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第二章
第35話 最悪の事態
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「最近、体調がすぐれなくて……診て下さるお医者様はいらっしゃるかしら?」
いつもなら、大抵の体調不良は、自分の作った薬を使って治すのだが、残念ながらここには薬を作るための材料も道具もない。
「まあ、それは心配でしょう……」
私はメアリに、どのような症状が出ているのかを話した。
「それは――」
そう言うなり、メアリは黙りこくってしまった。
「何か心当たりがあるの?」
メアリの様子から、私は自分がとんでもない大病を患っているのではないかと不安になった。
「メアリ、正直に言って。一体、私は何の病気なの?」
私はメアリに詰め寄った。
「その……マリア様の症状は、子を授かった時の症状によく似ています……」
「え?」
耳を疑った。
「あ、でも、マリア様に限ってそのようなことは、決してあり得ないことですものね」
メアリは慌てて打ち消したが、もう遅かった。
「マリア様!」
私はメアリの制止も聞かずに、その場から走り去った。
そう、私には身に覚えがあった。
宮殿を出てからというもの、私には月のものが来ていなかった。
最初は、追放されたことと、慣れない生活で、心身ともに疲れていることが原因だと考えていた。
――あの薬を使うときが本当に来るとは……。
最悪の事態を想定して、準備をしてはいたが、いざその瞬間を迎えてしまうと、体の震えが止まらなかった。
いつもなら、大抵の体調不良は、自分の作った薬を使って治すのだが、残念ながらここには薬を作るための材料も道具もない。
「まあ、それは心配でしょう……」
私はメアリに、どのような症状が出ているのかを話した。
「それは――」
そう言うなり、メアリは黙りこくってしまった。
「何か心当たりがあるの?」
メアリの様子から、私は自分がとんでもない大病を患っているのではないかと不安になった。
「メアリ、正直に言って。一体、私は何の病気なの?」
私はメアリに詰め寄った。
「その……マリア様の症状は、子を授かった時の症状によく似ています……」
「え?」
耳を疑った。
「あ、でも、マリア様に限ってそのようなことは、決してあり得ないことですものね」
メアリは慌てて打ち消したが、もう遅かった。
「マリア様!」
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そう、私には身に覚えがあった。
宮殿を出てからというもの、私には月のものが来ていなかった。
最初は、追放されたことと、慣れない生活で、心身ともに疲れていることが原因だと考えていた。
――あの薬を使うときが本当に来るとは……。
最悪の事態を想定して、準備をしてはいたが、いざその瞬間を迎えてしまうと、体の震えが止まらなかった。
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