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第一部 異世界の貴族達

127. 異世界588日目 ジェンの救出 その1

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 なんとか不正の証拠を手に入れてから無事に屋敷を抜け出してラクマニア様のところに向かう。とりあえずある程度の証拠は押さえたので最低限の理由をつけて屋敷の調査は行うことができるはずだ。

 証拠の書類をざっくり見たラクマニア様はすぐに動いてくれたみたいで、翌朝には強制捜査の令状をもらってきてくれた。自分もお願いして検査官の一人として警備隊長に同行させてもらうこととなった。警備隊長にはラクマニア様の私兵だが、探索能力に優れているので同行させたいと説明してもらったようだ。



 屋敷を訪問すると、執事らしき人が出てきた。

「我が屋敷にどういったご用件でしょうか?」

「朝早くから申し訳ありません。キザール爵の不正の証拠が挙がっており、屋敷の捜査の許可が出ています。申し訳ありませんが屋敷の調査への協力をお願いします。」

 令状を確認した執事は「しばらくお待ち下さい」と言って奥に引っ込んだ。しばらくすると主人のキザール爵を連れて戻ってきた。

「わざわざご苦労ですな。理由については不明だが、令状まで持っているのであれば従わざるを得ませんな。すまないが令状をもう一度確認させてもらってもよいですかな?
 昨日は爆発音がしたと兵士達が調査といって我が家に入ろうとしたことも理由の一つですかな?たしかに夕べ不審者が屋敷に入り込んで、貴重な書類などが盗まれてしまいましてな。屋敷の中も少しあれていますがそのあたりはご容赦願うぞ。
 その不審者のことに何か心当たりはありませんかな?町の警備も担っていると思いますので早めに捕まえてほしいものですな。」

「それを含めての調査と言うことで理解していただきたいと思います。屋敷の調査を先に進めさせてもらいますのでよろしくお願いします。」

 令状の内容を見た後、「どうぞご自由に。」と中へと案内される。

 今回調査に来ているのは全部で30人とかなりの数だ。とはいっても結構大きな屋敷と敷地なので確認するのも大変だ。ただ調査する人の中には探索能力の高い人も結構いるのでおかしなところを確認していくようだ。

 執事に案内されて執務室へと移動し、今回のことについて説明を行う。

「この部屋が襲撃を受けたという部屋ですね。」

「その通りだ。」

「そうですか。この壁に隠し部屋があるということで間違いないですね。」

「そ、それは・・・そうだ。ただ中のものはすべて夕べ盗まれたので何もないな。」

「そうですか、すべて盗まれたんですね」

「そうだな。」

「ではこの書類がその盗まれた書類の一部なのですかね?これらの書類とともに密告がありまして、今回の強制捜査となったのです。」

 そういって証拠の書類と調査結果をまとめたものを差し出す。さすがに裏帳簿が見つかってしまえば言い逃れはできないだろう。しばらくいろいろと言い訳していたが、中身について説明を受けると観念したようだ。

「申し訳ない、この点については素直にわびることにしよう。追徴金を払えばいいのかな?。」

「追徴金はどういう額になるのかはわかっていますね。」

「下位爵は脱税した金額の3倍を支払うという取り決めとなっているな。」

「そしてそれは過去に遡って適用されると言うこともご存じですね?それを素直に受け入れると言うことでよろしいでしょうか?」

「まあそこまで証拠を持っているのなら言い逃れはできないな。その意見に従うことにしよう。」

「これらの書類から計算された追徴金はおおよそ6000万ドールとなりますが、書類を確認しますか?」

「見させてもらおう。」

 書類を簡単に確認し、了承の意を示す。

「書類については再度詳細に確認させてもらうことにするが、さすがにこの金額をまとめて払うほど当家も裕福ではない。分割での支払いでお願いするつもりだ。」

「そのあたりはまたあとで調整をお願いいたします。」

 このあともいくつかのやり取りをしてから一通りの手続きは完了したようだ。

「これで捜査は終わりでよいですかな?」

「ええ、詳細はまだ後日手続きをしなければなりませんが、これらの書類についてのことは終了となります。」

 他の部屋に調査に行っていた人たちもある程度戻ってきたが、特に怪しいところは見つからなかったらしい。まあこれだけ広い屋敷なのでなかなか探すのは大変だろう。そのための探索スキルの調査員なんだけどね。

 この世界では多くの国で貯金額を国に把握されているので、脱税の際には工芸品や宝石、魔獣石などで手元に置いておくのが定番らしい。ただ、魔獣石はかなり便利なんだが古代の遺物の魔道具で探知がある程度できるのでそのままで保管することはしないようだ。このためある程度の空間が必要となってしまい、探索で調査が可能となるようだ。


~キザール爵Side~
 自分たちで書類を盗み出したくせに面倒な手続きをしおって腹立つな。結局昨日の侵入者も手がかりすら見つけられなかったし、この部屋の修理だけでまた金がかかってしまうではないか。まあ今回の追徴金の6000万ドールは仕方がないがな。

 しかし馬鹿な奴らだな。ほんとに重要な書類や財産をこんなところに置いておくわけがないだろう。隠し部屋は建物の構造的にもわからない作りになっているし、探索スキルでもわからないように隠蔽しているので大丈夫なはずだ。そのために古代の遺物を使ってまで隠し部屋を作っているのだからな。
 あとは屋敷の調査を無事に終えてしまえばまたしばらくは問題ないだろう。古代の遺物がある限りはいくら索敵能力が高くても隠し部屋を見つけることはできないはずだな。
 高い金を出して遺跡調査依頼をしていてよかったな。あの魔道具が見つかったのは僥倖だったな。もし正式に報告していたら王家に取り上げられていただろうからな。

 夕べは侵入者のおかげで散々だったな。昨日のうちにさらってきた女達の味見でもしようと思っていたのに結局なにもできなかったからな。まあ憂さ晴らしをかねて今夜たっぷりとかわいがってやるとしよう。


 このあとのことを考えていると、扉が開いて声が聞こえてきた。「もう少しよろしいかな?」
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