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第二章
85:「タブーなきエンジニア集団」、台頭す
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「我々は特定企業による司法警察権の独占に反対します」
ウォーリー・トワ率いる「タブーなきエンジニア集団」はOP社、すなわちエイチ・ハドリの行動に警鐘を鳴らす運動を展開していた。LH四九年三月上旬のことである。
前出のキャッチコピーはメンバーの全員の名刺に刷り込まれた。
また、業務で使用する機材すべてに同じキャッチコピーが印刷されたステッカーを貼付する徹底ぶりである。
ウォーリーは、この手の活動が好きである。
このキャッチコピーが印刷されたステッカーが納入されたとき、ウォーリーは全メンバーを集めてこう言ったのだ。
「OP社の行動の不当さを市民の皆様に知っていただきましょう。そしてOP社に過ちを認めさせ、不当な権力独占を止めるその日まで、メンバー一丸となって頑張りましょう!」
この演説を聞いたとき、ミヤハラとサクライは顔を見合わせ、「よくまあ、うちのマネージャーはあそこまで熱くなれますね」と半ば呆れたものだった。
当初、活動案を提示されたウォーリーは「市民活動みたいで気乗りがしない」と活動の主旨はともかく、その内容には大いに不満を漏らしていたのである。彼の好みからすると活動内容が地味に見えたのであった。
それがいつの間にか先頭に立って演説を始めてしまっていては、不満の言葉にも説得力がないというものだ。
もっとも、ミヤハラやサクライのようなウォーリーに対して覚めた感情を持つ者は「タブーなきエンジニア集団」では少数派であった。
メンバーの多くはウォーリーを熱狂的に支持していたから「OP社に過ちを認めさせるのだ」というウォーリーの想いを熱く受け止めていた。
覚めていたものの、サクライにもウォーリーの想いは理解できる。
サクライは表に出さなかったが、自身の友人や知人などにステッカーやビラを配布してウォーリーの支持者を増やす活動をしていたのである。
ミヤハラの方は特に動きを見せなかったが、これは彼がウォーリーの活動に反対していることを意味しない。
単に腰が重いだけであり、このようなレベルの仕事は自身の担当ではないと考えていたからだった
「タブーなきエンジニア集団」がOP社の不当さを訴える活動を展開し始めたとき、市民の大部分の視線は冷ややかであった。
技術は優秀だが、怪しげな政治活動も行う変な集団、と思われていた節があることを否定できなかった。
しかし、彼らは地道な活動によって徐々に状況を変えていった。
OP社やECN社と比較して「タブーなきエンジニア集団」の規模は小さいが、三千名を超える勢力はエクザロームではかなり大規模なものである。
エクザロームに存在している企業の大部分は、従業員数で五〇名以下のレベルであり、ハドリはこの規模の企業相手でさえ容赦しなかったのである。
ウォーリーや「タブーなきエンジニア集団」は、本業のシステム関係で顧客から次第に信頼を得るようになっていた。
どの企業が作り上げたシステムでも嫌な顔をせずメンテナンスしていた上、お客の細かい相談にも快く答えていたからである。
対応範囲をシステムに限定しなかったのも、顧客のウケがよかった原因だった。
自宅のコンピュータが壊れ食材の宅配の注文を出せなくなった老人宅で、家人に代わって食材の買出しをしたのはその一例である。
これはトップのウォーリーがこのような作業が好きだったことが大きい。彼は、困っている者を見ると何かせずにはおれないのだ。
「タブーなきエンジニア集団」がこうした姿勢をとるのに対し、OP社は自社製品を利用していない顧客は完全無視であったし、ECN社も最近はその傾向がやや目立つ。
他にも小規模な競合が数社あったが、自社が導入した製品以外への対処をするだけのパワーがない。
一方で「タブーなきエンジニア集団」はECN社でもトップクラスの技術者が集まったチームである。
その上、他のサービスも行き届いているとあっては、顧客も支持しないわけにはいかなくなってきたのである。
こうなると彼らが訴えているOP社の危険性についても、一定の理解を示す者が出始めるようになった。
しかし、彼らではなくOP社を支持する者達も少なくない。
そうした者の一部は、治安改革センターへ「タブーなきエンジニア集団」の動きを逐次報告していた。
報告を受けたOP社はハドリの命で「タブーなきエンジニア集団」に対しての情報収集を開始した。
一方でウォーリーはこのようなハドリの動きをまったくといっていいほど把握していなかった。
OP社による「タブーなきエンジニア集団」の情報収集は秘密裏に行われていたことと、ウォーリー自身が「この程度の活動なら、OP社も相手にしないだろう」とたかをくくっていたことが原因である。
「タブーなきエンジニア集団」は、「エクザローム防衛隊」のようなテロリスト集団ではないのだ。
ここでウォーリーは、OP社が過去に行ってきたことを十分検討すべきだったかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」はシステム関係の業務でOP社と競合している。
その規模は従業員数レベルで二桁の差がある。
こうした弱い相手であっても、OP社は自社と競合していれば、どのような手段を用いてでも自社の傘下に組み入れたか、潰すまで攻撃を加えたのである。
例外はECN社であったが、こちらもOP社の傘下に入るのは時間の問題であろう。
ウォーリー・トワ率いる「タブーなきエンジニア集団」はOP社、すなわちエイチ・ハドリの行動に警鐘を鳴らす運動を展開していた。LH四九年三月上旬のことである。
前出のキャッチコピーはメンバーの全員の名刺に刷り込まれた。
また、業務で使用する機材すべてに同じキャッチコピーが印刷されたステッカーを貼付する徹底ぶりである。
ウォーリーは、この手の活動が好きである。
このキャッチコピーが印刷されたステッカーが納入されたとき、ウォーリーは全メンバーを集めてこう言ったのだ。
「OP社の行動の不当さを市民の皆様に知っていただきましょう。そしてOP社に過ちを認めさせ、不当な権力独占を止めるその日まで、メンバー一丸となって頑張りましょう!」
この演説を聞いたとき、ミヤハラとサクライは顔を見合わせ、「よくまあ、うちのマネージャーはあそこまで熱くなれますね」と半ば呆れたものだった。
当初、活動案を提示されたウォーリーは「市民活動みたいで気乗りがしない」と活動の主旨はともかく、その内容には大いに不満を漏らしていたのである。彼の好みからすると活動内容が地味に見えたのであった。
それがいつの間にか先頭に立って演説を始めてしまっていては、不満の言葉にも説得力がないというものだ。
もっとも、ミヤハラやサクライのようなウォーリーに対して覚めた感情を持つ者は「タブーなきエンジニア集団」では少数派であった。
メンバーの多くはウォーリーを熱狂的に支持していたから「OP社に過ちを認めさせるのだ」というウォーリーの想いを熱く受け止めていた。
覚めていたものの、サクライにもウォーリーの想いは理解できる。
サクライは表に出さなかったが、自身の友人や知人などにステッカーやビラを配布してウォーリーの支持者を増やす活動をしていたのである。
ミヤハラの方は特に動きを見せなかったが、これは彼がウォーリーの活動に反対していることを意味しない。
単に腰が重いだけであり、このようなレベルの仕事は自身の担当ではないと考えていたからだった
「タブーなきエンジニア集団」がOP社の不当さを訴える活動を展開し始めたとき、市民の大部分の視線は冷ややかであった。
技術は優秀だが、怪しげな政治活動も行う変な集団、と思われていた節があることを否定できなかった。
しかし、彼らは地道な活動によって徐々に状況を変えていった。
OP社やECN社と比較して「タブーなきエンジニア集団」の規模は小さいが、三千名を超える勢力はエクザロームではかなり大規模なものである。
エクザロームに存在している企業の大部分は、従業員数で五〇名以下のレベルであり、ハドリはこの規模の企業相手でさえ容赦しなかったのである。
ウォーリーや「タブーなきエンジニア集団」は、本業のシステム関係で顧客から次第に信頼を得るようになっていた。
どの企業が作り上げたシステムでも嫌な顔をせずメンテナンスしていた上、お客の細かい相談にも快く答えていたからである。
対応範囲をシステムに限定しなかったのも、顧客のウケがよかった原因だった。
自宅のコンピュータが壊れ食材の宅配の注文を出せなくなった老人宅で、家人に代わって食材の買出しをしたのはその一例である。
これはトップのウォーリーがこのような作業が好きだったことが大きい。彼は、困っている者を見ると何かせずにはおれないのだ。
「タブーなきエンジニア集団」がこうした姿勢をとるのに対し、OP社は自社製品を利用していない顧客は完全無視であったし、ECN社も最近はその傾向がやや目立つ。
他にも小規模な競合が数社あったが、自社が導入した製品以外への対処をするだけのパワーがない。
一方で「タブーなきエンジニア集団」はECN社でもトップクラスの技術者が集まったチームである。
その上、他のサービスも行き届いているとあっては、顧客も支持しないわけにはいかなくなってきたのである。
こうなると彼らが訴えているOP社の危険性についても、一定の理解を示す者が出始めるようになった。
しかし、彼らではなくOP社を支持する者達も少なくない。
そうした者の一部は、治安改革センターへ「タブーなきエンジニア集団」の動きを逐次報告していた。
報告を受けたOP社はハドリの命で「タブーなきエンジニア集団」に対しての情報収集を開始した。
一方でウォーリーはこのようなハドリの動きをまったくといっていいほど把握していなかった。
OP社による「タブーなきエンジニア集団」の情報収集は秘密裏に行われていたことと、ウォーリー自身が「この程度の活動なら、OP社も相手にしないだろう」とたかをくくっていたことが原因である。
「タブーなきエンジニア集団」は、「エクザローム防衛隊」のようなテロリスト集団ではないのだ。
ここでウォーリーは、OP社が過去に行ってきたことを十分検討すべきだったかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」はシステム関係の業務でOP社と競合している。
その規模は従業員数レベルで二桁の差がある。
こうした弱い相手であっても、OP社は自社と競合していれば、どのような手段を用いてでも自社の傘下に組み入れたか、潰すまで攻撃を加えたのである。
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