上 下
96 / 102
二年目 二〇五八年

95:第九五回 一二月二〇日 もう一つの決戦

しおりを挟む
 こんにちは。レスコス・テラーサです。
 今は一二月二〇日の二一時過ぎです。
 グランド・ファイナル・グランプリの興奮冷めやらぬドラリス・リーラス・アリーナ内にあるリーラス運営会社のオフィスでこの記事を書いています。
 自宅に戻ることも考えたのですが、少しでも皆さんに早く状況をお伝えするため、このような形とさせていただきました。

 早速……と行きたいところなのですが、まずは私の担当しているもう一人の選手、オルト・ノイテス選手のことについて書かせてください。
 来年のクラスⅢ昇格を目指してのノイテス選手の戦いからお伝えします。

 ノイテス選手の今週の出場は二回。
 第一戦は一二月一六日月曜の第七競技Cランクのスピード戦でした。

 事前にもっとも除外される可能性が低いCランク競技を選ぶという方針をノイテス選手と取り決めていたため、この競技へ登録。
 過去の傾向を見ると、ノイテス選手はスピード競技をやや苦手としているように思われたのでちょっと迷ったのですが、他のCランク戦は出場できる可能性が半分以下の状態でした。
 〆切の五分前の時点で水曜のスピード戦だけが登録者数が一〇名台でしたので、ここに登録。
 最終的に登録者数が一八名で、一八分の一六の抽選を通って出場が決まりました。

 競技の結果は悔しい六位。ポイント獲得ならずで、この時点のランキングは三六四位まで降下しました。

 残りは一戦、一八日水曜のEランクのクロス戦です。
 少なくない選手が年間の最終戦を一九日や二〇日に選ぶ中、一八日というのはエアポケットのような日になっていて、出場登録者数が少ない傾向があります。
 とはいっても当番選手登録ができる第一~第三競技は抽選による除外者が出ています。
 ノイテス選手の登録した第九競技は一次登録の時点で七名、最終的には一二名と比較的出場者が少ない状況になりました。これは狙い通りです。

 競技開始直前の時点でノイテス選手のランキングは三六八位になっていました。
 この時点での三〇〇位の選手のポイントは一三二。これはかなり高い水準で、現在一二三ポイントのノイテス選手がクラスⅢ入りを果たすためにはこの競技に勝利するしかなくなりました。

 七番ブースで出場したノイテス選手は第四テイクまで八位から一〇位を行ったり来たりとかなり苦しい展開。
 この時点で私などはノイテス選手がせめてランキング自己最高位の三五〇位を上回るポイントを獲得して欲しいと願いながら、それではダメだと気持ちを入れ替えます。
 あくまでノイテス選手の最大の目標は来季のクラスⅢ昇格です。ここは勝利以外考えるべき場面ではありません。

 ノイテス選手の第五テイクは九七のビッグスコア!
 息を吹き返したノイテス選手は第五テイク終了時点で四位に浮上します。

 この競技はクロス競技ですので偶数テイクとなる最終の第六テイクは可能な限り減点されるスコアを小さくする必要があります。
 第五テイク終了時点でノイテス選手より上位の選手は軒並み九番かそれより後ろのブース。
 ここはノイテス選手が減点を最小限に抑えて後のテイク順の選手たちにプレッシャーをかけるしかないと考えました。

 ノイテス選手のテイク順で残されている一桁の数字は四と六。
 ノイテス選手はここで六を引き当て、最終テイクでの減点を一桁に抑えます。

 八~一一番ブースまでの選手は軒並み四〇以上の数字を引き、ノイテス選手を上回ることができません。
 最後の一二番ブースの選手が現在のトップですが、二位のノイテス選手とのスコア差は五四。
 この時点でまだ登場していない二九個の数字のうち、五四より大きいものは九個でした。
 既に五四は登場済みでしたので、ノイテス選手が勝利する確率は二九分の九、約三一パーセントです。

 行ける、と思った瞬間、一二番ブースの選手の最終テイクが行われました。
 進行役が読み上げた数字は……六一! 七スコア差でノイテス選手が逆転し、この競技に勝利しました。

 ノイテス選手は自己最多となる年間六勝目でEランク競技一位の一〇ポイントを獲得し、通算のポイントを一三三としました。
 一二月一八日の全ての競技が終了した時点でのランキングは二九七位。来季のクラスⅢ昇格の可能性を残して今年の全日程を終了しました。

 翌一九日、三人の選手がランキングでノイテス選手を上回り、ノイテス選手のランキングはクラスⅢ昇格ギリギリの三〇〇位になりました。

 二〇日に出場する選手の中で、ランキングでノイテス選手を逆転できる可能性のある選手は六名。この六名が全員、ノイテス選手を下回れば来年のクラスⅢ昇格が確定します。

 二〇日の第一競技にはノイテス選手を逆転できる可能性のある選手六名のうち、二名が出場しました。
 この競技にはライズ選手も出場しており、ライス選手はステージに向かう前に「援護射撃ができるようやってみる」と言葉を残しました。

 ライズ選手は残念ながら九名中七位の結果に終わりました。
 ですが、ノイテス選手を逆転できる可能性のある選手が六位、八位とポイントを獲得できなかったため、結果的にノイテス選手が救われた形となりました。

 ノイテス選手を逆転できる可能性のある残り四人の選手は、第四競技に三名、第七競技に一名出場します。

 運命の第四競技、開始前時点でポイント一三二、ランキング三〇七位だった選手が五位に入り、一三三ポイントでノイテス選手と並びました。
 ポイントが同じ場合、「前年のランキングが下位の選手が上のランキングになる」というルールがあります。
 ノイテス選手の昨年のランキングは三五〇位、第四競技五位の選手は五一二位だったため、ノイテス選手は残念ながらこの時点でランキング三〇一位となってしまいました。無念です。

 この後、第七競技に出場した選手もノイテス選手を上回ったため、ノイテス選手の年間ランキング三〇二位が確定しました。
 残念ながらノイテス選手は来年もクラスⅣ残留となり、再来年の昇格を目指すことになりました。

 一二月二〇日第一一競技終了時点までの今週の二選手の成績です。

 オルト・ノイテス選手 (〇五二-一一)
 一二月一六日 (月)第七競技 (Cランク競技・スピード) 六位/一六名  〇ポイント
 一二月一八日 (水)第九競技 (Eランク競技・クロス)  一位/一二名 一〇ポイント
 一二月二〇日現在ランキングポイント  一三三   三〇二位/六〇四名

 ナルティス・ライズ選手 (〇四九-〇三)
 一二月二〇日 (金)第一競技 (Eランク競技・スピード)七位/九名  〇ポイント
 一二月二〇日現在 ランキングポイント 一八五    一八位/六〇四名
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...