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第二部 長かった異世界旅行?

262. 異世界2380日目 古代兵器との戦い

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 明日は晴れと言うことなので予定通り討伐に向かうことになった。今日は一日自由にしていいと言われたんだが、特に出かける気もおきなかった。折角なので宿の部屋で二人でのんびりと過ごす。

「ジェン、大丈夫?」

「イチこそ大丈夫なの?」

「まあ不安がないと言えば嘘になるけど、今更逃げるわけにもいかないよね。」

「まあそうね。核を破壊できなくても普通に討伐してくれれば問題ないけど、もしこれで倒せないと言うことになったら下手したらこの世界の人には倒せないと言うことになってしまうわよね。」

「ああ、そうなったらどのくらいの犠牲が出るか分からないことになるよ。今まででも少なくない村や町で被害が出ているみたいだしね。どうやってターゲットを決めているのか分からないけど、徐々に王都に向かってきているようだからなあ。」

「今回の戦いでけりを付けたいところよね。」

 やはり気持ちが高ぶっているのか、明日のことを考えると不安になるのか、明日は戦いというのにジェンを求めてしまった。ジェンも必死に自分を求めてきたので気持ちは同じなのかもしれない。やはり心配なのだろう。結局お昼も食べずに求め合い、気がついたら夕方になっていた。

 治癒魔法で回復してから部屋に食事を運んでもらって早めの夕食をとる。こっちの食文化はパンと肉が中心のようで、イメージだけだがアメリカという感じだ。ジェンに聞いたらそこまで間違っていないようだった。
 かなり大きなステーキを食べたんだが、良階位の巨角牛の肉だったようだ。食事代は国が持ってくれているので気にしなかったけど、結構な値段だろうな。メニューに値段の記載が無いから分からないんだよな。
 食事の後はお茶を飲みながらのんびりと過ごし、早めに眠りに就いた。さすがに興奮しているのでそのままでは眠れないと思い、魔法を使って眠りにつく。



 翌朝早めに起きてから準備をしてロビーに行くと、すでに車が到着していた。車に乗って王宮に移動すると、他の兵士達も集まっていた。
 少ししたところで整列するように言われたので他の兵士に倣って並んで待つ。少し離れたところには各国からの使節団の人たちも並んでいた。しばらくしてこの国の皇帝であるアウトラス・クリアサトスがやって来た。激励にやって来たのだろうか?

「兵士達よ、そして冒険者達よ。今回の討伐に志願してくれたことに感謝する。
 君たちの肩にこの国、いやこの世界の命運がかかっている。そのような・・・・


・・・
 必ずややり遂げてくれるものと信じている。」

 思ったよりも長い激励の言葉があったが、兵士達は皇帝からの直接の言葉に感激しているようだ。まあ普通は簡単に会うことが出来ないみたいだからね。

「ジュンイチさん、ジェニファーさん。がんばってくれ。」

 謁見の後、マスカさんやジョニーファンさん達から激励を受けて飛行艇に乗り込む。他にも兵士達の家族達が見送りに来ているようだ。もう戻ってこれない可能性もあるので、見ていてかなり心に来るものがある。小さな子供を抱えている奥さんもいるしね。
 志願兵と言いつつもやはり命令を断ることは出来なかった人もいるだろうな。まあもし倒せればそれだけの栄誉を手に入れることが出来るだろうけど・・・。

 現地に到着するまで飛行艇で2時間ほどかかるようなのでそれまでは仮眠をとっておくことにした。他の人たちは瞑想している人や話をしている人や黙って外を眺めている人などいろいろだ。



 到着したのは森の近くにある平原だ。どうやらアムダはこの森の中で狩りをしているみたい。森にいるのは高階位までの魔獣らしいのでそれほど強いわけではないようだ。
 最終的な布陣の確認をしてから配置についたあと、見張りに出ていた兵士が戻ってきた。しばらくしたところでアムダの姿が現れた。どうやら魔獣石をえさにおびき寄せているみたい。やはり魔獣石に反応するのか?

「あれか、思ったよりも大きいな。」

 遠いのではっきりとは言えないけど、高さは自分の身長よりも遙かに高そうだ。上から振り下ろされる攻撃はかなり危なそうだな。


 アムダが所定のところまでやって来たところで突撃隊が突っ込んでいった。ちなみに落とし穴などの罠は何度か試したようだが、無駄だったらしい。
 まずは2チームが攻撃に加わり、2チームはすぐに変われるように少し離れたところで待機、もう2チームは治癒班の護衛を兼ねて待機している。交代した後は治癒班の治療を受けながら護衛をする形となるようだ。
 自分たちは一定距離をとって隠密を使って潜伏する。自分たちの実力では混ざっても足手まといになるだけだからね。


 アムダの動きもかなり速いが、スピードだけなら兵士の方が上回っているようだ。頭上にある4つの剣が振り下ろされるが、うまく躱している。受けてしまうと防具の方がやられるから、基本的に躱すしかない。
 ただ攻撃してもはじかれてしまう感じでダメージが入っているようには見えない。攻撃する人たちもそれは分かっているので、焦ったそぶりもなく、着実に攻撃を加えている。

 今回の討伐に際して古代遺跡から発見されたオリハルコンの武器の強度について調査が行われた。オリハルコンの剣については現在のオリハルコン合金ではほとんど効果が得られなかった。まったく歯がたたないわけでは無かったが、実際の戦闘を考えると剣の破壊は無理という結論となった。
 それではオリハルコンでコーティングされたところについてどうかと検討した結果、こちらであればまだ対応出来るだろうと言うことだった。もちろんどのくらいの装甲かにもよるが、剣のたたきつける角度などを考慮して同じ場所を攻撃していけば少しずつであるが内部の金属の方にダメージを与えられるだろうと言うことだった。

 4人が同じタイミングで攻撃を仕掛け、攻撃できる人が攻撃を加えていく。アムダが4つの剣を持っているとは言え、4人を同時に攻撃できるわけではないからね。
 事前によける方向もある程度決めているようなのでぶつかってしまうようなこともないみたいで、うまい具合にアムダを翻弄している。

 武器はオリハルコンとミスリルの合金だが、これを収納バッグや収納魔法でかなりの数持ち込んでいる。このため刃がだめになった場合はすぐに取り替えて攻撃するようになっている。とにかく回数で攻撃するしか無いため、今回のような交代制の攻撃となった。

 あとは時間的に5分に1回くらいの間隔で例のレーザーのような攻撃を受けている。威力はそこまで強くはないが、攻撃範囲が広いのが問題だ。さすがによけられないので攻撃を受けてしまい、このタイミングでチームが交代しているようだ。

 自分たちは隠密のスキルを使ってできる限り近いところで見ているんだが、手を出せないのがちょっともどかしい。

 何度も交代して攻撃を加えていったあと、やっと足の一本を断ち切ることが出来たようだ。足が1本無くなっても動きは特に遅くなった感じはしないが、徐々に足を切り落としていく。これだったらこのまま討伐できるか?

 そう思っていたんだが、足の数が残り4本になったところでレーザー攻撃の後、形態が少し変化した。切られた6本の残った部分は少し収納されて、まるでもともとその形だったように4足歩行の形態になった。
 切られた6本は予備の足だったのか?たしかに足の作りが若干違うようにも感じていたけど・・・。

 上にあった剣の有効半径にすべて入ってしまったせいか、足への攻撃がほとんど出来なくなってしまった。かといって上の剣とまともに打ち合うとすぐに剣がだめになってしまう。何度も攻撃を繰り返すが、なかなか決定打を与えられない状態になってしまった。

 まさかどこかの漫画やゲームのように真の姿を現したというような事があるとは・・・。まだまだ変身の余地を残しているとか言うのはやめてよね。


 ここで作戦が変更になったようで、自分たちにも緊張が走る。やはりこのままでは倒せないと思ったのだろう。

 6組のチーム全員が一斉に飛びかかり、剣を押さえ込みに行った。身体を貫かれている人もいるが、そのまま抱きついて動きを止めている。そのままだと切り裂かれてしまうので、古代遺跡で見つかったオリハルコンの武具で剣の部分を押さえ込むようにしている。ただふりほどかれてしまうのも時間の問題だろう。

 ここで自分たちの護衛の4人が先に突撃し、兵器に近づいたところで自分たちも突撃で一気に間合いを詰めてから、兵器の背中に飛び乗る。先に移動していた護衛の人たちはアムダの足で吹き飛ばされていたが、その隙を突いて飛び乗ることが出来た。
 ハッチの場所を確認し、鑑定で埋め込まれた金属を判別して錬金術で取り除く。すぐにハッチを開けようとしたがなぜか開かない。

「なぜだ?」

 金属は取り除いたはずなんだが、ハッチが動かない。

「勘弁してくれ!!」

 さらに力を込めるとやっとハッチが開いた。金属の封印とは別にフックのようなもので固定されたみたいだった。

「ジェン!!」

 ジェンと二人で中にあった核に魔力を込める。

 まだか?

 まだか?

 しばらくすると核にひびが入り、ついに霧散した。

「よし!!核の消失を確認!!離散!!!」

 大声で他の人たちに伝える。
 アムダの動きが少し鈍くなったようだ。怪我をした人も含めて飛翔魔法でアムダから離れ出す。自分たちもと思ったところでアムダの身体から光攻撃が放たれた。

「そんなに時間が経っていた!?」

 威力は弱かったみたいだけど、まともに攻撃を受けてしまった。地面にたたきつけられたところで、上から何かが降ってきた。

「ぐぁっ!!」

 何かと思ったらアムダの身体が倒れかかってきたようだった。押しつぶされはしなかったが、足が挟まれてしまっている。

「嘘だろ!!」

 さらに兵器からいやな光があふれ始めた。

「これって・・・。」

 この光って絶対にいいものじゃないよな。

「ジェン、転移するよ!!」

「ええ!!」

 転移をしたつもりだったが、視界が変わらない。なにか妨害が出ているのか?くそ!!

「ジェン!!逃げて!!」

 重量軽減魔法も妨害されているのか全く効かなくて持ち上げることが出来ない。ふと見るとなぜかジェンが逃げずにそばにいた。

「ジェン、なんで?」

「一人じゃ、いやだよ・・・。」

 ジェンが抱きついてきた。
 だめか・・・。自己犠牲なんて絶対いやだと思っていたけど、この世界を救えたのは良かったのかなあ。ごめん、父さん、母さん、ジェン・・・。
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