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第一章
42:ハドリの目論見
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ハドリが治安改革活動の開始を発表すると同時にポータル・シティ市街のパトロールも開始された。
こちらはOP社パトロール・チームによる巡回である。
逃亡中の「エクザローム防衛隊」の残党を拘束するには至らなくても、十分に睨みをきかせることができるはずだ。
それだけではなく、ハドリはECN社へも「技術協力」の名目でセキュリティ・センターの人員を送り込んだ。こちらも治安改革活動のうちだ。
ECN社はエクザローム全域の情報インフラを担う企業である。
ハドリはECN社の業務のうち、通信を重視した。
通信を押さえ、その内容を把握することで「エクザローム防衛隊」の残党の足取りをたどることもできる。
また、その他にもOP社に対する動きを迅速にキャッチするという意味もある。
不穏な動きがあれば、それは即座にハドリに通知されるようになる。
ハドリには彼なりの考えがあった。
閉塞感と絶望に覆われている現在の状況は変えなければならない。
現状は自らの力で生き抜くことの出来ない者たちがうろたえ、自暴自棄になっている。
こうした力の無い者がこの地に溢れてしまっては、この地の未来は無いであろう。
この地を守るという気概も無く、かつ自分自身で生き抜く力が無い者など、子供と同じである。
エクザロームが子供だらけになり、大人を失えばその末路は滅亡である。
滅亡とは、すなわちこの地に住む者の敗北を意味する。
敗北を最も忌避するハドリにとって、このような事態は絶対に避けなければならないところである。
そのためには力のあるリーダーが人々を率いる必要があった。
ハドリの見るところ、自分以外にエクザロームを変える気概と能力を有する者は無かった。
エクザロームを変えるためには力が要る。
そう考えて彼はOP社を立ち上げた。
OP社が最初に行ったのは、この世界の最大の資源である電力を押さえること、すなわち発電事業だった。
電力はエクザロームの人々を動かす動力であり、これを押さえられれば人々の生活をコントロールできる。
OP社はポータル・シティ各所にある小さな発電事業者を買収しまくった。
買収の結果、OP社はエクザロームで唯一に近い発電事業者となったのだ。
OP社が業務を放棄すれば、エクザロームの電力供給が破たんするほどになったのである。
電力の次に彼が目をつけたのは、サブマリン島南部の都市インデストで発掘されている鉄鉱石であった。
OP社が本拠地を構えるポータル・シティからインデストまでは三百キロ近く離れていたが、ハドリは迷うことなく鉄鉱石の発掘とその加工事業に参入したのだ。
OP社が本社を構えるポータル・シティとインデストの間には大規模な輸送手段が無く、現在でも鉄鉱石や加工品の輸送は人力である。
また、途中の道にはセスの育ての父の命を奪った悪名高き「フジミの大虐殺」で知られるフジミ・タウンもある。ハドリの母も「フジミの大虐殺」で命を落としている。
フジミ・タウンは現在も賊の巣窟のような状況であり、この近辺での凶悪事件は絶えない。
ハドリも自社の従業員が襲撃される経験を何度もしており、いずれは手を下す必要があると考えている。
ハドリ自身もフジミ・タウンの出身であり、大いに因縁がある。
鉄鉱石に話を戻すと、ようやく最近になって材料としての加工事業が軌道に乗りかけたところであった。この事業が発展すれば、電気と金属の二つの資源をOP社がほぼ独占する形になる。
他にも通貨システムについてもOP社は一枚噛んでいる。
社会インフラを押さえることが、力を得るための最も効果的な手段であると彼は信じていたし、現実もほぼその通りとなっていた。
しかし、ハドリにとってこれでは不十分だった。
少なくとも他に二つのものが必要であると考えていた。
二つのうち一つはエクザロームの変革を行う力、すなわちハドリの意思に逆らう者を打ち破るための力であった。
ハドリはこのためにエクザローム全域における司法警察権を掌握することを考えていた。
もう一つは情報である。
エクザロームにおける情報インフラの大部分はECN社が握っている。
情報インフラを押さえればそれを流れる情報も確保できる。
ハドリはそう考えて鉄鉱石の発掘・加工事業とほぼ同時にこの分野にも参入していたのだが、思いのほかECN社の牙城は堅固だった。
OP社もかなり健闘しているのだが、ハドリの思うようにシェアが伸ばせなかった。
いくつか理由はあるが、もっとも大きいと思われたのは技術者の質・量の差であるようにハドリには思われた。
ECN社は社長のオイゲンの性質もあり、自由で上の立場の人間に対してもモノが言いやすい社風である。
例外もあるのだが、情報インフラを担う部門には特にこの傾向が強かった。
情報インフラを担う技術者たちにはこうした社風を好み、ECN社を志望する者が多い。
社風以外の理由もあるが、技術者獲得の面でECN社はOP社に対して優位に立っていたのは紛れもない事実であった。
現状を冷静に分析した結果、ハドリはECN社と正面きって戦うのは愚策と判断した。
代わりにECN社を取り込むことで情報インフラを押さえようとしたのである。
戦うことを避けたハドリの策は功を奏し、今やハドリは不完全ながらもこの二つをその手に入れつつある。
OP社が治安改革活動参入は、ハドリの長年の悲願でもあった。
広域的な治安改革活動が可能になれば、因縁あるフジミ・タウンに対しても手を下すことが可能となる。
このまま順調にことが進み、「エクザローム防衛隊」なるテロリストの処断が完了すれば、次はいよいよフジミ・タウンに手をつけられる。
フジミ・タウンは現在対外的な交流を断っている状況で、極端に情報が少ない。
フジミ・タウンに手を下すためには情報が必要であった。
情報収集にはECN社がハドリの思い通りに動くことが必須だ。
今のところECN社が比較的従順であるため、フジミ・タウンを含めた各所の情報収集に大きな問題は発生していない。
ただしECN社がハドリを欺こうとする可能性も考えられるので、警戒は必要である。ハドリに不満を持つ者同士が結託しないよう、できるだけ組織は流動的にしておくことに越したことはない。
OP社社長のエイチ・ハドリとはこのような考え方をする人物である。
こちらはOP社パトロール・チームによる巡回である。
逃亡中の「エクザローム防衛隊」の残党を拘束するには至らなくても、十分に睨みをきかせることができるはずだ。
それだけではなく、ハドリはECN社へも「技術協力」の名目でセキュリティ・センターの人員を送り込んだ。こちらも治安改革活動のうちだ。
ECN社はエクザローム全域の情報インフラを担う企業である。
ハドリはECN社の業務のうち、通信を重視した。
通信を押さえ、その内容を把握することで「エクザローム防衛隊」の残党の足取りをたどることもできる。
また、その他にもOP社に対する動きを迅速にキャッチするという意味もある。
不穏な動きがあれば、それは即座にハドリに通知されるようになる。
ハドリには彼なりの考えがあった。
閉塞感と絶望に覆われている現在の状況は変えなければならない。
現状は自らの力で生き抜くことの出来ない者たちがうろたえ、自暴自棄になっている。
こうした力の無い者がこの地に溢れてしまっては、この地の未来は無いであろう。
この地を守るという気概も無く、かつ自分自身で生き抜く力が無い者など、子供と同じである。
エクザロームが子供だらけになり、大人を失えばその末路は滅亡である。
滅亡とは、すなわちこの地に住む者の敗北を意味する。
敗北を最も忌避するハドリにとって、このような事態は絶対に避けなければならないところである。
そのためには力のあるリーダーが人々を率いる必要があった。
ハドリの見るところ、自分以外にエクザロームを変える気概と能力を有する者は無かった。
エクザロームを変えるためには力が要る。
そう考えて彼はOP社を立ち上げた。
OP社が最初に行ったのは、この世界の最大の資源である電力を押さえること、すなわち発電事業だった。
電力はエクザロームの人々を動かす動力であり、これを押さえられれば人々の生活をコントロールできる。
OP社はポータル・シティ各所にある小さな発電事業者を買収しまくった。
買収の結果、OP社はエクザロームで唯一に近い発電事業者となったのだ。
OP社が業務を放棄すれば、エクザロームの電力供給が破たんするほどになったのである。
電力の次に彼が目をつけたのは、サブマリン島南部の都市インデストで発掘されている鉄鉱石であった。
OP社が本拠地を構えるポータル・シティからインデストまでは三百キロ近く離れていたが、ハドリは迷うことなく鉄鉱石の発掘とその加工事業に参入したのだ。
OP社が本社を構えるポータル・シティとインデストの間には大規模な輸送手段が無く、現在でも鉄鉱石や加工品の輸送は人力である。
また、途中の道にはセスの育ての父の命を奪った悪名高き「フジミの大虐殺」で知られるフジミ・タウンもある。ハドリの母も「フジミの大虐殺」で命を落としている。
フジミ・タウンは現在も賊の巣窟のような状況であり、この近辺での凶悪事件は絶えない。
ハドリも自社の従業員が襲撃される経験を何度もしており、いずれは手を下す必要があると考えている。
ハドリ自身もフジミ・タウンの出身であり、大いに因縁がある。
鉄鉱石に話を戻すと、ようやく最近になって材料としての加工事業が軌道に乗りかけたところであった。この事業が発展すれば、電気と金属の二つの資源をOP社がほぼ独占する形になる。
他にも通貨システムについてもOP社は一枚噛んでいる。
社会インフラを押さえることが、力を得るための最も効果的な手段であると彼は信じていたし、現実もほぼその通りとなっていた。
しかし、ハドリにとってこれでは不十分だった。
少なくとも他に二つのものが必要であると考えていた。
二つのうち一つはエクザロームの変革を行う力、すなわちハドリの意思に逆らう者を打ち破るための力であった。
ハドリはこのためにエクザローム全域における司法警察権を掌握することを考えていた。
もう一つは情報である。
エクザロームにおける情報インフラの大部分はECN社が握っている。
情報インフラを押さえればそれを流れる情報も確保できる。
ハドリはそう考えて鉄鉱石の発掘・加工事業とほぼ同時にこの分野にも参入していたのだが、思いのほかECN社の牙城は堅固だった。
OP社もかなり健闘しているのだが、ハドリの思うようにシェアが伸ばせなかった。
いくつか理由はあるが、もっとも大きいと思われたのは技術者の質・量の差であるようにハドリには思われた。
ECN社は社長のオイゲンの性質もあり、自由で上の立場の人間に対してもモノが言いやすい社風である。
例外もあるのだが、情報インフラを担う部門には特にこの傾向が強かった。
情報インフラを担う技術者たちにはこうした社風を好み、ECN社を志望する者が多い。
社風以外の理由もあるが、技術者獲得の面でECN社はOP社に対して優位に立っていたのは紛れもない事実であった。
現状を冷静に分析した結果、ハドリはECN社と正面きって戦うのは愚策と判断した。
代わりにECN社を取り込むことで情報インフラを押さえようとしたのである。
戦うことを避けたハドリの策は功を奏し、今やハドリは不完全ながらもこの二つをその手に入れつつある。
OP社が治安改革活動参入は、ハドリの長年の悲願でもあった。
広域的な治安改革活動が可能になれば、因縁あるフジミ・タウンに対しても手を下すことが可能となる。
このまま順調にことが進み、「エクザローム防衛隊」なるテロリストの処断が完了すれば、次はいよいよフジミ・タウンに手をつけられる。
フジミ・タウンは現在対外的な交流を断っている状況で、極端に情報が少ない。
フジミ・タウンに手を下すためには情報が必要であった。
情報収集にはECN社がハドリの思い通りに動くことが必須だ。
今のところECN社が比較的従順であるため、フジミ・タウンを含めた各所の情報収集に大きな問題は発生していない。
ただしECN社がハドリを欺こうとする可能性も考えられるので、警戒は必要である。ハドリに不満を持つ者同士が結託しないよう、できるだけ組織は流動的にしておくことに越したことはない。
OP社社長のエイチ・ハドリとはこのような考え方をする人物である。
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