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6章 要塞
#32 特別指名依頼
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数日後、レイナはツバサに言われた通りに魔法を使ってアルルに変身した。変身の魔法は顔だけでなく体も声もその人になりきることが出来る。皮肉なことに、身長が縮んだ代わりに胸が重くなった。
「身長の代わりに巨乳になるとか……随分な魔法じゃないの」
アルル本人が居ないことを確認しつつ、レイナはレンの登場を待った。 実を言うと、特にレイナはレンに惚れている訳ではなかった(全く興味が無いというとまあ嘘にはなるが)。レンは確かにツバサなどと比べれば何倍も良い男だ。しかし恋人というものが相手に存在する限り、それを潰してまで奪おうなんてさらさら考えていなかった。
何故レイナがレンに近づこうとしているのか。それはある依頼がきっかけだった。
レイナはベティとバトルをする何週間か前に、ある男から指名依頼を受けた。指名依頼とは、依頼者がその仕事をして欲しい者を指名することだ。それにレイナは指名された。指名してきた男は決して若くは無い声で、はきはきとレイナに依頼をした。夜、ローブのフードを被っていたせいで男の顔はよく確認できなかった。
「レン・グレイを君の力で捕まえて欲しい」
そうして男はレイナにレンの写真とそれから小さな錠剤の薬を手渡した。成功報酬はレイナの生活費の半年分だった。
「その薬は強力な睡眠薬だ。これを飲めば3秒後には落ちる。効果は6時間だ。レン・グレイを眠らせたらここに連絡しろ。私の部下がやって来る」
ふざけ半分でレンのことを探ったが、実行するのには気が引けた。このとんでもない額の報酬は何か裏がある。とは言え、レイナはレンに薬を飲ませ眠らせる役目しか無いのだが。
だが、事態は変わったのだ。あの魔術バトル後、チームに居場所がすっかり無くなってしまったレイナは今ではただの学校の生徒と化していた。そんな彼女に残っていたのはレンを捕らえる依頼のみ。成功すれば当分は働かなくて良いかもしれない。
「よし。お金のためにも頑張れ、私。やっぱアルルは可哀想だから脱ぐ直前に薬を飲ませよう」
ふとレイナが顔を上げた時、ちょうどレンがツバサと別れてこちらに気付いた。レンは微笑んで手を振ってきた。迂闊にも可愛いとレイナは思った。レンはこちらへ近づいてくると、小さな声で言った。
「ねえこの前約束した日にち、今日に変更できない?その日まで俺、我慢できない」
どんだけ欲が溜まってるんだよ!まさか事前に約束をしていたとは。レイナはこの2人はやっぱりもう終わっているんだ、とつくづく思ってしまった。
「……ごめん、気分じゃなかった?でも俺、もう部屋取ってきちゃったんだ」
「やる気満々じゃないあんた」
レンはホテルの鍵をレイナの前で振って見せると、レイナの頬をつつきながら言ってきた。
「この前はアルルが勝手に取ってくれてたじゃんかー。お互い様だろ」
「そ、そうだったっけ……」
意外とこのカップル過激なのか?処女のレイナは少し緊張しながらレンの後をついて行った。レンが取ってくれたホテルに入ると、もっと心臓が高鳴った。ホテルには入ったことがあるが、自分はもうこの10分後くらいには犯される寸前まで行くかもしれない。レイナは深呼吸をした。
「なかなか可愛いらしい部屋だよ、レイナ」
「あ……本当だ……って名前、私はアルルよ」
一気にレイナの頭の中は熱くなった。バレている?!レンはレイナを部屋の中へ入れると、その背中の後ろでドアを閉めた。
「知ってるよ、君はレイナでしょ」
「……私が誰に見える?」
「見た目はアルル。中身はレイナだ。そんな簡単に俺のことを騙せると思った?」
「何で他の女の名前なんか出すの」
「俺は君の名前をちゃんと言ってるだけだよ」
レイナは恥ずかしくなり、ベッドの上に座ってうつむいた。今すぐこの場から逃げたい。このままアルルだと突き通すか。どうすれば良い。どうすれば良いんだ。
突然、レイナの頭に何かがばさりと飛んできた。慌ててそれを取ると、レンのローブであることが分かった。レンは悪戯っぽそうに笑うと、レイナの隣に座った。
「まさか、初めてなの?」
「……だから、私はアルルなんだってば……信じてよ」
「……へえ、アルルって処女じゃなかったんだ」
気の抜けたような声をレンが出した時、レイナは鳥肌が立った。同時に何か違和感を感じる。ごまかしが効かないことを察して、息をついて白状する。
「……分かった。私はレイナよ、認める。でもこんなことアルルにバレたら――」
レイナの言葉はそこで途切れた。既にレイナの唇は塞がれていた。レンの熱い手がレイナの首元に触れて、レイナはドキドキした。
「ちょっと、がっつき過ぎじゃない?」
「たまには違う女の子も良いかなって思って」
「貴方って……最悪な男ね」
「レイナは最悪な男は嫌い?」
「……いいえ。好き」
キスをしながらあれよあれよと言う間にローブを脱がされた。鏡をチラッと見た時、そこには自分の顔があった。もうダメなのだと思った。レイナは目的を思い出して唇を離して言った。
「ねえ、多分私達今夜しか共にできないでしょ?最初で最後の夜よね?より楽しめるように……気持ちよくなる薬飲んでみない?」
「良いね!レイナが持ってるの?」
「ええ。とびきりのやつをね、いつも持ち歩いてるの」
レイナは男から貰った薬を取り出して、それを1粒レンの口に入れた。これでお金は頂きだ。レイナは思わず口元が緩んだ。
その瞬間、予想していない事態が起こった。レイナはベッドに押し倒された。
「凄いね、この薬。体が熱いよ。もう今すぐに君が欲しいよレイナ」
カチャカチャとベルトを緩めるような音が聞こえて、レイナは怖くなって抵抗しようとした。が、押し倒され腕も掴まれてしまっては逃げることは不可能だった。耳元でレンの荒い息遣いが聞こえる。
「いや……やっぱり駄目……」
「やめてって言われてやめる人なんている?」
レンはまたキスをしてきた。レイナは懸命に口を閉じていたが、相手の舌が歯を割って入ってくる。その時、口の中でコロンと何かが転がったのをレイナは感じた。
レンが唇を離した時、舌に唾液の糸が引いた。レンは口元についた互いの唾液を袖で拭った。レイナは既に6時間の眠りについていた。
「身長の代わりに巨乳になるとか……随分な魔法じゃないの」
アルル本人が居ないことを確認しつつ、レイナはレンの登場を待った。 実を言うと、特にレイナはレンに惚れている訳ではなかった(全く興味が無いというとまあ嘘にはなるが)。レンは確かにツバサなどと比べれば何倍も良い男だ。しかし恋人というものが相手に存在する限り、それを潰してまで奪おうなんてさらさら考えていなかった。
何故レイナがレンに近づこうとしているのか。それはある依頼がきっかけだった。
レイナはベティとバトルをする何週間か前に、ある男から指名依頼を受けた。指名依頼とは、依頼者がその仕事をして欲しい者を指名することだ。それにレイナは指名された。指名してきた男は決して若くは無い声で、はきはきとレイナに依頼をした。夜、ローブのフードを被っていたせいで男の顔はよく確認できなかった。
「レン・グレイを君の力で捕まえて欲しい」
そうして男はレイナにレンの写真とそれから小さな錠剤の薬を手渡した。成功報酬はレイナの生活費の半年分だった。
「その薬は強力な睡眠薬だ。これを飲めば3秒後には落ちる。効果は6時間だ。レン・グレイを眠らせたらここに連絡しろ。私の部下がやって来る」
ふざけ半分でレンのことを探ったが、実行するのには気が引けた。このとんでもない額の報酬は何か裏がある。とは言え、レイナはレンに薬を飲ませ眠らせる役目しか無いのだが。
だが、事態は変わったのだ。あの魔術バトル後、チームに居場所がすっかり無くなってしまったレイナは今ではただの学校の生徒と化していた。そんな彼女に残っていたのはレンを捕らえる依頼のみ。成功すれば当分は働かなくて良いかもしれない。
「よし。お金のためにも頑張れ、私。やっぱアルルは可哀想だから脱ぐ直前に薬を飲ませよう」
ふとレイナが顔を上げた時、ちょうどレンがツバサと別れてこちらに気付いた。レンは微笑んで手を振ってきた。迂闊にも可愛いとレイナは思った。レンはこちらへ近づいてくると、小さな声で言った。
「ねえこの前約束した日にち、今日に変更できない?その日まで俺、我慢できない」
どんだけ欲が溜まってるんだよ!まさか事前に約束をしていたとは。レイナはこの2人はやっぱりもう終わっているんだ、とつくづく思ってしまった。
「……ごめん、気分じゃなかった?でも俺、もう部屋取ってきちゃったんだ」
「やる気満々じゃないあんた」
レンはホテルの鍵をレイナの前で振って見せると、レイナの頬をつつきながら言ってきた。
「この前はアルルが勝手に取ってくれてたじゃんかー。お互い様だろ」
「そ、そうだったっけ……」
意外とこのカップル過激なのか?処女のレイナは少し緊張しながらレンの後をついて行った。レンが取ってくれたホテルに入ると、もっと心臓が高鳴った。ホテルには入ったことがあるが、自分はもうこの10分後くらいには犯される寸前まで行くかもしれない。レイナは深呼吸をした。
「なかなか可愛いらしい部屋だよ、レイナ」
「あ……本当だ……って名前、私はアルルよ」
一気にレイナの頭の中は熱くなった。バレている?!レンはレイナを部屋の中へ入れると、その背中の後ろでドアを閉めた。
「知ってるよ、君はレイナでしょ」
「……私が誰に見える?」
「見た目はアルル。中身はレイナだ。そんな簡単に俺のことを騙せると思った?」
「何で他の女の名前なんか出すの」
「俺は君の名前をちゃんと言ってるだけだよ」
レイナは恥ずかしくなり、ベッドの上に座ってうつむいた。今すぐこの場から逃げたい。このままアルルだと突き通すか。どうすれば良い。どうすれば良いんだ。
突然、レイナの頭に何かがばさりと飛んできた。慌ててそれを取ると、レンのローブであることが分かった。レンは悪戯っぽそうに笑うと、レイナの隣に座った。
「まさか、初めてなの?」
「……だから、私はアルルなんだってば……信じてよ」
「……へえ、アルルって処女じゃなかったんだ」
気の抜けたような声をレンが出した時、レイナは鳥肌が立った。同時に何か違和感を感じる。ごまかしが効かないことを察して、息をついて白状する。
「……分かった。私はレイナよ、認める。でもこんなことアルルにバレたら――」
レイナの言葉はそこで途切れた。既にレイナの唇は塞がれていた。レンの熱い手がレイナの首元に触れて、レイナはドキドキした。
「ちょっと、がっつき過ぎじゃない?」
「たまには違う女の子も良いかなって思って」
「貴方って……最悪な男ね」
「レイナは最悪な男は嫌い?」
「……いいえ。好き」
キスをしながらあれよあれよと言う間にローブを脱がされた。鏡をチラッと見た時、そこには自分の顔があった。もうダメなのだと思った。レイナは目的を思い出して唇を離して言った。
「ねえ、多分私達今夜しか共にできないでしょ?最初で最後の夜よね?より楽しめるように……気持ちよくなる薬飲んでみない?」
「良いね!レイナが持ってるの?」
「ええ。とびきりのやつをね、いつも持ち歩いてるの」
レイナは男から貰った薬を取り出して、それを1粒レンの口に入れた。これでお金は頂きだ。レイナは思わず口元が緩んだ。
その瞬間、予想していない事態が起こった。レイナはベッドに押し倒された。
「凄いね、この薬。体が熱いよ。もう今すぐに君が欲しいよレイナ」
カチャカチャとベルトを緩めるような音が聞こえて、レイナは怖くなって抵抗しようとした。が、押し倒され腕も掴まれてしまっては逃げることは不可能だった。耳元でレンの荒い息遣いが聞こえる。
「いや……やっぱり駄目……」
「やめてって言われてやめる人なんている?」
レンはまたキスをしてきた。レイナは懸命に口を閉じていたが、相手の舌が歯を割って入ってくる。その時、口の中でコロンと何かが転がったのをレイナは感じた。
レンが唇を離した時、舌に唾液の糸が引いた。レンは口元についた互いの唾液を袖で拭った。レイナは既に6時間の眠りについていた。
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