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2章 初任務
#8 直感
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はっとして目を覚まし、そこでやっと夢だということに気づいた。レンが起き上がった時、彼は湖の岸にいた。
「よく寝てたわね」
ふと横を向くとアルルが居た。さっきまでいた場所と全く様子が違う。まさかアルルが一人でここまで運んできたのか?後ろを振り向くと、ツバサとベティが疲れきった様子で座り込んでいた。地面にはフルーツが2、3個散らばっていた。
アルルは掻い摘んで説明してくれた。どうやら森の道変化とやらの時刻が早すぎたらしく、彼らはその反動でこちらまで飛ばされたらしい。その時ツバサとベティは、湖の水面に浮かんだ黒いボートのような物の上に倒れていて、それをアルルは1人でロープを用いて岸まで引き上げたとか。
「ツバサの魔術はね、使い過ぎると命が危なくなる危険性があるの。ちょっと特殊なのよね」
ツバサは蛇に噛まれた傷を手で擦りながらうなずいた。傷が完治していない時に魔術を発動させたせいで、体に負担がかかり傷口が開いて大量出血したのだ。
森はまだ動いていて、彼らは帰ることができなかった。しばらく湖の岸で体を休めていたが、ツバサの顔色は悪いままだった。
「ここに居ると気分が悪くて仕方ないんだ」
「でも私もさっきから落ち着かないわよ」
アルルはそう言ってツバサの隣に座った。レンはどちらかと言うともっとこの辺りを探険したい、という好奇心で溢れていた。勿論訪れたことのない場所であったし、普通に歩いてみたかった。レンが落ち着きなくウロウロとしているとベティが少し散歩をしてみよう、と提案をした。
「俺達はここで待ってるよ。あんまり遠くへ行くなよ」
ツバサとアルルを置いて、二人は周辺の探索にあたった。探索に行ってしまい姿が見えなくなったところでツバサは口を開いた。
「妙な奴だな。よくこんな邪悪な力を感じるところで歩けるもんだ」
この岸の近くに何かがある。そのことはツバサもアルルも察知はしていたが、それを確認に行こうとする勇気は無かった。彼らは魔術――それも邪悪なもの――を感じていた。おそらく別世界のものではない。もっと下の―悪魔界のものだ。
別世界の他にもいくつか惑星はあり、それらの惑星には"ワープの扉"という空間の扉を通じて移動が可能だった。
「アルルはレンが何者なのか知ってるのか?」
「自分のことはあまり話してくれないの。それはお互い様よ、私だって話していないけど」
「名字……アルルは名字をあいつに教えたか?」
「いいえ。だって教えたらきっと、私がサークル帝国の女帝の娘だってバレちゃうから」
トライアングルの唯一の帝国、サークル帝国の女帝はアルルの母親だった。トライアングルの王や帝に血縁は関係ない。アルルは後継者ではなかったが、それでも女帝の娘というレッテルを貼られてしまうことが嫌な部分があった。しかしツバサとは幼い頃からの仲で、お互いに名字は明かしていた。
「レンの名字は知ってる?」
「知らない。でもいつか必ず話すって言ってた」
「そう。でもまああいつはただ者じゃないよな」
「今まで一体誰に追われてたのかな。追っ手にアサシンって呼ばれてはいたけど、本職が殺しって感じがしないのよね。何だかいつの間にかアサシンになっちゃった、みたいな」
「俺この間、図書館でその追っ手の……グループの奴らのこと調べようとしたんだ。そしたらさ、司書……ルーク、居るだろ?あいつに止められたんだ。それに、名字も簡単に明かすなって……」
「レンが話してくれるまで待ちましょ。きっと話してくれるよ。だって私達チームでしょ」
そうだな、とツバサはうなずいた。心にはもやもやが残ったままだった。
一方、レンとベティは大きめの洞穴を見つけてその中に入っていた。穴は大きく、背の高いレンですらも余裕で歩ける高さだった。レンが先頭を歩き、ベティはそれに続いた。ベティが後方から雷を小さく光らせ、明かり代わりにした。壁には火の点っていないロウソクがかけられていて、かつて誰かがここを行き来していたことがわかる。
「ずいぶん長い洞穴ね」
「……ん?」
不意にレンが足を止め、ベティはその背中にぶつかった。空気が変わった。レンはそれを察すると、何も言わずにまた歩きだした。
彼らがたどり着いた場所、それは―牢獄だった。
「何、ここ……」
「ベティ、ここで下手に魔術を使わない方が良い。何が起きるかわからない。俺に任せてくれ」
そこにあったのは牢屋だけで、囚人は居なかった。格子がたくさん並び、ベティはゾッとした。壁に取り付けられた手錠のようなものにはすっかり変色してしまった血が付着していた。ベティは無意識のうちにレンの背中に隠れながら奥へと進んだ。
「何!!」
ベティが声を上げた瞬間、地面も壁も氷で覆われた。向こうにある出口までが氷の壁で覆われる。寒さではない何かに体が勝手に震え始める。ベティは突如しゃがみ込んだ。
「怖い……何だかわからないけど怖い……この魔力は何……?」
「よく寝てたわね」
ふと横を向くとアルルが居た。さっきまでいた場所と全く様子が違う。まさかアルルが一人でここまで運んできたのか?後ろを振り向くと、ツバサとベティが疲れきった様子で座り込んでいた。地面にはフルーツが2、3個散らばっていた。
アルルは掻い摘んで説明してくれた。どうやら森の道変化とやらの時刻が早すぎたらしく、彼らはその反動でこちらまで飛ばされたらしい。その時ツバサとベティは、湖の水面に浮かんだ黒いボートのような物の上に倒れていて、それをアルルは1人でロープを用いて岸まで引き上げたとか。
「ツバサの魔術はね、使い過ぎると命が危なくなる危険性があるの。ちょっと特殊なのよね」
ツバサは蛇に噛まれた傷を手で擦りながらうなずいた。傷が完治していない時に魔術を発動させたせいで、体に負担がかかり傷口が開いて大量出血したのだ。
森はまだ動いていて、彼らは帰ることができなかった。しばらく湖の岸で体を休めていたが、ツバサの顔色は悪いままだった。
「ここに居ると気分が悪くて仕方ないんだ」
「でも私もさっきから落ち着かないわよ」
アルルはそう言ってツバサの隣に座った。レンはどちらかと言うともっとこの辺りを探険したい、という好奇心で溢れていた。勿論訪れたことのない場所であったし、普通に歩いてみたかった。レンが落ち着きなくウロウロとしているとベティが少し散歩をしてみよう、と提案をした。
「俺達はここで待ってるよ。あんまり遠くへ行くなよ」
ツバサとアルルを置いて、二人は周辺の探索にあたった。探索に行ってしまい姿が見えなくなったところでツバサは口を開いた。
「妙な奴だな。よくこんな邪悪な力を感じるところで歩けるもんだ」
この岸の近くに何かがある。そのことはツバサもアルルも察知はしていたが、それを確認に行こうとする勇気は無かった。彼らは魔術――それも邪悪なもの――を感じていた。おそらく別世界のものではない。もっと下の―悪魔界のものだ。
別世界の他にもいくつか惑星はあり、それらの惑星には"ワープの扉"という空間の扉を通じて移動が可能だった。
「アルルはレンが何者なのか知ってるのか?」
「自分のことはあまり話してくれないの。それはお互い様よ、私だって話していないけど」
「名字……アルルは名字をあいつに教えたか?」
「いいえ。だって教えたらきっと、私がサークル帝国の女帝の娘だってバレちゃうから」
トライアングルの唯一の帝国、サークル帝国の女帝はアルルの母親だった。トライアングルの王や帝に血縁は関係ない。アルルは後継者ではなかったが、それでも女帝の娘というレッテルを貼られてしまうことが嫌な部分があった。しかしツバサとは幼い頃からの仲で、お互いに名字は明かしていた。
「レンの名字は知ってる?」
「知らない。でもいつか必ず話すって言ってた」
「そう。でもまああいつはただ者じゃないよな」
「今まで一体誰に追われてたのかな。追っ手にアサシンって呼ばれてはいたけど、本職が殺しって感じがしないのよね。何だかいつの間にかアサシンになっちゃった、みたいな」
「俺この間、図書館でその追っ手の……グループの奴らのこと調べようとしたんだ。そしたらさ、司書……ルーク、居るだろ?あいつに止められたんだ。それに、名字も簡単に明かすなって……」
「レンが話してくれるまで待ちましょ。きっと話してくれるよ。だって私達チームでしょ」
そうだな、とツバサはうなずいた。心にはもやもやが残ったままだった。
一方、レンとベティは大きめの洞穴を見つけてその中に入っていた。穴は大きく、背の高いレンですらも余裕で歩ける高さだった。レンが先頭を歩き、ベティはそれに続いた。ベティが後方から雷を小さく光らせ、明かり代わりにした。壁には火の点っていないロウソクがかけられていて、かつて誰かがここを行き来していたことがわかる。
「ずいぶん長い洞穴ね」
「……ん?」
不意にレンが足を止め、ベティはその背中にぶつかった。空気が変わった。レンはそれを察すると、何も言わずにまた歩きだした。
彼らがたどり着いた場所、それは―牢獄だった。
「何、ここ……」
「ベティ、ここで下手に魔術を使わない方が良い。何が起きるかわからない。俺に任せてくれ」
そこにあったのは牢屋だけで、囚人は居なかった。格子がたくさん並び、ベティはゾッとした。壁に取り付けられた手錠のようなものにはすっかり変色してしまった血が付着していた。ベティは無意識のうちにレンの背中に隠れながら奥へと進んだ。
「何!!」
ベティが声を上げた瞬間、地面も壁も氷で覆われた。向こうにある出口までが氷の壁で覆われる。寒さではない何かに体が勝手に震え始める。ベティは突如しゃがみ込んだ。
「怖い……何だかわからないけど怖い……この魔力は何……?」
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