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はじめに
プロローグ
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「Dの七番」
低い男の声がスピーカーから聞こえてきた。
「一六ブース、第六テイク、Dの七!」
女性の声が室内に響いた。こちらはスピーカー越しではなく、肉声だ。
「復唱します。一六ブース、第六テイク、Dの七!」
復唱したのは若い男性の声だ。やはり肉声だ。
一五平方メートルほどの部屋に年配の男性、若い男性、その中間くらいの年齢の女性の三人の姿がある。
部屋の中にはモニタとスピーカーとが所狭しと並べられている。
若い男性と女性はモニタ群の前にある席に座っており、モニタに表示される映像をチェックしながら手元のキーボードでなにやら入力している。
一方、年配の男性は二人の後ろに立っている。
二人の様子を確認しながら、右手にある大きなガラス窓越しに部屋の外の様子を見ているようだ。
部屋の外には円形の巨大なスペースが広がっている。
スペースの中央にはステージがあり、ここに二〇名くらいの人々の姿がある。
ステージの周囲は観客席となっており、ほぼ満員の観客で埋め尽くされている。
これはとある競技の競技場であった。
ステージの上にいるのは競技を戦う選手とその進行役である。
「Dの七は……八四! 一六ブース、合計スコア三八二!」
ステージ上の進行役の声がスピーカーから聞こえてきた。
少し遅れて室内のモニタに選手の名前と順位、獲得ポイントなどが表示される。
「ウルル選手か……最近好調だね。これでランキングは七位になる。建国杯の出場権利を得たね」
年配の男性がつぶやいた。
ステージの上では勝者となった一六番のブースに立っている女性選手が手を挙げて観客の声援に応えている。
その一方で、室内では女性と若い方の男性がモニタを流れる数字を追っている。
「第一二競技の結果確認しました。記録に問題ありません! レコの確認結果は?」
「問題ありません」
女性の問いにレコと呼ばれた若い男性が答えた。
「第一二競技、問題なく完了と判断します。承認をお願いします」
若い男性の答えを聞いて女性が後ろに立っている年配の男性に声をかけた。
「うむ」
年配の男性がモニタの一つに表示された「承認」欄に指でサインを記入した。
「本日の記録班の業務は以上だ。テラーサさんはこのあと少し残ってほしい。ストノさんは上がっていいよ」
「承知しました」
「はい」
年配の男性の指示で女性が部屋から出て行き、男性二人が部屋に残された。
「テラーサさん。四月からの業務なのだけど……」
年配の男性の言葉に若い男性が身構えた。
低い男の声がスピーカーから聞こえてきた。
「一六ブース、第六テイク、Dの七!」
女性の声が室内に響いた。こちらはスピーカー越しではなく、肉声だ。
「復唱します。一六ブース、第六テイク、Dの七!」
復唱したのは若い男性の声だ。やはり肉声だ。
一五平方メートルほどの部屋に年配の男性、若い男性、その中間くらいの年齢の女性の三人の姿がある。
部屋の中にはモニタとスピーカーとが所狭しと並べられている。
若い男性と女性はモニタ群の前にある席に座っており、モニタに表示される映像をチェックしながら手元のキーボードでなにやら入力している。
一方、年配の男性は二人の後ろに立っている。
二人の様子を確認しながら、右手にある大きなガラス窓越しに部屋の外の様子を見ているようだ。
部屋の外には円形の巨大なスペースが広がっている。
スペースの中央にはステージがあり、ここに二〇名くらいの人々の姿がある。
ステージの周囲は観客席となっており、ほぼ満員の観客で埋め尽くされている。
これはとある競技の競技場であった。
ステージの上にいるのは競技を戦う選手とその進行役である。
「Dの七は……八四! 一六ブース、合計スコア三八二!」
ステージ上の進行役の声がスピーカーから聞こえてきた。
少し遅れて室内のモニタに選手の名前と順位、獲得ポイントなどが表示される。
「ウルル選手か……最近好調だね。これでランキングは七位になる。建国杯の出場権利を得たね」
年配の男性がつぶやいた。
ステージの上では勝者となった一六番のブースに立っている女性選手が手を挙げて観客の声援に応えている。
その一方で、室内では女性と若い方の男性がモニタを流れる数字を追っている。
「第一二競技の結果確認しました。記録に問題ありません! レコの確認結果は?」
「問題ありません」
女性の問いにレコと呼ばれた若い男性が答えた。
「第一二競技、問題なく完了と判断します。承認をお願いします」
若い男性の答えを聞いて女性が後ろに立っている年配の男性に声をかけた。
「うむ」
年配の男性がモニタの一つに表示された「承認」欄に指でサインを記入した。
「本日の記録班の業務は以上だ。テラーサさんはこのあと少し残ってほしい。ストノさんは上がっていいよ」
「承知しました」
「はい」
年配の男性の指示で女性が部屋から出て行き、男性二人が部屋に残された。
「テラーサさん。四月からの業務なのだけど……」
年配の男性の言葉に若い男性が身構えた。
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