54 / 436
第二章
51:治安改革活動の成果
しおりを挟む
OP社による治安改革活動が開始されてから一ヶ月が経過しようとしていた。
当初、サブマリン島の市民の反応はとりあえず様子見、というところであったが、次第に好意的なものへと変化してきていた。
犯罪が激減したのである。
武装したOP社従業員による巡回は、それだけで犯罪の抑止効果があったようだ。
OP社を率いるハドリは容赦がないことで知られている。
そしてその通り、OP社の従業員はどんな小さな犯罪でも見逃さず、犯人を拘束し、罰を与えたのである。
この治安改革活動がOP社という一私企業、というよりもトップのハドリの独断で行われている点について、危惧を抱く者もいたのだが、それは次第に少数派となった。
犯罪が激減するという実績を示されては、反対派も大きな声で反対を唱えるわけにいかなくなったのである。また、苛烈なことで知られるハドリが恐れられていた、というのも影響していた。
市民が味方すればOP社としても仕事がしやすい。
ハドリはともかく、末端で治安改革活動に当たっているセキュリティ・センターやパトロール・チームの従業員にとっては市民の目線はそれなりのプレッシャーになっていたからだ。
現在は多くの市民がOP社の活動を好意的に評価しており、市民からの通報や情報提供が増えてきた。
このような状況の中、医療施設メディットのある都市ジンに程近い治安改革センターへ市民から数件の情報が寄せられていた。
「メディット近くのアパートに、『エクザローム防衛隊』の残党が潜伏している」
寄せられた情報は全てこの内容であった。
この治安改革センターで市民からの情報を受けたOP社の女性従業員はセキュリティ・センターに所属していた。彼女は所属する部署の上司に連絡を取った。
連絡からほどなくしてセキュリティ・センターから一〇名ばかりの警備員が現地へ向かった。
警備員が現地を調査したところ、どうやら市民からの通報は正しいようだと確認できた。
念のため、この建物からの通信記録も確認してみる。
通信記録はECN社が持っているものを引っ張り出した。
ECN社は事実上OP社の傘下にあるので、支障はない。
また、治安改革活動に用いる限り、通信記録の閲覧はほぼ無制限に認められるとされていた。
これはOP社が勝手に定めたルールではあったが、徹底して守られていた。
ルール違反が発覚すれば、ハドリは容赦なくそれを罰したからだ。
自ら定めたルールを厳しく守っていたことはむしろ市民からのOP社の評価を上げることに寄与していた。
通信記録を確認した結果、このアパートに「エクザローム防衛隊」の残党が潜伏していることはほぼ間違いないことが確認できた。
「エクザローム防衛隊」のメンバーも傍受を警戒して通信を暗号で行っていたのだが、OP社の調査力の前には無力だった。
OP社は通信の相手先を見ていたのである。
通信を暗号で行っていても、通信の相手を偽装することは難しい。
調査には通信のインフラを担っているECN社の技術も利用されている。偽装したところで、それを見抜く手立てを十分に有しているのだ。
「エクザローム防衛隊」潜伏の報はハドリにも伝わった。遅れようものなら容赦なくハドリから処罰されるからだ。
ハドリはすぐに指示を出した、「殲滅せよ」と。
指示を受けたセキュリティ・センターのセンター長オオカワは震える声で「投降を勧告する必要はありますか?」と問うた。
しかし、ハドリは「無用だ。先手を打て」と命じたのだった。
LH四八年一一月一八日、午後二時のことである。
当初、サブマリン島の市民の反応はとりあえず様子見、というところであったが、次第に好意的なものへと変化してきていた。
犯罪が激減したのである。
武装したOP社従業員による巡回は、それだけで犯罪の抑止効果があったようだ。
OP社を率いるハドリは容赦がないことで知られている。
そしてその通り、OP社の従業員はどんな小さな犯罪でも見逃さず、犯人を拘束し、罰を与えたのである。
この治安改革活動がOP社という一私企業、というよりもトップのハドリの独断で行われている点について、危惧を抱く者もいたのだが、それは次第に少数派となった。
犯罪が激減するという実績を示されては、反対派も大きな声で反対を唱えるわけにいかなくなったのである。また、苛烈なことで知られるハドリが恐れられていた、というのも影響していた。
市民が味方すればOP社としても仕事がしやすい。
ハドリはともかく、末端で治安改革活動に当たっているセキュリティ・センターやパトロール・チームの従業員にとっては市民の目線はそれなりのプレッシャーになっていたからだ。
現在は多くの市民がOP社の活動を好意的に評価しており、市民からの通報や情報提供が増えてきた。
このような状況の中、医療施設メディットのある都市ジンに程近い治安改革センターへ市民から数件の情報が寄せられていた。
「メディット近くのアパートに、『エクザローム防衛隊』の残党が潜伏している」
寄せられた情報は全てこの内容であった。
この治安改革センターで市民からの情報を受けたOP社の女性従業員はセキュリティ・センターに所属していた。彼女は所属する部署の上司に連絡を取った。
連絡からほどなくしてセキュリティ・センターから一〇名ばかりの警備員が現地へ向かった。
警備員が現地を調査したところ、どうやら市民からの通報は正しいようだと確認できた。
念のため、この建物からの通信記録も確認してみる。
通信記録はECN社が持っているものを引っ張り出した。
ECN社は事実上OP社の傘下にあるので、支障はない。
また、治安改革活動に用いる限り、通信記録の閲覧はほぼ無制限に認められるとされていた。
これはOP社が勝手に定めたルールではあったが、徹底して守られていた。
ルール違反が発覚すれば、ハドリは容赦なくそれを罰したからだ。
自ら定めたルールを厳しく守っていたことはむしろ市民からのOP社の評価を上げることに寄与していた。
通信記録を確認した結果、このアパートに「エクザローム防衛隊」の残党が潜伏していることはほぼ間違いないことが確認できた。
「エクザローム防衛隊」のメンバーも傍受を警戒して通信を暗号で行っていたのだが、OP社の調査力の前には無力だった。
OP社は通信の相手先を見ていたのである。
通信を暗号で行っていても、通信の相手を偽装することは難しい。
調査には通信のインフラを担っているECN社の技術も利用されている。偽装したところで、それを見抜く手立てを十分に有しているのだ。
「エクザローム防衛隊」潜伏の報はハドリにも伝わった。遅れようものなら容赦なくハドリから処罰されるからだ。
ハドリはすぐに指示を出した、「殲滅せよ」と。
指示を受けたセキュリティ・センターのセンター長オオカワは震える声で「投降を勧告する必要はありますか?」と問うた。
しかし、ハドリは「無用だ。先手を打て」と命じたのだった。
LH四八年一一月一八日、午後二時のことである。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる