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第二章

筆記試験

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 教室と思われる室内には、この学校の教師らしき男性が一人だけいた。

「アーサー君ですね」

「はい」

「どうぞこちらにおかけください」

 エリスは指定された机に着席した。

「早速ですが、本日の予定を簡単に説明します。まず最初にこの教室で筆記試験を受けてもらいます。次に場所を移動して実技試験。そして最後が面接です。合否につきましては、本日中に発表いたしますので、待合室でそのままお待ちください」

「はい、わかりました」

「何か質問はありますか?」

「いえ、特にありません」

「よろしい。質問がなければ、筆記試験を始めましょう」

 教師は、エリスの机に裏返しの状態の問題用紙と解答用紙を置いた。

「私が合図をしたら、解答を始めてください」



 教師の試験開始の合図とともに、エリスは問題用紙を表にし、最初のページから最後のページまでざっと目を通してみた。

(これは、どういうことなの?)

 エリスの指先は、驚きのあまり、ペンが持てないほど小刻みに震えていた。

(落ち着きなさい、私!)

 先ほどから震えが止まらない指先を、エリスはもう片方の手で必死に押さえた。

 指先の震えがやっとおさまったところで、エリスは深呼吸して問題を解き始めた。

(すごい……クロードがやってくれた試験対策そのものじゃない!)

 問題文の言い回しや数字の違い等はあるものの、全ての問題は、クロードと勉強してきた内容に酷似していた。

 エリスは、クロードがあんなに満点にこだわっていた理由がわかったような気がした。これだけ完璧な試験対策ができるのだから、満点を取らせる自信があるのも当然のことだろう。

 試験問題を全問解き終わり、全問最初から最後まで解き直しをしても、十分すぎるくらいの時間が余ってしまっていた。

(クロードって、一体何者なのかしら?)

 あんなに編入試験のことで緊張していたエリスであったが、クロードの試験対策のおかげで、今ではすっかりリラックスし、試験以外のことを考える余裕まで出てきていた。

(そう言えば、私、三か月もクロードと一緒にいたのに、クロードのこと、何も知らない……。まあ、私に聞かれたとしても、自分のことをペラペラとしゃべるような人じゃないだろうけど)

「まだ試験時間は残っていますが、もう提出できるようなら終わりにして構いませんよ」

 エリスが暇そうにしている様子を見て、教師が声をかけてきた。
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