Bグループの少年

櫻井春輝

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5巻

5-3

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 先ほどの言葉から察するに、断ると亮が残念がることは想像にかたくない。
 恵梨花も食べたくないこともない。いや、むしろ食べたい。
 しかし、食べたいからと言って飛びつくのは女の子としてどうなのかとも考える。
 食べたい。でも食べたら太ってしまう。でも断ったら亮が残念がるし、いい匂いがするし、やっぱり食べたい――。

「――っう、うん、食べよう!」
「お、おう……何か無理してないか? 嫌なら――」
「いいの! 亮くんも食べたいんでしょ!? せっかくの決心を鈍らせないで!!」
「決心? わ、わかった……じゃあ、食べるか……」

 そうして亮は恵梨花の勢いに押されるように、クレープ屋へ向かった。


「決めた! 私、ベリー&ベリーにする! 亮くんは?」

 メニューが書いてある立て看板かんばんの前で悩むこと五分、恵梨花はようやく決定を下し、笑顔で亮に振り返った。

「……やっと決まったか……俺はチョコバナナで」

 前半はボソッと言った独り言だった。恐らく亮は、恵梨花よりずっと前に決まっていたのだろう、あまりメニューを見ていなかった。

「そっか」
「ああ。恵梨花、公園に入ってどこかベンチとっといてくれるか? 俺並んで買っていくから」
「え? 一緒に並んだ方が良くない?」

 クレープ屋の前は十人近くが並んでいる。それも殆どが女の子である。一人で並んでも退屈だし、居心地も悪いだろうと思って、恵梨花はそう聞き返した。

「いや、構わねえから。座って食いたいだろ? 公園の中、いくつかベンチあんだけど、人多いからな。難しいかもしれねえけど、空いてるの見つけといてくれ」
「それもそうだね、わかった」


 恵梨花は亮に言われた通りに、一人で公園に入った。
 公園といっても木々が少し並び、それとなくベンチも置いてある広場のようだ。
 最近整備されたのか、真新しいレンガブロックが目立つ。
 見渡すと、ベンチは確かにいくつかあるが、殆どにカップルが腰かけている。
 それでもキョロキョロと空いているところを探していると、一組のカップルが立ち上がるのを目撃し、恵梨花は足早にそちらへ向かう。
 幸いなことに、恵梨花が着くまでに他の人が座ることなく、恵梨花はホッとしながら腰を下ろした。ここは木陰で涼しく、絶好のポジションだ。
 そうして座って落ち着くと、今更ながらに自分がそこそこ疲れていたことに気づく。

「それだけ楽しんでたってことだよね……」

 一人ごちながら、椅子にもたれて顔を上げ、木漏こもれ日に目を細める。
 本当に今日は楽しかった。好きな人のいろんな顔も見れたし。
 特に朝会った時の、我を忘れた亮の顔は二度と忘れられそうにない――本人は忘れてくれと言っていたが。
 まさか、髪型を変えただけであそこまで反応が変わるなんて……というのが、恵梨花のいつわらざる思いだ。
 そして、あの時はそれでも喜んでもらえてよかった、で終われるかと思っていたが、更に想定外のことが起きている。
 恵梨花の気のせいでなければ、亮が未だ緊張しているようなのだ。
 心当たりとしては、外で会うのが久しぶりだからというのが一つ。
 もう一つは――。

「やっぱり、これのせいかなぁ……」

 体を起こし、ため息をつきながら、ポニーテールの先っぽを指でクルクルといじる。
 今日はここに、いや、後頭部あたりに亮の視線をよく感じた。
 その後に目が合うと、焦ったように目をらされたりしたこともあった。
 緊張が伝わってくるのは、そんな時だ。
 この髪型のせいで、ああも緊張されてしまうと、今日はしなければよかったかも、なんて思う。
 もしいつもの髪型で、亮がそれほど緊張していなかったら――。

「手、つないでくれたかな……?」

 思わず出てしまう、二度目のため息。
 咄嗟とっさに手を握ったことならあるが、ゆっくり握ったことはまだない。
 手を繋いで一緒に歩く。
 好きな人や彼氏ができたら、恵梨花がしてみたかったことの一つである。
 簡単なことのように思っていたが、思っていた以上に難しい。今日見かけたカップルの大半は、難なく実行しているというのに。
 今も目の前を通るカップルが、仲睦なかむつまじく手を繋いでいる。
 三度目のため息が恵梨花の口からむなしく零れる。が、すぐに首を左右に振った。

(ううん、帰るまでには、もうちょっと時間あるし、もしかしたら……!)

 そうやって、自分を鼓舞こぶし、決意を新たにした時だ。

「うっわ、マジじゃん、マジで信じられないぐらい可愛い子いるし」
「な? 俺の言った通りだろ?」

 騒がしい声が、耳に飛び込んできた。
 顔を上げると、派手な雰囲気の男二人組が、こちらを見ながら真っ直ぐ歩いてくる。
 何の用かなんて考えるまでもない。ナンパだ。
 声をかけられる前に逃げられたら楽なのだが、それが間に合わない距離にまで迫っている。仕方ないので、すぐに断って立ち去ろう。
 これまでの経験から瞬時にそう判断した恵梨花は、ベンチから腰を上げようとした。が、二の足を踏んでしまう。
 亮をベンチで待つ、という意識が働いたためだ。

「おお、近くで見たら余計に可愛いし!」
「お前もう、うるさいって……ねえ、君すっごく可愛いね。こんなところで一人で何してんの?」
「俺の純粋な気持ちを伝えてるだけじゃねえか! ……君、あんまりこの辺来たことないよね? 俺らこの辺詳しいからさ、案内してやるよ」

 恵梨花が固まっている間に、男二人は近くまで、やって来てしまった。
 恵梨花に話しかけながら、金髪坊主の男は隣にドカッと腰を下ろし、もう一人のキャップを被った男は、恵梨花の前でヘラヘラしながら見下ろしている。
 一気にまくし立てられたものだから、恵梨花は口をはさむヒマもなかった。
 見かけからすると、一つか二つは年上だろう。

「あ、ありがとう。でも、ごめんなさい――彼氏と来てますので」

 言いながら恵梨花は、必要以上に笑顔になりそうになった。
 彼氏と来てますので――これは恵梨花が彼氏が出来たら、言ってみたかった言葉の一つである。
 そうして腰を浮かすと、キャップ男が一歩踏み出してきて、更に距離を詰められる。
 威圧感もあって、恵梨花は立ち上がれなくなった。

「えー、嘘っしょ? ここにいないじゃん」
「嘘なんかついてません、外へクレープ買いに行ってるだけです……ちょっとどいてもらえますか?」

 隣でボヤく金髪坊主に言い返し、キャップ男をキッと睨み上げる。

「まあまあ、そんな慌てることないじゃん」
「そうそう。それならその彼氏が来るまで、ちょっとお話ししねえ? そしたら君はヒマしなくていい、俺達も楽しい、OK?」
「おお、お前、いいこと言うな」
「だろ? これがウィンウィンの関係ってやつよ」

 ドヤ顔でそんなことをのたまう金髪坊主に、恵梨花は内心で大きなため息をついていた。
 何故、この手の人達は相手の話を聞かずに、勝手に何もかも決めようとするのだろうか。
 恵梨花は苛立いらだちを抑えながら、無理矢理立ち上がる。

「せっかくですけど、遠慮えんりょしておきます、さようなら」

 しかし、キャップ男にゆっくりであるが肩を押され、更には隣の金髪坊主に手を引っ張られてしまい、再びベンチに腰を落としてしまう。

「ちょっと、離してください!」
「だーかーらー、ちょっとだけって言ってんだろ……?」

 金髪坊主が、スーッと目を細めて言った。
 その瞬間、恵梨花の背筋にゾクッと嫌なものが走った。

(……なに?)

 声を荒らげた訳ではない。口調の雰囲気や抑揚よくようが変わったからのか。
 困惑しそうになり、つい身構える恵梨花。

「そんな警戒しなくてもさ、俺達からその彼氏にちゃんと事情言ってやるからよ……あ、そうだ、なんならその彼氏と君と俺らの四人で遊びに行かね? 俺が説得してやっからさ」
「おっほう! お前、本当、今日はえてるな!」

 声の調子は戻ったように感じるが、男達から伝わる雰囲気は――。

(なんか……今までナンパして来た人達より……そうだ、ずっと怖い……)

 梓と一緒に、というのが殆どだが、高校に入ってからナンパされた回数と、それをかわした経験なら、ありがたくないことに豊富である。
 その経験が最大級の警鐘けいしょうを鳴らしている。
 恵梨花はひざが震えそうになるのを自覚しながら、再度断りの文句を言おうとした――その時だ。

「ちょっと、どいてくれるか」

 キャップ男の後ろから聞こえてくるその声。
 聞き間違えようがない。
 なんて神がかったタイミングなのだろうか。
 こわばった体から力が抜けていく。

「亮くん……」

 男二人が亮へ振り返る。
 キャップ男は体ごと振り返ったため、亮の姿がようやく恵梨花の視界に入った。
 亮は右手で器用にクレープを二つ持ち、左手には別に買ってきたのだろう、お茶のペットボトルを持っている。
 金髪坊主が挑戦的な笑みを浮かべて言った。

「へえ、お前か? この子の彼氏さんってのは? ……っ?」
「なんだ、もっと派手なやつかと思ってたのによ」

 キャップ男が続いて言うが、亮は何も答えず、いぶかしげに男と目を合わせただけだ。
 黙ったまま相手の反応を待っている風で、そんな亮にキャップ男も目を細める。
 すると亮は、突然肩を竦めて「ふう」と一息つくと、キャップ男の肩を、自分の肩でそっと横へ押した。
 キャップ男はよろけ、恵梨花の正面から金髪坊主の前までゆっくりとスライドする。
 ドンと押すのではなく、ゆっくりと押したその動きは、手がふさがっているから仕方なく肩で押したような自然さだった。
 あまりにもさりげなかったせいか、男も自分がどうやって押されたのか、どうして自分が動いてしまったのか、よくわかっていない様子だった。
 恵梨花も何が起こったのかよくわからず、ただただ目で追っていた。

「ほら、恵梨花」

 亮がクレープを差し出してくる。

「あ……ありがと」

 これもあまりにさりげなかったので、恵梨花は普通に礼を言って受け取ってしまう――亮がさっきからずっとその場にいたかのように。

「て、てめえ! いきなり何しやがる!?」

 キャップ男は自分が何をされたのか、やっと気づいたようだ。怒り心頭に発して声高に叫ぶ。
 この反応は当たり前だろう。知らない人間に肩で押されていい気分になる者などいない。

「いや、どいてくれって言ったろ? ――あと、喉かわいたから飲みもんも買ってきた……お茶でよかったか?」

 男の怒りにはチラッと横目で返すと、すぐに普通の調子で恵梨花へお茶の入ったペットボトルを見せる亮。

「う、うん……」

 亮があまりに自然体なので恵梨花も落ち着いてきたが、横目で男達をうかがいつつの返事だ。
 キャップ男は今にも亮に掴みかからんていで、金髪坊主は苛立たしげに眉を歪ませ、どこか焦っているようで――。

(? ……あれ?)

 気のせいでなければ、金髪坊主は亮を恐れているようにも見えた。

「それで? こいつら、やっぱりナンパか?」

 亮がやれやれといった声で恵梨花に尋ね、男二人に目を向ける。

「ああ!? めてんのか、てめえ!? それに、さっきの言い分はなんだ、ああ!?」

 キャップ男が亮に掴みかからんと手を伸ばし、足を進める。
 それに対し、焦りの色を浮かべた金髪坊主が目を剥き、慌てて立ち上がって相方の肩を掴んだ。

「おい待て! やめろ!」
「……はあ? 何言ってんだ、お前?」

 苛立たしげに振り返るキャップ男に、金髪坊主は舌打ち混じりに言い返す。

「くそっ! こいつはな!」

 恵梨花が困惑している前で、金髪坊主は耳打ちする。

「…ックスのメン……かも……ねえ」

 すると男の顔がハッとなる。

「おい……それ本当か? お前の勘違いじゃないのか?」
「勘違……じゃ……よ!」
「くそっ、マジかよ」

 すると二人揃って焦燥感しょうそうかんあらわにする。
 恵梨花は状況の急変に声を出すことも忘れ、何となしに自分の彼氏を見上げた。
 亮は涼しい顔で二人を見ている。しかし、すぐに恵梨花の視線に気づいて振り向いた。

「ナンパで合ってるんだよな?」
「う、うん……」

 恵梨花が頷くと、途端にビクッとこちらに振り返る二人組。

「……何か変なことされてないか?」

 この時になって初めて亮はけわしい目となった。

「えーっと……」

 チラッと二人組を見る。
 すると彼らは舌打ちをして、恵梨花から目を逸らした。

「うーん……ううん」

 恵梨花は事実から判断し否定した。

(手を引っ張られたり、肩を押されたのは、変なことには入らない……よね)
「そうか? 何かされたんならちゃんと言えよ?」

 チョコバナナクレープとお茶の入ったペットボトルを持つ亮に睨まれ、焦りながらもどこか安心したようなガラの悪い二人組。なかなかにシュールな光景である。

「ちっ……もういいから、さっさと失せろ、お前ら」

 周囲に視線をやった亮が、盛大な舌打ちをして言い放った。
 恵梨花も亮の仕草に釣られて周りを見てみれば、見て見ぬフリをしている人がけっこういた。
 公共の場で騒いでいたのだから、注目を集めるのは当然の成り行きである。

「くそっ……いくぞ」
「ああ……ぺっ」

 二人組は苛立いらだちを表すように、つばき捨ててきびすを返した。

「はあ……」

 亮が疲れたようにため息をついた。

「あ……ごめんね、亮くん」
「? 何が?」
「だって……私がちゃんと断っていたら……」

 二人組の様子が何故か急変したから大したことにならずに済んだが、そうで無ければどうなっていたことか。
 少なくとも自分がちゃんと断れていれば、そんな心配もなかった。
 そう思っての恵梨花の謝罪である。

「ああ……違う違う」

 亮が恵梨花の言葉を否定しながら隣に腰掛ける。

「俺のミスだって。こんなところで恵梨花一人にしたらナンパされることなんて、わかりきってたことだったんだからな。だから一人で公園に行けって言った俺が間違ってたんだよ」
「そ、そんなこと……」
「いや、朝から予想してたんだからな。だから俺のミス」
「でも……」
「いいから。恵梨花は悪くねえから、もうこれでおしまい――さあ、食おうぜ」

 そう言って、クレープをヒラヒラと振る亮。
 その顔がおあずけを食らった後の子供のように食い気に走っていたので、恵梨花は気が抜けて思わず笑ってしまった。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「美味しかったー! ごちそうさま!」

 とっくに食べ終えた亮の横で、恵梨花が満足気な声を上げる。

「美味かったよなー……あと二つぐらい買えばよかった」

 亮も同意はするが、量が物足りなかった。

「……やっぱり足りなかったんだ」

 恵梨花は予想していたらしく、呆れたように苦笑しながら、ペットボトルを傾けた。

「まあな……それ、まだ残ってるか?」
「残ってるよ、はい」
「ん」

 ペットボトルを受け取って、亮も口につける。
 一本のペットボトルを二人で回し飲みである。大事なことだからもう一度言うが、一本のペットボトルを二人で回し飲みである。
 今はもう何気ないように行っているが、数分前、相手が飲んだ後の自分の最初の一口は、お互いにかなり照れてしまい、目を逸らしてまでいたのだ。
 それでも二回、三回と繰り返していく内に慣れてきた。
 互いに互いのクレープを交換して味見したのも慣れに繋がった――方法はもちろん「はい、あ~ん」である。
 一つ言っておくと、亮はこの回し飲みを狙って、飲み物を一本しか買わなかった訳ではない。
 右手にクレープを二つ持った状態だったのだ。二本の購入は難しい。

「ねえ、亮くん」
「なんだ?」
「さっきの二人なんだけどね」
「ああ」
「亮くんを見て焦ってたみたいじゃない? ……なんでなの?」

 その質問には責めるような色は無く、ただ疑問に思ったことを純粋に聞いているようだった。

「あー……あの二人が何かコソコソ話してたよな」
「うん」
「多分だけど、あいつらがビビッてたのは俺でなくて主にしゅん――俺の中学の時からの友達つれなんだが、そいつにビビッたんだろうよ」
「……お友達?」
「ああ。ここにたまに来るって言ったろ? その瞬に呼ばれて来てる訳だが……そいつがここで喧嘩ばっかしてるようなやつで、そのせいで恐れられてるみたいでな。さっきのやつは俺が瞬と会ってるところを見て、たまたま覚えてたんだろうよ。だから、瞬に復讐されるのをビビッたんじゃねえか」

 その話に、恵梨花は信じられないと言わんばかりの顔で首を横に振る。

「えっと……亮くんの中学の友達? 同い年……なんだよね?」
「ああ」
「お、同い年の人がこの街でそんなに……」

 恵梨花の驚きは無理もない。夜のこの街の住人の中で、十六、十七歳は間違いなく低年齢と言ってよい。
 そして、恵梨花の見立てではあの二人組は自分達より年上だった。

「でも……だとしても、亮くん自体も怖がってるように見えたよ?」
「あー……」

 亮はまいったなと頭をガシガシ掻く。
 心当たりはけっこうある。

「多分だが、俺が瞬と一緒にこの街で……喧嘩……してたのを見たんじゃねえかな」

 つい先ほど、喧嘩をふっかけるような真似はしないと言った手前、非常に言いづらかった。

「……」

 恵梨花が無言でジト目を向けてくる。
 亮は精神がガリガリと削られる気分となり、慌てて弁解する。

「いや、待て! 俺は巻き込まれたんだ、あいつにめられて仕方なくだ!」
「……ふーん……」

 恵梨花のジト目は変わらない。

「ほ、本当だぞ!?」

 言いつのる亮から恵梨花は顔を背けてしまった。
 亮の焦りが更に強まる最中、突然、恵梨花が顔を隠したまま肩を震わせた。

「ふふっ……」
「……」
「ふっ、ふふふっ……」
「おい」

 そこで恵梨花は堪え切れなくなったようで、大きく噴き出した。

「あははははっ!」
「おい、こら、恵梨花」
「あははは! ご、ごめんなさい……! ちょ、ちょっとからかってみるつもりが、亮くん、すごく焦って……あははは!」
「はあ……」

 亮はどっと疲れた気がした。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「うん、朝にも言ったけど、喧嘩については『私が言えた立場じゃないと思う』の。だって、それで私もクラスメイトも助けてもらったし、さっきも大事おおごとにならなかったじゃない? 亮くんも自分から喧嘩ふっかけたりしないって言ってたから、それ信じてるしね。焦ってる亮くんも可愛かったし……じゃなくて、だからね……その、ごめんなさい!」
「……」

 平謝りし続ける恵梨花に、顔を背けねる亮。
 先ほどと比べ、完全に形勢が逆転している。

「ねえ、亮くーん……ごめんね……?」

 亮の腕を引き寄せ、横から覗き込んでくる恵梨花。
 少々不貞腐れていた亮だが、謝ってもらえたし、恵梨花が密着してくるが故に理性を失いそうになったので、そろそろ手打ちにしようかと考え始めた。

「月曜日のお弁当にハンバーグとメンチカツも入れるからー」

 すると、亮の肩があからさまにピクリと揺れる。


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