上 下
26 / 76
自分の工房を目指して(クリエイターズへ)

酒場で

しおりを挟む
 プレートの更新が終わるまで俺とライラは酒場で待つことにした。
空いている席を探すとヒルロップを見つけた。
なんでここにいるのだろうか。そう思い近づいたて聞きに行った。

「よう。ヒルロップ」
「嬢ちゃんたちか。なんかようかのう」
「なんでここにいるのか思って声をかけた」
「何待っているのじゃよ」
「待っている?」
「プレートができるのを」

どうやらヒルロップも俺たちと同じくプレートができるのを待っている。
そこで俺は思いついた。俺たちは女だけのパーティだ。これだと他のパーティになめられるかもしれない。変に絡まれてその度に力を示していたらなんていわれるかわかったものじゃない。なら軍にいたことがあるヒルロップがいればなめられて近づくやつがいなくなるかもしれない。そうと決まれば勧誘しよう。

「なあ、ヒルロップ。今、パーティって組んでる」
「いや、まだ誰とも組んでいないが」
「ちょうどよかった。俺たちとパーティを組まないか」

ヒルロップは勧誘の話をすると考え始めた。
色んな事を質問された。
今いるパーティの人数、勧誘する理由、パーティの目的を聞かれた。
パーティの人数は俺とライラだけと答えたら、より思案した。
勧誘する理由を答えたら、それ自分じゃなくてもよくないかといわれたが、冒険者の知り合いいないため、知っている人で同じ奴隷経験があるヒルロップなら信頼できると思った。本人は照れた顔をされた。
パーティの目的、この国を出ていって東に行き『クリエイターズ』の工房に行きこれまでの『ナンバーズ』の愚行を訴えに行くためと伝えた。

「そんなこと相手は取り合ってくれんぞ」
「『クリエイターズ』必ず取り合う」
「なぜそう思うのじゃ」
「俺たちのパーティ名は『凰牙』、あいつらの主と同じ名前を使用している。ほかの誰かが何と言おうと『クリエイターズ』の方から取り合ってくれる」

驚いた顔された。さらに喧騒に包まれた酒場が一気に静かになった。
そこから周りから馬鹿な真似はよせと言われた。
過去に同じ名前のパーティがあって『クリエイターズ』の逆鱗に触れて全員殺されたことがあるという。
それ以降も同じパーティ名のパーティが出たが、話を聞いてすぐに変えたところが多い。
だからやめて他のパーティ名に変えた方がいいといわれた。

「要はそいつら逆鱗に触れるようなことをしたのが全員殺された原因だろ。名前が原因なわけないじゃん。逆に懇切丁寧に説明すれば納得されるんじゃないか」
「何言ってやがる!死にたいのか『クリエイターズ』に狙われるだけじゃなくて『ナンバーズ』にも狙われるぞ」

『凰牙』を名乗ると『ナンバーズ』にも狙われるのか、あいつら強いからってやりたい放題の集団だな。
あいつらに文句を言うことが増えたじゃないか。
いっそうのこと壊滅させた方がこの世界のためじゃないかな。ライラはそのことをどう思っているんだろう。

「全員殺された『凰牙』のリーダーは自分のことを『クリエイターズ』の主、凰牙の生まれ変わりだといった。そして、『クリエイターズ』は全員自分の配下になれと迫った。そいつは内心、『クリエイターズ』が配下になればこの世界の支配者になれるとでも思ったのだろうか。そう思ったのならアホの一言でいいでしょう。そいつは『クリエイターズ』と主の絆を甘く見ていた。結果は『クリエイターズ』の逆鱗に触れて殺された」

これまで黙っていたライラが口を開いた。
それもなぜ殺されたパーティのことを知っているのか。それも見ていたみたいに。

「ライラ、見たことがあるみたいに」
「その場を見ていたらかわかるのよ。主との絆というより、『クリエイターズ』の主を名乗ったのに従者の名前をも違えている時点で主じゃないことバレバレよ」

名前を間違えた時点で主ではないのはバレバレだな。もしかして10さんを”テン”と呼ばず、”じゅう”と呼んでしまったとか、星王を”スターオー”と呼ばず、そのまま読んでしまったか、全員表示の名前と呼び方が違うかそのまま読んでしまうと間違えるんだよな。それに人前だとそこから愛称になるからわからないかも知れない。でも10さんぐらいわかれよ。10さんのフルネームの10Pointテンポイントぐらい読んでもらわないと俺の偽物を名乗るなんて片腹痛いわ。

「ライラとか言ったか。お前ってもしかして」
「私は転生者よ。近くにいたら巻き添えをくらって死んでしまったの」

転生者とそんな簡単にカミングアウトしていいものなのか?近くにいて巻き添えくらって死んだってそんなこと信じられるのか。

「そうか転生者か。あいつら強さには定評があるから期待させてもらうぜ」
「よし、転生者の新たな生に乾杯だ」

そうやってまた喧騒が戻ってきた。でも、まだパーティ名が『凰牙』にするのを止められるのは変わらないのではないか?
そう思っているところにギルドマスターがこっちに来た。

「『凰牙』についてはそういう噂があるだけだ。ちゃんと理由を言えば大丈夫だで、テレサ君、理由は?」
「決まっている。カッコイイからだ」

カッコイイからだ。決め台詞として言ってみたい言葉だよな。

「それだけかい」
「それだけだ」

言いきったらギルドマスターに爆笑された。
俺も大見得を切った以上、笑われるのは予想していたけど実際に笑われるとイラッとくる。

「すまない。君と同じ理由で『凰牙』を名乗った理由パーティがいたから思い出した」
「その人とは気が合いそうだ。もし出会うことがあれば話し合いたいものだ」
「それちょっと無理だな」
「なぜ?」
「そいつらもう解散してしまったんだ」
「そうか、残念だな。でもどこかで会えるだろう」

旅をすればどこかで会えるだろう。

「会えるといいな。そういう理由なら『クリエイターズ』は干渉してこない。『クリエイターズ』と出会って聞かれたらそういえばいい」
「わかりました。ありがとうございます」
「お礼が、言えて結構。これを渡そう」

そう言ってポケットから3枚のプレートを取り出した。
どうやら更新が終わったようだ。
でも、ギルドマスターが持ってくるようなものか?呼ばれたら受付に行くのに。なぜだろう?
それからギルドマスターはライラとヒルロップにプレートを渡し戻っていった。

 結局ヒルロップはパーティに入るか入らないか聞いた。結果は入ってくれることになった。
受付に行ってパーティの追加メンバーの書類をもらい書いて提出した。
書いている際、ヒルロップのランクを見て驚いた。なんとランクが特B級だった。
ほとんど変わらないタイミングでギルドに登録したのに何で?
ヒルロップは前職が軍人で長年勤めていたこともあり特B級となった。
ライラは転生者なのだから特B級じゃダメなのかと聞くと転生者だからといって、野営とかの経験があるわからないためできないとのこと。
こういうのは軍にいたことがあるのと、いた年数によって決まる。その結果、ヒルロップは特B級で登録されたのだ。
俺もライラも軍にいたことがないためそれは無理だ。
でもヒルロップが入ってくれたおかげで俺たちは国を出て東に行ける。
今日は旅に出る準備をして、明日東へ旅立とう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです

柚木ゆず
ファンタジー
 優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。  ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。  ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

暁に消え逝く星

ラサ
ファンタジー
 夜明けが初めて生まれた国と名高い皇国が滅んだ。渡り戦士のアウレシアと仲間達は、この生き残りの皇子一行の護衛を請け負うことになる。  天然の若き皇子の言動に調子を狂わされっぱなしのアウレシア達だったが、旅の途中で徐々に打ち解け合っていく。  だが、皇子の命を狙う追っ手が、彼らに迫っていた。  アウレシア達は婚約者のいる西の大国まで無事に皇子を送り届けることができるのか。  生き残りの皇子の生い立ちと彼らを追う者達の悲しい過去。絡み合った運命の行く末は…

処理中です...