【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第二部 異世界の争い

205. 異世界1385日目 国の状況を確認

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 遺跡を出発してからしばらく走って移動した後、車に乗り換えて東へと進む。途中の町は通り過ぎてからタニアの町が近づいてきたんだが、町に寄っていくか悩むところだ。

「どうする?そろそろタニアの町に着くけど・・・。」

「やっぱり治療した人達の状態が気になるのよね。たぶん誤解は解けて大丈夫だと思うけどちょっと心配ではあるわね。」

 ちゃんと誤解が解けていればいいんだが、もしそのまま貴族への反抗心があおられたままだと怖いことになりかねないんだよなあ。
 そう思って走っていると、道の前に子供達が飛び出してきた。

「あぶなっ!!!」

 まだ距離があったから良かったけど、車の前に飛び出すのはやめてくれ。

 子供達が車の周りを囲んでしまったので動けないでいると、子供達が声をかけてきた。

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!私のこと覚えてる?前は治療してくれてありがとう!!」

 あれ、この子は確か顔にひどい傷を負った子供だったかな?隣の子供は足を怪我した子供だったような気もする。5人ほど子供達がいるんだが、全員が治療をした子供達か?

「この子達治療をした子供達だよね?お礼を言いたくて待っていたのかな?」

 車を降りて子供達と話をすると、特に後遺症も無かったようだ。良かった、治療は成功していたみたいだ。

「よく自分たちだってわかったね?」

「治療しているときに必死に励ましてくれていたでしょ?体が動かなかったけど、神様が来たかと思って見ていたの。でも治療の後で起きたらいなくなっていたのでほんとに神様だったのかと思っちゃった。」

 しばらく子供達と話していると、町から大勢の人達が近づいてきているのを察知する。これはまずいか?

「ジェン、やばそうな気もするから行くよ!!」

「えぇ!!」

「良くなっていてよかったよ。お礼はうれしかった!お兄ちゃん達は行くね!」

 車は子供達に囲まれているので車を収納してから子供達の輪から飛び出して走って行こうとすると、やってきている人達が大きな声を上げてきた。

「待ってください!!お礼を言いたくてずっと待っていたんです!!」

 何事かと思って振り返ると、みんなが膝をついて頭を下げていた。えっと、これは誤解が解けたと言うことなのかな?

「警戒はした方がいいけど、とりあえず話だけでも聞いて見るか?」

「そうね。今のところ悪意は感じないわ。」

 向こうも警戒しているのがわかったのか、あのときのシスターが前に出てきて話をしてきた。

「あのときは申し訳ありませんでした。あのあと町の人達の誤解は解いておきました。みなさんもどうしてもお礼が言いたくて、ずっと待っていたです。お願いします、一度町に寄っていただけないでしょうか?あと他にも話しておかなければならないことがあるのです。」

 さすがに町に入るのは怖かったので町のはずれで話をすることとなった。町の人達は中に戻ってもらい、この町の代表者という2名とあのときのシスターの3名で話すことになった。

「あのときはせっかく助けていただいたのに、勘違いから追い出すようなことをして申し訳ありません。暴言を吐いたもの達も反省してあなたたちへの感謝を伝えたいと言っています。」

 代表者という40歳くらいの男性が話してきた。監督官とかではなく、町の世話役の夫婦という感じの人達だろうか?

「いえ、わかっていただけて何よりでした。ちゃんと治療できたか確認までしたかったのができなくて心残りだったんです。子供達は大丈夫でしたが、他の皆さんは大丈夫でしたか?」

「ええ、それは大丈夫です。怪我をする前よりも体の調子がいいと喜んでいました。さらにかなりの量の食べ物まで寄付いただいてほんとに助かりました。」

 どうやらあのあと、車の跡を追って追いかけてきたらしいが、魔獣が多くなってきたために追いかけるのは断念したようだ。他に行く道もないのでこの道を戻ってくることを期待して途中の町に伝言をお願いし、さらに子供達が見張りをしていたらしい。3ヶ月にもなるが、子供達は休むこともなく毎日朝から晩まで見張りを続けていたようだ。

「お礼についてはまたあとでさせていただくとして、これからお話しすることがあなた方にとって重要なことなのです。」

 なにやら深刻そうな顔になった。

「この町のことについて何か変わった印象は受けませんでしたか?」

「ええっと、町の周りの壁や門がかなり頑丈になっている感じがしますね。前はもっと簡易的な造りだったと思うのですが、やはり魔獣に襲われたことが原因なんですか?あと町の入口に掲げている旗は何なのでしょうか?」

 門の上に赤と黒の二つの旗のようなものが掲げられているのである。前はあんなものはなかったと思う。

「門などについては前の魔獣のこともあり、強化しました。もちろん魔獣のこともありますが、今はそれ意外にも警備をしなければならない状況となったのです。そして旗については順を追って説明します。」

 思った以上に深刻そうな話みたいだな。

「まず数ヶ月前に国の東側の町で反乱が起きたことはご存じですか?」

「ええ、自分たちがまだこちらの町に来る前に反乱が広がっているとか鎮圧されたとか情報が交錯していました。」

「はい、その通りです。そのあとのことについての情報は得られていないと思います。実は反乱はまだ鎮圧されていません。それどころか拡大しています。」

「え?」

「反乱軍、いえ、今は革命軍と呼ばれています勢力は勢いを増し、多くの町の貴族が捕らえられたり殺されたりしている状況なのです。この町にいた貴族の管理官も恐れて逃げていきました。ここでは兵士も少ないためおそらくニンモニアの町に行ったのだと思います。
 どうも平民の中で革命を起こそうとした組織があり、その組織が一斉蜂起したようなのです。そして反乱の一部は暴徒と化して町を襲っています。場所によっては貴族に限らず平民も略奪にあっているようなのです。」

「まさか、そんなことになっているとは・・・。」

 たしかに反乱は収まっていないような感じだったけど、もう反乱が始まって4ヶ月近くにはなるはずだ。それで収まらなくて広がっていると言うことはかなり本格的に革命のようなことが起きているのかもしれないな。

「田舎のためにあまり情報は入りませんが、かなり革命軍の方が優位という話も聞いています。平民冒険者の多くも革命軍に加わっているようです。大きな町はすでに大規模な戦闘となっているみたいでニンモニアもすでに革命軍に落とされたという話でした。この町からも貴族を倒すと出て行ったもの達もいます。
 そして町に掲げている旗ですが、これは貴族がこの町にはいないと言うことを示すためのものなのです。」

「そうなんですね。そういう状況ならもしかしたら革命は成功する流れかもしれませんね。」

「正直なところ、我々にとってはどちらが勝とうがあまり関係ないのです。今よりはいい生活が送れるようになればこれに勝るものはありません。」

 こんな状況だと早めにこの国を出た方がいいかもしれないなあ。しばらく混乱も続くと思うしね。

「そしてここからが一番重要な話です。
 あなた方二人はこの国の人ではなかったと聞いていますが、貴族位を持っているので襲われる可能性が高いのです。もしかしたら途中で身分を確認されることもあるかと思います。そのときにペンダントの提示を求められると思いますが・・・。」

「たしかにそこで黄色のペンダントを出せば貴族として被害を受けるし、奴隷でもないのでペンダントを持っていないのもおかしいと言うことですね。」

「その通りです。出来るだけ早くこの国を出ていかれた方がいいと思うのですが、ここはこの国の外れです。北にある国境まではかなりの日数がかかりますのでその間ずっと誤魔化すことは難しいかと思います。
 そこでこういうものを準備しましたのでこれを持っていってください。少しは安全になると思います。」

 そう言って出してきたのは上位平民用の赤いペンダントだった。

「え?これは?」

「我々の準備したペンダントです。ペンダントは本物ですのであとは身分証明証で貴族に関わる内容を表示しなければ上位平民として過ごせるはずです。
 聞いたところでは褒章による貴族位と言うことでしたので、第一職業の冒険者以外は非表示にすることができたと思います。そうすれば正式な魔道具で確認をしない限りはわからないはずです。」

「でもこれがなければこれの持ち主が・・・。」

「それはかまいません。無くなったとしても再発行の方法はありますし、そもそもこんな状況だといくらでも言い訳できます。このくらいでしかお礼が思いつかないですしね。」

「・・・。」

「あと、車での移動は危ないと思います。この国では車に乗っている人は貴族と見なされます。ですので時間がかかると思いますが、歩いての移動を考えた方が良いかと思います。バスは一部ですが動いているという話がありますのでそのあたりをご検討ください。」

「ありがとうございます。いろいろな情報とこのようなことまでしていただいて感謝の言葉しかありません。
 なんとか頑張って国から出ようと思いますが、またこの国が落ち着いたらまた寄らせてください。」

「いえ、あなた方のしてもらったことに対してはまだ足りないくらいです。もしこの国に再び訪れることがあればぜひ寄って下さい。その時はちゃんと歓迎しますよ。」

 町の人たちから改めてお礼を言われ、みんなに見送られて出発する。せっかくなので魔獣の肉などを渡していくとかなり喜ばれた。良階位の魔獣の肉にはかなり驚かれたけどね。



「まさかこんなことになっているとはね。」

「ほんと。遺跡の調査をしていてよかったのかもしれないわね。そうでなかったら変に巻き込まれていた可能性もあるわ。」

「とりあえずニンモニアに行って状況を確認しよう。」

 あたりを警戒しながら東へと延びる道を走っていく。
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