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第二章

第33話 父

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 このまま母が好き勝手やっていたら、この国から聖女はいなくなる。
 母の振る舞いしか見ていないカタリナは、きっと、母のように振る舞ってもよいと考え、聖女になっても自分の欲望のままに振る舞うことであろう。
 私がロザリーから聞いた限りでは、どうやら聖女に対する悪評が出てきたのは、母がカタリナを連れて来た頃と一致する。
 母は今の状況に気がついているのだろうか?
 聖女の権力は絶大だから、周りが、国民が何を言おうとも、上から押さえつければどうにかなると思っているのかも知れない。


 私は父の実家のことを考えていた。
 父は自分の意思で逃げたが、実質的には私のように追放されたも同然だ。
 父の実家にしてみれば、父に非はないのに、家名に貶められのだ。さぞかし腹に据えかねていることだろう。
 それなりにこの国を引っ張ってきたという自負のある名門一族が、このまま黙っているとは到底思えない。それがたとえ聖女相手だったとしても、だ。


 私が追放されてから数か月が過ぎようとしていた。
 生まれてこの方、肉体労働などしたことはなく、やっていけるか不安であったが、驚くべきことに、この短期間ですっかり慣れてしまった。
 確かに肉体的には辛い仕事であったが、日々の生活自体は平穏であった。
 この先もこの生活が続くのかと思っていた矢先だった。
 私はメアリから驚くべき話を聞かされた。
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