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一年目 二〇五七年
24:第二四回 九月一日 ラメミリアの生活 その2
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こんばんは、レスコス・テラーサです。
今日は競技の記録の仕事があったため、全競技が終了してからこのコラムを書いています。
コラムで書いている冒頭の挨拶ですが、今午後八時を回ったところなので「こんばんは」にしてみました。
ちなみにシャンロス共通語では挨拶は時間帯や状況に関係なく「ハーイ」です。ムンダスの言葉に近いですね。
今月は第四日曜日となる二三日に若手選手の頂上決定戦となる第八回「フレッシャーズ・カップ」が行われます。
厳密にはプロデビューから六年未満の選手による競技です。ある程度年齢がいってからプロになる選手もいるので、必ずしも実年齢が若い選手が出場するとは限らないのがミソです。
二〇五〇年にスタートした最も新しいSランク競技で、若手選手にチャンスを与えるために設けられました。
二〇四九年までは選抜若手選手戦というBランクの競技だったのですが、名称を変更して格上げした恰好になります。
さて、今回もラメミリアの生活について書いてみたいと思います。
今回は街並みや移動手段についての話が中心です。
首都のラメーリのような大都市はちょっと違うのですが、ラメミリアの都市は日本の漢字の「申」に近い形をしているものが多いです。
縦棒は他の都市と繋がる道です。大抵の都市は外敵や野生動物から住民を守るための堀と壁に囲まれていました。
都市の入口には門が設けられ、人や物は門から都市の中と外を出入りしていました。
今は多くの都市で壁が撤去されていますが、その名残りとして空堀や壁の一部が残されているところもあります。
「申」の中の「田」の部分は主要道路です。
上の横棒と下の横棒のあたりが繁華街になります。繁華街が発達している都市は外側の「口」の部分の道沿いに繁華街が形成されている場合もあります。
ラメミリアでは畑や物を作る作業場は壁や堀の外側に置かれることが多かったのです。
これは、昼間は野生動物に襲撃される危険が少なかったことや、壁や堀をできるだけ短くするために行われたことだと推測されています。
農作業や物を作る作業を終えた人々が申の縦棒の道から都市の中に入ってきてすぐの場所に彼らが生産した物を取引するために、門の近くに市や店が置かれました。
これが現在の繁華街です。
一方、住宅は「田」の中の「十」の道沿いに位置しています。
ムンダスからの旅行者の方からよく「『中央』とか『中央広場』という地名の場所に行くと家ばかりで店がない!」と言われるのですが、これはラメミリアの都市の成り立ちからそうなるケースが多いのです。
シャンロスの他の国はラメミリアと状況が少し違うのですが、それでも都市の門の付近に繁華街があるのはどこも同じだと思います。
移動手段は鉄道、船、ドラー便、飛行機、マルギ車が一般的です。すべて公共交通機関です。
鉄道はラメミリア国内を魚の骨のように走っています。比較的安価な移動手段です。
ドラー便はドラーという生物の背中に座席を取り付けたもので、空を飛んで移動します。
コルメ湖の上空を遊覧飛行するものは前に紹介しましたが、飛行機の定期便のように運用されているものもあります。
飛行機より便数が多く、料金も安いですが、移動速度と快適性には劣るという評価です。
座席が狭く、移動にかかる時間は飛行機の二倍くらいです。その分料金は安価です。
飛行機はラメミリア国内はドラリスと第二の都市のバダンガを結ぶ路線のみで、他は各国の首都とドラリスを結ぶ便があります。
便数が少ないのと高いのがネックで、どの路線も一日か二日に一往復です。飛行機を利用する際は、余裕をもって空港に着くことをオススメします。
マルギ車というのは、マナで動く車で、近距離の移動に用いられています。路線バスのイメージですね。
木製でそこそこ速度は出ますが、航続距離が短いのが難点です。マナタンクを満タンにして八〇~一〇〇キロくらいしか走れないのです。
マルギ車は二〇人とか三〇人乗りのものが多く、シャンロスでは最も多く用いられている公共交通機関です。
本数も多いので (といっても日本の大都市の交通機関と同じ様に考えられても困るのですが)、市民や観光客の足として活躍しています。
皆さんもシャンロスを訪れたら、マルギ車を利用されるのではないでしょうか?
さて、鋭い方はお気づきになったかもしれませんが、先ほど距離の単位で「キロ」と書きました。
前にシャンロスでは暦は地球のものを導入していると書きましたが、度量衡も地球のものを導入しています。
法律上はシャンロス独自の単位と併記することになっていますが、初等学校で地球の度量衡も習いますので、シャンロスでは「メートル」とか「グラム」といった単位が違和感なく受け入れられています。
あと、言葉ですがシャンロスはどこの国でもシャンロス共通語が用いられています。
地方や国ごとの言語もあるのですが、公的な文書はすべて共通語で書かれていますし、学校の授業も原則共通語で行われます。
日本の皆さんがシャンロスを訪れる場合ですが、大抵の商店や宿にはマナを用いた翻訳機があるので、会話やコミュニケーションに困ることはないと思います。
ムンダスからシャンロスを訪れる方は観光とビジネスを合わせて年間二百万人を超えますので、私たちとしてもムンダスの方とコミュニケーションが取れないのは問題なのです。
翻訳機が広く普及しているのはこうした事情のためです。
とりとめのない話になってしまいましたが……今回はこのへんで、では!
今日は競技の記録の仕事があったため、全競技が終了してからこのコラムを書いています。
コラムで書いている冒頭の挨拶ですが、今午後八時を回ったところなので「こんばんは」にしてみました。
ちなみにシャンロス共通語では挨拶は時間帯や状況に関係なく「ハーイ」です。ムンダスの言葉に近いですね。
今月は第四日曜日となる二三日に若手選手の頂上決定戦となる第八回「フレッシャーズ・カップ」が行われます。
厳密にはプロデビューから六年未満の選手による競技です。ある程度年齢がいってからプロになる選手もいるので、必ずしも実年齢が若い選手が出場するとは限らないのがミソです。
二〇五〇年にスタートした最も新しいSランク競技で、若手選手にチャンスを与えるために設けられました。
二〇四九年までは選抜若手選手戦というBランクの競技だったのですが、名称を変更して格上げした恰好になります。
さて、今回もラメミリアの生活について書いてみたいと思います。
今回は街並みや移動手段についての話が中心です。
首都のラメーリのような大都市はちょっと違うのですが、ラメミリアの都市は日本の漢字の「申」に近い形をしているものが多いです。
縦棒は他の都市と繋がる道です。大抵の都市は外敵や野生動物から住民を守るための堀と壁に囲まれていました。
都市の入口には門が設けられ、人や物は門から都市の中と外を出入りしていました。
今は多くの都市で壁が撤去されていますが、その名残りとして空堀や壁の一部が残されているところもあります。
「申」の中の「田」の部分は主要道路です。
上の横棒と下の横棒のあたりが繁華街になります。繁華街が発達している都市は外側の「口」の部分の道沿いに繁華街が形成されている場合もあります。
ラメミリアでは畑や物を作る作業場は壁や堀の外側に置かれることが多かったのです。
これは、昼間は野生動物に襲撃される危険が少なかったことや、壁や堀をできるだけ短くするために行われたことだと推測されています。
農作業や物を作る作業を終えた人々が申の縦棒の道から都市の中に入ってきてすぐの場所に彼らが生産した物を取引するために、門の近くに市や店が置かれました。
これが現在の繁華街です。
一方、住宅は「田」の中の「十」の道沿いに位置しています。
ムンダスからの旅行者の方からよく「『中央』とか『中央広場』という地名の場所に行くと家ばかりで店がない!」と言われるのですが、これはラメミリアの都市の成り立ちからそうなるケースが多いのです。
シャンロスの他の国はラメミリアと状況が少し違うのですが、それでも都市の門の付近に繁華街があるのはどこも同じだと思います。
移動手段は鉄道、船、ドラー便、飛行機、マルギ車が一般的です。すべて公共交通機関です。
鉄道はラメミリア国内を魚の骨のように走っています。比較的安価な移動手段です。
ドラー便はドラーという生物の背中に座席を取り付けたもので、空を飛んで移動します。
コルメ湖の上空を遊覧飛行するものは前に紹介しましたが、飛行機の定期便のように運用されているものもあります。
飛行機より便数が多く、料金も安いですが、移動速度と快適性には劣るという評価です。
座席が狭く、移動にかかる時間は飛行機の二倍くらいです。その分料金は安価です。
飛行機はラメミリア国内はドラリスと第二の都市のバダンガを結ぶ路線のみで、他は各国の首都とドラリスを結ぶ便があります。
便数が少ないのと高いのがネックで、どの路線も一日か二日に一往復です。飛行機を利用する際は、余裕をもって空港に着くことをオススメします。
マルギ車というのは、マナで動く車で、近距離の移動に用いられています。路線バスのイメージですね。
木製でそこそこ速度は出ますが、航続距離が短いのが難点です。マナタンクを満タンにして八〇~一〇〇キロくらいしか走れないのです。
マルギ車は二〇人とか三〇人乗りのものが多く、シャンロスでは最も多く用いられている公共交通機関です。
本数も多いので (といっても日本の大都市の交通機関と同じ様に考えられても困るのですが)、市民や観光客の足として活躍しています。
皆さんもシャンロスを訪れたら、マルギ車を利用されるのではないでしょうか?
さて、鋭い方はお気づきになったかもしれませんが、先ほど距離の単位で「キロ」と書きました。
前にシャンロスでは暦は地球のものを導入していると書きましたが、度量衡も地球のものを導入しています。
法律上はシャンロス独自の単位と併記することになっていますが、初等学校で地球の度量衡も習いますので、シャンロスでは「メートル」とか「グラム」といった単位が違和感なく受け入れられています。
あと、言葉ですがシャンロスはどこの国でもシャンロス共通語が用いられています。
地方や国ごとの言語もあるのですが、公的な文書はすべて共通語で書かれていますし、学校の授業も原則共通語で行われます。
日本の皆さんがシャンロスを訪れる場合ですが、大抵の商店や宿にはマナを用いた翻訳機があるので、会話やコミュニケーションに困ることはないと思います。
ムンダスからシャンロスを訪れる方は観光とビジネスを合わせて年間二百万人を超えますので、私たちとしてもムンダスの方とコミュニケーションが取れないのは問題なのです。
翻訳機が広く普及しているのはこうした事情のためです。
とりとめのない話になってしまいましたが……今回はこのへんで、では!
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