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第9話 想いの行き着く先
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三年生になって明確に何か変わったかといえば、教室の場所と担任くらいだ。
雪島先生は今年度から副が外れて僕のクラスの担任になった。
あとは漠然とした不安にかられるようになった。自分の進路に最終決断を下して、それを目標に変え、達成せねばならないという焦燥感にたまに駆られる。
そんな時僕は、あの日嵯峨野先輩から握手と共に渡された校章を触る。
僕のブレザーのフラワーホールには傍目からは解らないけれど、先輩からもらった校章が嵌っている。それを触ると、周囲から何を言われようと自分を貫いた先輩の強さを分けてもらえるような気がして、妙に焦り出した心が落ち着くのだ。
「出席、取るぞー」
先生はいつもの調子で騒がしい教室に入って来て、名簿を広げる。
相変わらず解りやすい授業で、綺麗な黒板の文字で、親身に生徒に寄り添ってくれる。
バレー部は春の大会に向けて絶賛シゴかれ中らしい。
そんな先生の首元にはボールチェーンはもうない。
「ちょっと! 先生! 彼女できたの!? てか、いたの!?」
「あっれー? 先生、ネックレスにすんのやめたの?」
「はい、先生のプライベートな事は一切学業に関係ないので、黙秘します!」
クラス替えもなく、そのままのメンツで三年生になった僕達は先生に対して慣れているので、特に接する機会の多いバレー部のメンバーと女子は遠慮がない。
そんな遠慮のないメンツからのヤジも先生はするりと躱した新学期初日。
出席簿を持つ先生の左手の薬指に優しく輝くシンプルな指輪が一つ。
僕は寂しいような嬉しいような複雑な気持ちで頬杖をついて騒つく教室が静まるのを待った。
二人は恋だった。愛なのかもしれない。
僕の想いは……やっぱり憧れ。
雪島先生は今年度から副が外れて僕のクラスの担任になった。
あとは漠然とした不安にかられるようになった。自分の進路に最終決断を下して、それを目標に変え、達成せねばならないという焦燥感にたまに駆られる。
そんな時僕は、あの日嵯峨野先輩から握手と共に渡された校章を触る。
僕のブレザーのフラワーホールには傍目からは解らないけれど、先輩からもらった校章が嵌っている。それを触ると、周囲から何を言われようと自分を貫いた先輩の強さを分けてもらえるような気がして、妙に焦り出した心が落ち着くのだ。
「出席、取るぞー」
先生はいつもの調子で騒がしい教室に入って来て、名簿を広げる。
相変わらず解りやすい授業で、綺麗な黒板の文字で、親身に生徒に寄り添ってくれる。
バレー部は春の大会に向けて絶賛シゴかれ中らしい。
そんな先生の首元にはボールチェーンはもうない。
「ちょっと! 先生! 彼女できたの!? てか、いたの!?」
「あっれー? 先生、ネックレスにすんのやめたの?」
「はい、先生のプライベートな事は一切学業に関係ないので、黙秘します!」
クラス替えもなく、そのままのメンツで三年生になった僕達は先生に対して慣れているので、特に接する機会の多いバレー部のメンバーと女子は遠慮がない。
そんな遠慮のないメンツからのヤジも先生はするりと躱した新学期初日。
出席簿を持つ先生の左手の薬指に優しく輝くシンプルな指輪が一つ。
僕は寂しいような嬉しいような複雑な気持ちで頬杖をついて騒つく教室が静まるのを待った。
二人は恋だった。愛なのかもしれない。
僕の想いは……やっぱり憧れ。
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