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第一章
34:好機到来?
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セス、ロビー、モリタの三人の姿は職業学校の裏庭にあった。
セスとロビーが話をしており、モリタはその様子を見ていたのだが、不意に視界の隅に見慣れない者たちの姿が入った。
モリタは無意識のうちに見慣れない者たちの姿、すなわち職員棟へ向かう集団に目を向けていた。
今日は学校の中間試験中であり、生徒は既に帰宅してしまっている。
教官や職員も大部分が午前中までの勤務であり、学内には殆ど人は残っていないはずだ。
(何なのだろう、あの集団は……?)
モリタの視線にセスが気付いたようで、セスがモリタに話しかける。
「どうしたの? あ、あの集団は何だろう?」
その声にロビーも反応する。
「あん? こんな日にずいぶん来客があるもんだな。俺がちょっと見てくるわ」
ロビーが集団の方に向けて走っていった。
集団は数十人でその多くは中年の男性のようだった。先頭は小柄な男であり、この男だけ職員棟へと入っていった。
(どこかで見たことあるような……?)
そう思ったが、どこで見たのかまではロビーには思い出せない。
えい、ままよ、とロビーも職員棟へと入る。
小柄な男は理事長室へと入っていった。
(理事長への来客か……珍しいこともあるものだな)
ロビーは興味を惹かれて、理事長室の前まで歩いていく。
中から話し声が聞こえてくる。聞こえてくるのは理事長の声だけのようだ。
「……ECN社の経営企画室の方に来て頂ければ、わが校としても助かります、はい……」
(……ECN社の経営企画室?! 道理で見覚えがあるはずだ)
理事長の声はさらに続く。
「……対応ですが、学科を新設します。新設学科の教員としてお願い……」
(何? 学科が新設されるのか!)
ロビーは急いで理事長室の前を離れ、どこかへと走っていった……
「理事長、声が大きいのですけど。外に聞かれたらまずい話では?」
「シヴァさん、いえ、シヴァ先生、既に決定している事項だから問題ありません」
理事長の話の相手をしている小柄な男……それは、元ECN社経営企画室副長のトニー・シヴァであった。
(まあいい、この理事長なら御しやすいだろう)
トニーは理事長を観察しながらそう思った。
(特に金や利権が絡むと他人は信用できねえ。扱いやすい人間ならば対処のしようがあるってものだ)
トニーは腹の中でそう考えながら、表面上は丁寧に対応している。
「決定事項であれば問題ありませんね。学生募集などの手続きもありますから、早めに準備をした方がよいと思います」
「早速発表しますよ。施設の準備はできているので、いつでもお好きなときにいらしてください。それで、いつから……?」
「こちらも多忙なので、ちょっと時間がかかりますね」
「そこを何とか……」
「……理事長からお願いされてしまっては、断るに断れないですね。来月からで、どうでしょうか?」
「広告を打ちたいのでもう少し早く……」
「ちょっと待ってください、予定を調整しましょう、少しの間、失礼します」
トニーはそう言って、理事長室を出た。
トニーは理事長室の外でしばらくの間、携帯端末を操作したり、通信で外と話をするフリをしていた。一〇分ほどそうした後、再び理事長室に戻る。
「何とか調整しましたよ。来週からスタッフを回します。ただ、急な話ですから、スタッフの住居が確保できないので、何とかしていただけないですか?」
「そうですね……職員用に借り上げたマンションが二棟あります。後ほど案内させますよ」
「仕方ないですね、そこまで言われては引き下がれないですね」
「お手数をおかけします」
トニーはこの交渉でちゃっかり住居を確保しながら、職業学校にも恩を売っていた。なかなか巧みな交渉術と言えるかもしれない。もともと、トニーの交渉術の巧みさには定評があり、ECN社時代も主に他部署やオイゲンとの交渉において、その能力は発揮されていた。
セスとロビーが話をしており、モリタはその様子を見ていたのだが、不意に視界の隅に見慣れない者たちの姿が入った。
モリタは無意識のうちに見慣れない者たちの姿、すなわち職員棟へ向かう集団に目を向けていた。
今日は学校の中間試験中であり、生徒は既に帰宅してしまっている。
教官や職員も大部分が午前中までの勤務であり、学内には殆ど人は残っていないはずだ。
(何なのだろう、あの集団は……?)
モリタの視線にセスが気付いたようで、セスがモリタに話しかける。
「どうしたの? あ、あの集団は何だろう?」
その声にロビーも反応する。
「あん? こんな日にずいぶん来客があるもんだな。俺がちょっと見てくるわ」
ロビーが集団の方に向けて走っていった。
集団は数十人でその多くは中年の男性のようだった。先頭は小柄な男であり、この男だけ職員棟へと入っていった。
(どこかで見たことあるような……?)
そう思ったが、どこで見たのかまではロビーには思い出せない。
えい、ままよ、とロビーも職員棟へと入る。
小柄な男は理事長室へと入っていった。
(理事長への来客か……珍しいこともあるものだな)
ロビーは興味を惹かれて、理事長室の前まで歩いていく。
中から話し声が聞こえてくる。聞こえてくるのは理事長の声だけのようだ。
「……ECN社の経営企画室の方に来て頂ければ、わが校としても助かります、はい……」
(……ECN社の経営企画室?! 道理で見覚えがあるはずだ)
理事長の声はさらに続く。
「……対応ですが、学科を新設します。新設学科の教員としてお願い……」
(何? 学科が新設されるのか!)
ロビーは急いで理事長室の前を離れ、どこかへと走っていった……
「理事長、声が大きいのですけど。外に聞かれたらまずい話では?」
「シヴァさん、いえ、シヴァ先生、既に決定している事項だから問題ありません」
理事長の話の相手をしている小柄な男……それは、元ECN社経営企画室副長のトニー・シヴァであった。
(まあいい、この理事長なら御しやすいだろう)
トニーは理事長を観察しながらそう思った。
(特に金や利権が絡むと他人は信用できねえ。扱いやすい人間ならば対処のしようがあるってものだ)
トニーは腹の中でそう考えながら、表面上は丁寧に対応している。
「決定事項であれば問題ありませんね。学生募集などの手続きもありますから、早めに準備をした方がよいと思います」
「早速発表しますよ。施設の準備はできているので、いつでもお好きなときにいらしてください。それで、いつから……?」
「こちらも多忙なので、ちょっと時間がかかりますね」
「そこを何とか……」
「……理事長からお願いされてしまっては、断るに断れないですね。来月からで、どうでしょうか?」
「広告を打ちたいのでもう少し早く……」
「ちょっと待ってください、予定を調整しましょう、少しの間、失礼します」
トニーはそう言って、理事長室を出た。
トニーは理事長室の外でしばらくの間、携帯端末を操作したり、通信で外と話をするフリをしていた。一〇分ほどそうした後、再び理事長室に戻る。
「何とか調整しましたよ。来週からスタッフを回します。ただ、急な話ですから、スタッフの住居が確保できないので、何とかしていただけないですか?」
「そうですね……職員用に借り上げたマンションが二棟あります。後ほど案内させますよ」
「仕方ないですね、そこまで言われては引き下がれないですね」
「お手数をおかけします」
トニーはこの交渉でちゃっかり住居を確保しながら、職業学校にも恩を売っていた。なかなか巧みな交渉術と言えるかもしれない。もともと、トニーの交渉術の巧みさには定評があり、ECN社時代も主に他部署やオイゲンとの交渉において、その能力は発揮されていた。
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