジンと比較して気温が低そうなこと、後ろに雪を被った山々が見えることが気になっている。
携帯端末以外の電子機器を持ち歩いていないので、正確なところはよくわからないのだが、フルヤまでの距離の倍以上を歩いているという気がしないでもない。
また、サブマリン島でこの時期に雪を被っている山々として考えられるのは二箇所しかない。
すなわち、島の南北を分断する山脈のどちらかである。
進んだ方向からして、見えているのはサファイア・シー北側の山脈であろう。
南側の山脈は活火山で、今でも噴煙をあげている山がいくつもあるという。
少なくとも、先ほど見えた山々に噴煙をあげているものはなかった。
これらの状況を勘案すると西を目指して進んでいたはずが、何時の間にか北東に向かって進んでいたことになる。フルヤとは正反対の方向に近い。
「北部か……可能性は無いとは言えないが、人なんて住んでいたか?」
ミヤハラがエリックの見解に疑問を呈した。
サブマリン島の北部に人が住んでいるなどという情報を彼らは持っていなかった。
すると突然、背後の戸が開き、声がした。
「そこの四人、何をしているのだ?」
「ミヤハラ、サクライ、構えろ!」
ウォーリーの声が飛び、ミヤハラとサクライがのっそりと立ち上がった。
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