上 下
200 / 313
第二部 異世界の古代文明

180. 異世界1164日目 王都モクニクへ

しおりを挟む
 今回の目的の一つである遺跡の調査をするためにまずは王都で調査の許可証をとらないといけないので王都モクニクに向かうことにした。王都はここから南西方向に6日ほど行ったところにあるのでそこまで遠くはない。途中に山とかもないからね。
 ここアラクからモクニクまでは主要道路なので道路もかなり綺麗に整備されており、警備もキチンとされているので移動には問題がなさそうだ。何もなければ4日くらいで着くだろう。

 昨日は一日買い物をして準備はすべて終わっているので朝早くに出発することにした。いくら交通量が多いとは言え、地球のような渋滞が出るほど車が流通しているわけでもないが、朝早いとさらにすいているので快適なのである。やはり走るペースが違うので目立ちすぎるしね。
 討伐も行き届いているみたいで索敵範囲にはほとんど魔獣の気配を感じない。出てきても初階位の魔獣がいいところだ。


 途中の町には寄っていくが、特に泊まる予定はない。町に入るときも優先して手続きをしてくれるので待ち時間も無いのがありがたいところだ。他に貴族がいてもペンダントの色を見せると先に手続きをしてくれるからね。やはり中位爵相当のペンダントを持つ人は珍しいようだ。まあ他国の下位爵なので特に接待しようという動きはないからいいけどね。
 町では食材関係を見て何か変わったものがあれば購入している。買い物の時は大量でないとき以外は普通にリュックに入れているし、車で入ったときには店員が車まで運んでくれるからね。

 途中の町は貴族エリアと平民エリアできちんと分かれてはいないんだが、使えるお店はやはり分けられていた。アラクの町ではそこまで気にしていなかったんだが、お店の入口にプレートが貼られており、それで区別されているようだ。貴族用は鷹のような鳥が描かれているもので、もう一つは人をかたどったような簡単な形のものだ。
 貴族用はもちろん貴族しか入ることができない。平民用には貴族も入ることができるが、ほとんど入ることはないらしい。商店などは両方掲げているところもあり、こちらはどちらも自由に入っていいことになっている。
 食堂や衣類のお店などは完全に別れているけど、食料などの生活必需品は共用という感じみたいだ。まあ貴族と言っても地方の町にそんなに一杯いるわけではないだろうからね。



 4日ほど走って昼過ぎにやっと王都モクニクが見えてきた。最初に目に入ったのは湖畔に建つお城だった。物語に出てきそうな眺めだね。壁はなにかで塗られているのか、白っぽい色になっていた。なかなか綺麗な城だ。
 町の北側が湖になっていて、その南側のちょっと高くなったところに城が築かれている。町はその湖の南側に広がっているようだ。
 湖を迂回してから東側の門に向かうと、すでに町に入ろうとする人達の行列ができていた。町は城壁に囲まれているので中は見えないが、城より高い建物は見えなかったので高さの規制をしているのかもしれない。

 ここには入口の門が3つあり、1つは通常の門、もう一つは許可証を持っている人の門みたいだが、どちらも結構人が並んでいる。列が長い方が初めて来るときに受付をする門だろう。入るだけでも一日とかかかりそうな気もするね。
 もう一つの門は貴族用らしく、列はない。使う人は少ないようだが、門はかなり立派な造りになっていて彫刻などかなり豪華に飾り付けられている。さっそく手続きをするとすぐに終了して町の中へ入ることができた。


 門の兵士に町の簡単な状況を聞くと簡単な地図を渡してくれた。ありがたい。町の北側に貴族エリアがあり、東側が鍛冶屋や商店などが多いみたいだ。西側と南側は住居が多いが、南西の方はあまり行かない方がいいと言われる。やはりどこの町でも治安が悪いところはあるみたいだね。


 町の大きさはヤーマンのサクラとあまり差が無いようだ。まずは最初に用事を済ませようと一応おすすめと聞いていた平民エリアにある宿を押さえてから町の南西エリアへと向かう。

 ここに来た目的の一つにスレインさんからの依頼があったのである。国の脱出を助けてくれたグループがここにいるらしい。もちろん表だっては話せないが、いくつか預かりものがあるので渡してほしいと言われていたのだ。


 変装してから南西エリアにある教会に行くが、結構寂れているのがちょっと気になるところ。中に入ると、少し年配のシスターと思われる人がやってきた。

「何かご用でしょうか?」

「いえ、単に神様への祈りを捧げに来ただけです。あと、もし病人がいるようであれば治療を行うことができますよ。」

「治療ですか?でも治療してもらっても払うお金はここにはありません。」

「いえ、治療代は必要ありません。自分たちの治癒魔法のレベル向上のためにやっているだけですから。」

「もしかして・・・

わかりました。もしそうであればよろしくお願いします。

 あ、挨拶が遅れて申し訳ありません。私はここの教会のシスターをしていますカロライナと申します。」


 外から見るとかなり寂れているようだったが、建物の中は綺麗に掃除もされていて荒れているという感じではない。たんに建物が古いと言うだけのようだ。

 かなりの数の子供達がいて、みんな結構痩せ細っている。治療よりも栄養をとらないといけない人が多いのでいつものように食料を寄付していくことにした。食材を見ると子供達はかなり歓声を上げていたけどね。治療もすませて一段落したところで本来の用件を済ませる。

「自分たちからの寄付に関しては以上です。あと、伝言がありますのでお伝えしますね。」

『お世話になりました。カルトニアのご加護と愛を授かりますように。チカより。』

 シスターが少し驚いた顔をしたが、それも一瞬ですぐに元に戻った。

「こちらは寄付になりますので運営資金として使って下さい。特に使い道については何も言いません。」

「・・・ありがとうございます。伝言の意味は分かりかねますが、寄付としてありがたくいただいておきます。」

「これ以上の話は不要だと思いますのでこれにて失礼します。

あ、そうだ。あまり関係ないことなんですけど、自分達の女性の友人の4人が昨年結婚したんですよ。そのうちの2人にまもなく子供を授かりそうなのでもし良かったらあなたからも祝福をお願いします。」

「そうですか、その友人達にも祝福があらんことを・・・」

 教会を出て宿に戻る。

「あれで伝わったのかな?」

「おそらく大丈夫じゃないかな?」

 スレインさんたちが国外に脱出する時に手伝ってくれた団体があるのだが、その窓口の一つがあの教会だったらしい。もちろん詳細までは話せないので確認は取れないが、聞いていた容姿も名前も一緒なので間違いないだろう。


~教会のシスター・カロライナ~
 ちょっとこのあたりには似つかわしくない感じの二人組がやってきたときは何かと思ってしまった。なにか因縁をつけられるのかと不安になったのだが、怪我をしている人がいれば無償で治療をするという話をきいてさらに驚いた。
 もしかして少し話に聞いていたさすらいの治癒士なのだろうか?治療をお願いするときちんと治療をしてくれた上に食料まで寄付してくれた。

 そのあとの言葉に一瞬驚いてしまった。なぜその言葉を知っているのだろうか?もしかして探りに来たのだろうか?でもチカというのはあの4人姉妹のことだろうか?

 それ以上特に追求も無かったのだけど、最後に言葉を残していってくれた。友人の4人というのはきっとあの4姉妹だろう。そうなのね、無事にヤーマン国について結婚して幸せになっているのね。よかった・・・。

 どこまで真実かわからないけど、手助けした人達が幸せになったと聞くのはとてもうれしいことだわ。
 寄付と言われたものも驚くほどの金額だった。これでまた他の人達の援助をすることができるわ。多くの女性を救ったと言われる聖女カルトニアの意思はきっと引き継がれていくはずだわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

処理中です...