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第十一章

503:IMPUに異議を唱える目的

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 レイカが携帯端末を広げ、インデストの状況を確認している。
 ここ数ヶ月間毎日繰り返してきた作業ではあるが、刻一刻と状況が変化しているため、常に最新の情報を得ておく必要がある。

 彼女が気にしているのは、IMPUの活動に異議を唱えるグループのトップは何者か? そしてIMPUとことを構える目的は何か? という点である。
 表に名前が出ているヒロスミ・オオバという人物については、既に調査が済んでおり、OP社では採掘された鉄鉱石の化学分析担当者であったことを把握している。
 年齢はともかく職位、担当業務ともにIMPUに対抗する組織の長としては疑問が残る。

 IMPUに異議を唱えているメンバーは大きく分けて次の三つに分類されるとレイカはみている。
 一.アカシより年長のベテランの採掘場作業者
 二.OP社管理職
 三.採掘場の現場以外の作業従事者
 オオバはあえて言えば三に属するが、その中でとりたてて地位が高い訳ではなく、またそれほど人望があるとも思えない。また、所属も決して主流といえる部門ではない。
 「勉強会」と称して若手を集めていたという情報はあるが、それもさほど規模の大きいものではないし、レイカの見るところ、他にオオバに目立った実績は見当たらない。
 オオバの裏に一かニに属する地位の高い者がいるのではないかとレイカは疑っている。だが、これに該当する人物が浮かび上がってこない。
 遠く離れた島西部では情報収集にも限界があるので、現地に赴けば何かわかるかも知れないとレイカは考えているのだが……

 (さすがに、人間関係の部分は情報が入りにくいわね……)
 レイカの情報は主にマスコミ関連とエリックやその知人からのものである。
 彼女自身はインデストを訪れた経験がない上に、インデスト出身者や在住者の知人はほとんどいない。
 職業学校時代の生徒にインデスト出身者が何人かいたが、こうした情報をやり取りできるほど親しい、という間柄ではなかった。

 これはインデストがサブマリン島の他の多くの都市と異なり、住民が職業学校に通う時期を除いて、他の都市との行き来をすることがほとんどない、という事情に起因している。
 インデストはサブマリン島第二の都市であるが、他の主要都市から遠方にあるため、インデストへの人の出入りは決して多くない。
 出入りするのは職業学校に通う者、物流関係の業務に従事している者を除けば、わずかな観光客と出稼ぎの労働者くらいで、他の都市に住んでいる者がインデスト出身の者と知り合う機会は非常に少ないといえる。

 そこでレイカはインデストに知己のいるエリックの協力を得ることにしたのだ。
 エリックは「タブーなきエンジニア集団」時代にインデストを訪れており、アカシをはじめとしたIMPUのメンバーと共にハドリと戦ったという経緯もあり、インデスト在住の知人も少なくない。
 彼の知人にはIMPU関係者が多いため、入手できる情報もIMPU寄りになるが、その分IMPUに関する情報の精度は高く、その量も多い。
 一方で問題になるのが、IMPUと敵対する勢力に関する情報である。
 提供側は中立性を保とうと努力しているのではあろうが、バイアスがかかることは避けられない。
 また、情報提供者がIMPUに関係するため、対抗勢力の動向については間接的な情報が多いという事情もある。
 現時点では、IMPUに異議を唱えるグループのトップが何故その地位にあるか、レイカにはよくわからない。

(それにしても、彼らは何故表だってIMPUとことを構えることを選んだのかしら……?)
 レイカにとっては、この点も腑に落ちない。
 伝え聞いている範囲であるとはいえ、IMPUの活動はインデスト市民から一定の支持を得られている。
 それに対し、IMPUに異議を唱えるグループは電力供給不足を招いた当事者であるOP社の関係者も多く、市民からの評判は必ずしも芳しくないように思われる。
 OP社の関係者という立場上、自社を守る発言をするのはあり得る話だ。
 だが、現在のIMPUとことを構えるのはやりすぎだ。
 そんなことをしている暇があるのであれば、本業である発電と電力供給に注力しろと言われるのがおちだ。
 それだけではない。
 一枚岩ではないにしろ、IMPUの勢力は大きいものがあるし、ECN社と鉄鉱石などの取引を取り付けているなど、インデストの経済を支える大黒柱ともいえる組織である。
 それに対し、IMPUに対抗しようとするグループのトップは、何故その地位にあるか判断のつかない人物である。対抗するにはあまりにも力が弱すぎる。

 (情報が足りなすぎるわね……推測に頼っても必要な答えは得られない、か)
 ここでレイカはオオバに関する考察をいったん停止し、今度は彼らの目的について考えることにした。
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