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ようちゃん
情熱的な男
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「スープカレーって食べ方の正解が分かんないよね」
皿に盛られたライスと、どんぶりに入った具だくさんのスープカレーを前に疑問を投げかける。
「確かに。ご飯をすくってスープにつけるのが正解か、ご飯にスープをかけるのが正解か分かんないよね」
テーブルを挟んだ迎えに座るホタちゃんも食べ方に迷っているようだった。
「具が大きいからお箸あったらもっと食べやすいかもね。スプーンだけで食べるのは結構難しそう」
「スープカレーって結構難易度が高い食べ物だね」
こんな私のひねくれた考えが露呈しても彼は笑って肯定してくれる。そんな彼の笑顔を見て、せっかく選んでくれたお店なのにケチをつけてしまったと自己嫌悪に走ってしまう。
「下北ってあんまり降りたことなかったけど、本当にバンドマンみたいなギターケース背負ってる人多いんだね」
「俺もちょっと思った。俺も高校の時とかにバンドやっとけばよかった~」
「意外」
「そん時はやりたいって思わなかったけど、この年になるとそういうこと経験してた方が色んな会話の引き出しになったりするからね」
「全然関係ないかもだけど、この年になっても最初のポケモン何選んだかとかの話になるんだよね。私はゲームあんまりしたことないから結構困るかな。ポケモンとドラクエの天空の花嫁はいまだに話にあがるから教養の一つだと思うよ」
「あ~、俺はビアンカ派なんだよな~」
「ビアンカ人気よね。フローラ派の人弾圧される傾向にあるし。下手したら飲み会の話題がどっちを嫁にしたかだけで終わることもあるんだよね~」
「ゲームやったことない人にとったら苦痛かもね」
「せめていちご100%の話題だったらついていけるんだけどな~」
「誰派?」
「私は西野派かな~」
「俺唯ちゃん派」
「そんな人聞いたことないよ」
ふふふと笑いながらライスをすくってスープに浸す。正解は分からないけど、ご飯の乗った真っ白な皿がスープで汚れてしまうのが嫌だったから。
何も変わらない。あの時の「好き」という言葉は本当になかったかのように。鈍感で馬鹿な少女漫画の主人公の女だったらあれは夢だったんだで片付けてしまうほどにはいつも通りの会話だ。でも、私は主人公じゃないから、夢で片付けられるほど夢を見る年でもないから。あれが告白だったってこと、本当は分かってるんだ。
スープカレーとは合わなくて一緒に頼んだマンゴーラッシーは食後に飲むことになった。ホタちゃんも同じだったようで水の減りの早さに対して、マンゴーラッシーの減りが遅いようだった。
「ようちゃん明日はなんか予定ある?」
「ん~明日は美大の友達がやってる個展に行く予定」
「そっかそっか。じゃあお泊りは無理か~。今日もようちゃん家行こうと思ってたのに~」
少し残念そうな彼を前に少しだけホッとしている自分がいた。
「それに今床に絵転がってて人呼べる状況じゃない」
「そんなの今更じゃん」
「じゃあ今度はホタちゃんの家に行こうかな」
「全力で片付けないとだな~」
「ホタちゃん家はめちゃくちゃ綺麗そうだよ」
「そんなことないよ。あんまり家に帰ってないから物は増えないけど」
「いいな~。私社畜のくせに物増えまくるよ。なぜか大学の時の石膏まだクローゼットあるし」
「思い出はなかなか捨てられないからね。でも俺は大学の論文とか全部捨てたな」
「無情」
「意外にドライなとこあるから」
「意外でも何でもないよ。昔から少しドライなとこあるよ。少し冷めてるみたいな?」
「中二病じゃん」
「他より大人っぽかったんだよ」
「でもようちゃんに対してはわりと情熱的だと思うけど」
今その冗談はホント反応に困る。
皿に盛られたライスと、どんぶりに入った具だくさんのスープカレーを前に疑問を投げかける。
「確かに。ご飯をすくってスープにつけるのが正解か、ご飯にスープをかけるのが正解か分かんないよね」
テーブルを挟んだ迎えに座るホタちゃんも食べ方に迷っているようだった。
「具が大きいからお箸あったらもっと食べやすいかもね。スプーンだけで食べるのは結構難しそう」
「スープカレーって結構難易度が高い食べ物だね」
こんな私のひねくれた考えが露呈しても彼は笑って肯定してくれる。そんな彼の笑顔を見て、せっかく選んでくれたお店なのにケチをつけてしまったと自己嫌悪に走ってしまう。
「下北ってあんまり降りたことなかったけど、本当にバンドマンみたいなギターケース背負ってる人多いんだね」
「俺もちょっと思った。俺も高校の時とかにバンドやっとけばよかった~」
「意外」
「そん時はやりたいって思わなかったけど、この年になるとそういうこと経験してた方が色んな会話の引き出しになったりするからね」
「全然関係ないかもだけど、この年になっても最初のポケモン何選んだかとかの話になるんだよね。私はゲームあんまりしたことないから結構困るかな。ポケモンとドラクエの天空の花嫁はいまだに話にあがるから教養の一つだと思うよ」
「あ~、俺はビアンカ派なんだよな~」
「ビアンカ人気よね。フローラ派の人弾圧される傾向にあるし。下手したら飲み会の話題がどっちを嫁にしたかだけで終わることもあるんだよね~」
「ゲームやったことない人にとったら苦痛かもね」
「せめていちご100%の話題だったらついていけるんだけどな~」
「誰派?」
「私は西野派かな~」
「俺唯ちゃん派」
「そんな人聞いたことないよ」
ふふふと笑いながらライスをすくってスープに浸す。正解は分からないけど、ご飯の乗った真っ白な皿がスープで汚れてしまうのが嫌だったから。
何も変わらない。あの時の「好き」という言葉は本当になかったかのように。鈍感で馬鹿な少女漫画の主人公の女だったらあれは夢だったんだで片付けてしまうほどにはいつも通りの会話だ。でも、私は主人公じゃないから、夢で片付けられるほど夢を見る年でもないから。あれが告白だったってこと、本当は分かってるんだ。
スープカレーとは合わなくて一緒に頼んだマンゴーラッシーは食後に飲むことになった。ホタちゃんも同じだったようで水の減りの早さに対して、マンゴーラッシーの減りが遅いようだった。
「ようちゃん明日はなんか予定ある?」
「ん~明日は美大の友達がやってる個展に行く予定」
「そっかそっか。じゃあお泊りは無理か~。今日もようちゃん家行こうと思ってたのに~」
少し残念そうな彼を前に少しだけホッとしている自分がいた。
「それに今床に絵転がってて人呼べる状況じゃない」
「そんなの今更じゃん」
「じゃあ今度はホタちゃんの家に行こうかな」
「全力で片付けないとだな~」
「ホタちゃん家はめちゃくちゃ綺麗そうだよ」
「そんなことないよ。あんまり家に帰ってないから物は増えないけど」
「いいな~。私社畜のくせに物増えまくるよ。なぜか大学の時の石膏まだクローゼットあるし」
「思い出はなかなか捨てられないからね。でも俺は大学の論文とか全部捨てたな」
「無情」
「意外にドライなとこあるから」
「意外でも何でもないよ。昔から少しドライなとこあるよ。少し冷めてるみたいな?」
「中二病じゃん」
「他より大人っぽかったんだよ」
「でもようちゃんに対してはわりと情熱的だと思うけど」
今その冗談はホント反応に困る。
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