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6章 要塞
#38 毒
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興奮したような高い声でカーターが笑った。レンはまたどこかから突き飛ばされて、地面を転がった。
「おいおいおい……いくら勝てないとは言え、こんなにもモロいのかよ。アサシンって呼ばれてたくせにぃ?名前負けってやつかな」
歯を食いしばり、攻撃を避けながらレンは脳内をフル回転させた。動きが読まれる。匂いで居場所を当てられる。匂いを紛らわせる方法は無いか?匂いで蛇を騙す。そして幻覚でカーター自身を騙す。この方法しかない。一か八か、レンは試すことにした。
闇術で作り出せる幻覚、それは悪夢を見せることだ。レンは立ち上がりカーターのことをしっかりと目で捉え、魔術を発動させた。
「闇悪夢」
レンとカーターの周りに怪物が現れる。手足が何本もあるもの、大きなムカデのような生き物、鋭い牙を剥き出しにしているもの、様々な恐ろしい姿をした怪物達がカーターを取り囲んだ。その中には虚像のレン・グレイも何人も居た。
そして、基本魔術の一つである"独特な匂い"を発動させて、辺りの匂いをぐちゃぐちゃにした。
「ふふふ、ちょっとは俺を楽しませてくれるみたいだね、レン君。だけどね、闇術士は毒術士には勝てな――」
「隙ばっかだよ、カーター」
その瞬間、カーターはレンの攻撃を食らった。レンは闇のミストで姿を消して、倒れているカーターに向かって飛び上がった。その両手には既に闇のパワーが溜まっている。
「絶望闇」
闇のパワーは大きな矢のような形になり、猛スピードでカーターを貫いた。カーターは悲鳴を上げ、悶え苦しんだ。しかしカーターは口元についた血を拭い、まだ笑っていた。カーターの背後にいた蛇の残像はいつの間にか消えていた。
「絶望とは、恐ろしい術を使うね……なぁ?」
「効いてないのか……?!」
「……入った……入ったよ。久々に悲鳴を上げた。邪悪過ぎて、汚らわしくてゲロ吐きそうな力だ」
カーターはふらふらと立ち上がると、レンが作り出した怪物の方を向いた。そして両手を伸ばして低い声で言った。
「全員死ね」
カーターの両手から真っ黒のドロドロした物体が飛び出した。上下左右全ての場所にその物体は飛び散った。物体に当たった虚像達は溶けるように消えていく。レンはその物体を何とか避けきろうとしたが、その最中に右足に当たった。さっきと同じ毒だ。
毒はレンの皮膚下に入り込み、緑色へと化した。レンは痛みで絶叫した。二度目に受けた毒だからか、体が過剰に反応した。始めに受けた肩にも何かが刺さったような感覚がして、レンは体を押さえつけた。
「そんなに声がまだ出せるのか……まだ死んでないのか……見つけたぞ、レン・グレイ。俺の手で、このカーター・サングスターの手で、お前の命を奪おう!仲間の仇を取ってやる!!」
カーターは銀色の目でこちらを真っ直ぐに見た。そして人差し指でレンのことを指さして叫んだ。
「毒破壊!!」
さっきとは比べ物にならないくらいの毒の塊がレンに向かって飛んできた。毒でやられてしまった右足も右肩も思うように動かない。
俺はここで本当に死ぬのか。もう、誰にも会えずにこの暗闇の中で死ぬのか。
"くれぐれも命を絶つなんて馬鹿な真似をするなよ"
不意に頭の中に響いた恩人ジュリの声。レンは咄嗟にローブのポケットに手を突っ込んだ。本当にこれは九死に一生を得る選択だ。でもやってみる価値はある。
レンは利き手ではない左手でそれを構えた。黒い塊を体ごと避けながら、左目だけでしっかりカーターの位置を捉えた。
そして、ジュリから貰った銃の引き金を引いた。弾は塊を貫通して液体が破壊された。そのまままっすぐとカーターの胸に命中する。カーターが倒れ込んだその時、破壊された塊の破片がレンの左目に命中した。
一瞬にしてカーターの作り出した闇が全て消え、周りの景色が戻ってくる。レンは左目を押さえながら座り込んだ。螺旋階段は崩壊し、レンは地上へ向かって落下した。ところどころが毒に侵食されたレンは、既に痛みで気を失っていた。
ベティは街の中にハネハネごと墜落した。街の人々は突然の事態にあたふたとしていた。ベティが煙を上げているハネハネの中で目を開けた時、自分が人々に囲まれていることに気付いた。誰しもベティのことを見るだけで、助けようとはしなかった。ベティは片腕が緑色に変色していることに気付いたが、もうどうすることもできずにいた。
「すみません!通してください!通してください!」
どこかから若い女の声がした。大丈夫ですか、という声が耳の近くでして、ベティはゆっくりと目を開けた。ブロンドの髪をきつく結わえた、どこかで見覚えのある若い少女だった。
「あなたは……確か……」
「スズナです。ベティさんですよね。歩けますか?このままだと目立ってサングスターの奴らに見つかってしまいます。貴方はレンさんと一緒に居ました。だから助けます」
「スズナ……ああ、確か、洞窟の中にいた氷術士ね」
スズナはうなずくと、変色していない方の腕を掴んで自分の肩にかけさせた。人々はベティの緑色の腕を見て、あいつらの魔術だ、とひそひそと言った。
迷いの森の一件以来、スズナとは顔を合わせていなかった。ベティは歩きながらスズナに尋ねた。
「どうしてまた……こんなところに?」
「詳しい話は着いてからです。右腕の怪我、それただの怪我じゃないです。そのうち全身に広がる毒です。カーター・サングスターの毒術ですね」
「レンが……多分その男と戦ってる」
「毒をあまり受けていないと良いですけど……あ、着きました。ここです。大丈夫です、この中にいる人は皆仲間です」
屋根の低い建物の中に入ると、中は小さな医務室のようだった。あいにく患者はベティしか居なかった。ベティはベッドに座らされた。
「……まだ片腕だけですね。大丈夫です、私の治癒魔術ですぐに取り除けます」
スズナの手から青い光線が伸びて、ベティの毒を癒した。だんだん緑色の部分が小さくなっていく。代わりにその分スズナの腕が緑色と化していく。それを見てベティは叫んだ。
「貴方、腕が!」
「ごめんなさい、驚かせちゃって。でも大丈夫なんです。正確に言うと治癒魔術ではないです。私の身体の中へ毒を移動させて取り除くんです。私は氷術士なので、毒は液体ごと氷の塊にできます」
スズナの腕から水が溢れ、それは一つの大きな氷となってボコんとスズナの腕の上に現れた。その氷をどかすと、スズナの腕は元通りの色になっていた。
「……大したものね、スズナ」
「レンさんに……いや、皆さんのお役に立てればと思って。ところで、ベティさん達も何でここへ?」
「友達が……友達なのかな……まあ、私の友達があの中心にある建物に連行されて……それで追いかけていたらまあ、こうなっちゃったってこと」
「そうだったんですか……。てっきり、戦いが始まったのかと」
「戦い?」
「い、いや何でもないです……」
「スズナは?一人でずっとここに居るの?」
「私はずっとサングスターの組織の本部を探していて。そしたらここにたどり着いたんです。本部が動きを見せるまで、この街に潜入して観察してたんですよ。この建物にいる人は皆、レジスタンスの一員なんです。ほとんどがアース人なんですけどね」
「潜入捜査、的な感じ?」
「はい、そうです……その友達はまだ助けてないんですよね?それに、レンさんも……」
「実はあと2人仲間がいて、分かれて私達脱出することにしてたんだけどね。2人が助かったのかどうか……」
スズナは結わえたポニーテールをくるくると手に巻きながら唸った。見張り台へ行きましょう、と提案され、ベティはスズナの後に続いてはしごを何回か登った。見張り台と思われる場所に着くと、スズナは双眼鏡で本部付近を観察した。
「多分ですけど、そのお仲間さんが外への逃亡に成功していたら奴らの手下が街まで来ているはずです。でも来ていません。捕まった可能性が高いです」
「捕まったらどうなるの?殺される……の?」
「人によります。その誘拐された友達というのが、奴らにとって必要のある存在なのか、それともお仲間さんやレンさんをおびき寄せる為の囮だったのか。それによってお仲間さんの処分は変わってきます。そのことは現時点じゃ判断できません」
「なるほどね。……ごめんね、私よく分からなくて。何でレンがその……サングスター?って組織におびき寄せられなきゃいけないのか、本当に何にも分からないの私。名字に何か、関係があるの?」
「……何で名字だって思うんですか?」
「レンが……さっき名字のことを何か言ってたから……」
「レンさんの名字は知ってますか」
「私は知らない。というか、チーム皆の名前しか私は知らないの」
「チーム全員の名字を知らないんですか?!」
「そ、そんな驚くことなの?」
「名字はちっぽけのようで大切な役割を持ってます。名字に含まれるものは、ファミリー……家族、一族です。それだけでその人の立場なんかが大体すぐに分かるんです」
真剣に話すスズナに、ベティは何も言うことが出来なかった。家族?一族?自分にはそんなものが無いに近いからなんだろうか。いや、どちらかと言うと自分が家族を壊したのだ。そんなベティの不安そうな顔を見てスズナはベティの手を取って言った。
「あの本部は、サングスターっていう一族の殺し屋グループです。私達の敵です。奴らが狙っているのは、私やレンさんの命なんです」
「じゃあ、レイナはレンをおびき寄せる為にここへ連れてこられたってことなの……?」
「そういうことも考えられます。そのレイナという人が何者なのかは分かりませんが」
「レイナの名字はボワーよ。貴方の名字は何ていうの?」
「私達の名字は……」
その時スズナが双眼鏡を本部の方へ向けた。肉眼でも、さっきまでいた螺旋階段が壊れていく様子が見えた。スズナは突然建物から飛び降り、そしてハネハネに乗って猛スピードで本部の方へ飛んでいった。
スズナのハネハネに誰かが落下したのをベティは双眼鏡から見た。
「レン!!」
「おいおいおい……いくら勝てないとは言え、こんなにもモロいのかよ。アサシンって呼ばれてたくせにぃ?名前負けってやつかな」
歯を食いしばり、攻撃を避けながらレンは脳内をフル回転させた。動きが読まれる。匂いで居場所を当てられる。匂いを紛らわせる方法は無いか?匂いで蛇を騙す。そして幻覚でカーター自身を騙す。この方法しかない。一か八か、レンは試すことにした。
闇術で作り出せる幻覚、それは悪夢を見せることだ。レンは立ち上がりカーターのことをしっかりと目で捉え、魔術を発動させた。
「闇悪夢」
レンとカーターの周りに怪物が現れる。手足が何本もあるもの、大きなムカデのような生き物、鋭い牙を剥き出しにしているもの、様々な恐ろしい姿をした怪物達がカーターを取り囲んだ。その中には虚像のレン・グレイも何人も居た。
そして、基本魔術の一つである"独特な匂い"を発動させて、辺りの匂いをぐちゃぐちゃにした。
「ふふふ、ちょっとは俺を楽しませてくれるみたいだね、レン君。だけどね、闇術士は毒術士には勝てな――」
「隙ばっかだよ、カーター」
その瞬間、カーターはレンの攻撃を食らった。レンは闇のミストで姿を消して、倒れているカーターに向かって飛び上がった。その両手には既に闇のパワーが溜まっている。
「絶望闇」
闇のパワーは大きな矢のような形になり、猛スピードでカーターを貫いた。カーターは悲鳴を上げ、悶え苦しんだ。しかしカーターは口元についた血を拭い、まだ笑っていた。カーターの背後にいた蛇の残像はいつの間にか消えていた。
「絶望とは、恐ろしい術を使うね……なぁ?」
「効いてないのか……?!」
「……入った……入ったよ。久々に悲鳴を上げた。邪悪過ぎて、汚らわしくてゲロ吐きそうな力だ」
カーターはふらふらと立ち上がると、レンが作り出した怪物の方を向いた。そして両手を伸ばして低い声で言った。
「全員死ね」
カーターの両手から真っ黒のドロドロした物体が飛び出した。上下左右全ての場所にその物体は飛び散った。物体に当たった虚像達は溶けるように消えていく。レンはその物体を何とか避けきろうとしたが、その最中に右足に当たった。さっきと同じ毒だ。
毒はレンの皮膚下に入り込み、緑色へと化した。レンは痛みで絶叫した。二度目に受けた毒だからか、体が過剰に反応した。始めに受けた肩にも何かが刺さったような感覚がして、レンは体を押さえつけた。
「そんなに声がまだ出せるのか……まだ死んでないのか……見つけたぞ、レン・グレイ。俺の手で、このカーター・サングスターの手で、お前の命を奪おう!仲間の仇を取ってやる!!」
カーターは銀色の目でこちらを真っ直ぐに見た。そして人差し指でレンのことを指さして叫んだ。
「毒破壊!!」
さっきとは比べ物にならないくらいの毒の塊がレンに向かって飛んできた。毒でやられてしまった右足も右肩も思うように動かない。
俺はここで本当に死ぬのか。もう、誰にも会えずにこの暗闇の中で死ぬのか。
"くれぐれも命を絶つなんて馬鹿な真似をするなよ"
不意に頭の中に響いた恩人ジュリの声。レンは咄嗟にローブのポケットに手を突っ込んだ。本当にこれは九死に一生を得る選択だ。でもやってみる価値はある。
レンは利き手ではない左手でそれを構えた。黒い塊を体ごと避けながら、左目だけでしっかりカーターの位置を捉えた。
そして、ジュリから貰った銃の引き金を引いた。弾は塊を貫通して液体が破壊された。そのまままっすぐとカーターの胸に命中する。カーターが倒れ込んだその時、破壊された塊の破片がレンの左目に命中した。
一瞬にしてカーターの作り出した闇が全て消え、周りの景色が戻ってくる。レンは左目を押さえながら座り込んだ。螺旋階段は崩壊し、レンは地上へ向かって落下した。ところどころが毒に侵食されたレンは、既に痛みで気を失っていた。
ベティは街の中にハネハネごと墜落した。街の人々は突然の事態にあたふたとしていた。ベティが煙を上げているハネハネの中で目を開けた時、自分が人々に囲まれていることに気付いた。誰しもベティのことを見るだけで、助けようとはしなかった。ベティは片腕が緑色に変色していることに気付いたが、もうどうすることもできずにいた。
「すみません!通してください!通してください!」
どこかから若い女の声がした。大丈夫ですか、という声が耳の近くでして、ベティはゆっくりと目を開けた。ブロンドの髪をきつく結わえた、どこかで見覚えのある若い少女だった。
「あなたは……確か……」
「スズナです。ベティさんですよね。歩けますか?このままだと目立ってサングスターの奴らに見つかってしまいます。貴方はレンさんと一緒に居ました。だから助けます」
「スズナ……ああ、確か、洞窟の中にいた氷術士ね」
スズナはうなずくと、変色していない方の腕を掴んで自分の肩にかけさせた。人々はベティの緑色の腕を見て、あいつらの魔術だ、とひそひそと言った。
迷いの森の一件以来、スズナとは顔を合わせていなかった。ベティは歩きながらスズナに尋ねた。
「どうしてまた……こんなところに?」
「詳しい話は着いてからです。右腕の怪我、それただの怪我じゃないです。そのうち全身に広がる毒です。カーター・サングスターの毒術ですね」
「レンが……多分その男と戦ってる」
「毒をあまり受けていないと良いですけど……あ、着きました。ここです。大丈夫です、この中にいる人は皆仲間です」
屋根の低い建物の中に入ると、中は小さな医務室のようだった。あいにく患者はベティしか居なかった。ベティはベッドに座らされた。
「……まだ片腕だけですね。大丈夫です、私の治癒魔術ですぐに取り除けます」
スズナの手から青い光線が伸びて、ベティの毒を癒した。だんだん緑色の部分が小さくなっていく。代わりにその分スズナの腕が緑色と化していく。それを見てベティは叫んだ。
「貴方、腕が!」
「ごめんなさい、驚かせちゃって。でも大丈夫なんです。正確に言うと治癒魔術ではないです。私の身体の中へ毒を移動させて取り除くんです。私は氷術士なので、毒は液体ごと氷の塊にできます」
スズナの腕から水が溢れ、それは一つの大きな氷となってボコんとスズナの腕の上に現れた。その氷をどかすと、スズナの腕は元通りの色になっていた。
「……大したものね、スズナ」
「レンさんに……いや、皆さんのお役に立てればと思って。ところで、ベティさん達も何でここへ?」
「友達が……友達なのかな……まあ、私の友達があの中心にある建物に連行されて……それで追いかけていたらまあ、こうなっちゃったってこと」
「そうだったんですか……。てっきり、戦いが始まったのかと」
「戦い?」
「い、いや何でもないです……」
「スズナは?一人でずっとここに居るの?」
「私はずっとサングスターの組織の本部を探していて。そしたらここにたどり着いたんです。本部が動きを見せるまで、この街に潜入して観察してたんですよ。この建物にいる人は皆、レジスタンスの一員なんです。ほとんどがアース人なんですけどね」
「潜入捜査、的な感じ?」
「はい、そうです……その友達はまだ助けてないんですよね?それに、レンさんも……」
「実はあと2人仲間がいて、分かれて私達脱出することにしてたんだけどね。2人が助かったのかどうか……」
スズナは結わえたポニーテールをくるくると手に巻きながら唸った。見張り台へ行きましょう、と提案され、ベティはスズナの後に続いてはしごを何回か登った。見張り台と思われる場所に着くと、スズナは双眼鏡で本部付近を観察した。
「多分ですけど、そのお仲間さんが外への逃亡に成功していたら奴らの手下が街まで来ているはずです。でも来ていません。捕まった可能性が高いです」
「捕まったらどうなるの?殺される……の?」
「人によります。その誘拐された友達というのが、奴らにとって必要のある存在なのか、それともお仲間さんやレンさんをおびき寄せる為の囮だったのか。それによってお仲間さんの処分は変わってきます。そのことは現時点じゃ判断できません」
「なるほどね。……ごめんね、私よく分からなくて。何でレンがその……サングスター?って組織におびき寄せられなきゃいけないのか、本当に何にも分からないの私。名字に何か、関係があるの?」
「……何で名字だって思うんですか?」
「レンが……さっき名字のことを何か言ってたから……」
「レンさんの名字は知ってますか」
「私は知らない。というか、チーム皆の名前しか私は知らないの」
「チーム全員の名字を知らないんですか?!」
「そ、そんな驚くことなの?」
「名字はちっぽけのようで大切な役割を持ってます。名字に含まれるものは、ファミリー……家族、一族です。それだけでその人の立場なんかが大体すぐに分かるんです」
真剣に話すスズナに、ベティは何も言うことが出来なかった。家族?一族?自分にはそんなものが無いに近いからなんだろうか。いや、どちらかと言うと自分が家族を壊したのだ。そんなベティの不安そうな顔を見てスズナはベティの手を取って言った。
「あの本部は、サングスターっていう一族の殺し屋グループです。私達の敵です。奴らが狙っているのは、私やレンさんの命なんです」
「じゃあ、レイナはレンをおびき寄せる為にここへ連れてこられたってことなの……?」
「そういうことも考えられます。そのレイナという人が何者なのかは分かりませんが」
「レイナの名字はボワーよ。貴方の名字は何ていうの?」
「私達の名字は……」
その時スズナが双眼鏡を本部の方へ向けた。肉眼でも、さっきまでいた螺旋階段が壊れていく様子が見えた。スズナは突然建物から飛び降り、そしてハネハネに乗って猛スピードで本部の方へ飛んでいった。
スズナのハネハネに誰かが落下したのをベティは双眼鏡から見た。
「レン!!」
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