楽勝なはずの乙女ゲームの世界に聖女候補として転生しましたが、攻略に失敗してみんなに嫌われたので、生きていくためにカレー屋で頂点目指します!

林 真帆

文字の大きさ
上 下
12 / 20

家なき子

しおりを挟む
 ぱたんっ……

 パパとママの手紙を読み終わった私は、倒れるようにして机に突っ伏した。 

「グレイス様! 大丈夫ですか!」

 エマさんは大慌てして、私の肩を揺さぶっている。

「え……エマさん、大丈夫だから落ち着いて……」

 私はゆっくりと頭を上げた。

「何か悪いことでも……?」

「うん、最悪なことが」

「……! グレイス様、私、何と言ったら良いか……」

 そう言ったきり、エマさんは次の言葉を繋げないでいる。

「その……パパとママが……パパとママが離婚しちゃったの!」



 手紙の内容をかいつまんで言うとこんな風になる。

 “愛するグレイス。

 パパとママは離婚することになった。本当はグレイスが成人して独り立ちをしてからと考えていたが、グレイスが聖女候補に選ばれたのを機に離婚することにした。

 家は売ることになった。おまえの部屋にあるものは、荷造りが終わり次第、そちらに送る。

 急な報告になってすまない。

 グレイスならばきっとみんなに愛される聖女になれる。

 パパとママの新しい連絡先は後程知らせる

 末永く元気で”



 手紙の内容からわかる通り、こっちの世界のパパとママの離婚により、私には帰れる実家がなくなってしまった。つまり、『実家に帰るエンド』がなくなってしまったのだ。

 『聖女エンド』・『恋愛エンド』・『実家に帰るエンド』のすべてがなくなってしまった私に、どんな結末が待っているのか全く見当がつかない。なぜなら、ゲーム版の『聖女伝説』にはこの三つの結末しか用意されていないからだ。

 そして、このリアル版『聖女伝説』は、攻略法が全然役に立たなかったり、パパとママが離婚したりと、ゲーム版にない想定外の事態が続けざまに起こっている。だから今後、私の身に何が起こっても不思議ではない。この世界からの追放か、もしくは、犯罪者として処刑……想像が、悪い方向へ悪い方向へと行ってしまう。

 それに、そのようなことにならなかったとしても、この右も左もわからない世界で、たった一人でどうやって生きていけばいい? 十六歳の女子高生が? いや、こんな状況、アラサーのOLでも生きていけない。



 かくして、私は再び引きこもり生活に入った、というか、それしかなかった。

 エマさんは、私がパパとママの離婚にショックを受けて、引きこもっていると思っているので、必要最小限のことしか話しかけてこない。まさに腫物として扱われている。



 訪問者がやってきたのは、引きこもり生活が一週間ほど経過した後だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...