52 / 64
8章 神界
#52 もう1つの名
しおりを挟む
「ねえこの人、本当に悪魔なの?ニア。何だかとっても……」
「かっこいい、だろう?」
「ええ。それに顔も普通の人間みたい。だけど悪魔ってことが何だか分かるわ。で、何でツバサは歓迎されるの?」
「彼は婿殿の祖先だからさ」
「……はあ?」
ツバサもベティも同時にニアに尋ねた。するとニアは少し考え込んで、ツバサのフードを掴みその顔を指さして言った。
「悪魔王、オウバルAとオウバルBに住む悪魔は皆整った顔つきをしているんだ。その気になれば人間なんて簡単に色気にやられる。男も誘ってくるような目で見つめてくるし、女も体も立派だし……まあ色々立派なんだ!」
「……何でこんなに興奮してるのこの神」
「婿殿!!一度は思ったことがあるんじゃないのかい!!自分のルックスのこと!自分がかっこいいと思ったことがあるんじゃないのかい!!」
「そ、そんな俺モテないし」
「ああ、確かにそれは君の魔術が関係するが……でも普通に居れば君はイケメンの類だろう?この二重瞼!それからキリッとした眉毛!まつ毛も多く長い!顔も小さい!1、2……8頭身あるし!歯並びも綺麗だし!それに!いくら汗をかいても独特の男臭が無い!キスも上手ければ夜の契りも上手い!婿殿が笑顔になれば世の中の女は簡単に落ちる!」
「後半の方の言葉は何ですか神様?」
「え?あーうん……ちょっと喋りすぎたかなぁ、なんて」
ベティの剣幕にニアは少ししどろもどろになって弁解した。流石の神も可愛い子孫に睨まれると弱ってしまうようだ。そしてニアはベティの頭に軽くキスをして、婿殿のことをちゃんと守るんだぞ、と助言した。その様子を見てツバサがベティの肩の上に顎を乗せながら口を挟んだ。
「普通は逆だろうが」
「いやいや。魔術士は別名、戦士だ。男性が女性を守るっていうのもまあ……ある意味基本的なことかもしれんが、この世界では女性だって強い。お互いに助け合い守り合えるような仲に深めていくことが大事」
「確かにベティは強いけどな」
「……婿殿、本当に君は頑張っていると私からも見て思うぞ。君はちゃんと己の信じる道を進んでいる。君の進む道をこれからもたくさんの壁が邪魔してくるだろう。でも君、ツバサ・サングスターと仲間達ならもしかしたら……」
「何で俺の名字知って……」
「誇り高き子孫の恋人のことなどとっくに調査済みだ。もちろん仲間達もな!」
サングスター。その名字を聞いてベティはスズナの言っていたことを思い出した。
" サングスターっていう一族の、殺し屋グループです。私達の敵です。奴らが狙っているのは、私やレンさんの命なんです。"
ツバサは知っているのか?知っててレン達と行動を共にしているのか?
悩んだような顔つきをしたベティに雷神は明るい声で言った。
「大丈夫さ」
その一言だけで少しベティに笑みが戻った。もう遅いから帰りなさい、とニアは言うとその場で2人にワープの魔術をかけた。
やはり行先はツバサの部屋のベッドの上だった。ツバサはベティの下敷きになった。ベティは馬乗りになったままツバサに尋ねた。
「ツバサって、ツバサ・サングスターって言うんだね。初めて知った」
「別に知らなくても良い情報だよ」
「私、聞いたの。サングスターって殺し屋グループなんでしょ?この間の要塞、ツバサの親戚って言うか一族の人で構成されているんでしょ」
「サングスターの話、誰から聞いた?」
「……スズナ。迷いの森でレンと私が助けた氷術士の女の子」
「レン……」
それまで視線をずらしていたツバサは急に起き上がり、同時によろめいたベティの腰に手をやって支えた。一瞬ベティはドキッとした。
「俺は味方だよ。これは仲間として言ってる。俺、は味方で居続けるって決めたんだ……これこの前も誰かに言ったな」
ツバサはベティの肩に顔を埋めると、もごもごと喋った。
「やっぱベティはいい匂いがする……えっ?!待って今、夜の1時?!まじかよ」
「そんな、早く帰らな――」
「ここは俺の部屋だ!帰らせないよ。今日はお泊まりしてって」
「ええっ」
「何もしないよ、今日は。……今日はな!こんな時間に外なんか出たら危ないって!あ、でもベッド狭いんだよね、ごめん」
ドキドキしていたはずが、結局睡魔には勝てず、2人はすぐに眠ってしまった。翌日ベティは早朝に起きた。異性と寝たことなんて無いのに、不思議なくらい安心感があってよく眠ってしまった。ツバサは自分に背を向けてすやすや寝ていた。
シャワーを借りようと思い、ツバサが目覚めないうちにシャワー室に忍び込んだ。シャワーの音ですぐにツバサは目を覚まし、一瞬昨夜何かしたかと自分を責めたが、何もしていないことに気づいてベッドに体だけ倒した。
「あ、ベティおはよう」
「おはよ」
ツバサは起き上がりキスを求めるようにわざとらしく唇を尖らしたが、唇には人差し指が当てられただけだった。ベティが髪を乾かしながらツバサに言った。
「ここの部屋って、朝食付いてないの」
「わかりました、お嬢様。シャワーを浴びてから早急に支度をします」
ツバサは速攻でシャワー室へ向かった。2人が簡単な朝食をとっている時、部屋のドアがノックされた。ツバサはため息をついた。
「アスカかーー??……ベティ、何か変な声出せ」
「変な声って」
「来客が立ち去るような声だよ」
「や、やだ……そんな朝から変なことしてるなんて思われたくない……」
「うん、何か鼻血でそうな反応したな」
「実際ちょっと鼻血出てるわよ!!」
慌ててベティが半笑いでティッシュを掴み彼に渡した。それでもまだノックは止まらない。ツバサがティッシュで鼻血を拭いながら、しぶしぶドアを開けると、そこにはレンがいた。
「何だお前か」
「何だお前かって何だよ……あれ、ベティじゃん。朝食タイム?」
「……別に何もしてないから」
「え、あ、うん……別に何も疑ってないよ。お前、忘れてないだろうなぁ、アルルとの約束」
「ああ、話が何たらってやつか?リアおばさんが顧問の。……で?」
「でって……一緒に城へ行かないか?」
「レン、サークル城への行き方忘れたのか?」
「いやそういう事じゃなくて」
「女子かお前は!!1人で行けよ何緊張してんだよ」
結局、3人は一緒に城へと向かった。3人を出迎えたのは使用人で、アルルは出てこなかった。3人は城の会議室へ通された。そこには既にアルルとリアが着席していた。
「かっこいい、だろう?」
「ええ。それに顔も普通の人間みたい。だけど悪魔ってことが何だか分かるわ。で、何でツバサは歓迎されるの?」
「彼は婿殿の祖先だからさ」
「……はあ?」
ツバサもベティも同時にニアに尋ねた。するとニアは少し考え込んで、ツバサのフードを掴みその顔を指さして言った。
「悪魔王、オウバルAとオウバルBに住む悪魔は皆整った顔つきをしているんだ。その気になれば人間なんて簡単に色気にやられる。男も誘ってくるような目で見つめてくるし、女も体も立派だし……まあ色々立派なんだ!」
「……何でこんなに興奮してるのこの神」
「婿殿!!一度は思ったことがあるんじゃないのかい!!自分のルックスのこと!自分がかっこいいと思ったことがあるんじゃないのかい!!」
「そ、そんな俺モテないし」
「ああ、確かにそれは君の魔術が関係するが……でも普通に居れば君はイケメンの類だろう?この二重瞼!それからキリッとした眉毛!まつ毛も多く長い!顔も小さい!1、2……8頭身あるし!歯並びも綺麗だし!それに!いくら汗をかいても独特の男臭が無い!キスも上手ければ夜の契りも上手い!婿殿が笑顔になれば世の中の女は簡単に落ちる!」
「後半の方の言葉は何ですか神様?」
「え?あーうん……ちょっと喋りすぎたかなぁ、なんて」
ベティの剣幕にニアは少ししどろもどろになって弁解した。流石の神も可愛い子孫に睨まれると弱ってしまうようだ。そしてニアはベティの頭に軽くキスをして、婿殿のことをちゃんと守るんだぞ、と助言した。その様子を見てツバサがベティの肩の上に顎を乗せながら口を挟んだ。
「普通は逆だろうが」
「いやいや。魔術士は別名、戦士だ。男性が女性を守るっていうのもまあ……ある意味基本的なことかもしれんが、この世界では女性だって強い。お互いに助け合い守り合えるような仲に深めていくことが大事」
「確かにベティは強いけどな」
「……婿殿、本当に君は頑張っていると私からも見て思うぞ。君はちゃんと己の信じる道を進んでいる。君の進む道をこれからもたくさんの壁が邪魔してくるだろう。でも君、ツバサ・サングスターと仲間達ならもしかしたら……」
「何で俺の名字知って……」
「誇り高き子孫の恋人のことなどとっくに調査済みだ。もちろん仲間達もな!」
サングスター。その名字を聞いてベティはスズナの言っていたことを思い出した。
" サングスターっていう一族の、殺し屋グループです。私達の敵です。奴らが狙っているのは、私やレンさんの命なんです。"
ツバサは知っているのか?知っててレン達と行動を共にしているのか?
悩んだような顔つきをしたベティに雷神は明るい声で言った。
「大丈夫さ」
その一言だけで少しベティに笑みが戻った。もう遅いから帰りなさい、とニアは言うとその場で2人にワープの魔術をかけた。
やはり行先はツバサの部屋のベッドの上だった。ツバサはベティの下敷きになった。ベティは馬乗りになったままツバサに尋ねた。
「ツバサって、ツバサ・サングスターって言うんだね。初めて知った」
「別に知らなくても良い情報だよ」
「私、聞いたの。サングスターって殺し屋グループなんでしょ?この間の要塞、ツバサの親戚って言うか一族の人で構成されているんでしょ」
「サングスターの話、誰から聞いた?」
「……スズナ。迷いの森でレンと私が助けた氷術士の女の子」
「レン……」
それまで視線をずらしていたツバサは急に起き上がり、同時によろめいたベティの腰に手をやって支えた。一瞬ベティはドキッとした。
「俺は味方だよ。これは仲間として言ってる。俺、は味方で居続けるって決めたんだ……これこの前も誰かに言ったな」
ツバサはベティの肩に顔を埋めると、もごもごと喋った。
「やっぱベティはいい匂いがする……えっ?!待って今、夜の1時?!まじかよ」
「そんな、早く帰らな――」
「ここは俺の部屋だ!帰らせないよ。今日はお泊まりしてって」
「ええっ」
「何もしないよ、今日は。……今日はな!こんな時間に外なんか出たら危ないって!あ、でもベッド狭いんだよね、ごめん」
ドキドキしていたはずが、結局睡魔には勝てず、2人はすぐに眠ってしまった。翌日ベティは早朝に起きた。異性と寝たことなんて無いのに、不思議なくらい安心感があってよく眠ってしまった。ツバサは自分に背を向けてすやすや寝ていた。
シャワーを借りようと思い、ツバサが目覚めないうちにシャワー室に忍び込んだ。シャワーの音ですぐにツバサは目を覚まし、一瞬昨夜何かしたかと自分を責めたが、何もしていないことに気づいてベッドに体だけ倒した。
「あ、ベティおはよう」
「おはよ」
ツバサは起き上がりキスを求めるようにわざとらしく唇を尖らしたが、唇には人差し指が当てられただけだった。ベティが髪を乾かしながらツバサに言った。
「ここの部屋って、朝食付いてないの」
「わかりました、お嬢様。シャワーを浴びてから早急に支度をします」
ツバサは速攻でシャワー室へ向かった。2人が簡単な朝食をとっている時、部屋のドアがノックされた。ツバサはため息をついた。
「アスカかーー??……ベティ、何か変な声出せ」
「変な声って」
「来客が立ち去るような声だよ」
「や、やだ……そんな朝から変なことしてるなんて思われたくない……」
「うん、何か鼻血でそうな反応したな」
「実際ちょっと鼻血出てるわよ!!」
慌ててベティが半笑いでティッシュを掴み彼に渡した。それでもまだノックは止まらない。ツバサがティッシュで鼻血を拭いながら、しぶしぶドアを開けると、そこにはレンがいた。
「何だお前か」
「何だお前かって何だよ……あれ、ベティじゃん。朝食タイム?」
「……別に何もしてないから」
「え、あ、うん……別に何も疑ってないよ。お前、忘れてないだろうなぁ、アルルとの約束」
「ああ、話が何たらってやつか?リアおばさんが顧問の。……で?」
「でって……一緒に城へ行かないか?」
「レン、サークル城への行き方忘れたのか?」
「いやそういう事じゃなくて」
「女子かお前は!!1人で行けよ何緊張してんだよ」
結局、3人は一緒に城へと向かった。3人を出迎えたのは使用人で、アルルは出てこなかった。3人は城の会議室へ通された。そこには既にアルルとリアが着席していた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる