上 下
308 / 313
番外編 後日談

18. ジェンの親友

しおりを挟む
二人に会った翌日、ジェンは町の外へと出かけていった。もし日程がずれていたら普通に連絡を取っていたんだけど、ちょうどタイミングも良かったから行ってくると言って出て行った。もう20年以上前のことなんだけど、大丈夫かなあ・・・。


~~ジェンSide~~
メイサンとルミナに会えてよかった。もっと早く会いに来たかったけど、いろいろあってこれなかったからね。
こっちに来てから本当に不安だったときに助けてくれた二人。あのときこの二人と会えなかったらどうなっていただろう?正直なところ本当の両親のように思っている。夕べは遅くまでずっと語り合ったのよね。


オカニウムに来て会いたい人はあと二人。アキラとマラルは元気にしているかしら。一応少し話は聞いているんだけど、私のことをどう思ってくれているのかとても不安なのよね。
あっちの世界でも友人と呼ぶ人は出来たし、親友と言ってもおかしくないくらい深いつきあいの人もいる。でもアキラとマラルほど何でも話せる友人は出来なかった。だからこそ会うのが怖い。

それで少し賭をしてみることにした。実は今回オカニウムに来るのを後回しにしたのもその約束があったからだ。コーランさんにも魔符核のことは今回の事が終わるまで販売するのは待ってもらっている。おそらくあれを販売したらばれてしまうだろうからね。


ちょうど今日がその日になる。少し早い時間に出発して目的の場所へとやって来た。町が拡張されたけど、内陸の方には広がっていなかったのでよかった。約束の場所はまだ当時のまま残っていた。


ここは初めて3人で魔獣を退治した場所だ。あの頃はスライムを倒すのも大変だったのよね。アキラは毒スライムにやられてしまったし・・・。懐かしいなあ。

「もし何かあったときは私達の出会いの場所に集まって私のことを思い出してほしい。」

二人に伝えた言葉だ。最後に会ったときに3人で狩りをしたときの場所の話になり、あれが私達の本当の出会いと言ってもいいわねという話になったのだ。
もちろん何かの目印があるわけでもないし、近くにちょっと特徴のある岩があるくらいの変哲のない場所だ。

もう20年も経ったけど、来てくれているのだろうか? 1時間ほど待っていたが、誰かが現れることはなかった。さすがに20年は長かったわよね・・・。うーん、どうしようかなあ・・・。


来た道を引き返していると、すごい勢いで車が一台やって来て、車を止めると中から女性が二人出てきた。

「ほら、もう1時間も遅くなったじゃない。」

「これでも急いで戻ってきたのよ。まさか途中で車が動かなくなるとは思わなかったわよ。」

「まあ仕事であちこち行っているのは分かっているけどね。まあ少し遅れたけどこのくらいならよしとするかな。」

「それじゃあ、少し離れたところで待機しておいてね。」

「さて、今回も少し飲みながら話でもしますか。」

覚えてくれていた・・・。
20年経ったいまでも覚えてくれていたんだ・・・。

「あ、すみませんね。騒がしくしてしまって・・・。えっ?」

「マルラどうしたの?」

「アキラ、マルラ・・・。ただいま。『仮パーティーアマジの3人で初めて一緒に戦った場所』で良かったかな。えへへへ。」

「「ジェ、ジェン?!」」

「ま、間違いないよね。その合い言葉・・・ほんとにジェンなんだよね?」

「姿が変わっていないことは驚いたけど、間違いないよね?」

「うん、ごめんね心配かけて。」

二人が私に駆け寄ってきて抱きついてきた。

「どこに行っていたのよ!!無くなったと言っても信じられなくて、あの夢を見てからずっと待っていたわよ!!」

「ほんとうに、本当に戻ってきたのね。」


しばらくして落ち着いてきてから話をする。

あれから毎年この日のこの時間に二人で集まっていたようだ。仕事のこともあるけど、この日だけはわがままを許してほしいと伝えて、他の国に行っていたときもわざわざ戻ってきていたらしい。アムダの英雄についていろいろと聞かれたけど、このことだけは誰にも話さなかったようだ。

二人のことを聞くと今は子供達も成人してアキラは孫までいるようだ。話は尽きず、しばらくしてから町に戻り、夜遅くまで話が続いた。

だけど本当のことを話すことが出来なくてごめんね。本当は私にも子供が出来たよって言いたいけど、向こうの世界のことを言わないのはこの世界に来るときに私達が課した制約なんだ。よほどのことが無い限りはこれを破るわけにはいかない。


~アキラSide~
ジェンが亡くなったあと、国で行われた追悼式に出席した。そのときに他の知り合いと話をして同じような夢を見ていた事を聞いて驚いた。もしかして本当に戻ってくるのかな?

町に戻った後、マルラとジェンとのことについて改めて話をした。最後に会ったときに話した約束を続けていこうと言うことだった。


おたがい忙しくなってきても、その日だけは絶対にここに戻ってきて集まろうと決めた。さすがに天候が悪すぎるときはこの場所にとどまるのはあきらめてすぐに町に戻っていたけど、天気がいいときは二人でジェンのことを飲みながら語り合った。

そしてもう20年以上この行事は続いている。途中どうしても都合が付かなくて出来なかったことが一度だけあるけど、それ以外はなんとか都合を合わせて集まってきた。

今年は車のトラブルでマルラが遅れてしまったけど、予定よりも1時間ほど遅れて到着した。最近は車でこの場所まで送ってもらい、ピクニック気分で語り合うのがパターンになっている。
今はお互いに忙しくてなかなか会うことが出来ないから、余計に話すことが尽きないのよね。もういい加減に仕事を引退したいと思っているんだけど、マルラは副支店長だし、私も事務長になっているからなかなかやめさせてくれないのよね。


車を降りるとこんなところに珍しく冒険者と思われる人がいた。少し警戒はしたけど、近くに護衛もいるから大丈夫かな?
マルラが少し声をかけたんだけど、なぜか固まっている。どうしたのかと思って立っていた女性の方を向くと声をかけてきた。

「アキラ、マルラ・・・。ただいま。『仮パーティーアマジの3人で初めて一緒に戦った場所』で良かったかな。えへへへ。」

笑いながら驚くことを言ってきた。

え?え?なんでその合い言葉を知っているの?3人だけの秘密だったことなのに。旦那にも話したことのないのに・・・。
それにその姿・・・当時のままだよね?だけど、だけど、間違いないよね。

「「ジェ、ジェン?!」」

「ま、間違いないよね。その合い言葉・・・ほんとにジェンなんだよね?」

「姿が変わっていないことは驚いたけど、間違いないよね?」

「うん、ごめんね心配かけて。」

しばらく声も出なかった。でもお互いの顔を見て笑いながら泣いていた。本当に戻ってきたのね。


このあとお酒を酌み交わしながらいろいろと話をした。戻ってきてからもいろいろとあってこっちに来るのが遅れたことを謝っていた。

昨日この町に着いてからメイサンとルミナに会ってきたらしい。夕べはずっと3人で話していたようだ。

その後ジュンイチさんとも再会したけど、ジェンと同じく当時の姿のままだった。本当に時間を超えてきたのね。二人はこのあとハクセンやアルモニアにも行ってお世話になった人たちに会ってくるみたい。また落ち着いたらこの町にも戻ってくると言っている。

ただ彼らの事は内緒にしておいてくれと言われたんだけど、仕方が無いわよね。二人が生きていると分かったらいろいろと大変なことになりそうだからね。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...