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第二章
求愛
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「次の休暇に実家に帰るんだ……その……君も一緒に来ないか?」
「えっ? 先輩のご実家ですか……?」
「ああ……」
エリスは、ルードヴィッヒの真意を理解しかねた。
この学校の決まりでは、お互いの身の上について言及するのは不可とされている。
生徒会長であり、最高学年に在籍しているルードヴィッヒがこのことを知らないはずがない。
それなのに、実家に来いとはどういうことなのか?
即答はしなかった。しかし、よく考えた上で答えたとしても、答えは〈ノー〉だ。
黙り込んでしまったエリスを見て、ルードヴィッヒは困った顔をした。
「あの、せっかくのお誘いですが……」
いつまでも沈黙しているわけにはいかず、エリスは口を開いた。
「……変に誤解されていたら困る。わかった、率直に言おう。エリス・スチュアート、俺と一緒に来て欲しい、婚約者として――」
今度こそ本当に絶句した。あまりに予想外のことに、エリスは言葉が出なかった。
冗談かとも思ったが、今までの会話の流れや、ルードヴィッヒの表情からとても冗談を言っているとは思えない。
言葉のまま受け取っていいのだろうか?――エリスは戸惑った。
「君が、目的をもってこの学校にやって来たことはわかっている。将来の王妃として大切に育てられた令嬢が、男の格好をして、たった一人で男子校に乗り込んで来たんだ。君が背負っているものは相当なものだろう。だが、それは、俺と結婚しても解決しないことなのか?」
「それは……」
エリスは言葉に詰まった。
「ご両親と妹君のことか? だったら心配することはない。ご両親には爵位と領土を。そして、妹君には王妃の妹にふさわしい嫁ぎ先を用意しよう」
「えっ? 先輩のご実家ですか……?」
「ああ……」
エリスは、ルードヴィッヒの真意を理解しかねた。
この学校の決まりでは、お互いの身の上について言及するのは不可とされている。
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それなのに、実家に来いとはどういうことなのか?
即答はしなかった。しかし、よく考えた上で答えたとしても、答えは〈ノー〉だ。
黙り込んでしまったエリスを見て、ルードヴィッヒは困った顔をした。
「あの、せっかくのお誘いですが……」
いつまでも沈黙しているわけにはいかず、エリスは口を開いた。
「……変に誤解されていたら困る。わかった、率直に言おう。エリス・スチュアート、俺と一緒に来て欲しい、婚約者として――」
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言葉のまま受け取っていいのだろうか?――エリスは戸惑った。
「君が、目的をもってこの学校にやって来たことはわかっている。将来の王妃として大切に育てられた令嬢が、男の格好をして、たった一人で男子校に乗り込んで来たんだ。君が背負っているものは相当なものだろう。だが、それは、俺と結婚しても解決しないことなのか?」
「それは……」
エリスは言葉に詰まった。
「ご両親と妹君のことか? だったら心配することはない。ご両親には爵位と領土を。そして、妹君には王妃の妹にふさわしい嫁ぎ先を用意しよう」
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