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第十二章
554:レイカ、最初にカードを切る
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オモテの回答に対しサカデが市民の日常生活に支障が出ている現状の発電量の維持では意味がないと発言し、これにはレイカやアカシも賛同した。
OP社インデスト支店側も同じような認識であり、少なくとも二千名程度の技術者の拡充が必要だと主張した。
「勉強会」グループは、技術者の拡充規模については見解を示さなかったが、拡充の責任はIMPUとECN社が全面的に負うべきだと主張した。それだけではなくOP社インデスト支店に対し、数億ポイントレベルの損害賠償を行う必要がある、とした。
これに対し、IMPUのサカデは責任の所在については一部理解できるが、市民から明確に司法警察の委託を受けていないOP社がそれらを行使したことの責任も同時に論じる必要があると述べた。
また、アカシからIMPUが数百名程度の人員を派遣することは可能だが、発電技術の専門家は有していない、という回答もあった。
「勉強会」グループにも発電技術の専門家がいないことは明白なので、ここで参加者の注目がレイカに集まった。
「インデストの市民生活が脅かされること、鉄鋼生産が滞ること、どちらも私どもが憂える事態です。『ECN社調達特別プロジェクトチーム』としては、七〇〇名から八〇〇名を二年間、そちらへ派遣する準備があります」
レイカの言葉に対しての反応は、失望が半分強、納得が半分弱、といった状況であった。
ただし、納得を見せた者に当のOP社インデスト支店のメンバーが含まれていた。
特にタノダは「わが意を得たり」と大きくうなずき、オソダは胸を撫で下ろすかのような表情を見せた。
一支店が本社より大きい支援を受ける。
電力事業の責任者として、これはタノダには看過できないことであった。
インデスト支店からは既に支店内の技術者の四割に当たる人員を本社に派遣させていた。
インデストよりもポータル・シティ周辺を重視したためであるが、これは同時に「インデストはポータル・シティ周辺よりも電力供給に余裕がある」という印象を一部に与えてしまっている。
実際、インデストに人員を割きたいのは山々であるが、本社にも人員の余裕はないという状況だ。
この状況下で、インデストにより多くの人員を派遣されては責任者であるタノダの見立てが誤っている、という印象を与えかねなかった。
そうなれば、タノダはインデストへの技術者派遣の受け入れを拒否するだろう。
インデスト支店のトップであるオソダはタノダよりも上位の立場であったが、タノダが受け入れを拒否すれば、本社を気遣って、タノダに同調するかもしれない、というレイカの読みもあった。
OP社インデスト支店に受け入れやすい条件の中で派遣できる人員の最大数、レイカの提示した数はそのような意味を持っていた。
また、OP社本社のあるポータル・シティと比較してインデストは遠いという点を考慮し、ECN社から派遣される人員のインデスト滞在期間を短くしたいという事情もある。
そこで、レイカは派遣可能な人員の五割程度をインデストに置いておく、という提案に行き着いたのであった。
ただし、これにも問題がある。
確保できた人員は必要とされている数の三分の一程度にすぎない上に、二年以内に必要な発電量を回復するための方策が出されていない。
レイカはこれに対する策も持ち合わせていたが、このカードをすぐに切ることはしなかった。
現時点でカードを切ったのはレイカのみであり、他にカードを切るべき者はいくらでもいるのだ。
「勉強会」グループは期待できないが、他はレイカに借りを作っているという認識はあるようだ。
レイカは自分のなすべきことを理解していた。
あくまでインデストの電力供給と鉄鋼事業の回復が目的であり、レイカはこの目的のため最も効果的に持っているカードを使うことを肝に銘じていたのである。
「勉強会」グループのヒキがECN社の派遣人数は、会社規模に対して著しく少なくないか、と疑問を投げかけようとしたのだが、これがオオバによって取り消された。
「それにしても、技術者があと千数百名は不足、という状況ではありますね……」
サカデの言葉が現実を表わしていた。
「リスク管理研究所」の調査によれば、この四年間にOP社および関連会社に所属する発電技術者は約二万人減少している。
これだけの数の技術者をカバーできる企業や団体など、他にないのは明らかなのだ。
会場内を重い空気が覆い尽くそうとしている。
少なくともECN社は自らの資源を用いた支援案を提示した。
支援を受けるOP社はともかく、他の二者については何らかの支援案の提示が求められるであろう。
「発電技術の専門家ではない我々としては、地熱発電所の火災事故の原因究明及び復旧の支援なら対応できる。また、事故原因究明後の地熱発電所の掘削作業であれば我々の専門に近いので、効果的に作業ができると思うのだが……」
アカシが重い口を開いた。
しかし、それにはすぐにヒキから横槍が入った。
「事故の当事者の原因調査と復旧作業が信用できるとはとても考えられん。OP社さんは人手を割ける状態にないし、ECN社さんは遠い。ここは第三者である我々『勉強会』グループがその任に当たるべきだ」
OP社のメンバーはヒキの言葉に納得の表情を見せたが、顔には出さずとも冷やかに言葉を聞いているだけの者もいた。
OP社インデスト支店側も同じような認識であり、少なくとも二千名程度の技術者の拡充が必要だと主張した。
「勉強会」グループは、技術者の拡充規模については見解を示さなかったが、拡充の責任はIMPUとECN社が全面的に負うべきだと主張した。それだけではなくOP社インデスト支店に対し、数億ポイントレベルの損害賠償を行う必要がある、とした。
これに対し、IMPUのサカデは責任の所在については一部理解できるが、市民から明確に司法警察の委託を受けていないOP社がそれらを行使したことの責任も同時に論じる必要があると述べた。
また、アカシからIMPUが数百名程度の人員を派遣することは可能だが、発電技術の専門家は有していない、という回答もあった。
「勉強会」グループにも発電技術の専門家がいないことは明白なので、ここで参加者の注目がレイカに集まった。
「インデストの市民生活が脅かされること、鉄鋼生産が滞ること、どちらも私どもが憂える事態です。『ECN社調達特別プロジェクトチーム』としては、七〇〇名から八〇〇名を二年間、そちらへ派遣する準備があります」
レイカの言葉に対しての反応は、失望が半分強、納得が半分弱、といった状況であった。
ただし、納得を見せた者に当のOP社インデスト支店のメンバーが含まれていた。
特にタノダは「わが意を得たり」と大きくうなずき、オソダは胸を撫で下ろすかのような表情を見せた。
一支店が本社より大きい支援を受ける。
電力事業の責任者として、これはタノダには看過できないことであった。
インデスト支店からは既に支店内の技術者の四割に当たる人員を本社に派遣させていた。
インデストよりもポータル・シティ周辺を重視したためであるが、これは同時に「インデストはポータル・シティ周辺よりも電力供給に余裕がある」という印象を一部に与えてしまっている。
実際、インデストに人員を割きたいのは山々であるが、本社にも人員の余裕はないという状況だ。
この状況下で、インデストにより多くの人員を派遣されては責任者であるタノダの見立てが誤っている、という印象を与えかねなかった。
そうなれば、タノダはインデストへの技術者派遣の受け入れを拒否するだろう。
インデスト支店のトップであるオソダはタノダよりも上位の立場であったが、タノダが受け入れを拒否すれば、本社を気遣って、タノダに同調するかもしれない、というレイカの読みもあった。
OP社インデスト支店に受け入れやすい条件の中で派遣できる人員の最大数、レイカの提示した数はそのような意味を持っていた。
また、OP社本社のあるポータル・シティと比較してインデストは遠いという点を考慮し、ECN社から派遣される人員のインデスト滞在期間を短くしたいという事情もある。
そこで、レイカは派遣可能な人員の五割程度をインデストに置いておく、という提案に行き着いたのであった。
ただし、これにも問題がある。
確保できた人員は必要とされている数の三分の一程度にすぎない上に、二年以内に必要な発電量を回復するための方策が出されていない。
レイカはこれに対する策も持ち合わせていたが、このカードをすぐに切ることはしなかった。
現時点でカードを切ったのはレイカのみであり、他にカードを切るべき者はいくらでもいるのだ。
「勉強会」グループは期待できないが、他はレイカに借りを作っているという認識はあるようだ。
レイカは自分のなすべきことを理解していた。
あくまでインデストの電力供給と鉄鋼事業の回復が目的であり、レイカはこの目的のため最も効果的に持っているカードを使うことを肝に銘じていたのである。
「勉強会」グループのヒキがECN社の派遣人数は、会社規模に対して著しく少なくないか、と疑問を投げかけようとしたのだが、これがオオバによって取り消された。
「それにしても、技術者があと千数百名は不足、という状況ではありますね……」
サカデの言葉が現実を表わしていた。
「リスク管理研究所」の調査によれば、この四年間にOP社および関連会社に所属する発電技術者は約二万人減少している。
これだけの数の技術者をカバーできる企業や団体など、他にないのは明らかなのだ。
会場内を重い空気が覆い尽くそうとしている。
少なくともECN社は自らの資源を用いた支援案を提示した。
支援を受けるOP社はともかく、他の二者については何らかの支援案の提示が求められるであろう。
「発電技術の専門家ではない我々としては、地熱発電所の火災事故の原因究明及び復旧の支援なら対応できる。また、事故原因究明後の地熱発電所の掘削作業であれば我々の専門に近いので、効果的に作業ができると思うのだが……」
アカシが重い口を開いた。
しかし、それにはすぐにヒキから横槍が入った。
「事故の当事者の原因調査と復旧作業が信用できるとはとても考えられん。OP社さんは人手を割ける状態にないし、ECN社さんは遠い。ここは第三者である我々『勉強会』グループがその任に当たるべきだ」
OP社のメンバーはヒキの言葉に納得の表情を見せたが、顔には出さずとも冷やかに言葉を聞いているだけの者もいた。
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