二人をつなぐもの

深緋莉楓

文字の大きさ
上 下
9 / 9

第9話 想いの行き着く先

しおりを挟む
 三年生になって明確に何か変わったかといえば、教室の場所と担任くらいだ。
 雪島先生は今年度から副が外れて僕のクラスの担任になった。
 あとは漠然とした不安にかられるようになった。自分の進路に最終決断を下して、それを目標に変え、達成せねばならないという焦燥感にたまに駆られる。
 そんな時僕は、あの日嵯峨野先輩から握手と共に渡された校章を触る。
 僕のブレザーのフラワーホールには傍目からは解らないけれど、先輩からもらった校章がはまっている。それを触ると、周囲から何を言われようと自分を貫いた先輩の強さを分けてもらえるような気がして、妙に焦り出した心が落ち着くのだ。

「出席、取るぞー」

 先生はいつもの調子で騒がしい教室に入って来て、名簿を広げる。
 相変わらず解りやすい授業で、綺麗な黒板の文字で、親身に生徒に寄り添ってくれる。
 バレー部は春の大会に向けて絶賛シゴかれ中らしい。

 そんな先生の首元にはボールチェーンはもうない。

「ちょっと! 先生! 彼女できたの!? てか、いたの!?」
「あっれー? 先生、ネックレスにすんのやめたの?」
「はい、先生のプライベートな事は一切学業に関係ないので、黙秘します!」
 
 クラス替えもなく、そのままのメンツで三年生になった僕達は先生に対して慣れているので、特に接する機会の多いバレー部のメンバーと女子は遠慮がない。
 そんな遠慮のないメンツからのヤジも先生はするりと躱した新学期初日。
 出席簿を持つ先生の左手の薬指に優しく輝くシンプルな指輪が一つ。
 僕は寂しいような嬉しいような複雑な気持ちで頬杖をついて騒つく教室が静まるのを待った。


 二人は恋だった。愛なのかもしれない。
 
 僕の想いは……やっぱり憧れ。

 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

馬鹿な先輩と後輩くん

ぽぽ
BL
美形新人×平凡上司 新人の教育係を任された主人公。しかし彼は自分が教える事も必要が無いほど完璧だった。だけど愛想は悪い。一方、主人公は愛想は良いがミスばかりをする。そんな凸凹な二人の話。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 作者は飲み会を経験した事ないので誤った物を書いているかもしれませんがご了承ください。 本来は二次創作にて登場させたモブでしたが余りにもタイプだったのでモブルートを書いた所ただの創作BLになってました。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

処理中です...