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第十二章

524:不参加の仲間

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(この感じなら、東側はセスをそりに乗せて移動させても問題ないな)
 ロビーは腕や腰に感じるそりの重さや揺れを確かめながら、一歩一歩着実に山道を登っていく。

 移動している際に常にセスのことを考えてしまうのは、ロビーがこの探索に参加した目的を考えれば無理もないことであった。
 程度の差はあるが、カネサキ、オオイダ、コナカの「とぉえんてぃ? ず」の三人も、その点ではロビーと大差ない。
 公私混同と言われても仕方のない面はあるのだが、少なくとも島東部に人を移住させるとなると「ある程度体力のない者でも十分移住に耐えられるだけの交通路を確保する必要がある」という大義名分が立つので、このことで彼らを表だって咎める者はなかった。

 (そういえば……モリタの奴は今頃何をしているんだ?)
 ロビーは彼とは異なる道を歩んでいる友人に意識を向ける。
 タカシ・モリタは、ロビーやセスと一緒に行動していた友人であり、「東部探索隊」事業に彼らが参加するまでは同じ業務に従事していた。
 しかし、ECN社広報企画室長レイカ・メルツの要望により、モリタは現在OP社へ派遣され、発電事業の支援を行っているはずである。
 OP社の発電事業は、劣悪な職場環境で現場の技術者が苦しんでいるという話をロビーは耳にしていた。
 こうした情報は「はじまりの丘」を発つ前までのものが殆どなので、現在は状況が改善されている可能性もある。
 人里離れた場所を探索しているため、ロビーのもとへポータル・シティやハモネスなどの都市部のニュースはほとんど入ってこないのだ。
 彼の上司であるエリック・モトムラを通じて多少の情報は入ってくるが、エリックも立場上モリタ個人の情報を詳細に把握はしていないので、モリタを取り囲む状況があまりよくないという程度のことしかわからないらしい。

 (無理を言って第二隊に引っ張り込むか、それとも……?)
 OP社の状況がどの程度悪いのかはロビーには見当がつかない。
 ただ「東部探索隊」と比較してよい状況だとも思えない。
 若干の問題児はいるものの、「東部探索隊」の雰囲気は決して悪いものではないのだ。
 逆にOP社は従業員に対する監視が厳しく、絶えずどこかで見張られているような気分で仕事をすることを要求されると聞いている。
 社長が交代して状況が変わった可能性はあるが、長年染みついた企業文化が短期間で大幅に変わるという可能性は低いとロビーは考えている。
 ロビーの知るモリタは、そのような厳しい環境に身を置けば、たちまち音をあげる人物であったはずだ。
 それでも長期間そのような環境に身を置けば、適度に鍛えられているのではないか、という期待もある。
 「東部探索隊」の人的資源は豊富とはいえる状況でなかったから、勝手を知るメンバーを一人でも多く確保したいという気持ちがロビーにはある。
 ホンゴウはともかく「とぉえんてぃ? ず」の三人についても同じで気持ちでないかと思われた。

 ロビーが今回の探索行のメンバーからモリタを外すことを許容したのは、それを薦めたレイカに対する信頼が最大の理由である。
 しかし、それだけではなく、モリタが厳しい自然を相手にした探索行に耐えうるか? と考えた場合に、ロビーが確信を持てなかった、という点も否定できない。
 人や組織が相手であれば対処のしようもあったが、相手が自然ではどうにもならないからだ。
 だから、今回は仕方ない。
 ただし、次、となれば話は別である。
 「東部探索隊」事業はECN社の事業であり、その責任者はエリック・モトムラであるが、ロビーにとってはセスや彼自身の事業である。
 エリックに対して不満はないが、彼はセスやロビーの行っている「事業」という範囲の外の人物であった。
 ロビーにとって、「内側」にいる人物は、彼自身とセス、そして「とぉてんてぃ? ず」の三人、最後にモリタの六名である。
 あえて言えば「社長さん」ことオイゲン・イナと「秘書さん」ことメイ・カワナも内側に入れても構わない。
 エリックやレイカなどは限りなく「内側」に近い立場であるが、ロビーから見ればやはり「外側」の人間である。
 行方不明のオイゲンを除けば、「内側」の人間で唯一「東部探索隊」に関わっていないのがモリタである。
 そうなれば、彼が二度目の探索行に関わるべきである。
 問題は、この理由が完全にロビーやセスなどの事情であって、必ずしもECN社の利益に合致しているとは言えないことだ。
 正直なところ、レイカが何故モリタだけをOP社に派遣したのか、ロビーはその理由を図りかねている。

 (場合によってはメルツ室長に詳しい理由を聞いてもいいかもしれないな。彼女のことだから理由もなしにモリタを外すことは考えにくいが……)
 ロビーは迷いながらも第二次隊にモリタを参加させるか、レイカと話をしようと決めた。
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