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皇帝陛下は○○厨
不穏な贈り物
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「末子、手を出してみろ」
「あうー」
出してみろと言いつつ、私の右手を掴んで持ち上げるお父様。
感情が顔に出ないから分からなかったけれど……この人、結構せっかちだよね。
「か細い腕だな。加減を誤ると折れてしまいそうだ」
そんな不穏な台詞を真顔で呟くのはどうか止めて頂きたい。
お父様手はただでさえ大きくてゴツゴツしているし、この目で暗殺者の首をあっさり折ったところも見ているのだ。お父様の場合、とても冗談では済まされない。
ちょっと怖くなって、腕を引いてみる。が、小揺るぎもしないお父様は、床に置かれていたスターリアブルーを空いている方の手で掴むと、私の手首に軽く押し当てた。
何をするつもりなのか……びくびくしながらお父様の動きを伺っていた私は、じわじわと宝石が発光し始めたことに気が付いた。そして、少しずつ熱を持ってきていることにも。
光が強まると共に、熱も上がる。
これ以上は火傷しそうだと思った頃合い、痛みを感じるようになったところで――――バチッと光が弾けた。
「初めてだったが、まあなんとかなったな」
冷静に私の手首を観察するお父様。
そこには、先ほどまでなかった澄んだ海を思わせる鮮やかな蒼色……つまり、スターリアブルーと同じ色をした細めのバングルがついていた。
赤ちゃんサイズの私の腕にもぴったりのバングルなんて……いつの間に。
「スターリアブルーは魔力を込めると変形する。元の形では石が大きすぎて身に付けられぬが、腕輪にすれば丁度良かろう。ある程度までは末子の手首の成長に合わせて勝手に大きくなる」
「あうあ……(すごい)」
流石はファンタジー世界の宝石。そんなハイテク機能を付けることが出来るとは。前世にあったら売れそうな機能だよ。
右の手首を動かせば、バングルのつるりとした表面が照明の光を反射して綺羅星のように輝く。
宝石の類には全く興味のない私でも、これは素直に綺麗だと感心できた。
「それと腕輪を外すことができるのは私だけだ。無理矢理外そうとすれば、石に込めた私の魔力が攻撃をしかける」
くれぐれも気を付けろ、と冷ややかに告げるお父様。横で話を聞いていたマルティアと一緒に、私は神妙な面持ちで頷いた。
そうだよね。マルティアは私をお風呂に入れてくれたり、服を着替えさせたりするから、うっかり外しちゃったりしたら大変だし……うん?
まって。お父様しか取れないって、つまり私はずっとこのバングルを着けたままじゃないといけないという訳で。
いや、それってどんな呪いの腕輪……。
お父様からの贈り物はどうしてこう、不穏な機能が当たり前のようについているのだろう。
悪意はなさそうだから、センスの問題? はたまた、悪役の中の悪役みたいな存在だから、贈り物も不穏なアイテムになるオート機能が搭載されてるとか……。
だとしたら、なんて不憫なんだ。思わずお父様を憐れむ私に、当の本人は平然とさらに不穏な事を口にした。
「それともう一つ。石には元からあった生体反応だけでなく……末子、お前に殺意を持った存在を感知する機能を付与している。皇宮は魑魅魍魎が跋扈する場所、接する者全てが味方とは限らない。良いか、ベネトナーシュ」
――――お前を害し、甘い蜜を啜ろうとする寄生虫どもは全て殺せ
苛烈な発言をしているにも関わらず、ぴくりとも動かないお父様の怜悧な美貌。
私はただ、呆然と眺めることしかできなかった。
「あうー」
出してみろと言いつつ、私の右手を掴んで持ち上げるお父様。
感情が顔に出ないから分からなかったけれど……この人、結構せっかちだよね。
「か細い腕だな。加減を誤ると折れてしまいそうだ」
そんな不穏な台詞を真顔で呟くのはどうか止めて頂きたい。
お父様手はただでさえ大きくてゴツゴツしているし、この目で暗殺者の首をあっさり折ったところも見ているのだ。お父様の場合、とても冗談では済まされない。
ちょっと怖くなって、腕を引いてみる。が、小揺るぎもしないお父様は、床に置かれていたスターリアブルーを空いている方の手で掴むと、私の手首に軽く押し当てた。
何をするつもりなのか……びくびくしながらお父様の動きを伺っていた私は、じわじわと宝石が発光し始めたことに気が付いた。そして、少しずつ熱を持ってきていることにも。
光が強まると共に、熱も上がる。
これ以上は火傷しそうだと思った頃合い、痛みを感じるようになったところで――――バチッと光が弾けた。
「初めてだったが、まあなんとかなったな」
冷静に私の手首を観察するお父様。
そこには、先ほどまでなかった澄んだ海を思わせる鮮やかな蒼色……つまり、スターリアブルーと同じ色をした細めのバングルがついていた。
赤ちゃんサイズの私の腕にもぴったりのバングルなんて……いつの間に。
「スターリアブルーは魔力を込めると変形する。元の形では石が大きすぎて身に付けられぬが、腕輪にすれば丁度良かろう。ある程度までは末子の手首の成長に合わせて勝手に大きくなる」
「あうあ……(すごい)」
流石はファンタジー世界の宝石。そんなハイテク機能を付けることが出来るとは。前世にあったら売れそうな機能だよ。
右の手首を動かせば、バングルのつるりとした表面が照明の光を反射して綺羅星のように輝く。
宝石の類には全く興味のない私でも、これは素直に綺麗だと感心できた。
「それと腕輪を外すことができるのは私だけだ。無理矢理外そうとすれば、石に込めた私の魔力が攻撃をしかける」
くれぐれも気を付けろ、と冷ややかに告げるお父様。横で話を聞いていたマルティアと一緒に、私は神妙な面持ちで頷いた。
そうだよね。マルティアは私をお風呂に入れてくれたり、服を着替えさせたりするから、うっかり外しちゃったりしたら大変だし……うん?
まって。お父様しか取れないって、つまり私はずっとこのバングルを着けたままじゃないといけないという訳で。
いや、それってどんな呪いの腕輪……。
お父様からの贈り物はどうしてこう、不穏な機能が当たり前のようについているのだろう。
悪意はなさそうだから、センスの問題? はたまた、悪役の中の悪役みたいな存在だから、贈り物も不穏なアイテムになるオート機能が搭載されてるとか……。
だとしたら、なんて不憫なんだ。思わずお父様を憐れむ私に、当の本人は平然とさらに不穏な事を口にした。
「それともう一つ。石には元からあった生体反応だけでなく……末子、お前に殺意を持った存在を感知する機能を付与している。皇宮は魑魅魍魎が跋扈する場所、接する者全てが味方とは限らない。良いか、ベネトナーシュ」
――――お前を害し、甘い蜜を啜ろうとする寄生虫どもは全て殺せ
苛烈な発言をしているにも関わらず、ぴくりとも動かないお父様の怜悧な美貌。
私はただ、呆然と眺めることしかできなかった。
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