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第二部 異世界での訓練

現-10. 現世界67日目 家族旅行

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 明日から三連休で家族旅行を予定している。まあ家族といいながらジェンも一緒なんだけどね。
 今回の旅行は自分がジェンにも少し相談しながら計画して、両親に声をかけたものだ。旅費については夏休みのバイト代を充てると説明している。かなり驚いていたんだけど、たまには子供に甘えるかと言うことで予定は決まった。

 ちなみにしばらく収入を得る方法としてジェンの両親の伝を使ってアクセサリーの販売を始めることにした。もちろん自分で直接売るわけではなく、お店に卸す形だ。
 以前あったときにプレゼントも兼ねていくつか作ったアクセサリーのサンプルを見てもらったところ、かなりの評価が得られたのだ。錬金などのスキルを使って作るので、普通ではかなり難しい金属や宝石の融合や細工ができるからね。
 目の肥えているであろうジェンの母親には「ちゃんと宣伝しておいてあげるわよ。」と言ってくれたので期待しておこう。

 今は余計な時間をかけたくないので、必要経費を取ってもらい手続き関係はお店に委託している。この辺は信頼して大丈夫だろう。
 元々持っていたものを使うので原材料費もかからないし、道具がいるわけでもないから人件費を除けば収入の全てがもうけとなる。ある程度収入が見込めるなら起業まで考えないといけないな。



 今回の旅行は父の運転する車で行くんだが、渋滞を避けるために朝早く出発するのでジェンにはうちに前泊してもらうことになった。一緒に旅行に行くことは両親にもちゃんと許可をもらったと言っている。
 玲奈も珍しく参加するらしい。最初は留守番すると言っていたくせにジェンが行くと言った瞬間に行くといいやがった。

 帰宅してからしばらくするとジェンが車でやってきた。さすがに収納魔法を使うわけにもいかないのでちゃんと荷物を持ってきている。
 夕食も一緒にとることにしたんだけど、母は旅行の前日というのにえらく張り切って作っていた。玲奈も手伝ったみたいでジェンにいろいろと説明している。
 食事の後はお風呂に入り、部屋で少し話をしていたんだが、明日の朝も早いので早々に寝ることにした。ベッドは一つだけどまあ前と変わらないよなと言うことで一緒にベッドに入って眠りにつく。さすがにエッチなことはしないよ。



 翌朝はうちの家のスタンスにあわせて4時に起きてから準備に取りかかる。うちの両親はすでに起きて準備をしていたのでジェンと二人で1階に下りてから挨拶をすると、なにかぎこちない表情で挨拶されてしまった。

「なんか変な感じだけど、どうかした?」

「ううん、別に・・・。夕べはちゃんと眠れたの?」

「今日は早いから少し話をした後すぐに寝たよ。やっぱりあのベッドだと狭かったせいかちょっと眠りが浅いみたいだから車で寝かせてもらうよ。」

 準備を済ませてから車に荷物を積み込んで出発するが、すぐに眠りに落ちてしまった。車は7人乗りなので荷物を積んでもスペースは十分だ。



 寝ている間に結構走っていたようで、目を覚ますとどこかのサービスエリアだった。小さな頃は目的地まで眠ったままだったなあ。でも自分で運転しないと本当に楽だよね。しかも途中にちゃんとした休憩所があるのはすごくありがたい。
 このあと車の中で朝食をとりながら最初の観光地に到着。天気も良かったので自転車を借りて観光することにした。

 過去の偉人の建物など見て回るが、ジェンはあまり知らない内容だったのでいろいろと質問してくる。さすがに自分もすべて答えられるわけではないが、うちの父が嬉々として説明していた。この歴史オタクめ。
 有名どころを一回りしてから町を出て、少し走ったところの何度か寄ったことのある雑炊のお店で遅めの昼食を取る。昔ながらの建物にジェンも喜んでいた。

 このあと再び車で移動して、今回の目的地である温泉地に到着した。ここは父が気に入っている温泉地でかなりひなびた感じだが温泉としてはかなり質がいいところと力説している場所だ。予約は自分が行っていたので受付に行ってチェックインを済ませて鍵を渡す。

「ジュンイチ、普通に鍵を渡してきたけど、部屋割りはどうするつもりだ?まさかジェニファーさんと二人で一部屋と言うつもりはないよな?」

「え?・・・あっ!」

 なんか普通にジェンと二人で同じ部屋のつもりだったけど、普通に考えたらまずいよな。やばい・・・。

「夕べはもう寝てしまっていたようだったからそのまま寝かせたけど、さすがに結婚前の二人だけを同室にするわけにはいかないぞ。」

「いや、その・・・。そうそう、玲奈、自分たちと同じ部屋でもいいよな?今回はいい部屋を用意したから夫婦でゆっくりしてもらいたかったんだ。」

「ええ~~、お兄ちゃんと?・・・でもジェンさんと一緒ならまあいいか。いいわよ。でも着替えの時とかちゃんと気を遣ってよね。兄妹でもその当たりはちゃんとして。」

「わかった、わかった。これなら大丈夫だろ?いい部屋を取っているから父さん達もゆっくりしてよ。」

 今回予約したのはお風呂の付いている部屋だ。結構高かったけどね。部屋を見たときの父の感激ぶりはすごかったよ。早速温泉に入ると言って部屋を追い出されてしまった。



 部屋のお風呂はあとにしてまずは大浴場で温泉を堪能する。玲奈もジェンと一緒に入ってくると嬉々として行ったようだ。父は結局やってこなかったので部屋のお風呂を満喫しているのだろう。

 夕食は父達の部屋で食べることにしたんだが、少しお酒も飲ませてもらう。もちろん未成年の飲酒はだめなんだが、少しは飲めるようになっておいた方がいいといってこういうときには少し飲ませてくれるのだ。前はあまりおいしいとは思わなかったけど、あっちの世界でジェンに鍛えられたからなあ。
 ジェンはこっそりと秘蔵のお酒を出して父にすすめていた。父はかなり感激していたが、どこのお酒だとラベルを見て首をかしげていた。まあどう考えても読めないだろう。このあともいろいろと話をしてからお開きとなる。



 翌朝は早く目が覚めたので部屋のお風呂に入っているとジェンも起きて入ってきた。もちろんタオルを巻いているけどね。

「こうやって入るのも久しぶりだなあ・・・。サイノレアの温泉宿を思い出すよね。」

「そうねえ。私が裸で入ったときはイチがすごく動揺しておもしろかったわ。」

「水着でも刺激がきついのにまさか裸で入ってくるとは思わなかったから当たり前だよ。あのころはジェンに手を出さないように必死だったんだからな。」

「ふふふ・・・。」


「だけどこうしてジェンと再会できて本当によかったよなあ。

 あの時はもうダメだと思ったけど、あれがあったからこそ記憶が残るチャンスができたんだもんなあ。」

「ほんとにそうね。ライハンドリアの神様には感謝しないといけないわね。」


 しばらく温泉に浸かってゆっくりしてから、玲奈が起きる前にさっさと着替えて出ることにした。こんなところ見られたらまた何を言われるか分からないからな。玲奈は夕べかなり遅くまで起きてジェンと話をしていたようなのでまだぐっすりだ。

 宿に付いている朝食をとった後、準備をしてから再び車に乗って出発する。



 高速を走って再び歴史的な建造物のある観光地へ。渋滞がすごいので途中で車を降りてから電車で移動することになる。路面電車のような電車なのでなかなか趣があっていいものだ。そういえば電車はあっちの世界では発達していなかったんだよなあ。

 お昼にあなご飯を食べてから船で島に渡り、有名な建物を見て鹿と戯れる。向こうの世界ではこんなに大人しい動物はあまりいなかったなあ。ジェンにはこのようなところは初めてだったようでかなり喜んでいた。
 一通り観光した後、今回は別の温泉地のホテルに泊まる。この日も部屋の割り振りは昨日と同じだ。



 翌朝は朝食の後ですぐに出発し、サファリにやってきた。朝一でまだ人が少ないのですぐに入場する。えさやりバスもあるんだが、そこまでは必要ないだろう。

 ライオンなどの猛獣はいるんだが、飼い慣らされているので魔獣などを見てきた自分たちには迫力に欠ける。まあもともと人間慣れしているので野生のかけらもない感じだけどね。
 ジェンがちょっと威圧すると、縮こまってしまったよ。やめなさい・・・。正直外に出てもやられることはなさそうだな。もしテイムのスキルとかがあったらこっちの動物とかも操れたのかねえ?


 温泉と旅行を堪能して戻ってきたが、やっぱり向こうの世界の旅とは違うね。やっぱり快適だし、途中で警戒をしなくていいのがいいね。向こうだったら常に索敵しておかないと怖いからね。

 今回は家族を連れて行ったけど、二人だけで旅行にも行きたいなあ。でも折角ならバイクか車の免許がほしい。
 あっちの世界の車をこっちで使うわけにもいかないだろうし、魔獣石の制約もある。魔獣石はもう手に入れることはできないからね。車かバイクを手に入れたらいろいろと改造して快適にすればいいのかな?バイクを冷暖房完備にすればかなり快適だろうし、そのくらいの魔獣石なら消費も小さいからね。
 バイクに乗るのは反対されていないけど、乗るなら中型以上のマニュアルの免許を取らないとダメだと言われている。

 どうも原付の講習だけだと危なすぎて許可できないし、今後のことを考えると中型以上にしておかないともったいないというんだよね。
 ちゃんと免許取ったらジャケットとかブーツとかはちゃんと買ってやるからそれはちゃんと着るように言われてるし、反対されないけどいろいろうるさく言ってくる。
 まあ、バイクの楽しさだけでなく怖さも知っているからこそいってくるみたいなんだけどね。

 ただ、バイクでオートマ限定は単に「オートマにしか乗らないつもりならバイクに乗るな」というこだわりらしい。

 まだしばらくは移動は公共のものを使うしかないって事か・・・。

 だけど、もしいろいろな偶然が重ならなければこんなことにはならなかったんだよなあ。10日間の異世界旅行の予定がこんな事になるなんて、あのときは全く思わなかったよ。あと、もしかしたらという可能性もあるので鍛錬は続けないといけないな。
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