23 / 65
第二章
試験開始直前
しおりを挟む
「もうすぐ到着しますから、このくらいにしておきましょう。本当はもう一回くらいやっておきたいところですが」
結局、エリスは一睡もしなかった。
最初は試験に対する緊張で眠れなかったのだが、クロードから渡された問題集をやり始めると、ますます眠れなくなった。
こんな状況で問題を解いているせいだろうか? 意外と問題が解けず、エリスは焦ってしまったのだった。
(クロードは満点を取れと言っているけど、こんな調子だと満点どころか……合格も危ないかも)
エリスの不安はますます大きくなっていくのだった。
「私は手続きをして参りますので、このままお待ちください」
クロードは、エリスを馬車に残し、校舎内に入っていった。
順調に行けば、ここがエリスの新たな生活の場となる。
(男子校なんて、上手くやって行けるかしら……)
そんなことを思いながら、エリスは馬車の窓から校舎を眺めていた。
今日は休日ということもあり、学校の敷地内に生徒の姿は見当たらない。編入試験が行われるということで、校舎に近づかないように言われているのかもしれない。
編入試験が行われる日ということで、エリス以外の受験生もいるかと思ったが、それらしき人の出入りも全くうかがえない。
「お待たせいたしました」
クロードに声をかけられ、エリスは我に返った。
「あ、ああ……もう用事は済んだのか?」
「ええ。これから試験場にお連れ致します。私についてきていただけますか」
エリスは頷くと、クロードに続いて馬車を降りた。
外観からして大きな校舎だと思っていたが、中に入ってみると、その広さは想像以上であった。
(こんなに広いと迷ってしまいそう……)
エリスがきょろきょろとあたりを見回していると、
「ちゃんとついてきてくださらないと、迷子になりますよ」
とクロードがエリスに注意を促した。
エリスが小走りでクロードに追いつくと、今度はクロードの後ろにぴったりとくっつくようにして歩き始めた。
歩き出してから、エリスはあることに気がついた。
初めて来た場所だというのに、クロードには、道に迷う気配が一切感じられない。
「クロード、もしかしてここに来たことがあるの?」
エリスは抱いていた疑問をクロードにぶつけてみた。
「はい?」
「えっと……さっきから全然道に迷っている様子がないから……」
「主人が生活するかも知れない場所です。内部がどうなっているか完全に把握しておくのは当然のことです」
「そう……」
相変わらずの完璧さにエリスは黙るしかなかった。
「着きましたよ。こちらです」
クロードはとある部屋の前で立ち止まった。
「ここから先は、アーサー様お一人でお入りください。私は待合室で待機しておりますので」
結局、エリスは一睡もしなかった。
最初は試験に対する緊張で眠れなかったのだが、クロードから渡された問題集をやり始めると、ますます眠れなくなった。
こんな状況で問題を解いているせいだろうか? 意外と問題が解けず、エリスは焦ってしまったのだった。
(クロードは満点を取れと言っているけど、こんな調子だと満点どころか……合格も危ないかも)
エリスの不安はますます大きくなっていくのだった。
「私は手続きをして参りますので、このままお待ちください」
クロードは、エリスを馬車に残し、校舎内に入っていった。
順調に行けば、ここがエリスの新たな生活の場となる。
(男子校なんて、上手くやって行けるかしら……)
そんなことを思いながら、エリスは馬車の窓から校舎を眺めていた。
今日は休日ということもあり、学校の敷地内に生徒の姿は見当たらない。編入試験が行われるということで、校舎に近づかないように言われているのかもしれない。
編入試験が行われる日ということで、エリス以外の受験生もいるかと思ったが、それらしき人の出入りも全くうかがえない。
「お待たせいたしました」
クロードに声をかけられ、エリスは我に返った。
「あ、ああ……もう用事は済んだのか?」
「ええ。これから試験場にお連れ致します。私についてきていただけますか」
エリスは頷くと、クロードに続いて馬車を降りた。
外観からして大きな校舎だと思っていたが、中に入ってみると、その広さは想像以上であった。
(こんなに広いと迷ってしまいそう……)
エリスがきょろきょろとあたりを見回していると、
「ちゃんとついてきてくださらないと、迷子になりますよ」
とクロードがエリスに注意を促した。
エリスが小走りでクロードに追いつくと、今度はクロードの後ろにぴったりとくっつくようにして歩き始めた。
歩き出してから、エリスはあることに気がついた。
初めて来た場所だというのに、クロードには、道に迷う気配が一切感じられない。
「クロード、もしかしてここに来たことがあるの?」
エリスは抱いていた疑問をクロードにぶつけてみた。
「はい?」
「えっと……さっきから全然道に迷っている様子がないから……」
「主人が生活するかも知れない場所です。内部がどうなっているか完全に把握しておくのは当然のことです」
「そう……」
相変わらずの完璧さにエリスは黙るしかなかった。
「着きましたよ。こちらです」
クロードはとある部屋の前で立ち止まった。
「ここから先は、アーサー様お一人でお入りください。私は待合室で待機しておりますので」
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】4人の令嬢とその婚約者達
cc.
恋愛
仲の良い4人の令嬢には、それぞれ幼い頃から決められた婚約者がいた。
優れた才能を持つ婚約者達は、騎士団に入り活躍をみせると、その評判は瞬く間に広まっていく。
年に、数回だけ行われる婚約者との交流も活躍すればする程、回数は減り気がつけばもう数年以上もお互い顔を合わせていなかった。
そんな中、4人の令嬢が街にお忍びで遊びに来たある日…
有名な娼館の前で話している男女数組を見かける。
真昼間から、騎士団の制服で娼館に来ているなんて…
呆れていると、そのうちの1人…
いや、もう1人…
あれ、あと2人も…
まさかの、自分たちの婚約者であった。
貴方達が、好き勝手するならば、私達も自由に生きたい!
そう決意した4人の令嬢の、我慢をやめたお話である。
*20話完結予定です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。
クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」
パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。
夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる……
誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる