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第二章

試験開始直前

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「もうすぐ到着しますから、このくらいにしておきましょう。本当はもう一回くらいやっておきたいところですが」

 結局、エリスは一睡もしなかった。

 最初は試験に対する緊張で眠れなかったのだが、クロードから渡された問題集をやり始めると、ますます眠れなくなった。

 こんな状況で問題を解いているせいだろうか? 意外と問題が解けず、エリスは焦ってしまったのだった。

(クロードは満点を取れと言っているけど、こんな調子だと満点どころか……合格も危ないかも)

 エリスの不安はますます大きくなっていくのだった。



「私は手続きをして参りますので、このままお待ちください」

 クロードは、エリスを馬車に残し、校舎内に入っていった。

 順調に行けば、ここがエリスの新たな生活の場となる。

(男子校なんて、上手くやって行けるかしら……)

 そんなことを思いながら、エリスは馬車の窓から校舎を眺めていた。

 今日は休日ということもあり、学校の敷地内に生徒の姿は見当たらない。編入試験が行われるということで、校舎に近づかないように言われているのかもしれない。

 編入試験が行われる日ということで、エリス以外の受験生もいるかと思ったが、それらしき人の出入りも全くうかがえない。

「お待たせいたしました」

 クロードに声をかけられ、エリスは我に返った。

「あ、ああ……もう用事は済んだのか?」

「ええ。これから試験場にお連れ致します。私についてきていただけますか」

 エリスは頷くと、クロードに続いて馬車を降りた。



 外観からして大きな校舎だと思っていたが、中に入ってみると、その広さは想像以上であった。

(こんなに広いと迷ってしまいそう……)

 エリスがきょろきょろとあたりを見回していると、

「ちゃんとついてきてくださらないと、迷子になりますよ」

 とクロードがエリスに注意を促した。

 エリスが小走りでクロードに追いつくと、今度はクロードの後ろにぴったりとくっつくようにして歩き始めた。

 歩き出してから、エリスはあることに気がついた。

 初めて来た場所だというのに、クロードには、道に迷う気配が一切感じられない。

「クロード、もしかしてここに来たことがあるの?」

 エリスは抱いていた疑問をクロードにぶつけてみた。

「はい?」

「えっと……さっきから全然道に迷っている様子がないから……」

「主人が生活するかも知れない場所です。内部がどうなっているか完全に把握しておくのは当然のことです」

「そう……」

 相変わらずの完璧さにエリスは黙るしかなかった。

「着きましたよ。こちらです」

 クロードはとある部屋の前で立ち止まった。

「ここから先は、アーサー様お一人でお入りください。私は待合室で待機しておりますので」  

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