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第三章
118:モリタの手腕はいかに?
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セスに三限の授業でのぎこちなさを指摘されたレイカは、セスに背中を向けて考え込む素振りを見せている。
「あ、メルツ先生、何かあるのでしたら、僕らでよければお話を伺います。一人で抱え込んでいるよりいいと思います」
セスの言葉にレイカが振り向いた。
「先生、そういうこった。一人で悩んでいたって良いことないですよ」
ロビーまでセスに同調した。
その様子を見たモリタが「よせ、失礼じゃないか!」とセスとロビーを制したが、既に手遅れである。
「でもね……お忙しい職員の方に相談するのも悪いと思いますし……」
レイカは突然の申し出に少々困惑している様子だ。
「気にしないでください。むしろ僕等が相談したいこともあります。先生の考えや狙いが理解できるようになれば、もうちょっと上手に授業のサポートもできると思っていますので……」
セスは少し考えるような仕草を見せてから、レイカにそう申し出た。
彼の場合、相談を持ちかけられる側よりも相談する側のほうがよく似合う。
「……そうですね、お話しておきましょうか?」
レイカが膝を曲げて目線の高さをセスと同じにしてから大きくうなずいた。
彼女は長身であるし、セスは車椅子だからだ。
「任せてください! ここではなんですから、食事でもしながら、でいいですか? モリタが良い店を知ってます!」
セスが車椅子に座ったまま胸を張った。
セスの言葉にモリタは呆気にとられた様子だった。
ロビーもセスに同調する。
「モリタは見かけに似合わずシャレた店知っているんですよ」
レイカはニコッと微笑んでから、
「お任せしますね。六時半に控室に行けばいいかしら?」
と答えるとモリタが全身を硬直させて大げさにうなずいた。
レイカが機械室を出てからモリタがセスに文句を言う。
その表情は憮然としていたが、奥底にある喜びを隠せていないのはセスやロビーからは明白であった。
「セス、ひどいよ! メルツ先生と勝手に約束を取り付けて僕に振るなんてさ!」
セスは素直にごめんと謝る。ただ、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
ロビーがそれを見てモリタをたしなめる。
「あのなぁ、モリタ。セスはお前のことを思ってメルツ先生を誘い出してくれたんだぞ!それを何だ。文句ばかり言いやがって。メルツ先生に言いつけてやろうかな?」
モリタは首をぶんぶんと横に振って、それは勘弁という様子を見せた。
「ならモリタ、ここはセスに感謝しろよ。ただ、あの先生がモリタの方を向くかはわからないけどな。意外とあの先生、セスが好みかもしれないし」
ロビーはあくまでもモリタをからかいたいらしい。
モリタは心配そうな顔をしているが、
「セス、メルツ先生に抜け駆けするのは禁止だからね」
と警告した。セスは笑いながら心配いらないよ、と答えた。
(……メルツ先生は魅力的な女性だけど、僕のタイプではないからね。モリタも安心していいよ)
セスは心の中でそう思っていたのだが、モリタがセスの気持ちに気づくことは無さそうだ。
「ここはモリタくんのお手並み拝見、というところだな。なあ、セス」
ロビーがニコニコしているが、セスはロビーの耳元で注意する。
「まあまあ、ああ見えてもモリタは繊細だからさ、落ち着かせてやろうよ」
モリタはチラッとセス達を一瞥してから、電話をかけた。
どうやらこれから行く店に連絡を入れているようだ。
セスはその様子を確認してから、機械の後片付けを始めた。
車椅子を器用に操って、重たい機材もすいすいと運んでいく。
「セス、モリタのために片付けまでやる必要はないぞ。あんまり甘やかすとつけ上がるからな。片付けはモリタにやらせるのが奴のためだって」
ロビーはセスにそう言ったものの、彼も片付けには参加している。もちろんモリタのためではなく、セスを気遣ってのことである。:
セスはいそいそと機械を掃除したり、ケーブル類を片付けたりしている。
彼の片付けのテンポが早いので、モリタが参加する前に片付けが終わってしまいそうだ。
「七時から予約が取れた。セス、ロビー、落ち着いた店だから騒いで雰囲気を壊さないでくれよ」
モリタは厳しい表情を作ってセスとロビーに忠告した。
「あー、はいはい」
ロビーは処置なし、といった表情でやる気無さそうにうなずいた。
セスは穏やかな笑みを浮かべながら無言でうなずいた。
「あ、メルツ先生、何かあるのでしたら、僕らでよければお話を伺います。一人で抱え込んでいるよりいいと思います」
セスの言葉にレイカが振り向いた。
「先生、そういうこった。一人で悩んでいたって良いことないですよ」
ロビーまでセスに同調した。
その様子を見たモリタが「よせ、失礼じゃないか!」とセスとロビーを制したが、既に手遅れである。
「でもね……お忙しい職員の方に相談するのも悪いと思いますし……」
レイカは突然の申し出に少々困惑している様子だ。
「気にしないでください。むしろ僕等が相談したいこともあります。先生の考えや狙いが理解できるようになれば、もうちょっと上手に授業のサポートもできると思っていますので……」
セスは少し考えるような仕草を見せてから、レイカにそう申し出た。
彼の場合、相談を持ちかけられる側よりも相談する側のほうがよく似合う。
「……そうですね、お話しておきましょうか?」
レイカが膝を曲げて目線の高さをセスと同じにしてから大きくうなずいた。
彼女は長身であるし、セスは車椅子だからだ。
「任せてください! ここではなんですから、食事でもしながら、でいいですか? モリタが良い店を知ってます!」
セスが車椅子に座ったまま胸を張った。
セスの言葉にモリタは呆気にとられた様子だった。
ロビーもセスに同調する。
「モリタは見かけに似合わずシャレた店知っているんですよ」
レイカはニコッと微笑んでから、
「お任せしますね。六時半に控室に行けばいいかしら?」
と答えるとモリタが全身を硬直させて大げさにうなずいた。
レイカが機械室を出てからモリタがセスに文句を言う。
その表情は憮然としていたが、奥底にある喜びを隠せていないのはセスやロビーからは明白であった。
「セス、ひどいよ! メルツ先生と勝手に約束を取り付けて僕に振るなんてさ!」
セスは素直にごめんと謝る。ただ、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
ロビーがそれを見てモリタをたしなめる。
「あのなぁ、モリタ。セスはお前のことを思ってメルツ先生を誘い出してくれたんだぞ!それを何だ。文句ばかり言いやがって。メルツ先生に言いつけてやろうかな?」
モリタは首をぶんぶんと横に振って、それは勘弁という様子を見せた。
「ならモリタ、ここはセスに感謝しろよ。ただ、あの先生がモリタの方を向くかはわからないけどな。意外とあの先生、セスが好みかもしれないし」
ロビーはあくまでもモリタをからかいたいらしい。
モリタは心配そうな顔をしているが、
「セス、メルツ先生に抜け駆けするのは禁止だからね」
と警告した。セスは笑いながら心配いらないよ、と答えた。
(……メルツ先生は魅力的な女性だけど、僕のタイプではないからね。モリタも安心していいよ)
セスは心の中でそう思っていたのだが、モリタがセスの気持ちに気づくことは無さそうだ。
「ここはモリタくんのお手並み拝見、というところだな。なあ、セス」
ロビーがニコニコしているが、セスはロビーの耳元で注意する。
「まあまあ、ああ見えてもモリタは繊細だからさ、落ち着かせてやろうよ」
モリタはチラッとセス達を一瞥してから、電話をかけた。
どうやらこれから行く店に連絡を入れているようだ。
セスはその様子を確認してから、機械の後片付けを始めた。
車椅子を器用に操って、重たい機材もすいすいと運んでいく。
「セス、モリタのために片付けまでやる必要はないぞ。あんまり甘やかすとつけ上がるからな。片付けはモリタにやらせるのが奴のためだって」
ロビーはセスにそう言ったものの、彼も片付けには参加している。もちろんモリタのためではなく、セスを気遣ってのことである。:
セスはいそいそと機械を掃除したり、ケーブル類を片付けたりしている。
彼の片付けのテンポが早いので、モリタが参加する前に片付けが終わってしまいそうだ。
「七時から予約が取れた。セス、ロビー、落ち着いた店だから騒いで雰囲気を壊さないでくれよ」
モリタは厳しい表情を作ってセスとロビーに忠告した。
「あー、はいはい」
ロビーは処置なし、といった表情でやる気無さそうにうなずいた。
セスは穏やかな笑みを浮かべながら無言でうなずいた。
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