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第十一章
499:ECN社、OP社への協力を決める
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ミヤハラやエリックと異なり、サクライは経理に明るい。
ECN社の資金を預かる立場として、理由なき大きな出費を簡単に認めるわけにはいかない。派遣する人数や期間にもよるが、遠方のインデストへの派遣となれば、それなりの費用はかかるのである。
提案者がレイカであることから想定される費用の大きさはECN社の経営が傾くほどのものにはならないだろうが、確認は必要である。
ミヤハラやエリックでは、このあたりのガードが甘すぎる、とサクライは思う。
二人とも財務的なことは専門外であるから仕方のない面はあるものの、幹部としてはもう少しこうした面に注意を向けて欲しいとサクライは考えている。特にミヤハラに対して。
また、エリックの性格ではレイカの提案を断ることができない、ともサクライは考えていた。
サクライが口を挟んだのは、エリックに余計な負荷がかからないように気遣った、という部分もあった。こちらは極めて個人的な感情からなのだが。
「副社長の仰るとおりです。私の説明が足りませんでした」
サクライの指摘にレイカが非を認めて頭を下げた。
こうしたあたり、レイカの対応はそつがない。
「交渉の仲介にあたって、わが社としても手ぶらで臨むという訳には行かないと思います」
レイカの言葉にミヤハラが大きくうなずいた。
「インデストの発電技術者不足は深刻ですが、先ほど申し上げた通り、わが社から直接インデストへ発電技術者を派遣するのは、OP社の不興を買うことになると思います。メンツにも関わることですから」
「確かにそうでしょうね。それでどうしようと?」
サクライの言葉は先を急いでくれと言わんばかりだ。
「OP社はインデストでの地熱発電所の建設を急いでいますが、工事を行う人員が足りず、また先日火災が発生した関係で工事が止まっています。OP社に人員の余裕はありませんし、IMPUもアカシ代表はともかく、抵抗勢力もあって人員の派遣に協力的ではありません。そこで中立的な立場のわが社から人員派遣を提案することで、交渉を動かすことができるのではないかと思うのです」
「……確かに、その可能性は十分にあると思います」
レイカの説明に最初に賛同の意志を示したのはサクライであった。
財務的なことに対する懸念はあるが、彼はレイカの調停役としての能力を信用している。
相応の説明がつけば、彼がレイカの提案を受け入れるのには支障がない。
電力供給不足によりECN社の事業にも影響が出ているから、OP社の状況改善は彼も望むところだ。
また、IMPUは最大の金属材料調達先である。現在の供給量ではECN社の需要にとても応えられないので、こちらも改善の必要ある。
これらのことを考えれば悪くない投資だ、とサクライは判断した。レイカが調停に赴けば宣伝効果も期待できるかもしれない。失敗したところで自分やミヤハラが後ろに控えている。もっとも、そのような面倒な事態になってほしくないとサクライは考えてはいる。
サクライがレイカの提案を受け入れたことで、必要に応じてエリックのタスクユニットからインデストへ工事技術者を派遣することが決まった。
他のタスクユニットにも工事技術者を置いているのだが、それらから技術者を割くとなれば社内の賛同が得られそうもない。
その点エリックのタスクユニットであるなら、トップのエリックが首を縦に振ればことが足りる。
ミヤハラからすれば、この程度のことは彼の管轄外であり、口を挟むつもりはなかったし、エリックはサクライが賛成した時点で、反対の意志を示す気がなくなったためだ。
エリックは急いで自席に戻り、インデストに派遣する人員の候補の選定にかかった。
遠方への長期派遣となるため、比較的話しの通しやすい旧「タブーなきエンジニア集団」中心の人選となったのは、上級チームマネージャーという彼の立場からすれば不適切であったが、彼の性格からすれば仕方のないところでもあった。
それでも、わずか二時間程度で六〇〇名の候補を選定し、派遣の準備を整えたあたりは、彼が有能であるということの証左である。
一方、レイカはミヤハラの許しを得て、OP社及びIMPUと連絡を取り、交渉の場を設けることを提案した。
IMPUの代表アカシは、IMPUの事業にECN社が強く関与することを望んでいたから、レイカの提案を二つ返事で受け入れた。
一方、OP社の社長のヤマガタは二つ返事、という訳には行かなかったものの、内部で検討して回答する、と一旦回答を保留してから、わずか一時間ほどで提案を受け入れると返答があった。
こちらは、内外に抱えている問題が山積しており、その解決のためには猫の手も借りたいという状況だった。
ECN社の提案を蹴ったところで事態の急速な改善は望めず、結果的にECN社を利することになっても提案を受け入れざるを得ない、というのが本音であろう。
こうした準備の後、レイカをはじめとしたECN社の調停メンバーがインデストに出発する日が決められた。
ECN社の資金を預かる立場として、理由なき大きな出費を簡単に認めるわけにはいかない。派遣する人数や期間にもよるが、遠方のインデストへの派遣となれば、それなりの費用はかかるのである。
提案者がレイカであることから想定される費用の大きさはECN社の経営が傾くほどのものにはならないだろうが、確認は必要である。
ミヤハラやエリックでは、このあたりのガードが甘すぎる、とサクライは思う。
二人とも財務的なことは専門外であるから仕方のない面はあるものの、幹部としてはもう少しこうした面に注意を向けて欲しいとサクライは考えている。特にミヤハラに対して。
また、エリックの性格ではレイカの提案を断ることができない、ともサクライは考えていた。
サクライが口を挟んだのは、エリックに余計な負荷がかからないように気遣った、という部分もあった。こちらは極めて個人的な感情からなのだが。
「副社長の仰るとおりです。私の説明が足りませんでした」
サクライの指摘にレイカが非を認めて頭を下げた。
こうしたあたり、レイカの対応はそつがない。
「交渉の仲介にあたって、わが社としても手ぶらで臨むという訳には行かないと思います」
レイカの言葉にミヤハラが大きくうなずいた。
「インデストの発電技術者不足は深刻ですが、先ほど申し上げた通り、わが社から直接インデストへ発電技術者を派遣するのは、OP社の不興を買うことになると思います。メンツにも関わることですから」
「確かにそうでしょうね。それでどうしようと?」
サクライの言葉は先を急いでくれと言わんばかりだ。
「OP社はインデストでの地熱発電所の建設を急いでいますが、工事を行う人員が足りず、また先日火災が発生した関係で工事が止まっています。OP社に人員の余裕はありませんし、IMPUもアカシ代表はともかく、抵抗勢力もあって人員の派遣に協力的ではありません。そこで中立的な立場のわが社から人員派遣を提案することで、交渉を動かすことができるのではないかと思うのです」
「……確かに、その可能性は十分にあると思います」
レイカの説明に最初に賛同の意志を示したのはサクライであった。
財務的なことに対する懸念はあるが、彼はレイカの調停役としての能力を信用している。
相応の説明がつけば、彼がレイカの提案を受け入れるのには支障がない。
電力供給不足によりECN社の事業にも影響が出ているから、OP社の状況改善は彼も望むところだ。
また、IMPUは最大の金属材料調達先である。現在の供給量ではECN社の需要にとても応えられないので、こちらも改善の必要ある。
これらのことを考えれば悪くない投資だ、とサクライは判断した。レイカが調停に赴けば宣伝効果も期待できるかもしれない。失敗したところで自分やミヤハラが後ろに控えている。もっとも、そのような面倒な事態になってほしくないとサクライは考えてはいる。
サクライがレイカの提案を受け入れたことで、必要に応じてエリックのタスクユニットからインデストへ工事技術者を派遣することが決まった。
他のタスクユニットにも工事技術者を置いているのだが、それらから技術者を割くとなれば社内の賛同が得られそうもない。
その点エリックのタスクユニットであるなら、トップのエリックが首を縦に振ればことが足りる。
ミヤハラからすれば、この程度のことは彼の管轄外であり、口を挟むつもりはなかったし、エリックはサクライが賛成した時点で、反対の意志を示す気がなくなったためだ。
エリックは急いで自席に戻り、インデストに派遣する人員の候補の選定にかかった。
遠方への長期派遣となるため、比較的話しの通しやすい旧「タブーなきエンジニア集団」中心の人選となったのは、上級チームマネージャーという彼の立場からすれば不適切であったが、彼の性格からすれば仕方のないところでもあった。
それでも、わずか二時間程度で六〇〇名の候補を選定し、派遣の準備を整えたあたりは、彼が有能であるということの証左である。
一方、レイカはミヤハラの許しを得て、OP社及びIMPUと連絡を取り、交渉の場を設けることを提案した。
IMPUの代表アカシは、IMPUの事業にECN社が強く関与することを望んでいたから、レイカの提案を二つ返事で受け入れた。
一方、OP社の社長のヤマガタは二つ返事、という訳には行かなかったものの、内部で検討して回答する、と一旦回答を保留してから、わずか一時間ほどで提案を受け入れると返答があった。
こちらは、内外に抱えている問題が山積しており、その解決のためには猫の手も借りたいという状況だった。
ECN社の提案を蹴ったところで事態の急速な改善は望めず、結果的にECN社を利することになっても提案を受け入れざるを得ない、というのが本音であろう。
こうした準備の後、レイカをはじめとしたECN社の調停メンバーがインデストに出発する日が決められた。
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